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元虐められっ子の学園生活

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断罪の復讐劇

体育とは、運動に対しての経験を積む物である。
全ての学生が生涯にわたり運動やスポーツに親しむのに必要な素養と、
健康・安全に生きていくのに必要だとされるものだ。
それは身体能力や知識など、成長と共に身に付ける重要な要素と言える。
しかし近来の学生体育において、『体育は遊びの時間である』と言う学生間の認識が強まっている。
確かにそれで成長していく事は間違いではないが、その心情が本来の授業目的の妨げになっていることは否めない。
授業とは本来、学生が未来に必要となる知識を取り入れる場所であって、遊ぶ場所出はないのだ。
並ば放課、又は放課後等はどうなのだろうか。
少ない放課時間を使って勉学に勤しむ者が居ても、周りは気にせず、酷いときには邪魔をする始末。
放課後でさえも、宿題や自習、復習が在るにも関わらず、やはり解放されたと遊びに使う始末である。
そんな彼らが意味嫌うテスト習慣になれば、勉強が出来る者へすがり付き、
醜い醜態を晒すことは毎年恒例と言っても過言ではない。
しかし、彼らはその事を理解しないだろう。
義務教育期間は中学で終わっているのだ。
要約すれば彼らは未来を舐めている。
結論を言おう。
勉強をする気がないのであれば、今すぐ退学しろ。










「よぉしお前ら!二人組作れ!」

さて、体育の時間だ。
高校2年ともなれば体育に選択の科目が追加される。
この学校ではサッカーとテニスだ。
個人的にはドッヂボールがやりたかった。
嫌いなやつにだけぶち当てるのって気分良いよね。

「先生、チームの人数が合わないので俺、彼処でリフティングしてて良いですか?
見ているだけではボールを蹴ると言う経験は積めないと思うので」

「流石だな鳴滝。良いぞ。頑張れよ」

この学校の先生は、その殆どが俺の見方をしてくれている。
どうやら学校中に広まった噂を確かめるべく、教師数人で俺の行動を監視したようだ。(まぁ、一時期バイトがダメになりそうだったが)
そして普段の生活態度、成績、家庭問題等を考慮され教師たちは、
俺を贔屓にならない程度に支援する事を決定したそうだ。
だから俺の顔を見ても怯えないし驚かない。
なんと嬉しいことだろうか。

「…………」

1、2、3、4、5、6、7、8、9………。

「おお!凄いじゃないか鳴滝よ!」

「っと…材木座か。どうした?」

リフティングを続けていると材木座が話しかけてきた。

「なに、やけに上手いと思ってな。
サッカーをやっていたのか?」

「残念だが、生まれてこの方奉仕部以外の部活に入ったこともなかったよ」

「そうか。
並ば我にも教えてくれんか?
上手くなり、奴らを見返す手札が増える!」

授業意欲が高いな。
動機は分からないこともないが、努力しようとしているのは分かる。

「わかった、付き合おう」

そして今日の授業は材木座とリフティングの練習をすることになった。












放課後である。

「無理ね」

「いや、無理って…お前さ…」

部室にて、比企谷が来たと思ったら真っ先に雪ノ下の方へと向かい、
『テニス部に所属したい』と言い出した。
何でも戸塚彩夏(とつかさいか)なる者の実力と、テニス部の戦力向上に貢献したいとのことだ。

「無理なものは無理よ」

「いや、要は俺がテニス部のカンフル剤になれば良いわけで…」

「貴方に集団活動が出来ると思っているの?」

…もっともである。
まぁ、実際比企谷がここまで言っているのだからやらせても良いのではないかと思うのだが、
その反面、普段の比企谷からして何かしら別の目的がありそうなのだ。
何時もは相手の目を見て判断するのだが、比企谷の場合は濁っていて読み取ることができない。

「貴方みたいな生き物、受け入れてもらえる筈がないでしょう」

いや、それは言いすぎだと思うんだが。

「もっとも、貴方と言う共通の敵を得て、部員が一致団結することはありかもしれないわね。
けれど、はその努力は排除に向けられるだけで自信の向上に向けられることはないの。
問題の解決にはならないわ。ソースは私」

「成る程なぁ…え?ソース?」

「私、帰国子女なの。
中学の時に編入したのだけど、学校中の女子は私を排除しようと躍起になったわ。
だけど、私に負けないように自分を高めようとする人間は居なかった…。
あの低脳ども…」

