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美しき異形達

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第二十九話 旅のはじまりその十三

「成程な」
「わかったのね」
「ああ、目を開いたらかえってな」
「見えているものが邪魔をしてだったのね」
「かえって見えていなかったけれどな」
 それでもだというのだ。
「今は違うよ」
「それじゃあね」
「ああ、わかったからな」
 それで、とだ。薊は目を閉じた顔で笑ってもみせた。
「それでな」
「勝てるのね」
「確実にな」
「言うわね、じゃあどうして勝つのか見せてくれるかしら」
「いいぜ、じゃあまた来るよな」
「そうさせてもらうわ」
「次の一撃で決まりそうね」
 向日葵は薊を見て怪人の言葉を聞いて言った。
「薊ちゃんが勝って」
「ええ、私にも怪人は見えないけれど」
 それでもとだ、菖蒲がその向日葵に答える。
「今の薊さんはね」
「勝つわね」
「負けることはないわ」
 これは絶対に、というのだ。
「薊さんはね」
「そうよね、負けないわね」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「安心して観ていていいわ」
「これからはね」
「さて、来るかい?」
 やはり笑って言う薊だった。
「あたしを倒しに」
「それがあんたのお望みならね」
 怪人の言葉に動揺はない、薊の言葉を聞いても。そしてその動揺のない言葉でだ、こう彼女に対して言うのだった。
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあな」
「次で倒すわ」
 こう言ってだ、そして。
 見えない攻撃を繰り出した、だが。
 その気配を察してだ、薊は。
 両手に持っていたその棒を天井、自分の斜め前にあるそこに対して投げた。今は分けず一つにしてだ。そのうえで。
 棒に紅蓮の炎をまとわせてだ、それを投げてだった。
 その場を打った、すると。
 棒と炎がだ、そこを貫き焼くとだった。そこに。
 蛙と人を合わせた姿の怪人がいた、両手両足の指の吸盤で天井に張り付いていた。緑の肌を持ち背中を薊に向けてだった。
 顔を首を百八十度曲げたうえで向けてだ、そこにいた。その彼を観てだった。
 菖蒲は確かな声でだ、こう言った。
「身体の色を変えられるのはカメレオンだけではないわ」
「ああ、そうだよな」
「蛙もそうよ」
「雨蛙とかがそうだよな」
「ええ、この怪人はね」
「そうした蛙の怪人なんだな」
「そうだったからね」
 それで、というのだ。
「姿を消せたのよ」
「そういうことだよな」
「その通りよ」
 怪人もだ、天井にいたままで言ってきた。棒がその身体を貫いている。
 その怪人がだ、薊に言うのだった。
「あたしは蛙よ、それもね」
「身体の色を変えられる蛙だっただな」
「そうよ、だからこそね」
「隠れられたんだな」
「ええ、そして攻撃はね」
「舌か」
 このこともだ、薊は察してみせた。 
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