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ソードアート・オンライン~赤き皇が征く~

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第一章
  str4『星無き夜のアリア①』

「はーい! じゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」

 2022年、12月3日、午後四時。

 SAOデスゲーム化から一か月近くが経過した、その日。アインクラッド第一層、迷宮区最寄にして最後の大規模な街、《トールバーナ》の噴水広場で。

 正式サービス後初の、アインクラッド第一層ボス攻略会議が、開始された。周囲を見渡せば、集まったプレイヤーは思いのほか少ない。二レイド組めるのだから四十八人×二組が最大人数と考えていいのだが、ここに居るのは一レイドの上限にも満たない数――――クロスとシャルを含めて、全部で四十六人。

 少ない。

 先ほども思ったが、βテスト時代の記憶と比べて圧倒的に少ない。βテスト時、最初のボス攻略戦に参加したプレイヤーの数は全部で五十人以上だった。

 今は、それより十人近くも少ないのだ。

 やはり、デスゲーム化後初めてのボス戦であり、強力なモンスターとの戦闘で命を散らす可能性が高いことが、プレイヤー達の心理に歯止めをかけてしまっているのだろうか。

 そんな中で、ここに集まったプレイヤー達は、全員が自らを犠牲にしてでもデスゲームを解放しようとする勇気ある者達……ではなく、ネットゲームの常識に照らして、初のボス戦に参加することで経験を得よう、あわよくばレアアイテムも手に入れよう、という利己的な集団だろう。

 クロスは性質上《恐怖》は感じないし、そもそもボス戦に参加する理由の大半はシャルに誘われたから、という所だ。彼女に声を掛けられる前から一応は参加を決めていたが、それも「とりあえず出ておいて損はないだろう」という、抽象的なものだった。レベル上げの一環でもあったが。

 それと比べれば――――それがいくら小汚いモノであると言っても、確固たる自らの意思を以て参加しているこの場に集ったプレイヤー達の、なんと素晴らしい事か。

「みんな! 今日は俺の呼びかけに応じて集まってくれてありがとう!! 知ってる人もいると思うけど、一応自己紹介しとくな!!」

 司会・進行を務めるのは、第一層迷宮区の最上階で少しだけ会話し、共に偵察を行った、青髪の青年。

「俺はディアベル!! 職業は、気持ち的に《騎士(ナイト)》やってます!!」

 青年――――ディアベルが、昨日クロス達に語ったのとよく似た自己紹介をする。正式サービス版は10000本(より正確には9000本)しかないSAOの購入者は、重度のネットゲーマーが大半を占める。その中に在って、『ネトゲ中毒者』の部類には入りそうにない清々しい男だ。

 何らかの伝手で正式サービス版を入手したのだろうか(例えば親兄弟から借りた、とか)。それともクロスのように――――βテスター、なのだろうか。

 βテスターなら、初回生産盤の優先購入権が与えられているし、運さえよければ(募集枠はたったの千人だったが)重度のゲーム中毒者でなくても成れた。その中にはクロスのようにそもそもRPG初心者である存在すらいたのだから、不思議はあるまい。

 どちらにしろ――――今はあまり関係ない。突き止めたくなってしまうが、割り込んでいくわけにはいかないだろう。
 
 一応は思考の隅にその疑問を置いて、広場の喧騒に耳を傾け直すと、丁度「本当は《勇者》って言いてーんだろー!」などと言ったやじが飛ぶところだった。

 だがその笑いも、ディアベルが片手を上げて制したことで収まる。

 それを確認した彼が、少し厳しい表情をとり――――

「今日、俺達のパーティーが、ボスの部屋を発見した」

 その瞬間、おお……といったようなざわめきが、プレイヤー達の間に広がった。クロス達も同行したのだが、その話は伏せておくようだ。まぁ、自分たちだけでやった、と言った方が聞こえがいいのは常識なので分かるが。

