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元虐められっ子の学園生活

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生き方の否定

人が持つ感性や価値観は、己が見付けるものである。
ある人は些細な切っ掛けから重力に気づいた。
感性とは、一人一人違いが出るものである。価値観もまた然り。
『~が凄いよね』『~なんだけど、どう?』のように、最近でもなく自分の感性を他人に押し付けようとするケースが多々見られる。
そうした中で自分と反の合わない輩は直ぐ様コミュニティーから外されることだろう。
何故ならそれが動物社会の原則とも言える行動なのだから。
『長いものには巻かれろ』 この諺は、この例にピッタリだろう。
自分より格上だと判断してしまった人物にはへこへこと頭を下げる。
今ではそれが当たり前であると、社会通念が出来上がっている。
この様な風習紛いな事を平気で行う者ほど、回りに人は居なくなるのだと私は思う。
だからこそ私は抗おう。
それがお互いのためになるのだと信じて。









「鳴滝、今日はどうして遅刻をした?
弁解があるのなら聞いてやろう」

職員室。
その教員席の一枠で、平塚先生に説教を食らっている。

「まるで俺が意味もなくサボった見たいに言うんですね。
目撃証言でもあるんですか?
まぁ、朝はバイトと畑の世話で遅れたわけですけど」

そう、俺は今日、遅刻した。
詳しく言えば3時間目位に登校したのだ。
理由は今話した通り、新聞配達のバイトと畑の世話で遅れたのだ。

「はぁ…馬鹿を言うな。
バイトは知っているが、畑の世話など…はじめて聞いたぞ」

「仮にも生徒を疑いにかかるのは戴けませんよ。
それに嘘じゃないですし」

「ほう、ならば証拠を見せたまえ」

何か最近この言葉を聞きすぎている気がするのは気のせいだろうか?

「…もう良いです。
それで?何かペナルティは何ですか」

「なんだ、嘘だったのか?」

「疑いを張らすのが面倒になりました。
さっさとしてくれます?一応次の授業があるんで」

「…わかった。
では、放課後に職員室「無理です。今日は早く帰らなくてはならない予定があります」……ならば昼休みだ」

「わかりました」

やれやれ、俺が何したって言うんだ。
遅刻しても授業に遅れなければ問題はないだろうに。
そうして俺は自分の席へと向かうのだった。










「ぐほぅ!?」

昼休み。
何故か遅刻をした比企谷が平塚先生に殴り倒されていた。

「お前何したんだ?」

「ふぐぉ……遅刻が悪であると言う事への逆説を唱えただけだ…」

「つまり先生の怒りに触れた…と」

最近よく殴られてるけど、もしかして殴られたい人?
確かMって言うんだったか。

「ん?…全く。このクラスは問題児が多くてたまらんな。
川崎沙紀、君も重役出勤かね?」

「………(ペコ」

「最近多いが…気を付けたまえよ?」

見た感想を言うのなら銀。
腰にブレザーを巻き付け、赤色の髪止めが銀色の髪と合わさり、際立っている。
そんな女生徒は無言で頭を下げ、自分の席であろう場所へ向かい、椅子を引いて座った。

