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【銀桜】3.モンハン篇

作者:Karen-agsoul
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第2話「ネットゲームに性別は関係ない」



 金儲けのためさっそく銀時たちはモンキーハンターをプレイしようとした。
 しかし「ハヤ耳チギリズバット」の宣伝効果のせいで、どこの電子喫茶も満員。二日経ってようやく席を確保できた。
 だが相席は無理であったため、モンハンの集会場で待ち合わせとなった。
 キャラクターを作成してログインした新八は、中々現れないあとの二人を待っていた。

【集会所前で待ち合わせだけど、銀さん達ちゃんと登録できたかな?】



【ネットじゃ誰が誰かわかんなくなるしなぁ。こんな容姿で二人ともわかってくれるかな?】
 掲示板前で待っているのだが、集会場は何百というハンターで溢れかえっており見分けがつかない。
【こんにちは】
 画面にメッセージウィンドウが表示される。誰かが新八にコンタクトをかけてきた。
 セミロングで年は新八より少し上のようだが、クルッとした瞳から可愛い印象である。
 ここでいくら外見に注目しても、現実と一致していることはまずない。そう分かってても、新八は可愛い見た目に惹かれてしまう
【ひょっとしてゲーム初心者の方ですか?よろしかったら一緒に狩りにいきませんか?】

「女の子だ。どうしよ、誘われちゃってるよ。なんか変な感じだな」

 駄メガネで冴えない容姿の地味少年にとって現実ではまず体験できないこの感覚。
 ボイス機能はないが、メッセージを読むだけで女性声に聞こえてくる。ゲームの中とはいえやっぱり嬉しくて、新八の頬は自然と赤く染まっていた。
 しかし、ここに来たのは金儲けで女性をハントするためではない。
 残りの二人ともまだ会えていないし、勝手な事をしたらあとがうるさいだろう。
【僕だけじゃないんで先約の人たちと相談してからでいいですか?】
【それなら大丈夫ですよ】
 女性の口元が不敵に微笑んだ――ように見える新八の頭に疑問符が浮かぶ。
【えっ。どうして…】
【フフ、引っかかったなアイドルオタク】
【銀さんんんんん!?】



 確かによく見れば、女性キャラは銀髪で服の色も銀時のと酷似した配色だ。
 パソコンの向こうでガッカリしている新八を想像しているのか、銀子は下品な笑いを上げた。事実、新八のテンションはダダ下がりでボイスも銀時の声に脳内変換されてしまう。
【なんで僕って……】
【冴えねぇ《ツラ(顔)》にだっせーメガネ。お前だってすぐわかるわ。どんだけ単純なパーツでできてんだ】
【アンタこそなんでネカマになってんだよ!?】
【バカだなぁ。金儲けしやすくするためだよ】
【え?】
 銀時もとい銀子は意味深に笑い、密かに考えていた策を語り始めた。
【俺たちはゲームを始めたばっかだ。こんなんじゃマスカークどころか雑魚猿すら倒せねェ。かと言って今から地道にレベル上げしてたら他に横取りされちまう】
【じゃあ、どうしたら……】
【だが幸いこのゲームの賞金はパーティで山分けできるシステムだ。強ぇハンターと組んで倒すのよ。ゲーマーなんて女に飢えたケツの青いガキだ。色気でいけばイチコロよ。さっきのお前みてぇにな】
 ムカついたが、事実なので反論できない新八は素直に頷いた。だが山分けという単語にひっかかりがある。
【なるほど。でも組んだら取り分減っちゃいますよ】
【だから賞金貰う前に組んだハンターフルボッコにして消しちまえやイイんだよ。俺たちは何もせず大儲けできるってワケだ】
【えぇ…そんな上手くいくかな?てかジャンプ主人公がすることじゃない】
【いいからさっさと強そうなハンター見つけっぞ。長い事やってそうなベテランを勧誘すんだ】
 銀時に引っ張られ、新八も捜索し始める。
 強いハンターを見極めるには、装備を重視して探すべきである。より経歴の長いベテランハンターほど、厳つい防具と武器を多く身につけているものだ。集会場には初心者が多いが、それゆえベテランハンターとの見分けも簡単だった。
【あっ!!アレなんかいいんじゃないですか。メチャメチャ強そうですよ】
 新八の目に止まったのは、マントを羽織ったオレンジ色髪の巨漢男。額から口元にかけて刻まれた十字傷と熟練ハンターの《オーラ(威厳)》を放つ渋い容姿からは、最低でも百時間はプレイしてると連想させる。
 銀子とぱっつぁんは巨漢の男にさっそく声をかけた。
【あのう、すいません。よかったら僕たちと……】
【何アルカ】
【お前かいィィィ!!】