 ――――なるほど。なかなか計算高い人間らしい。

 クロスは内心でディアベルの事をそう評価する。

「一応偵察してきたところ、ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》。武器は大形のハルバード。取り巻きに《ルイン・コボルド・センチネル》が三体。
 一か月――――ここまで来るまでに、一か月かかった。だけど俺達は、示さなくちゃならない。いつかこの城を攻略できて、SAOから脱出できるんだってことを、《はじまりの街》で待っている人たちに伝えなくちゃならない。それが俺達、トッププレイヤーの義務なんだ!
 そうだろ、みんな!!」

 おう! と言ったような叫び声がプレイヤー達の間から次々と上がる。なんとなくだが、士気が上がってきているのを感じた。

 あのディアベルという青年――――俗に言う、『典型的な指導者タイプ』なのだろう。場を盛り上げ、コントロールする術に長けているのだ。

「なんか……いい気分はしないわ。操られてるみたいで」

 隣に座るシャルにそのことを話すと、彼女は顔をしかめてそう言った。なるほど、そう言う見方もあるのか――――と、新しい知識を手に入れたことを内心で喜ぶ。まぁ、クロスなりに、なので、実施際のところそれほど感情の起伏があったわけではないが。

「それじゃぁ、そろそろ攻略会議を始めさせてもらう。まずは近くにいる人とパーティーを組んでみてくれ!」

 ふむ、とクロスは呟く。この場にいるプレイヤー達は、全部で四十六人。六人(フル)パーティーを七つと、四人パーティーが一つ、もしくは六人組が六つと、五人組が二つ……と、思っていたのだが。

 周囲のプレイヤー達は仲間同士で固まっていたようで、いつの間にやら六人組七つができあがってしまっていた。

 クロスは対人があまり得意ではない。ここで一人だけだったのなら、かなり心細い思いを…クロスなりに…したのだろうが、幸いなことに今はシャルがいる。彼女と出会えてよかった、と思った。

「シャル、ありがとう」
「な、何よ急に……変な人」

 ぷい、とそっぽを向かれてしまう。何か変なことを言っただろうか。単に感謝の気持ちを述べただけなのだが……。

「……なぁ、あんたたちもあぶれたのか?」

 その時だった。

 噴水を囲む階段の、クロス達とは反対側の端に座っていた黒づくめの少年と、そのパーティーメンバーと思しき赤いフードのプレイヤーが近寄ってきたのは。

 少年はぎごちない表情をしている。年齢は十四歳か十五歳ほどか。フードの方はよく分からない。

「一応、こっちのフードのプレイヤーとはパーティーを組んでいるが……」

 シャルを指さして答える。すると少年は、

「じゃぁ、俺達と組まないか。レイドは八パーティーで一つしか組めないから、パーティーは少ない方がいい」
「……そうか。わかった」

 クロスが頷くと、少年がウィンドウを操作する。直後、ぴこん、というサウンドと共に、クロスの視界に表示されるメッセージ。

『【Kirito】からパーティー申請がされました。受諾しますか? 【Yes/No】』

 Kirito……キリト、と読むのだろうか。その名前に聞き覚えがあるような気がしつつも、クロスは【Yes】を押した。

 直後、クロスの視界左端、自分のHPバーと、既にパーティーを組んでいたため表示されていたシャルHPバーの下に、新たに二本のHPバーが出現した。パーティーメンバーのHP残量を確認してスイッチや援護を円滑に行うためのバックアップだ。

 因みにレイドを組んだ場合には、この下にさらに各パーティーの平均HPが表示されることになる。

 そしてHPバーの横には、それぞれのプレイヤーの名前。一番上には【Kurosu(クロス)】、二番目は【Char(シャル)】。三番目は【Kirito(キリト)】、四番目は【Asuna】――――アスナ、だろうか。

「Kurosu……クロス? ってもしかして、あの……?」
「……! やはり……あのキリト、なのか……?」

 脳裏に甦るのは、三ヶ月前に終了した、βテストでの記憶。初心者であったクロスは、成り行きで同行することになってしまった一人のプレイヤーから、SAO、ひいてはMMOに関するレクチャーをうけた。

