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寄生捕喰者とツインテール

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混沌且つ混沌

 
前書き
 原作ならではの、ツインテール馬鹿的、中二病的、痴女的、変態的、泡の如く大仰なだけで中身の無い台詞ばかりだが熱血的な数々の展開……自分、かなり苦手だったりします。

 シリアスシーンや戦闘シーンばかりスラスラと浮かんでくる自分、こういうのってやっぱり相性の問題なんでしょうか? それとも自分の未熟さゆえの事か……どちらにせよ、言い訳で終わらせる気は無いので努力し続けますけどね。


 それでは本編をどうぞ。
 

 
  薄暗くグレー1色で塗られたホール。


 地球はおろか世界の何処にあるのかも分からないこの場所には、獅子に豚に蛇の姿を、あるいは空想上の化物を怪人化させたような、決して地球上には存在しない異形の生物達が集まっていた。

 ここはアルティメギルの本拠地であり、その会議室とも呼べる場所なのである。下座から部隊長と思わしき怪人が大勢座り、上座へ近づいて行くにしたがい幹部であろう怪人達が鎮座し、モニターに一番遠い席には一気は強烈なオーラを放つ、竜を模した怪人が堂々と座っている。

 その彼は、アルティメギルが地球に攻め入る宣言した際に流れた、あの映像に映っていた怪人であった。

 やがて進行役らしいカモノハシのような怪人がモニターの前に出て、一例の後説明し出した。



「……今回送られたゴリラギルディが倒されてしまった事は、すでに周知の事実でしょう、しかし」
「何かあったのか?」
「はい。実は倒したのはテイルレッドでもテイルブルーでも無い……全く別のツインテール戦士だったのです」
「何と……この短い間に第三の戦士が……!?」
「ブルーが現れてからまだ一戦も相手はおらぬというのに……!」



 俄かにざわめきだすアルティメギル所属のエレメリアン達。そんな彼等に、カモノハシ型のエレメリアンは注目を一旦地震に集め、ざわめきが収まった時を見計らって言い辛そうに告げた。



「あの戦士をツインテイルズと言ってよいものか、此方も判断しかねています。何せ、ブルー以上に途轍もなく粗暴で有り、且つ残虐なものでしたから……もはや戦士と言うのも愚かしいのかもしれません」
「何? 一体どういう事だ?」
「今からその証拠となる映像をお見せいたします」



 そういうとカモノハシ型のエレメリアンはモニター前から端まで歩き、指をパチンと鳴らして映像を流し始める。

 モニターにまずは状況把握をする為、戦闘前の風景が映った瞬間、エレメリアン達から驚愕の声が漏れ聞こえた。



「むぅ、まるでモンスターを擬人化したかのようだな」
「不可思議だな……ボサボサだがそれも味を醸し出す実に見事なツインテールなのに……肝心のツインテール属性を感じないだと?」
「映像越しでも力らしきモノは感じ取れるというのに、不思議な女子よ」

「では、続きを―――」



 続いて、モニターは戦闘員とゴリラギルディが、少女と本格的に戦闘を行いはじめた映像を映す。



「何と!?」
「コレは一体……!?」
「き、奇怪なっ!?」



 途端、エレメリアン達の間にリアクションの大きさの代償あれども、驚愕が走り廻った。……その映っていた戦闘風景は、彼等の想像を超えるモノだったからだ。


 ゴリラギルディが何かを話そうとするのに構わず殴りとばし、起き上がりざまに蹴り飛ばす。やっと着地で来た所に問答無用で脚を振り降ろす。
 立ち上がりかけた瞬間に顔を掴んで何回も地に叩きつけ、放り投げて再び地面へ向けて蹴り落とす。


 エレメリアンは妙に武人気質である者が大半を占め、名乗りを忘れず語りを忘れず、最低限のお約束と呼べるものも順守している。だが彼女はお約束など知った事かとばかりに一瞬でも隙を見せたら攻撃を叩き込んでいったのだ。


 彼等にとってはそれだけでも十分に驚くべき事だったが、彼等が本当に驚愕した……否、戦慄したのは次の映像だった。



 少女は何を思ったか一旦ゴリラギルディを寝転がしたままにしておき、戦闘員の方へ一瞬で詰め寄って内一体の頭を掴み上げ―――――あろう事か小さく握りつぶして齧りついてしまったのだ。

 他の戦闘員も同じ末路をたどり、ただ倒された物も属性力と思わしきモノを吸い込み喰われていく。更に、対抗しようとしたゴリラギルディも体の一部を喰いちぎられた。


 が、彼等が驚いたのは、人間と似通った姿形なのに知性を持たないかの如く、喰らうことに躊躇いの無い獣のそれと同じ獰猛さと、自分達が喰われる側に回っているかのような映像を見た事にもあった。


