美しき異形達
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第三十一話 相性その九
「お風呂だって楽しめるしな」
「薊ちゃんお風呂も好きだしね」
「ああ、大好きだよ」
実際にとだ、同じ寮生である裕香の言葉に答えた。
「疲れが取れるからな」
「それでよね」
「サウナなんかも好きだよ」
こちらの風呂もだというのだ。
「あれって身体の中の悪いものが抜けるんだよな」
「汗かいてね」
「だから好きなんだよ」
それで、というのだ。
「サウナも」
「それでなのね」
「ただ、旅館にはサウナないよな」
「確かなかった筈よ」
裕香はこれから自分達が泊まる旅館の風呂場の話にも応えた。
「そういうのはね」
「だよな、じゃあお湯を楽しもうな」
「そのお湯を楽しむ為にも」
「日焼けはしないに限るよ」
「痛いからね、本当に」
「そうだよ、じゃあこれから旅館に帰って」
そして、というのだ。
「風呂に入って、そうして」
「海の幸ね」
「それと酒な」
薊はこれも忘れていなかった。
「たっぷり楽しもうぜ」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「一応。私達未成年だから」
それで、とだ。裕香は薊にこのことを言うのも忘れなかった。
「おおっぴらには飲めないわよ」
「未成年で飲める場所って八条町だけか」
「そう、日本だとね」
「だからか」
「ええ、お酒は飲めてもね」
それでもだというのだ。
「おおっぴらにはだから」
「部屋の中だけか」
「そうなるわ」
「まあそれでもいいけれどさ」
飲めるならだ、薊あそれでよかった。それで裕香にもこう返した。
「行けるのならな」
「それじゃあね、今から」
「旅館に戻るか」
「そうしましょう」
「水着も洗って干して」
このことも忘れていなかった。
「それでな」
「さもないとね」
「潮が残るからな」
水着にだ。
「洗っておこうな」
「それも忘れないでね」
こうしたことを話してだった、一行は旅館に戻る。だがここで鈴蘭と黒蘭が七人に言って来た。
「私達はね」
「皆がいる旅館じゃないから」
「ホテルに泊まるから」
「安いホテルだけれどね」
「えっ、ホテルかよ」
二人が「ホテルに泊まると聞いてだ、薊はこう返した。
「あんた達はホテルに泊まるんだな」
「ええ、そうなのよ」
「私達は私達で楽しむことになるわ」
「だからね」
「悪いけれどこれでお別れよ」
こう話してだ、そしてだった。
鈴蘭と黒蘭は二人で岩場を後にした、そのうえで。
薊達七人は旅館に戻った、水着の上に服を着て。
旅館に戻るとすぐに温泉に入った、温泉は露天風呂だった。薊は岩のその露天風呂から外を見つつだ、笑顔でこう言った。
「やっぱり風呂はいいよな」
「薊ちゃん本当にお風呂好きよね」
「ああ、大好きだよ」
笑顔でだ、薊は一緒に入っている裕香に答えた。他の面々も入っている。
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