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【銀桜】3.モンハン篇

作者:Karen-agsoul
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第1話「勢いで流行にのってもスベるだけ」



 万事屋の居間にはいつものメンバーが暇を持て余していた。
 新八は自主的に部屋の片づけをし、神楽は定春とじゃれている。
 双葉はとろけるチーズと雑多な野菜をのせたトーストパン――『ピザもどき』を食べていたが、物足りないようでその表情は不機嫌に近かった。
 そして銀時はやることもなくTVで暇つぶしをしていた。
【銀河流行大特集コーナー『ハヤ耳チギリズバット』。今日のテーマは……】
 TVには結野アナではなく、花野アナが笑顔をふるまってリポートしていた。それを銀時はあまり気に入らないのか、つまらなそうに眺めている。
「最近花野アナばっか。結野アナ見ねェな」
 スピード結婚で一度は落胆したが一年足らずで離婚したことを知り、銀時の結野アナへのファン心は再熱。だがスピード離婚という世間体があるせいか、結婚前と比べるとTVに映ることは極端に減っていた。あってもお天気占いぐらいである。
「兄者、好きなのか?」
 独り言程度に呟いた一言だったが、向かい側に座っていた双葉が聞き返してきた。
 といっても食べながらで、目線もピザもどきに向いてるまま。興味なさそうな感じだが、銀時は妹の質問に嬉しそうに答えた。
「おうよ。結野アナは俺の理想の女性だ。どうだ?フィギュアでもすんげー美人だろ」
 フィギュア以外にも結野アナグッズは多く販売されており、銀時はたくさん持っていた。
 だが、最近机からグッズが消えるという奇怪現象が起きていた。
 フィギュアはパチンコの景品でしか手に入らないレアモノ。今まで大切に保管していたが、机の上が殺風景なのも寂しいので、今日(こんにち)から飾ることにしたのだ。
 机に置いていた結野アナフィギュアを手に取って、銀時は得意げに見せびらかした。
 双葉は突き出された結野アナフィギュアを無言で手に取り、しばらくじっと見つめ――



































「おい!なに折っての!?なんで首へし折ってんのォォォォォォ??!」
「ああ、すまない。手元が滑った」
「今すぐ元戻せ。結野アナが!結野アナがァァァァァ!」
 フィギュアとはいえ、身体が切断された光景にショックを受けない者はいない。
 首と身体が真っ二つに分かれた結野アナフィギュア。血走った目で錯乱する銀時に、「わかった」と双葉は折れた首をテープで身体にくっつけた。 


































     




【今、銀河中で大流行しているゲーム『モンキーハンター』、通称・モンハン。オンラインプレイで銀河中の人と協力してハントしたりコミュニティできます】
 TVにはモンキーハンターのゲーム画面、そして老若男女問わず多くの人々がモンハンに没頭している姿が映っていた。人々はパソコン画面に釘付けになるほど、モンキーハントに夢中になっている。また背景やキャラクターも妙にリアルなポリゴンで表現されており、現実味溢れるゲームだ。
「へぇ、おもしろそうだなぁ」
 新八はオタク心が騒ぐのか、いつの間にかTVに夢中になっていた。
 それとは反対に、銀時はだるそうにTVを眺める。
「オンラインなんてよ、金かかるだけだっての。ゲームってのはな、コントローラーでやるもんだ。キーボードでチマチマ打って……」
【そしてモンハン最大の見所は、ハントして稼いだ賞金を現実のお金に換金できることです】
 銀時の文句と定春とじゃれていた神楽の動きが止まった。
「金」「カネ」
 二人の眼光がキラリと光り、即TV画面に釘づけとなる。
 相変わらずこの二人の欲深さは呆れる、と横目で眺める新八は改めて思った。
【超セレブタレントAさんもこのゲームで稼いでセレブになったとか】
【だんだんと電子マネーが浸透してますね】
 天人が来航して以来、この国の経済も大きく変化した。電子マネーはその証の一つである。本来は天人と大企業の間でよく使われる決済サービスだったが、花野アナの隣のてりーが解説したように、最近では携帯電話の普及等により一般的にも使われるものとなった。オンラインゲームでさらに浸透して将来は電子マネーが当然になるだろう、とてりーは語る。
 しかし、TVに釘付けになっている銀時と神楽には「金」以外全く耳に入っていない。
【そして現在最強とうたわれるモンキー『マスカーク』の賞金額はなんと百万円!!】
「ひひひひひゃ百万円ンンン??マジでかァァァ!!」
【マジですマジ】
「うぉスゲェな百万円!銀ちゃん、酢昆布何枚食べれるアルか?」
 巨額な金額を聞いた途端、頬が紅潮する神楽から黄色い悲鳴が上がる。
 だがはしゃぎまくる神楽に対し、冷たい視線を向ける人物が一人。
「相変わらずスケールの小さいみみっちい天人だ」
「酢昆布の良さもわからねェ女に言われたくねーヨ」
 酢昆布を口にくわえた神楽とピザもどきを口にする双葉の間で火花が散り始める。
 いつもならここで銀時の制止が入るが、当の本人は金に目がくらみ妄想に陥っていた。
――まぁ新八はともかく、神楽は酢昆布十枚で満足すんだろ。金の九割は俺のもんだァ、ウシシシ!
「兄者、なぜよだれを垂らしている?甘い物でも食べたいのか、糖分中毒」
 冷めた口調の妹に指摘され、銀時は口から垂れているよだれを慌てて拭った。
 そして銀時の目に強欲の光が宿り、いつもと違う彼に豹変していく。
「よぉし、やろーじゃねェか。ゲームで大儲けなんたァ楽勝だ」
「倒せばいいアル!」
 銀時と神楽はやる気満々。もとから興味があった新八も同意であった。
 最近依頼もなく金銭的にも困っていたため、こんなおいしい話を逃すわけにはいかない。
 そうじゃなくても「遊んで稼げる」というだけで、やる気はどんどん増していく。
 だが盛り上がる三人に便乗せず、ただ無言で眺める者が一人。
「双葉、オメェもやれ。人手が多い方が儲かるからなァ」
 銀時はいやらしいと感じさせるウハウハな表情で誘う。
 しかし彼女から返ってきたのは、期待していたのとは裏腹のものだった。
「フン、くだらない。天人の技術なんぞで金儲けだと。ましてやゲームで?そんな上手い話があるか。バカバカしい」
 冷たく言い放ち、彼女は外へ出て行ってしまった。
「なにヨあのKY女!今時パソコンもできないなんてただの時代遅れアル」
「仕方ないよ。双葉さんこうゆうの好きじゃなさそうだからね」
「………」
 万事屋に来てから大分経つが、未だにこの枠の中に入って来ない。
 それとなく誘うが、冷めた態度で突き放すだけ。神楽とはいがみ合い、新八には毒舌を吐き、そして実の兄にも一歩距離を置いている。もとから社交的な性格ではないが……理由はそれだけじゃないことぐらい分かってる。
「…………」
「あんな女ほっといてさっさとハントね」
 妹が去って少し溜息をついてから、銀時は再度目に強欲の光を宿し、場を仕切り直した。
「おぉし!いくぜ、テメーら!!」
「はい!」「きゃっほ~!」

=つづく=
 
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