 何せ彼等は、数多の世界を巡り歩いては来たものの、人々の属性力を奪い自身の糧とする事こそあれど、まさか自分達が本当の意味で獲物となってしまう事など、今の今まで “全く” 無かったからだ。
 大抵が……いや全てが、倒された所でヒーローものの怪人の最後と同じく爆散させされるだけだったと、そう言っても過言ではない。


 この世界でもテイルレッドやテイルブルーといった、彼等が今まで戦ってきた中でも指折りのツインテール属性を持つ戦士も、守るために戦っていたし舌戦には付き合うし、戦って敗れたなら自分達は爆風と共に消えていっていた。


 そんな戦いはこれからも、どちらかが全滅するまで続くのだろうと……そう思われた矢先にコレだ。予想外中の予想外に、驚愕と戦慄を受けるのもいた仕方が無い。



「我らを食物か何か様に……」
「いいや! 正しく食物にしているのだ! 彼女は我らを!!」
「属性力を喰らっているという事は、彼女もまたエレメリアンのなのだろうか?」
「確かに左腕や右足、左目に体の各所と人間に似てはいてもやはり違う部分は幾つも見受けれらる」
「しかし肝心の属性力事態は、余りにも不可思議すぎるのだぞ……」



 再び騒がしくなるグレー1色のホール。

 身も蓋も無いを言ってしまうと、彼等が行う作戦会議は半ばヒロイン観賞会の様になっており、昨日もテイルレッドがいかに愛らしいか、テイルレッドのツインテールがいかに美しいかを、無駄とも言える熱さを持って語り合っていたのだ。……テイルブルーが入っていない理由は、それこそ彼等に聞くしかないが。

 ともかく気の抜けそうなお間抜けなノリを貫いていたアルティメギル御一行だが、そんな彼らでさえ冗談―――か本気かどうかは筋金入りの変態共なので分からないが……それは兎も角、常識人からすればとしては冗談としか受け取れない言葉を、映像開始から今現在の終了後の話し合いに至ってまで、一切合切発していないのだ。


 確認の為にもう一度だけ流された映像の後には、話し声など無く沈黙が広がるのみ。



「この少女は……確かに恐怖を与えてくる」

「ド、ドラグギルディ、様?」



 そんな沈黙を破ったのは……竜の風貌をその身に具える、一番上座へ居座る怪人・ドラグギルディだった。

 ドラグギルディは最初に口を開いてから暫くまた黙り、眼を閉じてから再び……重々しく口を開いた。



「今まで真の意味で喰われる立場に立たなかった我らにとって、餌と喰らいつく彼女は紛れも無く未曾有の存在だ、それは恐ろしくも映ろう……しかし怯えている場合ではない」



 ゴクリト誰かがつばを飲む音が聞こえるが、それを今は咎めずドラグギルディはまた続ける。



「敗北自体が恥でなのではない、背を向け逃げ出す事こそ恥なのだ。ツインテイルズの様に勝てば強大なツインテール属性を搾取できるという旨味は無く、更に未知の属性力を携えている彼女は、此方にとっては相手する意味の無い敵だ。……だがしかし、幾ら此方がシカトを貫こうと、向こうは明日を、未来を生きる為に、己が存在する為に我らを喰らわねばならないが故、そして強大な力を持つが故、そうそう簡単に見逃してくれる筈も無い」



 ゆっくりと立ち上がったドラグギルディは、剣の柄に手をやりホールの全エレメリアンへ向け、気は苦を隠すことなく堂々と云い放つ。



「だからこそ我らは逆に立ち向かわねばならぬ! 嘗て他の世界の人類が我らに牙を剥いたが如く! 捕食者へ獲物が一矢報いるべく噛みつくが如く!! ツインテイルズには矜持を持って相手取り、かの少女には情けを消して葬るのだ!! 我らアルティメギルは……髪の使徒とも等しいのだから!!」

「「「ウオオオォォォオオオッ!!!」」」



 彼の信頼はかなりのモノか……それを窺わせる程に、士気の回復は早かった。いや、もしかすると元々士気は下がっておらず、驚愕していただけなのかもしれないが……けれどもどちらにせよ、今まで以上に気合を入れる事には成功している。


 人類が受けた未曽有の恐怖と同等以上の衝撃を受けてなお立ち直りが早いのは、優秀な上司が居る為か、それとも彼ら自体が異質な存在だからか……。



「ドラグギルディ隊長!! どうかあの紫の少女は、この私めに任せてくださいますよう!!」
「おお、お主は……」



 鷹の様な姿形を成すエレメリアンが立ち上がったのを眼にし、他の席からも次々と感嘆の声が上がる。



髪飾り属性(ヘッドドレス)をその身に宿す猛者、ホークギルディか!」
「うむ! ゴリラギルディと同等以上の実力を持つ彼ならば……!」
「未だに負けが無いどころか、苦戦も無い! そしてかなりの場数も踏んでいる!」
「彼ならば彼奴を……かの者を打ち破れるやもしれぬ!!」