うわ、何されたんだ?
俺みたいに肉体的ダメージじゃないだろな…。
靴とか隠すとか?
でも最近の女子は過激なところがあるからなぁ…。

「うへぇ……戸塚の為にも何とかならん物かねぇ…」

「誰かの心配をするような人だったかしら?」

「いや、誰かに相談されたの初めてだったもんで、ついな…」

「何でもかんでも聞いて、力を貸すばかりが良いとは限らないわ」

「なら、お前ならどうする?」

「…そうね、全員死ぬまで走らせて、死ぬまで素振り、死ぬまで練習…かしら」

鬼ですか。
それ確実にリタイアする奴出てくるぞ。

"ガラッ"

「やっはろー!今日は依頼人を連れてきたよー!」

由比ヶ浜か。
となるとその後ろにいるのが依頼人か。
……誰だ?

「あ、比企谷君」

「戸塚…」

「比企谷、どうしてここに?」

「いや、俺は部活だけど…お前はなんで」

成る程。彼女……いや、彼が戸塚彩夏で合っているようだ。
と言うか比企谷は随分親しげだな。何があった?

「いやーほら、何てーの?私も奉仕部の一員じゃん?
だからちょっとは働こうと思って!
そしたら彩ちゃんが困ってる風だったからつれてきたー!」

「由比ヶ浜さん」

「あ、ユキノン!別にお礼とか良いから!
部員として当然の事をしただけだし!」

「由比ヶ浜さん。
貴方は奉仕部の部員ではないのだけれど」

「…違うんだぁ!?」

あ、違うんだ。
てっきり黙認承諾だと思ってたよ。

「ええ、入部届けを貰ってないし、顧問の承諾もないから部員ではないわね」

「書くよ!入部届けぐらい何枚でも書くよ!うえええん!」

俺、書いたこと無いんだけど。

「で、戸塚彩夏くんだったかしら…」

「あ、うん」














「良いでしょう。貴方の技術向上を助ければ良いのよね」

「は、はい。僕がうまくなれば部員のみんなも頑張ってくれる…と思う」

ふむ、依頼内容はテニスの実力向上か。
だが実力ってのは1日やっただけで身に付くほど簡単ではないとコイツらは分かっているのだろうか?

「んで?どうやんだよ」

「あら、さっき言ったじゃない。覚えてないの?」

「おい…まさかあれ本気で…」

「今日から鬼教官と呼んでやろう」

「不名誉な言い方は止めてくれるかしら。不愉快だわ」

「そーですか」

んー、未だに雪ノ下との仲はうまくいっていない。
まぁ出会いが出会いだったからしょうがないとは思うのだが。
何とかならん物かねぇ…?













「うぁっ」

練習を初めてから10分ほどたった。
走り込み、腕立て伏せ、腹筋に素振り。
流石に死ぬまではやってはいないが、結構疲れるペースである。
そして今、横振りの打ち返しを練習している際、戸塚が転んだ。

「彩ちゃん、大丈夫!?」

「うん、大丈夫だから…続けて」

何かもう自暴自棄になっている気がするのは気のせいなのだろうか?

