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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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直感と感情


宗教の本質は思考でも行為でもなく、直感と感情である。
—シュライエルマッハー—

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直感と感情



◆◇◆コン◆◇◆



俺たちに渡されたのは天の書

地の書を持った奴を探さなければならないが、六班には秘策がある

シュロの目配せで仕込みが終了したことが分かった



試験スタートの合図がして数分、隠れやすく奇襲に対処しやすそうな岩場を見つけイカリが口寄せを発動する



「口寄せの術!」



天、地の書混じり合って数本現れると同時に巻物にくっついていた蜂がシュロの元へ戻った



「シュロ、こういうのってあり?」

「ありだろ?試験中なんだから工夫しなくちゃな」



口寄せの術式を組み込んだ蜂を、巻物を受け渡す小屋に忍ばせて各班について行かせる

その蜂には巻物にしっかりくっついているようにと命令し、適当な場所でイカリの口寄せ

蜂しか口寄せ出来なかったり、天地の巻物ではなく別の巻物があったりするが何とか作戦成功である


「ところで、目的のもの以外はどうする?」

「回収しておくか・・・それともばらまいて罠でも仕掛けるか?」

「手間かかるけど・・・まあ良いか」


食料確保しつつ罠仕掛けようぜ、そう軽口たたいて場所を移動しようとした瞬間

シュロが急にオレを突き飛ばした


「何だ!?」


今までオレがいた場所を見ると紙で出来た手裏剣があった


「・・・試させてもらうわ・・・」


髪の長い少女、ミナミと名乗ったデイダラ達のチームメイトこと小南・・・!


「おいおい・・・逃げていいか?」


今の俺たちでは勝てない

明らかな実力不足を痛感する


「逃げれるものなら・・・」


吹雪のように紙が周辺を覆う


「逃がすつもりはないってか?」


舞い散る紙とともにクナイが投げられる

蟲分身で回避したシュロの顔色が変わった


「毒つきクナイとかあぶねえな!」


「まぁそういうな
 油女シュロだったな、お前の相手はオレだ」


カイと名乗った赤髪の少年、サソリが現れる

シュロの不自然な動きに目を凝らすと右腕にチャクラ糸が巻きつけられている

・・・チャクラ刀なんて持ってきてないぞ・・・!


「この、糸をなんとかしてもらえませんかねぇ?」

「フン・・・こっちに来な」


サソリのチャクラ糸に引っ張られ、おとなしくシュロはこの場から離れて行った

「・・・コン、どうやらこいつら殺す気はなさそうだ
 目的は?」


「言ったでしょう?試させてもらうって・・・
 今回はほんのあいさつ、貴方の相手はダラーよ」


「なんでこうなるのかね、うん
 おいミナミ、あんまりコンをいじめるんじゃねーぞ」


粘土の鳥にのって飛来したデイダラがイカリを連れ去る

この場に残ったのはオレと小南の2人だけ


「・・・何の用があってこんなことを・・・」


「先生には色々教えたようだけれど、何故木の葉の者には何も教えていないのかしら
 コネも地位も何一つなかった前の貴方ならともかく、今の貴方はそれなりのコネを手に入れているわ
 ・・・なのに、貴方は何の行動も起こさない」


先生・・・自来也か

確かに自来也と会ったばかりのオレはただの子供で、そんな奴が何を言っても信用して貰えないと何の行動も起こさなかった

木の葉崩しのこと、大蛇丸が音隠れの長であること、サスケを狙っているであろうこと

知っていながら教えていないことばかりだ

子供の戯言と笑い飛ばされるのが怖くて何も言わなかった


今は今期のルーキーのなかでは注目してもらえているし、シナイ先生の存在もあり、班で情報を手に入れたと言えば信じてもらえるかもしれない

そう考えて転生者会議の議案にしたこともある

・・・議案にしただけで、それで終わってしまったことだった

結局、俺たちは怖かったんだ

自分たちの知らない話になることが、原作に介入したいとかしたくないとか盛り上がっていても、怖かったんだ

だからシナイ先生が羨ましい

原作をほとんど忘れかけているから行動できるシナイ先生が、酷く羨ましい


「自来也に、アンタあったのか?!」

「私は会ってないわ、ペインは接触しに行ったけれどね」


ん?

