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美しき異形達

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第二十九話 旅のはじまりその十二

「今回の闘いも」
「そうね、けれど」
「けれど?」
「カメレオンの怪人はもう出たわよね」
 向日葵が今言うのは怪人のことだった。
「だからカメレオンの怪人はね」
「出ないっていうんだな」
「二回出る場合もあるけれど」
「あたしはカメレオンではないわよ」
 怪人の方からも言って来た。
「そのことは断っておくわ」
「カメレオンじゃないんだな」
「また別の生きものよ」
 そうだというのだ。
「けれどね」
「消えることはか」
「出来るのよ」
 薊に楽しげに笑って言うのだった。
「そのことは言っておくわ、そして」
「!?」
 ここで何かが来た、やはり見えない。
 しかし気配と空気の動きを感じ取ってだ、そうしてだった。 
 薊は少し後ろに跳んでだ、それで足を襲った一撃をかわした。そのうえでこう言った。
「どんな攻撃かも見せてくれないか」
「手の内は見せない主義なのよ」
 相変わらず楽しそうな怪人の声だった。
「残念だけれどね」
「気配だけだったよ」
 それでかわしたというのだ。
「空気の動きとな」
「その二つだけでかわせることは見事よ」
「自分でもそう思うさ。けれどな」
「けれどなのね」
「勝つのはあたしだしな」
「あたしの姿が見えないのになのね」
「ああ、それでもな」
 薊は車両の中を目で見回し続ける、そして。
 再び攻撃が来たがそれは棒で弾き返した、三擊目も四擊目も。
 薊はその間一歩も動かない、その彼女に桜が言ってきた。
「薊さん、どうやら」
「どうやら?」
「目は、です」
 今も薊が動かしているそれがというのだ。
「今は」
「使わない方がっていうんだな」
「はい、確かに目は戦いにおいても重要ですが」
「重要なだけにか」
「そうです、かえってです」
「だよな、じゃあな」
 桜のその言葉を聞いてだった、そして。
 薊はすぐに目を閉じた、それを見てか。
 怪人は男の声でだ、女の口調で笑って言った。
「あら、目を閉じたの」
「ああ、そうさせてもらったよ」
「それで私に勝つつもりかしら」
「だったらどうするんだい?」
「面白いわ。相手を見なくてどうして闘うのかしら」
「あたしは心眼とかは持っていないけれどな」
 武道の極意の一つだ、これで相手を見て闘うというものだ。
「それでもだよ」
「目以外にも、っていうのね」
「そうさ、それであんたを倒してやるぜ」
「面白いわね、ではそうしてみることね」
 こう言ってだ、怪人は。
 また攻撃を仕掛けてきた、だが。
 薊は今度は屈んでかわした、それと共に。
 目を閉じた状態でだ、それをp感じ取って言った。 
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