遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~
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第1章 夢への第1歩
第2話 激闘!入部試験! 前編
翌日から、遊雅の通い始めた学校で、通常授業が開始した。
正直、遊雅は勉強が苦手なので、この学校への入学試験も、ほとんどギリギリのラインで合格したに過ぎなかった。
試験の前日まで亜璃沙による地獄の指導を受けていた事は、言うまでもない。
「あぁ……早くデュエルしてぇなぁ……」
「我慢しなさいよ。この授業が終わったら今日はもう帰れるんだから」
先程から項垂れてばかりの遊雅を窘め、亜璃沙は再び講義に耳を傾け始める。
対する遊雅は既にデュエルの事しか頭にないため、授業に集中などできない様子だった。
「遊雅、終わったら真っ先にデュエルしてあげるから、我慢しよ?ねっ?」
「ホントか、秋弥!よっしゃ、頑張るぜ!」
「南雲、授業中だぞ。静かにしろ」
教室中が笑い声に包まれる。
平謝りする遊雅の隣で、亜璃沙がため息をついた。
それから数十分が過ぎ、ようやく授業が終わりを迎える。
「ふぃ~、やっと終わった。息が詰まるかと思ったぜ」
「2日目からこれじゃ、先が思いやられるわよ。中学校まではそれでよかったかも知れないけど、高校からは留年、って事もあるんだからね。しっかりしなさいよ?」
「分かってる分かってる。その時はその時で何とかするさ!それより秋弥!早速デュエル始めようぜ!」
「うん!また、噴水広場でいいかな?」
「そうだな!また新しいデュエリストに会えるかもしれないし!」
3人が噴水広場へ向かおうとしたその時。
突如、後ろから声をかけられ、3人は立ち止まる事になった。
「南雲君は、君で合ってるかな?」
「えっ?はい、俺ですけど」
後ろから声をかけて来たのはどうやら教師のようだった。
そして、彼は遊雅に話があるらしい。
「昨日の噴水広場でのデュエルを見てたよ。素晴らしい腕前だね」
「あっ、そうなんですか?ありがとうございます!」
「そこで、だ。君に頼みたい事がある」
「えっ、頼み、ですか?」
「そう。君のデュエルの腕を見込んで、この学校のデュエル部に入部してもらいたいんだ」
「お安い御用ですよ!って言うか、先生に言われなくても最初っから入るつもりでしたし!」
デュエル部というのは特に珍しい物ではなく、現代の中学校や高等学校であれば、むしろデュエル部の存在しない学校の方が珍しいほどだ。
デュエル・モンスターズは今や国家公認の競技になっているので、当然と言えば当然なのだが。
「そうか。そう言ってくれると助かる。君達も一緒にどうだい?」
教師は遊雅の脇に立つ亜璃沙と秋弥にも同じ提案を投げかけて来た。
「えっ、私達もですか?」
「ああ、そうだ。部員は1人でも多い方がいいからな」
「僕も入りたいです!僕も、デュエル大好きだから!」
「おぉ、君も確か昨日の!なるほど、君も腕が立つデュエリストのようだから、こちらも大歓迎だよ!」
「そっか、秋弥も入部するのか……じゃあ、私も入部させてもらおうかな。私も、デュエルは好きな方だし」
「本当か!?いやぁ、ありがとう。一気に3人も新入部員が入ってくれるとは、これで、我が部も安泰だな!」
亜璃沙としては、遊雅が何かしでかさないよう見張っておく面が強かったが、この際、細かい事は気にしないで置く事にした。
それから3人は、楠田 庄司と名乗った教師に着いて、デュエル部の部室へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇
「おーいみんな!新入部員を連れて来たぞ!それも3人だ!」
部室には、既に2年生、3年生の部員が顔を揃えていた。
しかし、人数はと言うと、たった2人。部と言うよりは、同好会、と言った方がしっくり来るような状態だった。
「えーっと、これで全員、ですか?」
「残念ながら、な」
「っかしいなー、デュエル・モンスターズってすげぇ人気だから、たくさん部員がいると思ったのに」
「それはな……ウチの学校は、デュエル部弱小校として有名だからなんだよ」
「えっ、そ、そうなんですか?」
「ああ。練習試合での勝率も2割程度、公式大会では、これまで2回戦までしか進んだ事はない」
想像以上の惨状に、3人は思わず言葉を失ってしまった。
「理事長からも、これ以上結果を残せなければ廃部もやむを得ない、と言われていたんだが……そこで、君達のデュエルを目の当たりにした、と言うわけだ」
「なるほど、廃部を免れるために、部員を集めて結果を出そう、って事ですか」
「監督の言いたい事はわかりますが、俺達にも面子ってモンがありますよ!」
突然、部室に控えていた1人の男子生徒が声を荒げた。
「お、おぉ、鬼島、どうしたんだ、いきなり」
「どうしたんだ、じゃないですよ!俺と海堂のこれまでの苦労はどうなるんですか!」
「ま、まぁまぁ、5人で切磋琢磨して行けばいいじゃないか」
「俺も鬼島先輩に賛成ッスよ!そうだ、どうせならこうしましょうよ!俺と先輩で、こいつらの入部試験をするってのはどうッスか!」
「……それはつまり、俺達がデュエルで先輩方に勝てなければ、入部は認めないって事ですか?」