 ソードスキルのうまい使い方。効率のいいレベリングの仕方。MMOプレイヤーとしての常識、心構え――――

 一時間以上かけて作ったんだ、というそのアバターは、形容するなら『勇者のような青年』だった。

 彼の名はキリト。目の前にいる黒衣のプレイヤーは………彼と、同一人物なのだ。

「久しぶりだな……元気、だったか?」
「おかげさまでな」

 一通りの社交辞令ならクロスにもできる。それが、主観では《友人》と言っていい存在ならばなおさらだ。

 キリトは強い。βテスト時代の最前線だった第十層に最初に踏み込み、その迷宮区の最も高い所まで上ったのは彼だけなのだ。きらびやかなファンタジー兵装だったあの時とは服装や顔立ち的に差異が多いが、同じく片手剣使い(ワンハンデッドソードマン)を貫いているようだし、装備の強化具合も高い。

 彼は今後、間違いなくSAOのトッププレイヤーの一人として活躍できるだろう。

「クロスはこっちでも両手剣なんだな」
「まぁ、な……キリトが言っていた刀スキルがプレイヤーにも使えるようになったら、そっちを使おうかと思ってはいるが」
「はは……まぁあれはモンスター専用スキルだし……出てくるとしても多分《エクストラスキル》扱いだと思うよ」

 βテスターであることをあまり公に知られたくないのか、キリトはひそひそ声で会話を進める。

 《エクストラスキル》。たった今話題に上ったそれは、SAOにおいて数あるスキルの中でも上位を占めるスキルたちの事だ。その性質は、初期に使用可能スキル欄にある無数のスキルとも、それらの派生スキルとも異なる、全く別途の……いわば《隠しスキル》である。β時代には微妙に格好悪い精神集中っぽいポーズをとることでHPが回復したりする《瞑想》というスキルが発見されていたが、他にも《体術》と思しきスキルや、キリトが見たという《刀》もその部類に入るのではないか、と推測されていた。
 
 どちらにせよ、刀が登場する時は恐らく《曲刀》スキルの派生だろう。その時は鍛えた《両手剣》の代わりに慣れない片手装備である《曲刀》を使わなくてはいけないので、少々気が引けるが、やはり()()()()()()日本刀は使い勝手がいいだろう。

「とにかく、知り合いがいて助かったよ……まぁ、俺だけ浮いてるのがちょっと気になるけど……」

 キリトがバツの悪そうに頭をかく。

 彼の視界には、アスナ、シャルを含めて、全部で()()のフーデッドローブ姿が見えているだろう。
 
 そう、三つ、である。

 クロスはシャルとコンビを組むにあたって、彼女の強い要望でストレージの肥やしとなっており、いずれ売り払おうと考えていたフーデッドローブを着用していた。人物の特定を防ぐほかに、『仲間を見分けやすい』という考えもあるそうだ。

 まぁ、実際のところフレンド登録やらパーティーを組むやらすれば、プレイヤーの周囲に表示されるHPバーの上に名前や所属ギルドのエンブレムなどが描かれるので、判別はたやすいのだが……確かに彼女のいうことも一理あるか、などと、素直にクロスは思ってしまう。

 そうこうしているうちに、いつの間にかほかのパーティーたちも準備が終了したようだった。

「よし、みんな組み終わったかな。じゃぁそろそろ――――」

 ディアベルがパンパンと手を打ち鳴らして、次の話題に移そうとする。

 ――――その時。

「ちょぉまってんか、ナイトはん!!」

 低い、罅割れた声が響いた。

 プレイヤー達の波が割れて、その中から一人の青年が勢いよく飛び出してくる。

 年齢は二十代半ばほどか。まるでモーニングスターのような形の、茶色のサボテン頭で、体中を鱗鎧(スケイルメイル)で覆っている。武器は片手剣だろうか。まぁ、片手剣はオーソドックスかつ万能なので、使い手が多いのもうなずける話なのだが。

 とにかくその男は、ディアベルの方へと近づくと、くるりとプレイヤー達の方を向いて叫んだ。

「ワイはキバオウって(もん)や。こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなあかん奴がおるはずや! そいつらからそれを聞かん限りは、仲間ごっこはできへんな!」
「詫び? 誰にだい?」
「決まっとるやないか!! 今まで死んでいった二千人にや!!」

