| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百八十九話 その一手その二

「やはりその時もです」
「死んでもらいますか」
「そうして下され」
「さすれば」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 羽柴は秀長と共に鳥取城に使者として入った、その話を聞いてだった。経家は旗本達にいぶかしむ顔で問うた。
「まことか」
「はい、まことです」
「織田家から使者が来ました」
「今しがた」
「そしてか」
 そのうえでとだ、さらに言う経家だった。
「わしと話がしたいと」
「どうされますか、ここは」
「会われますか」
「どういうつもりかわからぬが」 
 それでもと言う経家だった。
「会いたいというのならな」
「それではですか」
「これより」
「お通しせよ」
 その織田家の使者達をというのだ。
「そうしてな」
「会われて」
「あちらの話をですか」
「うむ、聞こう」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 経家は織田家の使者達を城主の間に通した、そこで旗本達を左右に配してそのうえで彼等を通した。その彼等はというと。
 羽柴と秀長だった、旗本達は彼等を見て話した。
「あれはな」
「うむ、羽柴秀吉とじゃ」
「弟の羽柴秀長じゃな」
「百姓から成り上がった者達じゃったな」
「何でも大層智恵が回るとか」
「頭がよいそうじゃが」
 こう話すのだった。
「その二人が来たか」
「そのうえで話をするのか」
「羽柴秀吉殿と羽柴秀長殿じゃな」
 経家もだ、己の前に座る彼等に問うた。
「そうじゃな」
「はい、そうです」
「左様です」
 二人もその通りだとだ、経家に答える。
「この度は織田家から使者として来ました」
「お話したいことがありまして」
「して何用か」
 何故かと問う経家だった。
「この度は」
「はい、この城を頂きたいのです」
 羽柴は陽気な顔でこう経家に言った。
「そうして頂きたいのです」
「この城を」
「さすれば経家殿の城内の兵も女房衆も皆です」
「命を助けるというのじゃな」
「左様です」
 その通りだというのだ。
「そして毛利の領地までお通しします」
「無論飯も用意します」
 秀長も言う、彼等に対して。
「そうさせて頂きます」
「そこまでしてくれてか」
「はい、毛利家の領地まで」
「必ずお通しします」
 このことをだ、二人は経家に強く言った。
「そしてです」
「お命は一切奪いません」
「毛利家の領地に入られてもです」
「三日待ちます」
 その領地に攻め入ることをというのだ。
「すぐその場で攻める様なこともです」
「断じて」
 しないというのだ。
「ですからどうかここは」
「開城をお願いします」
「左様か」
 経家はまずは言葉だけで応えた、そしてだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