「黒の…レース」

「バカじゃないの?」

どうやら比企谷は彼女のスカートを覗いたようだ。

「お前、その内大変な目に愛想だよな」

「…ほっとけ」

比企谷は立ち上がり、尻をはらって教室を出ていった。

「鳴滝、今日は御咎め無しとする。
以後気をつけたまえ」

「素直に時間がないとは言えないんですか?
そう言う遠回しなことしているから、婚期だの恋愛だのから逃げられるんじゃないですか?」

「そ、そうなのか!?」

急に俺の肩を掴み、息を荒げて問い詰めてくる平塚先生。
うん。正直怖い。

「ま、まぁ俺の解釈ですから参考に成れば…みたいな?」

「うむ…素直か…そうかそうか…」

何かぶつぶつと呟き、顎にてを添えながら教室を出ていく平塚先生。

「ああいう所も逃す理由の一つなのかねぇ?」

俺はその場に立ち尽くし、平塚先生が出ていった先を見つめるのだった。












放課後。
俺はいち速く自宅へ戻ろうと走った。
今日は近所の人達と今朝に取った野菜を分けあって、お疲れ様と言う会をすることになっている。

「………」

――――が、どうやら腰痛を拵えたようで、
会の取締役のお爺さんがダウンし病院へ直行。
後に残された俺達は、会を開く雰囲気ではないと感じとり、
各々解散となった。

「晩飯……どうしよ」

夕飯は会の席で食べることにしていたので、用意などされていたない。

「はぁ……外食か…」

余計な出費にはなるが致し方ないと踏み、近くにあるファミレスへと向かうのだった。





「…で、何が起きた」

ファミレスに到着し、中に入ったのは良かったのだが、そこで問題発生。
家族席に座っている何時ものメンバー+二人に戸塚。
その内の中学生の男子に威嚇を放つ比企谷に何故か呆れを見せる中学生の女子。
そしてその様子を理解できない様子の由比ヶ浜とこれまた呆れている雪ノ下。

「あ、ツクモン、やっはろー」

「おう…で、何があった」

「あー!貴方は!」

再度聞き直そうと問いかけた所、帰ってきたのは驚きの声だった。
見ると中学生の女子の方が俺を指差して驚いている。

「お兄ちゃんこの人だよ!ちょっと前に助けてくれた人!」

「何!?」

いきなり叫び出す中学生の女子。

「…話が読めん」

「彼女は比企谷君の妹さんだそうよ」

「比企谷小町です!あの時はありがとうございましたー!」

声でかい。テンション高い。元気すぎ。

「すまないが、人違いだと思われる。
俺には記憶がない。君のことも初めて見る…筈だ」

「ええ!?ほ、ほら、商店街で小町がぶつかっちゃって…
怖い人に怒られてるところ助けてくれたじゃないですかー」

商店街…怖い人……ダメだ思い出せん。

「すまん、思いd「鳴滝、覚えてるよな?」…比企谷?」

「ほら、このプリティフェイスだ。
忘れることなんてある筈の無いくらいのプリティフェイスだ」

鬼気迫る顔で詰め寄る比企谷。
こいつに一体何が起こっている!?

「あ、ああ…思い出した。たった今!しっかり思い出したよ!」

「何だとお前!家の妹をたぶらかすきか!」

「お前めんどくせぇな!」

俺は少し強めに比企谷を席へと押し戻す。

「それで、何の集まりだ」

「大司君の悩み相談を聞いていたのよ」

「大志君?あぁ、君か」

「は、はい…川崎大志です…その……」

おい、何故怯えている。
そんなに俺が怖いのか?このネックウォーマーが悪いのか!
それとも目付きか!

「ちょ、ツクモン怖い。目が怖いよ」

「まるで獲物を刈る動物の目ね」

「ちょっと待てコラ。
睨んだつもりは毛頭無いぞ」

何故そこまで言われなくてはならないのだろうか。
これはもう偏見だろう。

「人は見た目で判断してはならない。
それが人付き合いの秘訣出もあるんだぞ。
近所の人もみんな良くしてくれている。
俺は悪いやつなんかじゃないぞ」

「だそうよ大志君。
彼の事は気にしないで悩みを聞かせてくれるかしら」

おのれ雪ノ下め…フォローくらいしてくれてもいいだろうが!

「は、はい。実は最近俺の姉ちゃん…川崎沙紀っていうんすけど、不良化してきたって言うか…」

「ああ、今日見たな。綺麗な女生徒だった」

「川崎さんでしょ?ちょっと怖い系って言うか…」

「お前友達じゃねぇの?」

「まぁ話したことくらいはあるけど…て言うか女の子にそう言うの聞かないでよ!
答えずらいし…」

怖い?あの女生徒が?
俺の見解ではストレス溜まってて顔に出てるだけに思うが…。

「でも、川崎さんが誰かと仲良くしてるところ見たことないかな…」

「それでね、最近帰りが遅いお姉さんがどうしたら戻ってくれるかって相談受けてたんだよ」

遅いって…俺じゃあるまいし。

「そうなったのはいつ頃かしら」

「最近です。
総武校行くぐらいだから…中学の時は真面目だったし、優しかったっす」

「詰まり、比企谷君と鳴滝君と同じクラスになってから変わったってことね」

「ねぇ何で俺が原因見た言い方するの?俺は病原菌なの?」

「そんなこと言ってないわ。
被害妄想が過ぎるんじゃないの?比企谷菌」

「言ってるから!菌って超言ってるから!」

「噛んだだけよ」

「…くっ、おい鳴滝。お前も何か言い返せよ」

「いや、強ち否定出来ないなぁってな」

「んな!お前も俺をディスるのか!」

ディス………何?

