ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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フェアリィ・ダンス編 哀しみを背負った男達
記憶の一部と力の意義と動き出す目的
前書き
今回はユキ、リーファのお話。クライの目的とは?ユキにウルトラシンプルで厨二な異名付けました。キャラ設定3へどうぞ。
「ん・・・ここは」
「君の心の中だよ、ユキ」
低いが紳士的な声をした初老の男性が現れる。予想はついているが、性格が変わっている気がする。
「・・・ドラゴンか?」
いかにも、とドラゴンは言った。
「正確には、君に与えられたドラゴンの力が君の力に触れて形になったものだ」
「僕の力?」
「ああ、君の力。正確にはアシムレイトロイドの力と言うところかな?」
「!!君は始めから知って・・・?」
「そうだね・・・僕は君の一部の記憶を知っている。それにはまず、説明しなければいけないことがある」
「ドラゴンが出現したサバト・・・その手伝いをしたのは誰か、知っているかな?」
「僕の予想でいいかい?」
ああ、と言ったので、僕は自分の意見を言った。
「財団と・・・ショッカー?」
「ご名答!その通りだ。しかし、彼らはサバトを発動させる他に目的があった」
「それは何か、君にわかるかな?」
「・・・わからない」
僕は考えもしないで言った。純粋に何もわからなかったからだ。
「アシムレイトロイド起動のエネルギー源だったのさ」
「!!」
「でも・・・でもっ、合わないじゃないか!!だって晴人さんがウィザードになったのは約半年前・・・。僕は今17歳だ!」
たくさんの人の命。心を、希望を潰して僕は生まれた。認めたくなかった。
自分が、殺された命から生きていることを。しかし、それはあっさりとドラゴンに否定された。
「世界によって、時間軸は違う」
「次元を超えてきたっていうのか!?」
「そうだ」
嫌だ、信じたくない。だって僕は・・・僕は・・・
「家族の記憶があるじゃないか!!」
それすらも・・・僕の希望すら、ドラゴンはたやすく否定した。
「それが・・・」
「それが本当に君の記憶と言う保証はあるのか?」
もう、何も言う事が出来なかった。じゃあ、姉の記憶も・・・。あの言葉も。
「全部・・・全部偽物だったっていうのか!?」
別の人の記憶だった――――――――――――?
僕へと入り込んだ命の、記憶だったというのか!?そう思うと、いっきに気持ち悪くなった。
胃の中のものが口へとせり上がってきて口の中が酸っぱくなったと思うと、僕は胃の中のものを全部吐き出した。
ドラゴンは冷たい瞳でこちらを見ている。
「僕は・・・僕は、命を・・・人の心から成り立っているのか・・・?」
「そうだ。さっきから何度も・・・」
ドラゴンは言葉を紡ぐのをやめた。いや、紡げなくなった。僕が《同質化》したからだ。
僕は逃げた。もう、聞きたくなかったのだ。自分が他人の命を踏みつけていることを聞きたくなかったのだ。
「フッ・・・人間とはそういうものだよ。他人の命を踏みつけ、上へとのし上がるし、成長する。人は物を食べるだろう?大体、人は牛や豚を食べるじゃないか。喰わないと生きていけないからだ。君はたまたま、それが人だっただけだよ」
僕はドラゴンの首を絞めた。もう、この声も聞きたくない。
「もう・・・黙っていてくれよ・・・。このまま僕に吸い込まれてくれ。そして、その力を僕が命を救う時に使わせてくれ」
「ずいぶんと都合がいいな、その理論は。はたして、人を守るものを殺すために造られた君が誰かを守れるかな?」
そう言い残して、ドラゴンは消えた。空間に静寂が戻る。僕は静かに泣いた。
僕はこれからどうすればいいのだろう。仮面ライダーを殲滅するために、人を守る正義の味方を殲滅するための兵器である僕は、どう生きていけばいいのだろう。
響鬼さん達は力を貸してくれるだろうか?化け物である、この僕に。
「貸してくれるさ。きっと」
「そうだぜ。響鬼たちのことだからな」
不意に、二人の声が背後から聞こえた。振り向くと、そこには二人の男が立っていた。
「よう、お前がユキだな?」
「あなたは・・・乾巧?」
オルフェノクでありながら、人類の傍に立ち続けた夢の守り人。仮面ライダーファイズ。乾巧。
「なんか・・・忘れられてる気がする・・・」
もう一人もユキが知っている顔だった。
人の為に走り続け、最後は友を救うために怪物になった男。仮面ライダー剣。剣崎一真。
「なんで・・・ここに?」
「君を助けてってカナリアさんから」
「・・・そのカナリアは?」
「あいつは今、疲れちまってる。今来てるやつら全員、お前のために連れてきたからな。アイツ、なんだかんだ言って一番お前を心配してるぜ」
カナリアも大変なんだなとは思ったけれど、カナリアはなんで僕を選んだのだろう。
「さぁね・・・だけどさ、それが良いって思ったんじゃない?」
剣崎さんが言った言葉に、聞き返す。
「いいってどういう事ですか?」
「力はな、与えられた後が問題なんだよ」
「そういうこと。その力をどう使えばいいか、正しく扱えばいい。君が思った通りに」
「だけど・・・」
「正しい道が分からないってか?そんなもん、探すんだ。夢を探すようにな」
「未来は自分で切り開いてくものなんだ。だからさ、君がしたいことが、一番君にとっては正しいと俺は思うよ」
乾さんと剣崎さんが何処からかバイクを持ってきて乗る。
「俺らは今、時間がない。すまないが、手助けはここまでだ」
