FAIRY TAIL ある神使い達の伝説
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第十一話***『マスター』とか……
X791 フィオーレ地方 マグノリア
「気圧上昇!二酸化炭素、二酸化炭素、二酸化炭素……」
「な?炎が、消え……ぐぇっ!?かはっ……息、が?」
ナツが纏う炎が、消えていく。
二酸化炭素を周囲に大量に召喚され、酸素が周囲から消え去っているのだ。
ナツの場合、息は10分程度なら楽勝に止められるが、やはり無酸素だと動きは鈍くなる。
さらに、炎は助燃する酸素がないと、すぐに燃え尽きる。
今、ナツは、無酸素状態の上に火も消え、全力の半分も出せない状態だった。
酸素を奪い、二酸化炭素を充満させた犯人であるクウヤは、ニヤッと笑みを浮かべる。
(……よし、勝てる、かな?)
『油断はするなよ、クウヤ』
久しぶりに出てきたスカイが釘を差した。
「わかってる!風弓!」
魔力と風で構成された弓矢を呼び出す。
「トドメです!オレの勝ちとしてください!」
射った。
風の矢がナツの方へ飛んでゆき、刺さる刹那、
「おおおおおお」
ナツが吠え、
「モード雷炎竜!!!!」
無酸素に負けず、気合いで『雷を纏った』炎を纏った。
「え?雷ーーーー?」
クウヤが呟き、
「雷炎竜の…咆哮ォォ!!!!」
雷炎の咆哮を放った。
「くっ!?」
クウヤは、必死で避け、
ズドドドド
跡には、折れた木、割れた岩等が無惨に残った。
「くそォ!!あの時ほどのパワーは出ねえな」
無惨な荒れ地を作った癖に、あまりパワーが出ないなどと抜かすナツ。
クウヤVSナツの模擬戦を見ていたルーシィが
「いつの間に自分のものにしたの?」
と問う。
「今」
と返したナツに、
「すごい…」
とウェンデイが呟いた。
「あはは、やっぱり勝てなかったかぁ……降参です、ナツさん」
クウヤが、残念そうに微笑んだ。
「でも、クウヤ君、すごいよ。ナツさん彼処まで追い詰めるなんて」
ウェンデイがにこにこ笑い、クウヤを誉める。
「お世辞はいりませんよ、ウェンデイさん。炎の魔導士、相性いいんです。偶ですから」
クウヤは頭を掻きながら謙遜した。
「しかし、コイツァ思ったより深刻な問題だぞ」
離れた場所で観戦していたグレイが言う。
「元々バケモンみてーなギルダーツやラクサスはともかく、オレたちの力はこの時代についていけねぇ」
天狼組は、七年を棒に振ったのだ。
そのぶん修行もなにもできなかったため、残留メンバーにやられるのも仕方なかった。
この七年でいろいろと変わっているのだ。
このままでは、仕事も簡単な依頼しか受けられない。
「なんか一気に魔力を上げられる方法はないかなぁ」
ハッピーが首をかしげた。
妖精の尻尾
魔力を底上げする術を探し、ポーリュシカの所へ行ったナツ達を除き、ギルドの構成員ほとんど全てが妖精の尻尾に集まっていた。
皆の前で正装したマカロフが、自分は歳をとった事、そろそろ後任を育ててゆきたいことを話す。
「……という訳でワシは引退を決意した。これより次期マスターを紹介する」
この言葉で、ギルドがざわざわとし、
「本気なの?」
とカナが呟く。
「待ってくれ、まだ心の準備が……」
と、マカオが襟を直し、ワカバが
「オマエじゃねーだろ」
とツッコミをいれた。
「五代目妖精の尻尾マスター…
ギルダーツ・クライヴ!!!!」
真面目な顔でマカロフが指し示した場所では、これもまた真面目な顔をしたギルダーツ……
ではなく、笑顔のミラジェーンが手を振っていた。
「!!?」
ギルドの皆が無言に驚く。
「まさか、マスターのドッキリ……」
とクウヤが呟き、ギルドの皆が「ああ、なるほど!」という表情をする。
「んなわけあるかぃ!ギルダーツはどうしたぁ!?」
とマカロフが叫び、ミラが手紙を差し出した。
「置き手紙がありました」
「何!!?」
マカロフは封を破った。
手紙の表面にギルダーツの思念体が浮かび上がり、手紙を朗読する。
『マスター……それにギルドのみんなへ……