「いや、お前の事じゃなくてな。
ほれ、俺ってこんな容姿だし?過剰な噂立ってるし?
初見の人には怖がられるし?俺学校辞めようかな……」

「いや!分かった!もういい!大丈夫だから!」

「で、でもさ!帰りが遅いって何時くらいなの?」

露骨に話を剃らそうとする由比ヶ浜。
こんなところで空気を読むスキルを発動するな。
惨めになっちゃうだろ…。

「えっ?あ、最近だと5時過ぎとかなんです…」

「寧ろ朝じゃねぇかそれ…」

「ご両親は何も言わないのかな?」

「親は共働きなんで…それにしたに弟と妹がいるんであんま姉ちゃんには五月蝿く言わないんす」

両親はいないも同然…家には弟達…帰りが遅い…ねぇ?

「なぁ少年。
君の姉は本当に不良になったのか?」

「…どういうことですか?」

「君の話を聞く限り、生活態度が俺と余り変わらんのさ」

「…詰まり鳴滝さんも不良だったと?」

「どうしてそうなる。
少年、君の姉は中学までは優しかったと言ったな?」

「ええ」

「詰まり中学までの期間は優しかった訳だ」

「鳴滝君。簡潔に述べて貰えるかしら」

「黙って聞いてろアホんだら。
長年掛けた優しさってのは早々に無くならないものだ。
そして高校の一般的な解釈は『大人へと変わる場所』だ。
君の姉は高校…それも2年に上がった時からそうなり始めた。
ここまでは良いな?」

「えっと……はい」

…これは分かってない反応だな。

「高校2年ともなれば進路を決めていく時期でもある。
そこで両親の共働きと言う問題が出てくる。
共働きをすると言うことは裕福ではなく、生活に困っている家庭に良く見られる。
それ以外なんて少数だ。
そこまでに金を稼ぐと言うことは生活面、強いては子供のためと言うのが大きい。
そこでだ。子供のために使う金で最も巨額な物って何だと思う?」

「……生活費?」

「違う」

そんなものは節約していけばどうとでもなる。

「学校………通学資金か!」

「その通りだ比企谷。
学校に通うには学費が必要になってくる。
入学手数料、授業料、教材費、健康診断や怪我をしてしまった際の資金。
他にもあるだろうが一人通うだけで結構な額が飛ぶ」

「でもさ、それが川崎さんとなんの関係があるの?」

「ならばここで話を戻す。
少年。君の姉は今日、遅刻しながらも学校へと来ていたぞ。
更に、『最近多いが…』とも言われていた。
これは詰まり、遅刻はしても欠席は少ないと言うことに他ならない。
少年、君は不良がわざわざ遅刻してまでも授業を受けに来ると思うのか?」

「え……あ…」

「そこでまた進路の話が出てくる。
そこに俺と変わらない生活態度をスパイスにして見ると…」

「っ!?…川崎も何かのバイトをしている…?」

「またまた正解だ比企谷。
そしてその理由は恐らく学費を稼ぐため」

「で、でも!高校のお金は家の親が払ってる筈だし…」

「言ったろ?高校2年は進路を決めていく時期だと。
金が必要になる進路なんて進学以外にあり得ない。
ましてや優しかった人間が、今さら弟妹を置いて海外留学するはずもないからな」

まぁ、これで留学します何てことになるのなら人格疑うのだが。

「姉ちゃん……」

「勘違いすんなよ?
行程がどうであれ、結果を見ればお前たち兄弟のためなんだからな」

「そうだな。
大学とかに行くのであれば更に金がかかる。
これ以上親に甘えたくないって考えるのが妥当なとこだろ」

嘗ての婆さんがそうだったように。
人の優しさに触れて初めて気づくときだってあるんだ。
俺よりも遅かろうが川崎沙紀さんはそれに気づいた。
その優しさを弟たちに向けるようにと自ら導きだした選択なのだ。

