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フリージング 新訳

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第4話 Pandora Mode 2

 
前書き
さてさてさーて?今回はカズトvsガネッサです。
チートはありませんが、特異体質ではあります。神から授かったものではありません(言い訳
では、どうぞ。 

 
俺は異常だ。異常で、異質で、この世界にとっては、異物でしかなかった。

3歳になったころには、その異常さも増していった。
まずは、その小さな体で高校生を殴り倒し、その幼い力で冷蔵庫を持ち上げ、その未成熟な心は、凶暴なまでに、暴力的だった。

5歳になれば、誰も僕に近寄らなくなった。周りからは、遠巻きにされ、悪魔の子と呼ばれるようになった。

「うるせぇんだよ‼︎」

その日の俺は、孤児院の先生達と、大立ち回りの取っ組み合いを演じていたのだ。まだ、5歳の頃である。
いつものことだった。キッカケなど些細なもので、俺に近所のガキ大将がなんか言ってきたとか、そんなものだったと思う。

「や、やめなさい!」
「がぁぁぁぁ‼︎」

そこらへんにあった机や椅子をかたっぱしから投げつける。
そんな時だ。あの人が現れた。

「何故、貴方はそんな寂しい顔をしているの?」

美しい黒の髪。背は当時の俺よりも、かなり高かった。凹凸がハッキリとした身体は大人の魅力を感じさせた。

その女性は、俺が暴れていることなど気にせずに近づいてくる。

「誰だてめぇぇぇはぁぁぁ‼︎‼︎」

椅子を片手でぶん投げる。
盛大な音を立てて破損するが、女性は瞬きすらしない。
どころか、こちらに近づいてきたのだ。

「私は、アオイ・カズハ。貴方は?」

俺は黙ってしまう。答えられなかったのだ。

「俺に……そんなの…ない。」

それを聞いた女性、カズハは、優しく微笑み、俺と視線を合わせるように屈み込む。

「じゃあ、私が名前をつけてあげよっか?」

その言葉は、この世界に生まれて初めての優しい言葉だった。
だからこそ、当時の俺には信じられなかった。

「ふ、ふざけんなぁぁ‼︎」

思わず、右拳を握り、女性の顔面にぶつける。
警戒したわけではなく、嫌悪を覚えたわけでもない。ただ、わからなかったのだ。彼女がどうして優しくするのかが。
だが、その拳は、

「いきなり過激ねえ。」

いともたやすく止められていた。

「離せ‼︎」
「いやよ。」

即答だった。唖然としている俺の右拳を、カズハは優しく開いた。
すると、その掌は爪が食い込み、血だらけになっていた。

「まずは、止血しないと。」
「え、あ…あ……」

血を止めようとして、カズハがハンカチを取り出し、そのハンカチが、どんどん赤く汚れていくのを、俺は止めようとした。

「そうやって……」

カズハは少し寂しそうな顔で、止血を続ける。

「そうやって、他の人や、物が汚れるのが嫌なのに。どうしてこんなに暴れるの?」

直ぐには、答えられなかった。
だから、少しずつ、口を開く。

「みんなが……
「みんなが、俺のこと悪魔だって、言うんだ。
「俺は、ただ、皆んなと遊びたいだけなのに、力が強すぎて、それで、みんなを泣かせちゃうんだ…
「だから、暴れてたら、もうみんな近づいてこないから……
「そうすれば、だれも、傷つかないですむから……」

話していくうちに、ああ、俺はそんな風に考えてたんだと、自分で納得していった。

「そう…貴方は優しい子なのね……」

カズハが、ハンカチを結び、止血を終えた。
そして、優しく両手で俺の顔を包んだ。

「でもね、それは周りの人たちも困るし、貴方自身を傷つけることなのよ。」

その言葉は、当時の俺には優しすぎた。
だから、涙を堪えられなかったのだ。

「う…うわぁぁぁぁん‼︎」
「ハイハイ。泣かないの。男の子でしょ?」

抱きしめられ、撫でられる。どちらも生まれて初めての事だった。

そして、これから先の俺の人生を決める言葉が、カズハの口から紡がれる。

「もう、そんな悲しい力なら、捨てちゃいなさい。
「これからは、誰かを傷つける為じゃなくて
「自分を傷つける為じゃなくて
「誰かの命を、未来を守るために、
「その力を使いなさい。」

