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バニーガール

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第四章


第四章

「御前まだ高校生じゃないか」
「ああ」
 本人の言葉ではそうなるのであった。
「それで何で本番だ」
「それがないと何の意味もないだろ」
 ここでも平気な顔をして言い切ってみせてきた。
「服装だけでなくそうした女の子と最後までいくのがな」
「犯罪じゃねえか」
「見つからないといいんだよ」
 本人にしてみればそうなのであった。かなりとんでもない性格である。ついでに言えばその行動はさらにとんでもないのであった。
「その為に毎朝毎晩アルバイトしているんだしな」
「そこまでするか」
「するか。俺はそっちに命をかけてるんだからな」
「何時か洒落にならん病気になっても知らんからな」
 一応はそう忠告する。
「そうなってからじゃ」
「そっちは大丈夫だ。ちゃんとゴムはして衛生は気をつけているからな」
「そっちは抜かりなしか」
「そういうことだ。まあこの店はこの店で楽しい」 
 ということであった。
「それで楽しめばいい」
「じゃあ付き合ってやるよ」
「是非共な」
 そんな話をしている二人であった。真理奈はそんな話を和歌子と共に聞いているのであった。
「何か色々と話をしているみたいね」
「高校生らしいわね」
 和歌子が真理奈に応えた。
「どうやら」
「このお店は高校生のお客さんも多いわね」
「ええ、そうなのよ」
 こうした店では一応は年齢制限もあったりするがそれでもあまり守られてはいない。それに関しては見て見ぬふりもあったりする。
「まあ気にしないでね」
「わかったわ。じゃあ私が行くわ」
 真理奈が言ってきた。
「コーヒー二つよね」
「わかった。それじゃあ御願いね」
「ええ。何か男の視線も慣れてきたわ」
 くすりと笑って和歌子に言う。
「慣れればそれ程でもないのね」
「気にしないのが勝ちよ」
 和歌子はそのバニーの姿で笑ってみせた。
「それは何度も言ってるわね」
「やっとそれがわかってきたわ」
 真理奈もそれだけの度胸がついてきていたのだ。
「自分でも驚いているけれど」
「最初は誰だってそうよ。けれど」
「それを乗り越えてってわけね」
「そういうこと。それじゃあ」
 また真理奈に声をかけてきた。
「頼むわね」
「わかったわ。全ては高谷君の為」
 言葉と仕草に気合が入る。見ればうさぎの耳が揺れて右手を拳にしている。全てはその高谷君とねずみの遊園地に行く為であるから当然であった。
「やってやるわ」
「そういうこと。私は他のお客さんのところに行くから」
「ええ。それじゃあそっちは御願いね」
「わかったわ」
 そんな話をしながらコーヒーを二つお盆の上に置いて持って行く。そうしてお客さんの前で言う言葉は。
「お待たせしました、御主人様」
「はい」
 二人のその高校生と思われる客は真理奈に顔を向けて応える。ところが。
「えっ!?」
「なっ!?」
 真理奈もそのうちの一人もお互いの顔を見て驚きの声をあげた。あげずにはいられなかった。その理由は他ならぬ二人が次の瞬間に自分達自身の声で言ってしまっていた。
「高谷君!?」
「君は」
 何とマニアと話していたのは高谷君なのだった。そしてその高谷君が出す次の言葉は。
「高橋さん!?」
「どうしてここに」
 真理奈は目を白黒させてその高谷君に問う。
「いるのよ」
「高橋さんこそ」
 二人はそれを否定せずにお互いに対して問うていた。これは肯定に他ならなかった。
「どうしてこんなところに」
「そ、それは」
 咄嗟に何と言えばいいのかわからない。相手の男も高谷君の向かいの席で呆然としていた。
「何があったんだよ、一体」
「確かここって高校生はアルバイトできないんじゃ」
「そ、それは」
 真理奈は高谷君の問いに反論できなかった。とてもそれが可能な心理状況ではなかったのだ。
「その・・・・・・」
「それにその格好」
 高谷君はさらに言う。
「どうしてバニーガールに」
「た、高谷君だって」
 動転したまま真理奈も言う。最早言葉にも問いにもなっていなかったが。
「バニーガール見にって。どういうことよ」
「いや、これは」
「こんな嫌らしいお店に。どういうつもりよ」
 自分の価値観を高谷君につぶけるのだった。もう何が何なのか周りにも自分達にも全くわからない状況になり果ててしまっていた。
 
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