「…でも…やっぱり心配で」

「……なら川崎さんを元に戻した方が良いわね」

「金持ちの意見は今回ばかり参考に出来ん。
庶民の意見に耳を貸さない辺り、それが浮き出ている」

「…っ!なら、貴方がどうにか出来ると?」

「へっ!余裕だね。
ついでに今のはさっきの仕返しだ」

「……なら貴方に任せるわ。
それで駄目なら笑い者にしてあげる」

……上等だ。
他人の選択を粉々にするような方法なんぞ取らせるか。















「……しまった。話しかけられない」

問題発生。エマージェンシーエマージェンシー!
コミュ症スキルが発動しました。
対象である川崎沙紀さんに話しかけることが出来ません。

「…何してんの?」

「うわっ!?」

何てことだ。
普段なら気付く距離に気づけないなんて…。
だが好都合。そちらから話しかけたのなら俺にも対応できるのだよ!

「あ、えっと…これから少し、話が出来ないか?」

「…少しならね」

イエス!掴みはOK。
後は聞くだけ聞く!

「バイトしてるって聞いたんだけど、本当か?」

「だったら何?揺すりでもかけるの?」

「かけるか!…じゃなくて…そこって時給幾らくらい?
俺も働きたいんだけど…」

「――――――――――――――――。」

「そ、そうか、ありがと!」

そう言い残して駆け出す。
嘘?!はぁ!?安!何それ!
俺の夕方バイトの方が高いぞ!
値切られてんじゃないの!?

「と、兎に角第一段階は終了。
後は彼女を尾行してバイト先を突き止めるだけだ」

ストーカーじゃないよな?
ほら、俺のやってることって結果的に彼女のためになることでもあるんだし?
私情全開の変態共とは違うしさ?









「………ここ、か」

立派なビルであります。
しかし、またもや問題発生。

「……何故いるのか聞いてやるよ」

いざ入ろうとしたところで奉仕部メンバーが揃って出てきた。

「別に、私達でも動こうと思っただけよ」

「…お前の目からは『擬態』と『不快』、『対抗』が見られる。
大方、俺に言われたのが悔しくて自分達で先に解決してしまおうって魂胆だろ」

「おお、すげぇ」

正解、か。
この女はホントに哀れだな。

「この際はっきり言っておく。
人の生き方の否定は止めろ。見ていて不愉快極まりない」

「ならその否定することも私の生き方の1つなのだけど?」

「とんちなこと言ってんじゃねえよ。
…………もういい、じゃあな」

あの女は救いようがない。
元々救おうなどと考えてはいないが。

俺はそのままビルへと入り、川崎沙紀さんがバイトしている店へと入っていった。








「あんたもアイツ等のお仲間?
正直うんざりなんだけど、いい加減にしてくんない?」

カウンターに座って早々、川崎さんからお小言をもらった。

「仲間であることは否定しない。
取り敢えず『黒霧』ってあるか?」

「…あんた酒飲むの?」

「別に問題ないよ。あぁ、ロックでね」

無言で作業に取りかかる川崎さん。
……やっぱ綺麗だな…」

「は?な、何言ってんの?」

へ?声に出てたのか!?うわ!はずかし!