 ドラグギルディはしばし鷹の怪人・ホークギルディを今一度実力を確かめるかのように見た後、ゆっくりと頷いた。



「いいだろう……奴を打倒し、彼女の保持する謎の属性力を奪い取って見せるがいい!!」
「ははっ!!」



 ホークギルディは一礼し、その背に生える翼を震わせ、正に地を飛ぶという表現がふさわしき速度で、アルティメギル本拠地を発っていく。

 その眼は鋭く獲物を見据え、その足爪は獲物を引き裂きバラバラにする事など容易ともうかがえ、雄々しき翼はしなやかなだけでなく頑丈さと強さをも感じさせる。


 他のエレメリアンにも一目置かれし、数ある戦を駆け抜けた歴戦の猛者、ホークギルディ。彼はアルティメギルの期待を背負い、鷹の如く飛び出していった。

















 大きく、重く、強い……そんな期待を背負った、ホークギルディは―――







「や、やめ……」

風砲暴(ふうほあかしま)!」

「ぐ、ぎえぇああぁぁぁ――――」

「ご飯ゲーット……ブイ」




 今、何とも情けない声を上げ、バラバラになり……散っていった。


 食い千切られた翼を羽を散らして見っとも無くバタつかせ、紫色の追加で悍ましさの増した破壊と切断渦巻く暴風域に飲まれながら。


 酷い事を続けていうならば、ホークギルディと紫ツインテール少女の戦闘経過時間は――――驚くなかれ、試合開始からたったの一分半で決着が付いてしまったのだ。戦闘員達をまとめて喰らった時間を入れても二分へ届くか届かないかである。


 一応補足しておくと……まず一つ目に、何もホークギルディが弱かった訳ではない。普通に単純感情種のエレメリアンの力を得た、紫ツインテール少女……の正体である瀧馬が強過ぎるのだ。

 もっととんでもない事を言うと、ラース曰くこれでもまだまだ自分の全盛期には殆ど足りていないのだとか。


 二つ目は、ホークギルディは今までの戦いの癖が抜けきらないのか、要所要所で一々台詞を挟んでしまい、結果的に隙を作りまくったのも敗北の原因かもしれない。
 瀧馬はまだまだ慣れないのか、やっぱり芳醇な香りつられて本能と幼げな人格が顔を出してしまい、遠慮手加減に手心情け容赦の一切も無く、相手の事情も言葉も無視に無視を重ねて喰らい付いて行くのも、瀧馬の勝利……もといホークギルディの敗北の一端となったのだろう。

 ノリで見逃しても流してもくれない相手なので、一挙一動の不備が本気で洒落にならない。


 だが、外見も中身もモンスター娘だとはいえ、瀧馬はちゃんと正義の味方側だ。



 ……例え戦闘員をバリバリと頭から齧り、敵怪人の翼を喰いちぎって手羽先の如く美味しそうに咀嚼したり、相手から抜けて出た魂をも吸い込むが如く属性力を吸引する、抵抗できない相手への必殺技の発射もいとわない存在だとしても……。



「すぅ~っ……ムグムグ、モグ」

『まーたマジモノの女になってるぜ相棒(バディ) 気をしっかり持てって言っタロ?』

「……美味しいよ? ラース」

『だからそんな事言ってんじゃねえッテ……つーカヨ、曲がりなりにもこの世界の一般人の味方何だかラヨ、開幕してからすぐに戦闘員巻き込んで “風砲暴” 撃つんじゃあねーっテノ。アレはツインテイルズ基準でいえば一応必殺技の部類なんダゼ?』

「うん、美味しくなるよ?」

『いやだかラナ……』



 何とこの吾人、戦闘開始からいきなり必殺技級の一撃を放ったらしい。


 大方今すぐにでも喰らいつきたかったのだろうが、そこまで食欲が支配していてはツインテール馬鹿である総二の事をある意味笑えないと思う。
 というかラースへの返しも食べる事ばかりだ。……元に戻った時また悶える事にならなければいいが。



『相棒がこの姿になっちまった時はもう別人格みたいだなホント。マア、実際の変身と違って俺の力を前面に押し出してるだけだカラ、どっちかっつーと変態(メタモルフォーゼ)に近イシ、変っちまう可能性もあったガヨ……』

「……美味!」

『俺ぁもうツッコまねーぞ相棒』



 最初の瀧馬のほぼ常識人ぶりにラースの狂乱したかのように声高に叫ぶ異質ぶりは何処へやら、この姿となっている時は冗談抜きで真逆の立場になってしまっているようだ。


 こうしてアルティメギルの投じた一石はものの見事に打ち砕かれ、瀧馬は二度目となる美味しい食事に舌鼓を打つのであった。


 
 

 
後書き
……ああ不憫、何と不憫……自分で書いておいて何ですが、すっごく不憫に思えてきた……忘れないよ、ホークギルディ。たとえ本編で出てきたとしても。 
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