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東方喪戦苦【狂】

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二十三話 思考

ボスもとい鬼隆は、身構える。


いきなりこの空間に入ってきたこの男、新月狂夜に。



本来この空間への侵入は、不可能なのだが…


この男ならやはり無理は、きくのだろうか?

「…やっぱり規格外…裕海もこいつを殺すなんてよく言うぜ…」
鬼隆は、目を細めて言った。


「…」
狂夜は、無言で口元をくっとあげて微笑する。


「…ちっ」
鬼隆は気に入らなかった。

この男が。


恵まれた才能。
最高峰の身分。
約束された勝利。

――ふざけやがって。

――ぶち殺す。

鬼隆がそう思ったとき、



既に行動は、終わっていた。


狂夜の頭が身体から離れた。




ブチッと筋肉繊維の切れるような、醜い音がなる。



「…!?」
白夜は、驚きを表にした。

――狂夜は、いつの間に殺されたのか。


しかし鬼隆は、白夜の驚きなど知らずに頭を抑える。

(これ程までとは…)

ふと裕海の言った台詞を思い出した。






『その能力は……使い勝手が悪すぎる。
下手をすれば殺すと思っただけで殺せる。
……まぁ全ては、思考力次第なのだが…
君が勝てると思った相手には、必ず勝てて、
君が少しでも勝てないと思ったら必ず勝てない。』



鬼隆は、頭から手を放し、自分の手を開いたり閉じたりした。



そして、しばらくして手を戻すと、

狂夜にゆっくりと近づいた。


――狂夜(こいつ)がこの程度で死ぬわけがない。


――身体の全ての器官を…








「ボロボロに壊してやらないと…」


そして鬼隆は、狂夜の遺体の消滅を思考(イメージ)した。


すると、どうだろう。



狂夜の身体は、まるで最初から嘘空だったみたいに無くなった。



――勝ったッ!!

鬼隆は、静かに笑い出す。


確実に勝利を手にしたように…






しかし鬼隆(かれ)は、知らない。



自分が狂夜にほんのちょっとでも勝てないと思った事に。



「はっはっはっ」
鬼隆の後ろで誰かが笑っていた。



喜ぶ鬼隆を嘲笑うかのように。


まるで最初からここに居たように。



鬼隆は咄嗟に振り向いた。


しかし鬼隆は、気づくのが少し遅かった。


狂夜は、魔法を放つ。

『Dream of Crimson(紅の夢)』
鬼隆は、嘘みたいな狂気に蝕まれた。

鬼隆は狂夜から一歩下がる。


「おや、完璧に蝕まれなかったか。」
狂夜は、落胆した顔を見せる。


「く、くそ…てめぇ…な…にを…した…」
――頭が痛い。まるで割れるように…

鬼隆は、そこで気がついた。





思考(イメージ)が出来ない。



ちゃんとした思考のみならまだあるのだが…



まるで戦闘の思考力を奪われたように…


「ぐ…ぎぎ…」


「すまねぇな。『(クリムゾン)(ドリーム)』は、やり過ぎたが…」
狂夜は、淡々という。



「その能力、ちと脅威になりそうなんでな……」

狂夜は、妖力を形状にして刀を創る。


「終わらせてやるぞ…」


狂夜は、笑って刀を構える。


完全に狙いを定めてその刀で鬼隆を切りつけた





全力を持って。











しかし、その斬撃は、止められてしまった。





鬼隆の体内にいた二人によって…





驚く狂夜を見て、


液体人間は、クスクスと笑った。 
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