ペインが自来也に会いに行った?自来也がペインに会いに行ったのではなく?

何故ペインが行動に移すんだ


「・・・本当に知っているのね、ペインのことも、先生のことも何もかも・・・
 あの方の仰ったとおりだわ・・・」


・・・もしかして、カマかけられた?

マダラのことはあの方と呼んでいなかったし・・・


「あの方って・・・?」


誰だ?と聞こうと口を開くと、いつのまにか近寄っていた小南に、唇に指をあてられ言い噤んだ

にこりと笑ったその顔が、その笑っていない濁った眼が無性に恐ろしく感じた





「そうね・・・邪神、とでも言っておきましょう」





◆◇◆シュロ◆◇◆








チャクラ糸か、一応カンクロウ対策として小型のチャクラ刀は携帯しているが・・・

これは奥の手だ、今使うべきものじゃない

コンたちから随分と引き離れた場所へ誘導させられる


「さて、ここらへんで良いか
 悪いが、お前にはミナミの話が終わるまで待っててもらうぜ」


上空から飛来してくる鳥・・・粘土かあれは

デイダラとイカリが下りてきた


「シュロ、なんだか様子がおかしい・・・」


足早にオレに近づき呟く

確かにおかしい


「なぁ旦那、ミナミはコンに何をするつもりなんだ、うん?」


「俺だってしらねえよ
 ただ・・・邪神さま絡みだっていうのは確かだ」


「まーたジャシンさまかよ・・・うん
 いつから暁は宗教団体になったんだ、うん」


・・・デイダラ、暁って普通は言っちゃダメだろ

犯罪組織じゃないか


(ジャシンさま・・・飛段絡みで何かあったのか?)

(そんなの原作には無かった・・・ここ最近のずれが影響したのかもしれねぇ)


「俺だって嫌だ
 ・・・油女シュロ、お前の班長はあのまじらずシナイで相違ないな?」


あの・・・って、まじらずシナイは木の葉で1人しかいないんだけど


「・・・木の葉の歩く名言集のことなら、うちの先生だな」


変なネームバリューあるからなあの人


「そうか・・・ククッやっと見つけたぜ・・・」


先生、サソリに何か因縁つけたんですか

蟲を出して臨戦態勢・・・鼻で嗤われる


「ミナミの奴は話に来ただけ、俺たちはただの暇つぶし兼数合わせだ
 お前らの試験の邪魔をする気はない、むしろ応援してやるよ」


チャクラ糸で蟲たちが弾かれる

操られないだけマシか・・・


「どういう意味だ?」


イカリが口寄せで刀を取り出す

チャクラ刀だ、チャクラ糸ならこいつで対抗できる

コンにも持たせておくべきだったな


「さぁな?邪神さまの命令とやらは理解出来ねえ
 お前らの道は作ってやる、この試験、合格できたら教えてやろう」


俺たちの様子を見て隙あらば襲いかかろうとしていた草隠れの忍びたちをチャクラ糸でしめ落とす

取りこぼしたであろう1人に向かって蟲を差し向ける

全員の絶命を確認し、サソリに向き直す


「道を作るってのは、こういうことかい?」


死体が連なる道

こいつらが通ったことを露骨に指し示す趣味の悪い目印

睨みあいいつ蟲をけし掛けようかと思い悩んでいると小南が現れた

コンは無事だろうか


「お疲れ様カイ、ダラー
 ・・・行くわよ」

「あぁ」「わかった、うん」


俺等の存在が見えていないように小南は2人を連れて去って行った

眼中にもないってか・・・?