 キバオウ、と名乗った男は、だみ声で騒ぎ立てる。
 
「こんクソゲームが始まった時に、β上がりどもはダッシュで《はじまりの街》から逃げよった。右も左もわからん九千人のビギナーを見捨てて、な。
 奴等はウマイ狩場やらなんやらの情報を独り占めして、自分らだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。
 こんなかにもおるはずやで。β上がりやっちゅうこと隠して仲間に入れてもらおうと思うとる奴等が!
 そいつらに土下座さしてアイテムやら金やら全部吐き出させんと、ワイは自分の命をそいつらに預けられへんし、預かれんと言うとるのや」

 キバオウの言い分は、ある意味では正しいだろう。βテスター達が新規参入のプレイヤー達全てを導き、統率していれば、彼らをもっと纏めることができて、死者も減ったかもしれない。

 だが……ある意味では仕方がなかった、としか言いようがない。この世界で生きていく為には、力がいるのだ。クロス自身、そう感じて今日まで生きてきた。βテスター達は己が生きていく為に精一杯で、新規参入のプレイヤーたちに手が回らなかったのだ。

 だが、ならばなぜもっと穏便に事を進めないのか。

 それに――――

「発言、いいか」

 その時だった。

 最前列に座っていた、ガタイのいい斧使いの一団、そのリーダーとおぼしき男が、重厚なバリトンを響かせたのは。

 立ち上がったその男は、想像以上に巨大だった。人種からして日本人ではないだろう。SAOでカスタム可能な数少ない要素である髪型をスキンヘッドにしているその男からは、どこか西欧のマフィアのような印章が。

 だがそれ以前に――――器の大きそうな、男だった。

「俺はエギルと言う者だ。キバオウさん。あんたの言いたいことはつまり、元βテスター達がニュービーの面倒を見なかったから戦死した。その責任を取って賠償・謝罪しろ、ということだな?」
「そ、そうや」

 エギル、と名乗った男とキバオウの間には、頭二つ分近くの身長差がある。それに気圧されたかのようにどもったキバオウだったが、すぐに勢いを取り戻してわめき散らし始めた。

「しかも唯のニュービーとちゃうで。皆他のMMOならギルドのトップも張っとったベテランや! アホテスターどもが情報やら金やらアイテムやらを分けとれば、死なずに済んだ二千人や! アイツらが生きとれば、ここには十倍の人数が……ちゃう。とっくの昔に二層も三層も上まで行けとったはずや!!」
「金やアイテムはともかく、情報ならあったと思うぞ」

 しかしエギルは動じずに、懐から一冊のパンフレットを取り出した。表紙には、丸い耳と左右それぞれ三本の髭を図案化した、どこか某夢の国のロゴマークを彷彿とさせる《鼠マーク》。

 あれは――――クロスともβ時代から付き合いのある情報屋、《鼠》のアルゴのつくったガイドブックだ。

「このガイドブック。あんたも貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布されていたものだ」
「もろたで。それが何や!」

 キバオウは話の論点が見えずにイライラしているのか、刺々しい声で返す。

「このガイドは、俺が新しい村や町に着くと、必ず道具屋に置いてあった。情報が早すぎるとは思わなかったのかい」
「せやから、それが何やっちゅうねん!!」
「このガイドにのっている情報を提供したのは、元βテスター達以外に有り得ないってことだ」

 エギルがそれを口にした瞬間。場が、騒然とし始めた。βテスターたちが情報を独占している、という共通認識が、早くも崩れ去ったのだから。

 余談だが――――エギルの言っていることは正しい。

 他のβテスターたちはどうだったのか分からないが、クロスは少なくともアルゴが攻略本を作る際の情報提供に協力した。そこまでβテスト時代の情報をたくさん知っているわけではないクロスだが、記憶力はそこそこいい方だと自負しているため、クリアしたクエストや知っていることならかなり詳しく提供できたのでは、と思っている。

