転生とらぶる
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マブラヴ
0820話
俺が転移した場所から車で暫く走ると、やがてかなり警備の厳しい基地が見えてきた。
先程テストをしていたF-18Eとかいう機体とよく似た機体、戦術機とかいう機体も警備をしている。
いや、よく見ると頭部や肩、腰の部分といった細かい場所が色々と違うな。この車を運転している護衛の軍人に聞いた話によると、F-18とかいう機体の改修機がF-18Eだということだから、恐らくあれが原型機のF-18 ホーネットなのだろう。
後の疑問は、この基地の厳重な警備が普段からこのレベルなのか、あるいは俺という存在がいるからこそなのか。
ジョンの通信でのやり取りを聞いた限りでは俺の存在を信じておらず、派閥間抗争の取引にでも使おうという雰囲気があったが……さて、どうなんだろうな?
そんな風に思いつつ、目の前の座席に座って難しい顔をしているジョンへと視線を向ける。
「その様子を見ると、どうやらこの警備は通常のものって訳じゃなさそうだな」
「……うむ。向こうはどうやら私の報告を話半分で聞いていたようだ。そしてこの機会に自分達の勢力を強めようとでもいうつもりなのだろう」
そこまで告げると、その難しい顔が笑顔へと一変する。
だが、その笑顔はとてもではないがにこやかな笑みとは表現出来ない笑みだ。寧ろ、肉食獣が獲物を見つけた時の笑顔と表現するのが正しいだろう。
「向こうがそのつもりなら、こちらとしては正々堂々と受けて立つだけよ。君という存在が偽物だとは、直接見て貰えばとてもではないが否とは言えないだろうからな」
「……だと、いいがな」
人間というのは、基本的に信じたいものを信じる生き物だ。幸いジョンは頭が柔らかかったので、あっさりと俺という存在を受け入れた。だが、他の軍人の様子を見た限りでは基本的には頭の固い者が揃ってそうな雰囲気だ。
これで俺がどこぞの国のスパイだと疑われたり、あるいはBETAとかいったか? その宇宙生物が人間に擬態したとでも思われたら……しかも、BETAというのがどういう姿をしているのかは分からないが、俺の場合は混沌精霊という人外の姿もある。
……まぁ、さすがにあの姿を容易に晒すような真似をするつもりはないが。
ともあれ、現在の俺の気持ちは車に乗る前よりも更に下がっている。正直な話、このままニーズヘッグを空間倉庫から取り出してホワイトスターに戻ってもいいのではないかという程に。
何しろ、1997年のこの世界で技術的に見るべきものは恐らく無いだろうし、BETAとかの存在によってこのこの世界では普通の食料を一般人が食べるのに多少高くつく程の被害を受けている。それも農業王国のオーストラリアで、だ。
そうなると、恐らく異世界間貿易でも見るべき価値は無いのだから。
いや、食料品の輸出と考えればある程度の需要はあるかもしれないが、それでも諸々を考えると最終的にはマイナスに近いだろう。
そんな風に考えながら、F-18から多くの視線を集めつつ車は基地の中でも奥まった場所へと入っていく。
基地の中にあるメインの建物ではなく、外れにある建物に向かったのは……恐らく一応何かあった時の為にという警戒からか。
やがて車が止まり外へと出ると、俺とジョンを出迎えたのは銃を持った複数の軍人。それでも銃口をこちらに向けている訳ではなく、肩に掛けているのを考えればマシな方なのだろう。
俺の存在については知らされていなかったのか、オーストラリア国防軍のものとは全く違う軍服を着ている俺を見て、意表を突かれた表情を浮かべる軍人達。
「ご苦労」
そんな中で、ジョンが短くそう告げながら車から降りてくる。
その様子を見て軍人達は思わず安堵の息を吐く。
自分達の知っている人物だったからだろう。
「アクセル代表、こっちだ」
ジョンの案内に従い、建物の中へと入っていく。
「おいおい、少将自ら案内するとか。どんな相手だよ」
「誰か見覚えのある奴はいるか?」
「いや、初めて見る。って言うか、あの軍服とかどこの軍だ?」
「さあな。けど、クルーガー少将が自分で案内しているのを見ると、色々と訳ありなのは事実だろ」
俺達が建物の中に入った後で聞こえてくる兵士達の声。
