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美しき異形達

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第三十二話 伊勢神宮その十

「白浜でそうしたんだけれどさ」
「それで私はです」 
 桜はにこりとした笑みで言うのだった。
「伊勢で買いたいと思っていまして」
「それでなんだな」
「はい、ここで買わせて頂いて宜しいでしょうか」
「いいんじゃないかしら」
 裕香が桜に答えた。
「桜ちゃんがそうしたいのなら」
「それでは」
「私も実家にお土産送ろうかしら」
 ここで買って、というのだ。
「そうしようかしら」
「ああ、奈良の」
「そう、山奥のね」 
 薊に応えての言葉だ。
「あそこに送ろうかしら」
「親孝行か」
「そう、確かに実家に帰るつもりはないけれど」
 それでもなのだ、裕香にしても親への愛情はあるのだ。故郷への想いは複雑だがそれでもなのである。
「お父さんとお母さんは大事にしないとね」
「だよな、親孝行しないとな」
「だからね」
「お伊勢さんのお土産買ってか」
「送るわ」
 そうするというのだ。
「何かね」
「親孝行か、あたしもな」
 薊は裕香の言葉に両手を頭の後ろで組んでそのうえでこう言った。
「やるしな」
「院長先生によね」
「ああ、横須賀のな」
 薊にとっての親にというのだ。
「実の親はいないけれどさ、あたし」
「親は血でなることは確かだけれど」
 菖蒲が薊に冷静に話した。
「絆でもよ」
「だよな、よく言われることだけれど」
「産みの親より育ての親という言葉もあるわ」
「そういうことだな、やっぱり」
 薊は菖蒲のその言葉にしみじみとした口調で答えた。
「じゃあやっぱりな」
「薊さんもなのね」
「ああ、送るよ」
 土産をというのだ。
「そうするよ」
「そうね、では私もね」
 菖蒲も言いだ、、そして。
 他の面々もだ、彼女達の親にそれぞれ土産を買ってだった。
 おかげ横丁を出た、するとそこにだった。
 鈴蘭と黒蘭がいた、向日葵は二人を見てその顔をさらに明るくさせて言った。
「ここでも一緒になったわね」
「そうね、奇遇ね」
「これも縁ね」
 鈴蘭と黒蘭もそれぞれ微笑んで向日葵に返した。
「まあ私達も近畿一周してるし」
「会うのも道理ね」
「私達さっきまでおかげ横丁で楽しんでいたけれど」
「貴女達もかしら」
「たっぷり食べてお土産も買ったわ」
 向日葵はにこりとして二人に答えた。
「そっちもね」
「そう、じゃあ一緒ね」
「私達もさっきまでそうしていたわ」
「そうなのね、あんた達もお伊勢さん楽しんでたのね」
 今度は菊が二人に言った。
「それも一緒ね、じゃあお参りも」
「したわよ」
 鈴蘭がにこりと笑って菊の言葉に答えた。 
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