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騎士の想い

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第九章


第九章

「幾ら何でも」
「城に出られると」
「このまま城に留まっても同じです」
 しかし彼はその彼等の言葉に微笑んで返すのだった。
「ですから。ここはです」
「行かれるのですね」
「それでは」
「そうです。行きます」
 また言う彼だった。こうして話は決まった。
 イークレッドは夜に城を出る。その時であった。
 己の軍と共に城を出る彼にだ。エヴァゼリンが来たのであった。
 彼を気遣う顔で見てであった。言うのである。
「御気をつけて」
「御心配なく」
 その彼女の馬上から微笑んで返す彼だった。既に武装しておりその後ろには軍がある。見れば誰もが毅然とした顔をしていた。まさに戦場に向かう顔をしている。
「それでは今から」
「御武運を祈ります」
 こうその彼に告げた。
「どうか生きて」
「私は必ず生きて帰ります」
 イークレッドは微笑んで彼女の言葉に返した。
「では明日また」
「はい、勝って帰って下さい」
 こう言ってであった。戦いに赴く彼だった。その夜に森に潜み朝を迎えた。
 朝になるとだった。敵軍が城を囲んだうえで総攻撃を仕掛けてきた。それはこれまでの戦いとは比較にならないまで激しいものだった。
「くっ、この数だと」
「もたないぞ」
「攻城兵器もある」
 それも目に入っていた。しかも目に入るその数はかなりの数だ。
 それが一斉に攻撃を浴びせてくる。威力もかなりのものだった。
「このままでは」
「まずいぞ」
「やはりそれを考えれば」
 ここで、であった。彼等は森を見た。
 そこにこそ彼等の希望があった。そのイークレッドがである。
 敵の攻撃がいよいよ本格的なものになる。そしてそれが今まさに城に完全に向かおうとしていた。その時である。森から歓声が起こった。
「よし、敵の本陣を目指す!」
「はい、それでは!」
「このまま!」
 こうして彼が率いる軍は一気に敵の本陣を衝いた。それは後ろから攻め敵陣を一気に突き崩した。数は僅かだったが精強であり完全に不意を衝かれたこともあり敵軍は総崩れになった。戦いは帝国の援軍を待つまでもなく戦いはこれで決まったのである。
 イークレッドは負傷したがそれでもだった。この武勲は見事であった。
 それは当然皇帝の耳にも入り。彼はあることを考えたのだった。
「イークレッド=フォン=ローゼンマイヤーを」
「どうされるのですか?」
「彼を」
「その武勇は見事だ」
 まずはそれを褒め称えるのだった。
「怪我は大丈夫だな」
「はい、回復に向かっています」
「命に別状はありません」
「そうか。ならばよし」
 怪我のことを聞きさらに頷く彼等だった。
「それではだ」
「それでは?」
「彼をどうされるのですか?」
「東方の辺境伯に命じる」
 そうするというのである。
「よいな、辺境伯にだ」
「何と、辺境伯にですか」
「それはまことですか?」
「皇帝の名にかけての言葉だ」
 毅然として返す皇帝であった。まずはこう言うのであった。
 
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