まぁ、小声で話しているからジョンには聞こえていないんだがな。
ともあれ、その建物の中は20畳程の広さの会議室らしい。それも、普通の会議室では無い。建物の中にある会議室に入る前に指紋やら眼球やらの認証チェックを行い、それでようやく会議室の扉が開く。
見た感じ、盗撮やら盗聴やらの干渉をシャットダウンする為の会議室なのだろう。
その中へと、ジョンの後を追うかのように入っていく。
「クルーガー少将、遅かったな。で、そちらが?」
ジョンよりも若干年上に見える、黒人の男がそんな声を共に俺達を出迎える。
その周囲には10人程の人物が揃っている。殆どがジョンと同じ50代程の初老の男。最も若い男でも40代前半といったところだろう。
「はっ! リトラス大将、遅れて申し訳ありません。シュタート少将から連絡が行っていると思いますが、異世界からのお客人、アクセル・アルマー代表をお連れしました」
ジョンのその言葉に、鼻を鳴らす音が1つ。
こっちを……より正確には俺に向ける視線に侮りの類が見て取れるのを考えると、恐らくこの男がジョンの言っていた対立派閥のシュタート少将とかいう男なのだろう。
「おやおや、彼が異世界人だと? 普通の人間にしか見えませんがね。嘘を考えるにしても、もう少しありそうな話を考えてくれませんと。クルーガー少将、何を置いても至急に将官を集めろと言うので、現在集められる方達を集めましたが……この責任、しっかりと取って貰えるのでしょうな?」
その言葉を聞き、この場で最も階級が高いだろう黒人の男、リトラス大将とやらが小さく頷く。
「うむ。残念だが私にもその者は何の変哲も無い人間にしか見えないな。説明を頼む」
「はっ、こちらはアクセル・アルマー代表です。異世界に存在する多次元国家シャドウミラーの代表だとの事です」
「はっ! そんな若造が国の代表? 多次元国家? 笑えない冗談はその程度にして欲しいものですね」
シュタートが嘲るように口を開き……正直言って、この時点で俺のやる気はかなり失われつつあった。
ジョンのような人物はそれなりに貴重だろうが、だからと言ってこの程度の奴が軍の上層部にいるようではな。……まぁ、軍の上層部に無能が揃っているのは硬直した組織では珍しい事じゃないが。
「はぁ、……ジョン、代わろう。実際にその目で確かめない事には、奴等にしても納得は出来ないだろう」
「……分かった」
ジョンにしても、言葉で説明しても理解されないというのは理解したのか、そのままそっと後ろへと下がった。
それと入れ替わるように1歩前に出て、こちらへと集まる視線を感じつつもどうするべきかなのかを考え、とにかくこの世界の住人で無いと証明されればいいのだろうと判断して、床へとそっと手を触れる。
「おい、君。いきなり何を……」
軍人の1人がそう告げてくるのを聞き流し、そのまま床を握りしめ……爪が食い込み、そのまま握力に任せて手の平大の大きさの床をむしり取る。
『……』
さすがにこれは予想外の光景だったのだろう。会議室にいる者のうち、俺以外の全員が――ジョンも含めて――唖然と口を開いて驚きを露わにする。
「さて、見て貰った通りだが、この世界の人間にはこんな事が出来るのか?」
「……で、で、で、出来る! 確かにそう滅多に出来る者はいないが、それでも出来る者もいる筈だ!」
へぇ、これでもまだ言い張るか。まぁ、シュタートとやらにしてみれば、ここで俺が本物の異世界人だと証明されるのは困るといったところか。
本人としてはジョンの不手際を責めて派閥抗争の得点稼ぎをしたかったんだろうが、もし俺が本物の異世界人で、更にオーストラリアにとっての国益に貢献したとなれば、ジョンの功績はこれ以上無い程に評価される事になるしな。
ま、オーストラリアの国益云々という事になるかどうかは、正直今の感触だと微妙だが。
「そうか。なら……これも出来る奴がいるか?」
右手をパチンッと鳴らすと、空間倉庫からスライムの触手が伸びてくる。
そのままウニョウニョと空中で揺らめきつつ、幾重にも枝分かれしながら触手を伸ばしていく。
「な、何だこれは……こんなの……」
ポツリと呟かれたのは、軍人達のうちの1人。
いや、口に出せただけよかったのだろう。それ以外の者達はただただ唖然として空中に浮かぶスライムを眺めているのだから。