「まだ、やるつもりなの?」

「うん…皆付き合ってくれるから、もう少し頑張りたい」

「…そう。由比ヶ浜さん、あとお願いね」

「えっ、うん」

そう言い残してコートを出ていく雪ノ下。

「素直じゃねぇー…」

「僕が上手くないから、呆れられちゃったかな」

「いや、雪ノ下は喜んでたぞ。あと心配。
大方、緩んだ顔が見られたくないから…多分救急箱でも取りに行ったんだろ」

「そ、そうだといいな…」

そう、雪ノ下が出ていく際に見えた目には『嬉々』『心配』が浮かんでいた。
顔に出てないだけでここまで遠回しになるのはなんと言うか…。

「そうだよ!
私の時だって、お菓子作り手伝ってもらったし!」

「まぁ、頼ってきた人間を見捨てないってのは分かるな。
お前の料理に付き合うくらいだし」

「むぅ!どー言う意味だ!」

「あはは…」

「あぁー、テニスじゃん」

ふと、コートの外からそんな声が聞こえた。
振り替えれば真っ先に目がいく憎き男の姿。

「ねぇ、あーしらもここで遊んでいい?」

「三浦さん、僕達は遊んでいるわけじゃなくて」

「はぁ?何?聞こえないんですけどー」

「その年で難聴かよ。耳鼻科行け」

「……っ!鳴滝…!」

俺をみるや、顔をしかめる金髪。
どうやら先日の教室での一件を根に持っているようだ。

「あー、ここは戸塚が許可とって使ってるものだから。
他の人は無理なんだ」

「は?あんたも使ってんじゃん」

「いや、俺は練習に付き合ってて、業務委託っつーか、アウトソーシングなんだよ」

「はぁ?何意味わかんない事言ってんの?キモいんだけど」

「意味がわからないのであれば調べてこい低脳。
お前らと話すだけで練習時間の無駄だ」

「ま、まぁまぁ、喧嘩腰になるなって。
皆でやった方が楽しいしさ」

「「…皆…?」」

「皆だと?
あぁ、確かに皆だよな。
人を傷つけて陥れて。一人を犠牲に皆は楽しめる。
お前みたいな奴が考えそうな意見だよ。
お前ら申請書の内容知らないのか?
このコートの使用目的、使用人数、責任者。
これらに該当する事項を書いて初めて使用できる。
低脳にも程があるだろ」

「いや、別にそう言うつもりでいったわけじゃ無いんだ。
何かごめんな?何か悩みがあるなら相談に乗るからさ」

ふざけた奴だな。
未だに俺が誰なのか気づきもしない。
それほどに興味がないのか、照らし合わすことに遺憾があるのか。

「葉山。お前の優しさは嬉しい。
性格がいいのもよくわかった。
サッカー部のエースでお顔まで宜しいじゃないですか。
さぞかし御モテになるんでしょうなぁ…」

「な、何を言って…」

「そんな色々持ってるお前が、何も持っていない俺からテニスコートまで奪う気なの?
人として恥ずかしくないの?」

「その通りだ!葉山ナリガシ!
貴様のやっていることは、人輪にも劣る最低の行動だっ!」

材木座。
お前は黙っていなさい。
ややこしくなるから。

"パコンッ""バシュッ"

不意に、葉山側からボールが飛んできて、俺達の近くにあるネットに当たる。
所謂コードボールだ。

「ねぇ隼人、あーしいい加減テニスしたいんだけど」

コイツ…!

「…じゃあこうしよう。
部外者同士、俺とそっちの誰かが勝負する。
勝ったら今後の昼休み、ここを好きに使えるってことで…」

「話を聞かない奴の典型だなお前は。
この世全ての申請書に土下座してこいや」

「…確かに申請書は必要だ。
だけど、俺達はここの生徒なんだ。
使ってはいけない道理はないはずだよ」

「道理と囀ずるか…(殺す…!)
比企谷、俺が殺る。間違えた、殺る。
あれ?直らないな、殺る殺る……もういいか」

「お、おう。頼んだ」

さて、ここで少し話をしよう。
俺が虐められてきたことはご存じの通りだ。
そんな俺はある日を境に虐めてきた奴らを返り討ち、もしくは復讐を遂げてきた。
しかしだ、そんないじめっ子達の内の一人だけ、復讐できなかった奴がいる。
それがコイツ、葉山隼人だ。
俺が高校2年になり、同じクラスになったことで認識し、
今日と言う日を待ち望んでいたのだ。
高校ともなると退学とかあるからさ…中学とは勝手が違うんだよね。

「何それ!超面白そう!
ならいっそ混合ダブルスにすりゃいいじゃん!
あーし頭良い!」

「成る程、これが脳筋と言うやつか。
うざさゲージを振り切る心境だ」

「それでいいかな?」

「良いんじゃないの?
俺は一人で殺るけどな…また間違えた」

「……わかった」













「おい、大丈夫なのかよ」

比企谷が駆け寄り、声をかけてきてくれる。

「あ、私でようか?
これでも部員だしさ…」

「そうなるとお前一人が集中砲火を受けることになるぞ。
それはこのゲームだけの話ではない。
今後の学生生活においての話だ」

「えっ……う…」

「別にお前は間違ってはいない。
それに、これは俺がしたいからするんだ。
だから大丈夫だ」

「……頑張ってね!」「頑張れよ」

「おうとも」

そして俺はコートに入る。
退治するのはやはりと言うか葉山と金髪。

「あーし経験者なんだけど、手加減とか出来ないから」

「手加減出来ないほどの技術不足か。
経験者(笑)」

「くっ!戸塚!合図して!」

「え、はい。0-0、ゲーム!」

さて、挑発で相手は御冠。
俺は水面のごとく冷静。
でも知ってるか?水面は静かでも、水中では荒ぶってんだぜ?