「そう言う事だ。最低でも俺達に勝てる程度の腕がなければ大会を勝ち進むなんて不可能だからな。構いませんよね、先生」
「あ、ああ。そうだな。2人のまだ見ぬ力が見られるかもしれないが……それじゃあ、神原の相手は俺がしよう」
その楠田の言葉に亜璃沙は驚愕した。
「えっ!?わ、私もやるんですか!?」
「当たり前だろう。君も新入部員なんだからな」
「あー、もう何でもいいや!俺はさっさとデュエルしたいから、早速やりましょうよ!」
「おぉ、そうか。それでは我が部最強の鬼島に、君の相手をしてもらおう。いいな?鬼島」
「分かりました。おい、お前、名前は?」
「南雲遊雅です。先輩は?」
「俺は鬼島 竜兵だ。悪いが手加減はできないぜ」
「へへっ、臨む所ですよ!早速始めましょうか!」
6人は場所をグラウンドの一角、デュエル用のスペースに移した。
一定の距離を取った位置に陣取った遊雅と竜兵は、それぞれデュエル・ディスクを起動させ、デッキホルダーにデッキをセットした。
ライフカウンターに4000と表示された所で、2人は声を揃えて叫ぶ。
「「デュエル!!」」
「先攻はお前に譲るぜ」
「じゃあ、お言葉に甘えて!俺は永続魔法《鳥兵令》を発動!」
《鳥兵令》
永続魔法カード
ドロー以外の方法でレベル4以下の鳥獣族モンスターが手札に加わった時、そのモンスターを自分フィールド上に表側表示で特殊召喚する事ができる。
「さらに俺は《バード・マスター》を攻撃表示で召喚!」
《バード・マスター》
☆☆☆☆ 風属性
ATK/1400 DEF/1000
【鳥獣族・効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《バード・マスター》以外のレベル4以下の鳥獣族モンスター1体を手札に加える事ができる。
「召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから《バード・マスター》以外のレベル4以下の鳥獣族を手札に加える事ができる!この効果で俺は、《ハンター・アウル》を手札に加えます!」
「なるほど、サーチ効果か」
「そして、《鳥兵令》の効果で、今手札に加えた《ハンター・アウル》を、そのまま特殊召喚!」
《ハンター・アウル》
☆☆☆☆ 風属性
ATK/1000 DEF/900
【鳥獣族・効果】
自分フィールド上に表側表示で存在する風属性モンスター1体につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
また、自分フィールド上に他の風属性モンスターが表側表示で存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。
「俺のフィールド上の風属性モンスターは《バード・マスター》と《ハンター・アウル》の2体。よって、《ハンター・アウル》の攻撃力は1000ポイントアップ!」
《ハンター・アウル》
ATK/1000→ATK/2000
「リバースカードを1枚セットして、ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードと手札を確認し、竜兵は打つ手を考える。
少し考えてから、竜兵は動き出した。
「俺は《コマンド・ナイト》を攻撃表示で召喚!」
《コマンド・ナイト》
☆☆☆☆ 炎属性
ATK/1200 DEF/1900
【戦士族・効果】
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。
また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。
「自身の効果により、《コマンド・ナイト》の攻撃力は400ポイントアップする!」
《コマンド・ナイト》
ATK/1200→ATK/1600
「何だか、遊雅の《ハンター・アウル》と似た様な効果ね」
「いや、《ハンター・アウル》は自分自身をひたすら強化する効果だけど、《コマンド・ナイト》は味方全体を少しずつ強化する効果だよ。似てるようだけど、全く正反対だ」
「へぇ~、秋弥、そんな事すぐに分かっちゃうんだ」
デュエル外の2人のそんなやり取りなど知らずに、竜兵はそのままデュエルを続行する。
「更に俺は《コマンド・ナイト》と《ハンター・アウル》を選択して、速攻魔法、《果たし合い》を発動!」
《果たし合い》
速攻魔法カード
自分フィールド上に存在する戦士族モンスター1体と、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスター以外のフィールド上に存在するモンスターを全てゲームから除外し、選択したモンスター同士で戦闘を行う。
この戦闘中、お互いのプレイヤーは魔法・罠・効果モンスターの効果を発動する事はできない。
エンドフェイズ時、このカードの効果でゲームから除外されたモンスターを全て、お互いのフィールド上に特殊召喚する。
「このカードの効果によって、選択したモンスター以外のカード、即ち、《バード・マスター》を、エンドフェイズ時までゲームから除外する!」
《バード・マスター》の姿がカードに吸い込まれ、そのまま消滅してしまう。
フィールド上には、《コマンド・ナイト》と《ハンター・アウル》だけが取り残された。
