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騎士の想い

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第二章


第二章

「それで如何ですか?貴方が音楽で戦われるというのは」
「わかりました」
 元より下がるつもりはなかった。やはり毅然として返すイークリッドだった。
「それではお受けしましょう」
「私は竪琴を使います」
 貴婦人は悠然としたまま述べてみせた。
「貴方はどうされますか?」
「竪琴です」
 彼もそれだというのであった。
「同じものでお受け致しましょう」
「それで貴方の姫の名誉を守られるというのですね」
「そうです」
 まさにその通りだというのだった。
「その通りです。それでは」
「早速勝負を」
 貴婦人は自信に満ちた声で勝負をはじめるとした。こうして宴は中断され竪琴の勝負に入った。すぐにイークリッドのところに竪琴が持って来られる。
 しかしであった。ここで。エヴァゼリンがその彼に気遣う顔で声をかけてきた。
「あの」
「何でしょうか」
「何もそこまで」
 その顔で彼に対して言うのだった。
「されなくとも」
「これは当然のことです」
 しかしイークリッドは微笑んで彼女に言葉を返した。
「これはです」
「当然だと仰るのですか」
「そうです」
 まさにその通りだという。
「何故なら私は姫の騎士だからです」
「だからだというのですね?」
「ですから姫の為に竪琴を取ります」
 それが理由だというのだ。
「それだけです」
「ですが貴方は竪琴は」
 エヴァゼリンはその彼に対してさらに言う。それは問いになっていた。
「お使いには」
「それはですが」
「笛だった筈です」
 彼の得意とするものはそれであった。笛の使い手なのだ。
 それに対して竪琴は拙い。それで彼女は心配しているのだ。
「それでは貴方にとって」
「相手の望むもので受けて立つ」
 しかしここでも微笑んで言葉を返す彼だった。
「それが騎士です」
「騎士ですか」
「そしてその勝負には必ず勝つ」
 彼はこうも言った。
「私は姫の名誉を守る為に勝ってみせます。御覧になっていて下さい」
「それでは」
「お任せ下さい」
 確かな言葉を出しながら今竪琴を手に取った。
「姫の名誉は必ず守ってみせます」
 こう告げて勝負に向かうのだった。宴が開かれていた場所に戻るともう貴婦人がいて竪琴を手にしていた。彼女は回りに宴に来ている者達を遠巻きにしながらそのうえで彼に対して声をかけてきた。
「下がられなかったのですね」
「何度も言いますが私は騎士です」
 その竪琴を手にして応えるイークリッドだった。
「だからこそです」
「騎士だからですか」
「私は姫の騎士です」
 こう貴婦人にまた言った。
「それ以外の何者でもありません」
「ではエヴァゼリン姫の騎士よ」
「はい」
「見せてもらいましょう」
 こう彼に言うのであった。
「その御心を」
「それでは」
 二人は竪琴の勝負に入った。すると。
 イークリッドの竪琴は確かにたどたどしい。それに対して貴婦人のそれは優雅で見事なものだ。その差は聴いただけですぐにわかるものだった。
 
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