「はぁっ!」

金髪からのサービス。
遅い、遅すぎる。

「笑わせんなぁ!」

"ズバンッ!"

俺は金髪の足元を狙って打ち返す。
金髪は反応できず、ボールは左足を掠めてフェンスに当たる。

「0-15」

「これで経験者?話にならんな」

「あり得ないし…」

「由美子、ドンマイ」

「鬱陶しいラブコメ繰り広げてないでさっさとしろや。
時間すくねぇんだよ」

「…次から本気で行くから」

そう言って金髪はボールを上に投げる。

「ふっ!」

パコンッ!と言う音と共に、先ほど全く変わらない勢いのボールが飛んできた。

「変わんねぇよボケがぁ!」

再び金髪の足元へ打ち返す、と言うことはせず、
今度は逆サイドのライン上に打ち返した。
当然とれるはずもなく、誰一人動けないままフェンスに当たった。

「0-30」

「ウソ…」

絶望した面持ちの金髪はその場に座り込んでしまった。
早すぎだろ。

「由美子!……………ここからは俺が一人でやる。良いよね」

「どーぞごじゆーに」

2対1でも勝てない相手に一人で挑むとか、
心が繋がっているとか言う最近のアットノベルスのノリなのかねぇ?

「はぁっ!」

再び再開して葉山のサーブ。
呆れるほどに直線で、なんの捻りもないノーマルサーブ。

「ほい」

俺は空高くに打ち上げる。
空には太陽。それが意味することは…

「なっ!眩……」

目潰し。俗に言う太陽拳だ。
葉山はボールの位置を見誤り、空振り。

「0-45」

「おいおい、今んとこ全部リターンエースなんだが。
やる気あんの?」

「くっ……卑怯な手を…!」

「は?卑怯?何を根拠にそんなことを言うのか。
もしかして負けたときの言い訳か?
無様だな。仮にそうでないとしても決めつけは総計だと思うがな」

「…君はこんなプレーで楽しいのか!」

「楽しい?何勘違いしてやがる。
お前、俺らが楽しんでテニスしてたとでも思ってんの?
戸塚の膝を見ろよ。盛大に転んで怪我をした。
それほどまでに真剣だったんだよ。
それをお前らと来たら…まるで自分が正しいかのように言いやがって」

「だが練習だって皆が居れば…」

「皆、皆、皆…お前はウサギか?
一人だと死ぬのかよ。
お前はテニスをするのに必要な人数知ってるか?」

「…4人だろ」

「違う、5~8人だ。
審判2人、プレイヤーが2~4人、判定に2人。
それだけ居ればゲームは成り立つ。
だがな、戸塚の場合は一人なんだよ。
それを皆とやらの複数人で引っ張り凧に練習?
殺す気かよ。むしろお前が死ね」

「あ………」

「そしてお前ら。
今日の2時間目の放課中、サッカー部は国立を目指していると、
そう言っていたな。
西高のサッカー部は同じように国立を目指し、
昼休みも返上して練習に勤しんでいる。
それをどうだお前らは?
人の練習邪魔して?部外者だのキモいだの罵倒して?
挙げ句の果てには皆で仲良く?
できるわけねぇだろ」

…長く喋りすぎた。
昼休みは後12分…か。

「さっさとサーブ打てよ。
お前らのせいで戸塚の練習時間が無くなる」

「………止めとくよ」

トボトボとラケットをもとあった場所へと戻し、
テニスコートを出ていった葉山。
ギャラリー達も、それに続いて撤退していく。

「戸塚、時間は少ないが、少しだけでも練習しよう」

「あ、うん!」

俺は戸塚に提案し、ラケットを手渡した。

「お前、良かったのか?」

「何が?」

「いや、あんなことしたらまた虐めに合うんじゃ…」

「比企谷。
俺は今まで虐めてきた奴らを返り討ちや逆襲で方をつけてきた。
そして今日、長年の復讐も遂げることができたんだよ。
少々物足りなかったけど」

「それって…まさか」

「おう、葉山隼人は俺の中学時代の虐めっ子だ」

その時、優しい風が吹いた気がした。  
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