「お前のフィールド上の風属性モンスターが1体減った事で、《ハンター・アウル》の攻撃力は500ポイントダウンし、《コマンド・ナイト》の攻撃力を下回る!」
《ハンター・アウル》
ATK/2000→ATK/1500
「そうか、鬼島先輩はこれが狙いで……!」
「しかも《果たし合い》の効果で、遊雅は魔法カードや罠カードを発動できない!」
「さぁ、バトルだ!《コマンド・ナイト》で、《ハンター・アウル》を攻撃!統率の剣戟!」
襲い掛かる《コマンド・ナイト》の剣は、《ハンター・アウル》を真っ二つに切り裂いた。
「くそっ、《ハンター・アウル》が!」
南雲 遊雅
LP/4000→LP/3900
「まずは挨拶代わりに少しだけのダメージだ。俺はリバースカードを2枚セットする。そして、このエンドフェイズ時に、《果たし合い》の効果で除外されていた《バード・マスター》が戻って来る」
再び、《バード・マスター》が遊雅のフィールドに姿を現す。
それと同時に、《バード・マスター》が手に持った笛を高らかに吹き始めた。
「《バード・マスター》の効果発動!特殊召喚に成功した事で、デッキからレベル4以下の鳥獣族を手札に加える!俺は、《霞の谷の戦士》を手札に加え、《鳥兵令》の効果でそのまま特殊召喚!」
《霞の谷の戦士》
☆☆☆☆ 風属性
ATK/1700 DEF/300
【鳥獣族・効果】
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、このカードとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターをダメージステップ終了時に持ち主の手札に戻す。
「なるほど、《果たし合い》の効果を利用して、再びモンスターを展開したか。俺はこれでターンエンドだ」
「俺のターン!ドロー!」
遊雅がドローしたのは《フレスヴェルク・ドラゴン》だった。
「よしっ、来たぜ!俺は《霞の谷の戦士》と《バード・マスター》をリリースして、《フレスヴェルク・ドラゴン》をアドバンス召喚!」
《霞の谷の戦士》と《バード・マスター》を包み込んだ旋風が交わりあい、1つの巨大な旋風となる。
間もなくその巨大な旋風の中から、群青色の鱗に身を包む《フレスヴェルク・ドラゴン》が姿を現し、雄叫びを上げた。
「出た!《フレスヴェルク・ドラゴン》だ!」
「早くも遊雅のエースモンスターが出て来たわね」
「《フレスヴェルク・ドラゴン》は、風属性モンスター2体をリリースしてアドバンス召喚した場合、1ターンに1度、フィールド上のカードを1枚破壊でき、1度のバトルフェイズに2回まで攻撃できます!まずは効果で、そのリバースカードを破壊!ジャッジメント・ストーム!」
「おっと、そうはさせないぜ!リバースカード、《討ち入り》を発動!」
《討ち入り》
罠カード
自分フィールド上に存在する戦士族モンスター1体をリリースする事で、相手モンスター1体を破壊する事ができる。
「俺は《コマンド・ナイト》をリリースして、《フレスヴェルク・ドラゴン》を破壊する!」
「なっ……!?」
《コマンド・ナイト》が《フレスヴェルク・ドラゴン》に突進する。
《フレスヴェルク・ドラゴン》は羽ばたいて風を起こし、必死に抵抗するが、決死の特攻を止める事はできず、喉に剣を突きたてられて消滅してしまう。
しかし、《コマンド・ナイト》も《フレスヴェルク・ドラゴン》の鋭利な爪に貫かれて、同じタイミングで消滅してしまった。
「《フレスヴェルク・ドラゴン》!?」
「残念だったな、折角の切り札が無駄になっちまったようだぜ」
「くっ……だが、まだ……!俺は、速攻魔法《風神竜の弔い》を発動!」
《風神竜の弔い》
速攻魔法カード
自分フィールド上に表側表示で存在する《フレスヴェルク・ドラゴン》が破壊され墓地に送られた時に発動する事ができる。
デッキから鳥獣族モンスターを2体まで手札に加える事ができる。
「この効果で、俺はデッキから《クラスターズ・ファルコン》を2体手札に加え、《鳥兵令》の効果でフィールド上に特殊召喚します!」
「ちっ、次から次へと……!」
「バトル!2体の《クラスターズ・ファルコン》で、鬼島先輩へダイレクトアタック!フェザーズ・スラッシュ!」
「やらせねぇよ!罠カード発動!《聖なるバリア-ミラーフォース-》!!」
「しまった……!」
《聖なるバリア-ミラーフォース-》
罠カード
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。
竜兵を覆う様に、透明な障壁が現れる。
2体の《クラスターズ・ファルコン》は、竜兵に攻撃を仕掛けようとして、その壁に弾き飛ばされ、そのまま消滅してしまった。
「くっ……!」
「ふぅ、危ねぇ危ねぇ。これでお互いにフィールドが空ッケツになっちまったな」
「けど、遊雅はもう召喚権を使ってしまっているのに対して、鬼島先輩は次のターンでまたモンスターを召喚する事ができる。圧倒的に遊雅の方が不利だよ……」
「だが、この逆境を跳ね返せる程の力がなければ、この先乗り越えていけないのも確かだ。頑張ってもらいたいが……」
切り札の《フレスヴェルク・ドラゴン》を失ってしまった遊雅。
果たして彼は、この圧倒的不利な状況を覆し、勝利を掴む事ができるのだろうか。
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