これだからマダラ関連の奴は嫌いだ


「コンの元へ戻るぞ!」

「あぁ!」


無事を祈り、すぐさまコンのもとへ駆け寄る

どうやら傷は一つもないようだが、幻術にかかったらしく目が虚ろだ

幻術を解くのはイカリに任せ、周囲の警戒を怠らないよう蟲を飛ばす

蟲からの情報によると、近辺の忍びたちは皆絶命しているとのこと

・・・暁・・・なんでそんな手間のかかることを・・・


「・・・月がふってくる」


コンが呟いた声がやけに響く

愛で月が降ってくる・・・ってなんだったっけな


「コン?」

「数多の怨念が降り懸かる月が潰れ世界が破れて混ざりあう玉藻は押し潰され凝縮されて一つに至る計画の失敗紛れもない失敗が世界を平行から並行に・・・」

ぶつぶつと何かを呟き始めた

怖い

焦ったイカリが頭をはたいた

え、それ大丈夫なん?


「起きろ!」


「痛い!」


正気に戻ったようだ

秘訣は斜め45度だとドヤ顔で誇らしげに語られる

・・・嫁さん可愛いからどうでも良いや!


「あれ?小南は?」

「お前幻術かけられて変なこと呟いてたぞ
 あいつらならもう行っちまった」


俺等も行くぞ

折角道を作ってくれたんだ、利用しない手はない

巻物も奪われず手の内にあるし、こうなったら素早く試験クリアを目指そう

木々の間を走りながらしゃべり続ける


「うえー・・・なぁ、あいつジャシンとか言ってたんだけど・・・」

「あ、こっちも言ってた
 ジャシンとか言われるとクトゥルフ的な奴かと身構えるからやめてほしいよな」


ガマ親分対クトゥルフ的邪神・・・胸熱だぜ・・・


「ごめん、オレそっち分からん」


TRPG面白いぜ?ルールブックあったら貸すのになぁ・・・

死体がおりなす道を辿り何の妨害も障害もなく塔にたどり着く

天地の巻物を取り出し、開け広げるとイルカ先生が出てきた

ん?これって中忍がランダムに出てくるんじゃ?



「久しぶりだな、コン、シュロ、イカリ
 第二試験は合格だ、3番目に合格なんてすごいじゃないか
 伝令役として伝えなきゃいけないことがあるんだが・・・」



「中忍の心得ですね?
 私とコンは体力、シュロは頭脳を磨いていきますよ」


・・・はい、勉強ガンバリマス


「ハハッ流石はイカリだな
 ・・・コンは死活問題だからな、気をつけなさい」


本当にナ


「中忍とは部隊長クラス、チームを導く義務がある
 任務における知識の重要性、体力の必要性をさらに心底心得よ!」


「「「はい!」」」


やっぱりイルカ先生は良い先生だな!

イルカ先生は絶対3代目の教育面の弟子だと思うんだけどなぁ

3代目と仲が良すぎるというか特別扱いというかなんというか・・・

イルカ先生に控室に案内され、施設の説明をされる

食事は食堂でとれるようになっていた

調理場の使用許可を求めると、試験官の一部からすでに届け出が出されていたらしくすんなり許可された

早速食堂で簡単な食事を作り始めるイカリとコン

また口寄せされるまで塔で待機しなきゃならないというイルカ先生を食事に誘い、共に待つ



「はい、中華粥
 焼き豚に蒸しササミにエビ、イカ、卵焼きにきのこの佃煮、好きなものをのせて食べてください」


イカリが土鍋ごと粥を運んでくる

香ばしいゴマ油の匂いが漂ってくる


「イルカ先生、今中華ちまき蒸しているんで、あとで試験官のみなさんに渡してくれますか?」


「あぁ良いぞ
 本当にイカリは料理が上手だな」


「オレの嫁ですからね!」


「分かってる分かってる」





こうしてオレたちの二次試験は終了した

何故か暁はまだ塔にたどり着いていなかったが、3次試験予選時にはその姿を見せていた

奴らの考えがわからない








 
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