「ジョンには空間倉庫は見せたな? あれを利用した俺の特殊能力の1つ、スライムだ。ああ、安心しろ。スライムとは言っても別によくあるモンスターじゃない。俺の持っている手足の延長上のような……さて、何のつもりだ?」
説明の途中で懐から銃を取り出し、こちらに銃口を向けたシュタートへと告げる。
「お、お、お前は異世界の住人などではない! お前は……お前は、人型のBETAか何かだな!」
ピクリ、とシュタートの口からその言葉が出た瞬間に他の軍人達の顔が緊張に満ちる。
なるほど、BETAとやらはここまで恐れられている訳か。
パチンッと指を鳴らしてスライムを空間倉庫へと戻す。
「はっ、はははは! 見たか! 銃を向けられていよいよ諦めたのだな!」
会議室に響くシュタートの声。
「リトラス大将、見ましたか! 私が……私がクルーガー少将の連れてきたBETAの正体を見破ったのです!」
「はぁ、もういい。お前はちょっと黙れ」
呟き、右手を白炎へと変えて鳥の炎獣を1匹作りだしてシュタートへと向かわせる。
銃で撃たれたとしても、正直な話特に被害は無いのだが、それでもこんな奴にいいようにされる気は無い。
そんな俺の思いを汲み取ったかのように飛び立った鳥の炎獣は、そのまま会議室の中を飛び、シュタートの握っている銃へと襲いかかる。
瞬間的に銃が炎獣に触れてドロドロに溶け始め、それを握っていた手に垂れてきたシュタートの口から身も蓋もない悲鳴が響き渡った。
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」
反射的な行動なのだろう。手を振って溶けかけていた拳銃を床へと叩きつけ、同時に炎獣の熱によって溶けていた金属部分も床へと滴る。
そのまま会議室に飲料用として用意してあった水差しへと手を突っ込む。
目と鼻と口から涙、鼻水、涎を垂らしながら泣きわめいているシュタートを一瞥し、再び驚愕の視線を向けている軍人達を見回す。
「どうだ? まだBETAとやらだと判断するか? 何なら、他にも色々と見せてもいいが?」
「いや、結構だ。確かに君はBETAではないだろう。そもそも、BETAには感情の類は確認されていない。それをもってしても、君は人間……とは言えないようだが、BETAではないというのも明らかだろう」
リトラスが俺の言葉に重々しく頷きながら口を開く。
「そうか。それは結構。さて、なら俺が異世界の存在だと知ったところで改めて話を……とも思っていたんだがな」
「ふむ? 何かあるのかね?」
「ああ。俺がこの世界……より正確にはこの世界を意図的に選んだ訳では無く、運に任せた転移でこの世界にやってきた理由だが、まず第1に未知の技術の収集というものがある。こう言っては何だが、俺達の国は非常に高い技術力を持っている。それをより高め、同時にシャドウミラーの戦力を底上げするという目的があったんだが」
そこで言葉を止め、その場にいる軍人達へと視線を向ける。
その中の何人かが、自分達の戦術機に余程の自信があるのか微かに口元へと笑みを浮かべていた。
あからさまでないのは、今も水で火傷を冷やしているシュタートの件があるからだろう。
だが、その中でも何人か……特にリトラスとジョンは俺が何を言いたいのかを半ば予想出来ているかのように苦い表情を浮かべている。
「俺が転移してきたのは、F-18Eとかいう機体の性能試験をやっている場所だったが、直接動いているところは見ていない。だからまだ正確には言えないが……」
「言えないが?」
俺の口からどのような言葉が出るのかは予想しているのだろうが、それでも先を促すか。
あるいは、自分でもその言葉を信じていないのか、それとも……他の軍人に現実を教える為か。
ともあれ、決定的な言葉を口に出す。
「恐らくは圧倒的に性能差があるだろう。……勿論戦術機の方が圧倒的に下、という意味でな」
そう告げるのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
???
???
撃墜数:1114
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