 まぁ……アルゴがその情報に対してどう思っていたのかは分からないが。いつでものらりくらりと話題を回避し続けるアルゴとの会話を、クロスは苦手に感じていた。ただでさえ相手が何を考えているのか分からないのに、彼女の場合余計に何を考えているのかわかりづらい。一度など彼女の冗談を真に受けてしまい、「にゃはははははっ! じょーだんだヨじょーだん。クロ君は几帳面だナ」と大爆笑されてしまった事がある。

 それはともかく。

 エギルとキバオウの問答は最終盤を迎えていた。

「俺は責任追及がどうこうという事ではなく、それを受けて今後俺達がどうするべきなのか、それが話し合われるものだと思っていたのだがな……」
「ぐっ……」

 堂々たるエギルの意見は、表から見ても裏から見てもまっとうなものだった。キバオウも反撃ができずにいる。これがエギルではない別の人間…例えばクロス…だったら、ここで「そう言うジブンこそベータなんやろが!!」と返されていたかもしれない。

 キバオウの肩に手を置いて、ディアベルが諭す。

「……キバオウさん。俺も君の言いたいことはよく分かるよ。俺だって、右も左も分からないところを、ここまで頑張ってきたわけだしさ。でも今は、エギルさんの言うとおり、元βの人たちとも……いや、だからこそ、力を合わせるべきなんだ。彼らは貴重な戦力だ。ボス戦が失敗したら元も子もないだろう?
 みんなも思うところがあるかもしれないけど、今回は第一層を突破するために力を合わせてほしい! 元テスターの人たちとはどうしても一緒に戦えない、ってひとは、悪いけど抜けてもらって構わない。ボス戦ではチームワークが何より大切だからさ!」

 そのセリフの最中で。

 クロスは、わずかな違和感を感じた。

 ――――今のディアベルのセリフ。

 ――――もっといい手があったのではないか? 今のセリフでは、キバオウに反撃の芽を残しているように思えなくもない。この調子なら、例えば……そう、ボス戦が終わった後にでももう一度決着を付けよう、といった続きが出せるはず……

「……ええで。ここはあんさんに従ったる。でもな、ボス戦が終わったらキチンと白黒つけさせてもらうで」

 想像通りに、キバオウは話題継続の意思を表示した。

 ――――考えすぎなのか……?

 だが、どうしてもクロスにはそれが気になってしょうがなかった。まさかディアベルが仕組んだのだろうか。彼自身がβテスターだと思っていたのだが違ったのか? 彼も内面では、βテスターが憎い? 
 
「……クロス」
「……っ!」

 ふと声をかけられて隣を見ると、心配そうな顔でシャルが覗き込んできていた。

「どうしたの?」
「いや……すまん。考え事だ」

 とにかくすべてはボス戦が終了してからだ。

「じゃぁ、明日の午前十時に、この広場に再集合! それじゃぁ、解散!!」

 ディアベルが叫んで――――初の第一層攻略会議は、終了した。 
 

 
後書き
 クロス君は元βですが、その参加権は伝手で入手しました。数少ない我儘に、親族は狂喜乱舞し、あらゆる手段を使ってβテスト・エディションを獲得したそうです。何せ、今の内に気に入られておけば、将来クロス君が大物になった時に良い立場になれるかもしれませんしね。まぁβエディションを手にした時のクロス君にはそのことは知られておらず、彼は運良く当選したと思っていたらしいです。本当に君は天才なのか……?(二回目
 因みにクロス君、劇中で「記憶力はそこそこいい」と言っていますが、実際のところ「かなりいい」です。この設定を生かし切れない可能性が高いので劇中では「そこそこ」にしました。なんせこの作品はご都合主義ですからね。

 ご都合主義と言えば、クロス君には「心がない」わけではないんです。彼は「心を理解しづらい」「他人の感情が察せない」だけであって、ものすごく強い感情とかは理解しますし、うれしい、楽しい、寂しいとか、今はまだ出てこないですけど恋愛感情とかもちゃんとあります。これ結構重要で、今後かかわってくるかもです。文章中で表現できればよかったんだけどなぁ……難しい……。

 次回はシャル視点の予定。亀更新ですがお楽しみに。 
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