「ごめんね。あぁ、そうだ忘れてた」
剣崎さんがバイクから降りて、僕に手紙を渡してきた。
「もし君が仮面ライダーの魂を本当に継いでいるなら、誰かの為に走って。愛する人の為に。誰かの為に走る。それが、仮面ライダーだから」
「おぅ、早くいくぞ!!」
乾さんの言葉に剣崎さんがバイクに跨り、僕に背を向けた。
「剣崎さん」
僕の言葉に、剣崎さんが振り向く。
「始さんは・・・始さんは人間らしく、人間達の中で生きてます!!」
剣崎は微笑み、ヘルメットのバイザーを降ろす。そして二人は、僕の中から去っていた。
僕が今したいこと・・・アルゴさんを救う事。アルゴさんに会いたいな。アルゴさん・・・。
今・・・行くよ。力を貸してくれるかわからないけど。皆と、一緒に。
森
リーファが目を覚ますと、そこにはたき火がついていて響鬼が木を放り込んでいた。
「お、目が覚めたか。始」
始が温かいスープを持ってくる。スープの入った器とスプーンを渡されたリーファは、静かにそれをすすった。
「そうだ、真起こせ!次の見張り、アイツだろ?」
ああ、と始がすぐ近くの洞窟へと歩いていく。
「あの・・・」
リーファは響鬼に話しかけた。ん?と響鬼がリーファの方を向く。
「助けて下さって、ありがとうございました」
「いやいや、お礼なら、そこで寝てるユキに言ってあげてくれ」
響鬼が指を差した方向には、少年が寝ていた。寝返りを打った少年の顔が見えた。
「あ、あの人・・・」
リーファは過去のことを思い出していた。確か、学校の帰り道で不良に絡まれて、その時に助けてくれた人だ。
「ん?知ってるのか?」
響鬼が疑問を投げかけると、真が来た。
「おっ、来たねぇ。じゃっ、俺、寝るから」
そう言った響鬼は、すたすたと洞窟の方へと去って行った。
「・・・・目が覚めたか」
「あ、はい。おかげさまで」
リーファの言葉に、真がほほ笑んだ。リーファは少し驚いたが、すぐに元へと戻る。
「あの・・・」
「なんだ?」
「貴方たちは、何者なんですか?」
「・・・・ユキを助けに来た、仮面ライダー・・・としか言えない」
「仮面ライダー・・・?ってなんですか?」
「俺があの姿になる、響鬼も鬼みたいな感じになっていただろう?あの状態のことを仮面ライダーと言う」
「へぇ・・・」
真は静かに薪をくべる。
「あの・・・どうしたら、そんなに強くなれるんですか?」
突然の言葉に、真は少し黙ってから口を開いた。
「・・・・なぜ力が欲しい」
真の問いにリーファが答える。
「今日負けたこともあるし・・・。私には、兄がいるんです」
「兄は、ソードアート・オンラインというデスゲームで、好きな人と結ばれたらしいんですけど・・・ゲームがクリアされた後も、好きな人が帰ってきていないんです。それからいろいろあって・・・兄が落ち込んじゃってて・・・。だから、その間だけでも力が欲しいんです」
「・・・・力を与えられて、それが強さになると思うか?」
真の言葉をリーファは黙って聞いた。
「ならない」
「なぜならば、力と言うのはころころと変わるからだ。力を持って守れると思っても、その自信は自分の身を滅ぼす」
「お前は、兄を愛しているか?」
リーファはコクリと頷いた。
「なら、なおさら力を持ってはいけない」
その言葉にリーファが反論した。
「だって・・・だって、兄を守りたいから」
「望まない力を与えられ、愛する人を失った奴もいる」
真は自分の手のひらを見つめた。
「それに・・・お前の兄は、きっと強い奴なんだろう」
「お前のような女が愛する男だ。きっと心の面でも強い人なのだろう。なら、辛いことを乗り越えられるように、応援するだけで俺はいいと思う」
「貴方に・・・貴方に何が分かるんですかっ」
「・・・・すまなかったな」
真は立ち上がり、今度は始が薪をくべはじめる。しばらく無言が続いたが、突然始が口を開いた。
「真に何を言われた?」
リーファは少しずつだが、全て説明した。
「そうか・・・兄を守る力が欲しいのか」
「強すぎる力は身を滅ぼす、と言うのを知っているか?」
「・・・はい」
「実際あれはそうなんだ。俺自身もそれにやられていたし、真はもっと辛いめに合っている」
「辛い・・・め?」
「愛する人を・・・失ったんだ。子供もいたというのに・・・」
リーファは後悔した。なんてことを言ってしまったんだろう、と。
「だけどな、俺たちは救われたんだ。真は愛する人に。俺は仲間に」
「結局・・・力っていうモノは二の次だってことも知った」
「リーファ・・・一つだけ教えてやる。強いのは力じゃない・・・。本当に強いのは・・・。本当に強いのは人の想いだ。お前の兄も、きっとお前の想いに力を貰ったはずだ。だから・・・お前に力なんていらない」
リーファは少しだけ、ほんの少しだけ、始の胸を借りて泣いた。小さな嗚咽が、たき火の音にかき消された。
世界樹
「ンなんだよ・・・」
「わかってるよ」
「別に楽しんだっていいだろ?そんな急ぐことじゃないし」
「須郷とかいうキモ男には、もう接触したよ・・・」
「それより・・・約束は、本当だろうな」
「・・・ああ、本当だ」
「なら、いい・・・じゃあな、死神博士」
通信をきると、クライはため息をついた。そして言った。
「待ってろよ・・・必ず復活させてやるからな」
自分のブローチを開いて、妹の写真を見る。そして名を呟いた。
「アルゴ」
後書き
クライが動き出す。次回もなるべく早く更新します。ではでは。
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