「す、すまん!
いや!そう思ったことは否定しないが、声に出したことに謝罪する!」

「べ、別にいいけど…気にしないし」

「重ねてすまん…」

俺の目の前にコトンとグラスが置かれ、芋焼酎『黒霧』が注がれる。

「あの…さ」

「あんたもバイト止めろとか言うの?」

……やっぱり否定したのかあの女。

「…何を言われたのか聞いても良いか?」

「別に…」








さて、聞いたことをまとめるとこうだ。

件の三人が入店。

最初はシンデレラと人魚姫の遠回しな口論。

バイト止めろと雪ノ下が発言。

なら川崎さんの必要な金を肩代わりできるのかと聞く。

更に追い討ちで雪ノ下の親が県議会議員だのと挑発。

雪ノ下がキレる。

三人が退店。帰り際に比企谷に明日の朝5時半に呼び出しをくらう。

暫くして俺が入店。



「成る程ねぇ…比企谷から呼び出しか」

「それで、アンタもバイト止めろって言うの?」

「俺はあの女の様に人の生き方の否定はしない。
そもそも、誰にもそんな権利はないんだ」

「じゃあ何しに来たの?」

「ここで酒飲んでるのが理由……いや、嘘です睨まないで」

「…はぁ。つーかさ、今アンタの他に客いないし、そのおかしな飲み方止めなよ」

おかしいって言われた…。
まぁ、ネックウォーマーの下を引っ張って飲むようなやり方は変だよな。

「引くなよ」

そういってネックウォーマーを外し、ポケットに入れる。

「……喧嘩?」

「苛めだよ」

「………そう」

川崎さんは俺の顔の傷を見てそういった。
空かさず返した俺は信じられないと言う目を見た。

「……ングッ。はぁ。まぁ、強いて言うなら引き抜きだ」

「…は?引き抜きって…どういうこと?」

「君の弟から話を聞いて、その内容を纏めれば1つだけ取り上げられる箇所があった。
最近帰りが遅い。弟と妹がいる。心配。
そしてこの三点の問題を無くすとしたら、原因であるバイトを辞めるかなるべく早く帰ることの出来るバイトに変えるかのどちらかになる。
そして俺は人の導きだした選択をへし折るような事はしないししたくもない。
俺自身がそう言う生き方しか出来ないからな」

「…私としては、なるべく早く帰ろうと思ってる。
でもこのバイトが終わるのは何時も遅いから」

「分かってる。
俺も普段は遅いから。
具体的に言うなら朝の5時。これも川崎さんと変わらない」

「…アンタもバイトしてるんだ?」

「結果を見ればな。
行程を見れば掛け持ちなんだよ俺」

朝の新聞配達だろ?夕方のレストランで調理のバイトだろ?
夜間の工事現場…。これ普通の奴がやったら3日も持たないな。

「その掛け持ちの1つに抜擢しようと思った。
そこはここよりも早く帰れるし、おまけに給料がここよりも高い。
やることなんて簡単だし、店長も爽快だ(二重の意味で)」

店長笑顔でスキンヘッドだしね。

「……そう言うこと。
何でアンタがそこまですんの?関係ないじゃん」

「気になった……んー違うな…やっぱりあれだ。
家族の有り難みに気付いたからだな」

「は?」

「いや、俺がじゃなくて川崎さんがだよ。
俺がさっき、心配の言葉を発したとき、一瞬だけ苦い顔しただろ?
それで確信した。だからさ、俺の所に来いよ」

「…………それ、プロポーズ?」

プロポーズ……?
『俺の所に来いよ』……///////!?

「ち、違っ!そうじゃなくて!
俺が働いてる店にって意味で!」

「ふふっ。良いよ分かった。
取り敢えず今日は最後までやるから」

お、おお。分かってくれた。
その代わりに何か恥をかいた気がするが…。

「顔赤いよ?」

「こ!これは!酒のせいだ!そうだそうに違いない!」

「そう言うことにしとく」

くっ!この先からかわれ続けるのか俺は!
何て日だ!






後日、川崎さんはバイトをやめた。
その後、夕方のバイト先に川崎さんを連れていき、店長と顔を会わせた瞬間に即採用をもらった。
その店長のテンションの高さに川崎さんが苦笑いだったことを記しておく。
雪ノ下は涼しい顔をしていたが、目を見たら悔しがっていることが分かった。
次の日の部活は空気が悪かったこともここに記す。














「ねぇ、アンタ鳴滝なんて言うの?」

バイト中、少し空いた川崎さんが厨房にいる俺に声をかけた。

「九十九だけど、どうかしたのか?」

「ふーん。なら今度で良いから料理教えてよ。
大志達に作ってやりたい」

おお!良い心がけだよ!良い案だよ!

「あぁ、良いぞ」

「ん、頼んだよ九十九」

「おう…………ん?今何て……」

今九十九って呼んだ?え?何で?

「さあね。ほら仕事しなよ」

「ちょ!ま!」

それ以降、川崎さんから九十九と呼ばれるようになった。
その後、大司と被るから沙紀で良いと言われ、お互いに下の名前で呼び合うこととなった。

また、店の人達からは何故か囃し立てられたのだが、理由がわからなかった。

そう言えば所見で怖がらなかったのって川崎……沙紀さんが初めてだな。 
 

 
後書き
今回はストーリーを大幅改変。
更新遅れてすみませんでした! 
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