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美しき異形達

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第三十話 南海においてその八

「完全な山道で」
「普通の人は通れないのね」
「それで言葉も違うから」
「日本語じゃないのね」
「縄文時代の言葉らしいわ」
 そうした文化らしい、山窩のことはあまり知られていないことも多いという。柳田國男が調べたことであるが。
「色々とね。違うのよ」
「私達と」
「平地の文化とはまた違うの」
 菖蒲はこう表現した、自分達の文化を。
「そうした人達がね」
「まだおられるのね」
「けれど奈良にはね」
 いるかどうかはわからないというのだ。
「私も興味があるけれど」
「じゃあお会い出来たら」
「お話したいわね、一度でもいいから」
「そうなのね、菖蒲ちゃんも」
「日本には色々な人がいるのよ」 
 その平地の人達だけではないというのだ。
「そのことを知ると面白いから」
「そういえばね」
 ここでだ、向日葵が周りを見回しながら言った。白浜を。
「ここも神戸とはまた違うわね」
「ああ、神戸とよこすまも違うぜ」
 薊がその向日葵に答える。
「結構以上にな」
「そうよね、同じ日本でもな」
「各地で違うわね」
「大阪なんかかなり独特だぜ」
 薊はこの街のことにも言及した。
「あそこはとりわけな」
「うん、大阪はね」
 菊も薊のその言葉に頷いて答える。
「関西の他の地域と比べてもね」
「違ってるよな」
「個性が強いのよ」
 特に、というのだ。
「関西それぞれ個性があるけれど」
「その中でも本当に際立ってるな」
「だからこそ魅力もあるのよね」
「色のイメージだと黒と黄色かな」
 薊はすぐにこの二色を話に出した。
「それも縦縞の」
「そのまま阪神ね」
 菫は薊にこう返した。
「それだと」
「実際そのイメージがすぐに湧いたんだよ」
「やっぱり阪神ファンの多い場所だから」
「というか大阪の人の殆どが阪神ファンじゃない?」
 向日葵がこう菫に返した。
「むしろ」
「そうね、言われてみれば」
「難波に行けば特にね」
 大阪の何処でも阪神ファンばかりだがその中でも難波は濃い、その濃さはとにかく凄く優勝の時はかなりの状況になる。
「道頓堀もあって」
「優勝の時は皆飛び込んで」
「実は私の家族も」
 ここで言ったのは菖蒲だった。
「お父さんが飛び込んだことがあったらしいの」
「あそこに?」
「そう、お父さんも阪神ファンだから」
 それで、というのだ。
「しかもかなり熱狂的だから」
「何で川に飛び込むんだろうな」
 薊はその行動にだ、首を傾げさせて言うのだった。
「あれがわからないんだよな、あたし」
「横須賀にそうしたことをする方は」
「いないな」
 こう桜に答えた。
「見たことないよ」
「そうですか」
「横浜も滅多に優勝しないしな」
 前回の優勝の時に三十八年ぶりと言われた、それからまたかなり歳月が経っている。
「正直巨人の優勝なんか見たくないけれどな」
「その巨人も万年最下位になっていますね」
「それはいいことだけれどな」
 薊もアンチ巨人なのでこのことはどうでもよかった。 
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