『マスター』……とか悪ィがガラじゃねえ』
「んなっ!!!!」
「あははははっ!」
マカロフの叫びとギルドメンバーの笑い声が響いた。
『まあ…けど……せっかくだから五代目としての仕事を二つだけしておくとする。
一つ……ラクサスを妖精の尻尾の一員と認める』
「…………」
手紙の朗読を聞き、ラクサスが驚き、目を見開いた。
「勝手な事をーーーーっ!!!!」
とマカロフが叫び、ラクサスは
「オッサン…」
と呟く。
「よかったなラクサス!!!」
「これで雷人衆完全復活ね!!!」
「ギルダーツあんたって人は……」
雷人衆の三人が喜びの声を上げ、
「オレは…その……」
とラクサスは顔を赤く染め、決まり悪そうな顔を作った。
「ぬうう……五代目がそう言うならば従うまでよ」
後ろを向いたマカロフに、恐らく一番喜んでいるだろうと予想したリサーナは
「くすっ」
素直じゃないな、と笑みを漏らした。
『二つ……マカロフ・ドレアー氏を六代目妖精の尻尾マスターに任命する』
この言葉に、またギルドの皆が笑い声を上げた。
『オレはしばらく旅に出る。気が向いたら帰るつもりだ、それまで元気でな』
そして、ミラからカナに封筒が渡される。
その中にはギルダーツのイラスト付きのカードが入っていた。
『それとカナ……また勝手をしてスマネェ。
だが……会いたくなったらいつでもそのカードに願ってくれ。
それはオレの持つカードに伝わりすぐおまえの下に』
「いらねーよ」
カナはギルダーツの言葉を遮りカードを破る。
「今まで通りでいいって言っただろ、クソオヤジ」
その顔は、嬉しそうに赤く染まっていた。
『妖精の尻尾はオレの家だ。
必ず帰る。
その時までに妖精の尻尾がまたフィオーレ一のギルドになってる事を願う。
だが、それはオレの役目じゃねえ、おまえたちの役目だ。
マスター、それがアンタの最後の仕事だ。
妖精の尻尾を再びフィオーレ一のギルドに!!!』
それで、朗読は終わり、ギルダーツの思念体わ消えた。
「ぬううう~」
マカロフが唸り、
「最後じゃと?バカタレがっ!!!!こうなったら、もう誰にもマスターの座は譲らんぞ!!!!」
叫び出す。
「死ぬまでやってやるわい!!!酒じゃっ!!!酒持ってこーい!!!」
「はいはい」
「あらら、スネちゃったよ」
「ま……一件落着だな」
「漢だーっ!!」
「相変わらず雑に使うな、そのセリフ」
「あはははははっ!!」
ギルドに笑い声が響いた。
「フィオーレ一、かぁ……ギルダーツさん、流石に、荷が重いですよ……」
クウヤが呟く。
それを耳に止めたエルザが
「そんな事はなかろう、上昇思考はよい事だ」
と声を掛けた。
「あ、エルザさん……」
クウヤがその方向を向く。
近くに居た残留メンバー達が言葉を繋げた。
「七年前ならな」
「けど、今は違う」
「剣咬の虎はもちろん」
「ラミアや天馬だって七年前とは比べものにならないくらい、強大なギルドになってるんです」
「でっかいギルドよ」
「それに比べてウチは主要メンバーが戻ったとはいえ」
「天狼組の力は実質七年前のまま」
「この七年の差は埋めようがねえよ」
「個人の魔力をとっても、ギルドの総合力をとっても、フィオーレ一なんてとても……」
残留メンバーの弱音を聞き、エルザが溜め息をつく。
「なるほど……昔のように戻るには時間がかかりそうだな」
それを聞き、ロメオが立ち上がった。
置いてある酒などには構わず、テーブルに足を乗せる。
「オレ達はもう七年も待った。『時間』なんてかけたくねーよ。
エルザ姉」
満面の笑みで、言う。
「すぐにNo.1になれる方法が、一つだけあるんだ!!!!」
エルザが頭に?を浮かべる。
「……な!!」
「ま……まさか」
「それは……」
ウォーレン・ナブ・マックスが叫び、他の天狼組も頭に?を浮かべた。
「ダメだ!!!!アレには絶対参加しねえって決めただろォ!!!!」
マカオが叫んだ。
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