だから、俺は戦う。

カズハの言った生き方を貫く為に。

彼女自身が、そうであったように。

カズハのように。

カズハの義弟として相応しいように。

俺は強くなる。

*****************

白銀の長剣、グラディウスを右手に持ち、その刃を左手のこうでなぞる。
カズハに習った、数少ない武芸の構え。

ジリジリと、先輩は距離を取ろうとするが、そんなものは許さない。

「ハッ‼︎」

気合の声と共に、脚に力を込めて走り始める。先ほどまで立っていた場所には、今の衝撃で、クレーターが出来ていた。

「ゼァッ‼︎」

右腕一本での、袈裟斬り。
鎖で右側に弾かれるが、それだけでは終わらない。
弾かれた剣に、左手を添え、横に一回転。その力を乗せたまま、斬りつける!

ズドンッ、と、鈍い音がしガネッサ先輩がよろける。それに追い打ちをかけるように…いや、実際に追い打ちだろう……
剣を上段から振り下ろす!

今度はよろけるだけでは止まらず、その場に倒れる。パンドラモードによる仮面にも、ヒビが入り、片目が露出した。

「くっ、こんの‼︎」

鎖が襲いかかり、俺はそれを弾きながら距離を詰める。
先輩は、鎖を纏めて、より強力な物にして対抗してくる。

一合、二合と打ち合っていく。その間に、俺の剣は何度か先輩の鎧に攻撃を滑り込ませ、鎧を剥いで行った。
下段に構えた剣を振り上げ、鎖を撥ね上げる。その隙に右肩から斜めに切り裂く。

「ガァ⁉︎」

対して、先輩の鎖は、大ぶりになってしまった分、こちらには当たらない。

俺の剣は先輩の鎖を弾き、確実に損壊させていく。
接近戦ならば、アンカーと剣でどちらが有利かは、火を見るよりも明らかだろう。

それは、先輩にもわかっていたようで、鎖を使って距離を取る。

最初のように、詰めようとしたが、瓦礫などが邪魔で、うまくいかない。

お互いに睨み合う。サテライザー先輩ほどではないものの、眼力には自信がある。

だが、ガネッサ先輩は一歩も引かない。
彼女にも、プライドがあるのだろう。

剣をもう一度、さっきと同じように構える。そして、こちらも同じように、なんの捻りもなく、真っ直ぐに突進する。

先輩の鎖が二つ、此方に向かってくるが、俺は上半身だけを倒し、脛で滑る。
所謂、マトリックスの避け方だ。

「なんて、馬鹿げた……」

あんぐりと口を開けて驚いている。

アンカーを避けきると、二本の鎖を横に斬り裂き、そのまま直進。

さらに一本のアンカーが襲ってくるが、
避けれる距離ではない。
剣を右手に持ち、弾こうと、アンカーの横っ腹を叩く!

ガキィン‼︎

金属音が鳴り響き、道が開ける。もうアンカーは投げきった。

防御は……ない‼︎

「ウォォォォォ‼︎」

雄叫びを上げながら、紫電剣を両手で持ち、上段の構えをとる。
腰を低くし、一気に加速……!

ジャラ……

「んなぁ⁉︎」

できなかった。身体が動かないのだ。
原因はわかっている。

束縛の鎖だ。

迂闊だった。

まさか、今まで弾いてきた鎖全てに、
“まだ先輩のコントロールが効く”とは、
完全に思考から外していた。

なんとか鎖から逃れようとするが、キツく絡みついて離れようとしない。

「クッフフフフフ、アッハハハハハ‼︎」

ガネッサ先輩は大きな声で笑い出す。

「終わりですわね。確かに、貴方の戦闘センスは認めてあげますわ。でも……」

そして、アンカーを振り上げ、

「パンドラとしてはまだまだ、未熟ですわね‼︎」

俺を貫いた。

右肩。左太もも。右腕。脇腹。

「ガァ‼︎」

思わず、悲鳴をあげたその時だ。

「パンドラモード……開放……」

その声と共に、悪魔が立ち上がる。

恐る恐る、皆が、そちらを振り向くと、
そこには、パンドラモードの鎧を身につけたブロンドの女性がいた。

「サテライザー先輩……」

 
 

 
後書き
半端に終わってしまってすいません。
次回からは、少し更新が遅れますが、次回をお楽しみください。 
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