転生とらぶる
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マブラヴ
番外編030話 0844.5話
それは、まるで一面の海と呼んでもいい程に広がっているBETAの群れ。
これまで幾度となくこのアラビア半島へと襲い掛かってきたBETAだったが、その全てを跳ね返してきたアフリカ連合、中東連合、国連軍へと向かってこれまでに無い数のBETAが襲い掛かっていた。
『退け、退けぇっ! 一旦退いて態勢を立て直すぞ!』
通信機から聞こえてくるそんな声に従い、F-5FミラージュⅢに乗っていたアフリカ連合のパイロットはとにかく後方へと向かって後退していた。
「くそっ、くそっ、くそぉっ! BETAのクソ共め。あんな数で攻め込んで来やがって!」
コックピットの中でF-5Fのパイロットが悔しさに歯噛みをしながら叫ぶ。
つい10分程前まで共に戦っていた家族同然の小隊も、既に今は自分1人。
機体にしても突撃砲の残弾は残り2割を切っており、装甲も突撃級の攻撃を完璧に回避しきれずに大きなダメージを受けている。
「誰でもいい……それこそ、神でも悪魔でも。とにかく誰でもいいから、あのクソBETA共を何とかしてくれぇっ!」
そう叫んだ、その時。
まさにその言葉を誰かが聞き届けたかのように空が眩く光る。
「っ!? 何だ!?」
何とかモニタに映し出したその映像は、男にしても信じられない存在だった。
空中に浮かんでいる戦艦。そうとしか形容出来ないものが忽然と姿を現したのだ。
同時に、その戦艦から無数の何かが吐き出される。
驚くべき事に、その無数の何かは空を飛んでいた。本来であれば、光線級の存在により完全に制空権を失った筈のこの戦場で。
そして当然の如くBETAからはその空中にいる存在へと向かってレーザーが放たれ……
「嘘……だろ……?」
男が見たものは、空中に浮かんでいる戦艦の周囲で何かが弾かれるような光。そしてその周囲で縦横無尽に空を飛ぶ、小型の戦術機のような機体。
だが、その機体は空を飛んでいるというのに全く落ちる気配は無い。いや、それどころか男には何がどうなっているのか分からなかったが、その機体の周囲で何かが光ると同時に地上にいるBETAが破裂し、斬り裂かれ、四散する。
異常はそれだけではない。空飛ぶ戦艦から放たれた虫型の機体が、丸い何かを放っては突撃級の背後からその数を減らしていく。あるいは蜘蛛のような機体の尾から放たれた糸のようなものがBETAの足を絡め取ってその場で動きを止める。
「CP、聞こえているか、CP! 何が起きている! あの空中に現れた存在は味方と考えてもいいのか!? CP、応答してくれ、CP!」
BETAに対して無慈悲な神の如く処断していくその光景に、男は知らず知らずのうちに笑みを浮かべつつも後方へと通信を送るのだった。
後方の指揮所である司令部内。アフリカ連合軍、中東連合軍、国連軍の3つの勢力が入り交じっている司令部でも現在は半ば混乱に近い騒動が起きている。
前線からひっきりなしに来ている問い合わせに対応しきれていないのだ。
「だから、あの未知の勢力は以前から連絡が回っていたシャドウミラーのものです!」
「だが! それでもあんな……光線級のレーザーを無力化するような……」
国連軍の軍人の言葉に、中東連合軍の軍人が思わずといった様子で叫ぶ。
その勢力はあまりにも突然過ぎ、そして未知数の存在だった。
光線級の脅威がある中で平然と空を飛び、尚且つBETAをものともせずに駆逐していく。
甲虫型の機体の放つ円状のレーザーのような攻撃はBETAの中でも最高硬度を誇る要撃級の前腕ですら呆気なく破壊し、その牙や角の一撃は一片の情け容赦すら無くBETAを駆逐していく。
蜘蛛型の機体が尾から放つ光の弾丸は、一掃射するだけで複数のBETAを駆逐していく。
更に驚くべきは、人型の機体だ。一見すると重装甲で、どう見てもF-4より鈍重そうに見える。
だが、その実はこの戦場にいるどんな戦術機よりも機敏に動き、肩に背負っている砲身からは蜘蛛型の機体と同じように光の弾丸が放たれると無慈悲な鉄槌をBETAを下す。あるいは反対の肩に乗っている砲身からは黒い何かが放たれると数十匹、あるいは百匹近い数のBETAが潰れて消滅していく。
中には拳で要撃級の前腕ごと叩き潰すといったように、人に話してもとてもではないが信じて貰えないような光景もあった。
「嘘だろ……これは神の救いか……」
突然現れた未知の軍勢の行動に、思わずそう呟く軍人が続出する。
中には自らの神に対して真剣に感謝の言葉を述べている者も数人いるが、映像に映し出されている者達を率いるアクセル・アルマー、数々の世界で大魔王と呼ばれている人物がそれを聞けばどのように思うだろうか。
そして……
「ちょ、ちょっと! あっち、あれ!」
普段は常に冷静で、その美貌からアイスドールと呼ばれている中東連合のCPの1人が信じられないように叫ぶ。
その表情は驚愕に見開かれており、それを見た同僚達はそんなアイスドールと呼ばれている人物の様子に驚き、次にそのアイスドールが指さしている映像モニタを見て更に驚く。
「あ、あれ……戦術機、なの?」
「まさか。そんな……あんなに大きい戦術機なんて見た事……見て、あっちにも!」
視線の先にいるのは、2機の巨大な機体。そして空中に浮かんでいる戦艦の近くにも同じくらいの大きさの巨大な機体が1機。
その2機の巨大な機体が、腕から出すレーザーのようなもの、あるいは日本の戦術機が使うような刀や巨大な剣を用いて、当たるを幸いと光線級、重光線級を文字通りに薙ぎ払っていく。
本来であれば死の象徴に近い存在であるその2種のBETAが、まるで砂山を蹴り崩すかのような気楽さで消滅していくのだ。
5個軍団のBETAの襲来に、空を飛ぶ戦艦を始めとした一連の出来事で周囲の者達は混乱に混乱を重ね……だが、次の瞬間大声が響き渡る。
「落ち着け! 向こうから連絡があった。あの部隊は国連軍から報告があったように、間違いなく我々の味方だ!」
その場の指揮官がそう叫んだ瞬間……ソレは起こった。
BETAの群れの最前線、モース硬度15以上を誇る装甲殻を持つ突撃級が集まっている場所で巨大な……そう、巨大としか表現出来ないような爆発が生み出されたのだ。
「ジーザス……」
シン、と静まった司令部内に、誰かがそう呟く声だけが響き渡る……
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