 髪の色から名前もそのまんま。疑うまでもなかった。
 ネット上で本名を使うのは非常に危険なのだが、神楽は全く気にしてないらしい。
 表示された《ステータス(能力値)》を見た銀子は、不満な表情で口を開く。
【さっきゲーム始めた奴がなんで俺たちよりパラメーター高ェんだよ】
【その顔の傷誰につけられた。てか神楽ちゃんその立派な装備どこで手に入れたの?】
【私はハンターネ。欲しいものはハントで手に入れるのがハンターネ】
【ハントもクソもまだ始めたばっかりなのにどこで……】
 堂々と言い切るカグーラ=ジャスアントだが、ぱっつぁんにはさっぱり分からない。
 戸惑っていると別のメッセージウィンドウが表示される。誰かにコンタクトをかけられた。
【あのう、すいません】
 振り返ると、防具を身に付けた二人組の豚人間が剣を片手に立っていた。
 ここは集会場。一歩外に出れば《モンキー(怪物猿)》がむらがる危険地帯。レベルが低いとあっさりやられてしまう。だから戦力不足の初心者同士がパーティを組んで戦うことも少なくない。
 もしくはカグーラ=ジャスアントの容姿に目をつけたのか。だとしたらそれは大きな間違いである。
【あっすいません。もう僕らパーティ組んでるんで、これ以上初心者の人とは……】
【いえ、私達はゲームの管理人なのですが】
【そこの路地裏でハンターが襲撃され身ぐるみをはがされたと報告が入っているんですが、何か知りませんか?】
 豚人間が指差す方には、激怒しながらこちらを見ているパンツ一丁の男がいた。
 まるで「アイツにやられた!」と訴える表情で。

“ドム”

 二人組の豚人間もとい警備兵の腹に強烈な衝撃。
 彼らが最期に見たのは、地に倒れる自分に容赦なくナイフを向けるハンターの姿だった。

〈警備兵の装備をはぎ取った〉

【はぎとんなァァァァ!!】

〈♪上手に焼けました~〉

【焼くなァァァ!!】

〈こんがり焼き肉を手に入れた〉

 ハンターとは思えない荒業で手に入れたこんがり焼き肉を、銀子とカグーラはその場でムシャムシャ食べ始めた。
 二人の暴挙にぱっつぁんは額に図太い血筋を浮かべて叫ぶ。
【何やってんだ、てめーら!ハンターからハントするゲームじゃねーんだよ!!】
【一流のハンターは仕事を選ばない】
【お前らただの追い剥ぎだろうが!!】
【この肉欲しいアルカ?あげねーヨ】
【いるかァ!】

“ブーブーブーブー”

 突然、集会場全域に警報音が鳴り響く。
 それを合図に出現した大勢の警備兵たちが三人めがけて走ってきた。
【あっ!!ヤバイ!!ルールを犯したから管理者たちが怒って僕らを排除しようとしてますよォォォ!!逃げろォォォ!!】
 ぱっつぁんにせかされ銀子とカグーラも全速力で集会場から逃げ出した。
 凶暴なモンキーたちが支配する集会場の外へと。



 彼らの行動の一部始終は、多くのハンターたちに目撃されていた。前代未聞の暴挙にどのハンターも困惑して呆れていた。
 だがその中でただ一人、微笑んでいるハンターがいた。
 まるで彼らの暴挙を楽しむかのように。
【フッフ~ン♪さっそくやらかしちゃってくれたねぇ☆さてさて、どうなることやらまか~】

=つづく=
 
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