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寄生捕喰者とツインテール

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捕食者VS獲物達

 
前書き
注意※この回は戦闘シーンですが、俺ツイの戦闘シーンでは無い……はずです。敵の趣向はそのままですが、戦闘そのものはもはや別の何か……だと思います。



 

 
 人里近くのとある採掘場。


 そこに音も脈絡も無く、二m前半は余裕であろうかと言う巨体が姿を現した。

 それは何処かゴリラを思わせる風貌の怪人であり、人型に近い姿に似合わぬ大きな牙、決して柔らかそうには見えない全身を覆う剛毛、自然と盛り上がる程の筋肉、特に目を引く剛腕。そして中性時代とは趣を異にする鎧。

 周りにはヒーローものではおなじみの、全身黒タイツ姿にも見える戦闘員達が、虫の如くカサカサと動き回っている。


 ゴリラ怪人は腰に手をやり辺りを見渡すと、その厳つい顔から堂々と声高に言い放った。



「ああ、思考の腕は無いものか! すべすべ且つしなやかな腕! 美しく彫刻とも見まがう腕! 芸術的な少女の腕はいずこよ!!」



 ……声高に言い放つ事ではないと思う。


 が、この奇妙な発言からも分かる通り、彼らこそ趣味や趣向の情熱を源とたエネルギー、属性力が更に凝り固まって出来た生物、エレメリアンなのだ。

 エレメリアン組織・アルティメギルから派遣されてきたであろう彼は、ここが採掘場である事を知り大いに落胆する。



「ううむ少しワープ場所が狂ってしまったか……折角台詞を考えてきたというのに」



 独り言を言うにしても、もう少しぐらい内容を考えてほしいものだが……まあそれはともかく、ゴリラ怪人は辺りを見回し街の方へと体を向けて、意気揚々と歩きだす。それに戦闘員達もゾロゾロと続いた。



「時にお前達よ……腕とは、何とも見目麗しきモノだとは思わないか?」
「モケ、モケー!」
「そうであろうそうであろう! 滑らかな動作で広がるツインテールと共にバランスを取る腕、美しき腕でツンテールをかきあげる所作、靡くツインテール、そして輝く髪束がかかり、更に磨きがかかる腕……よい! 実によい!」


 もう突っ込みどころが多くて対処しきれなくなってきそうな世迷い事を、ゴリラ怪人は熱弁し続ける。



「それにだ! 人の形を成す物にとって腕はとても重要な部位! 云わばインサラータ・カプレーゼのモツァレラチーズとトマトの如く! 切っても切れない重要な部分なのだ! ここを愛でる事こそツインテールにも匹敵する至高よ!!」

「「「モケケー!」」」



 必死に美味しい物をと頑張っているイタリア料理人に謝れ……というか腕フェチだとしても、ここまで大仰に例える事は流石に無いと思う。無いとのだとそう思いたい。

 部下達の賛同を受けて更に気分をよくしたゴリラ怪人は、今にも駆けださんばかりの前傾姿勢でずんずん歩いて行く。

 しかし、本当に駆けだそうとした矢先……目の前にいきなり落下し、もうもうと煙を上げ現れた人物の所為で、駆けだせずに止まる事になった。



「ぬおっ!? ……な、何奴!」



 ゴリラ怪人は人影へ向け叫ぶが、対する向こうは無言のまま何も返さない。やがて少しだけ煙がはれると、腰にまで届く程のツインテールのシルエットが浮かび上がり、ゴリラ怪人は落ちてきた人物についてある人物に思い当たり、すぐさま落ちてきた理由に合点がいく。



「おお! やはり現れたか、焔の少女テイルレッドよ! 我が名はゴリラギルディ!! 腕属性(アーム)を羨望せし者よ!! お主の美麗なる腕を見やるのを待ち望んでいたぞ! さあ神妙に勝負いたせい!」



 ここ連日で立ちはだかる少女の名をゴリラ怪人改めゴリラギルディは叫ぶ。テイルブルーだと言う可能性もあるのに、彼女相手には無視を決め込む方針なのだろうか。

 ……が、しかし相手も肯定も否定も返して来ず、ただ佇んでいるのみ。その内、シルエットの身長がテイルレッドと違う事に気が付いた。



(む……? テイルレッドよりも背が高い……)



 テイルレッドよりも背が高く、この場に現れてくるような人物。それは考える間もなくただ一人しかいない。



「ぬ、どうやら間違えてしまったようだな……非礼を詫びようテイルブルー。案ずるな、お主の腕はテイルレッドのそれよりもスラリと長く、より美しい。至高と言う言葉でも足りぬよ!」 



 言い直すゴリラギルディだが、またもや答えは帰って来ない。いい加減無視されるのは目に余ると大声を張り上げようとした途端、その内ゴリラギルディは見えるシルエットの中に、何処か不審な点がある事に気が付いた。



(なんだこのシルエットは……ブルーとも違う……何だか左腕が右腕よりも大きい、か? 右足も同様に大きめだが……)



 段々と煙が少なくなっていけばいくほどに、テイルレッドやテイルブルーとの相違点がどんどん露わになって行く。
 そして完璧に煙がはれた時、現れた人物を目にしてゴリラギルディは思わず驚愕の声を上げてしまった。



「テッ、テイルレッドでは無い!? テイルブルーでも無い!? 何なのだ!? 誰なのだお主は!?」

「…………」



 そこに居たのはテイルレッドの様な燃える火炎の赤でも無く、逆巻く水流の青でも無い、不気味さを感じさせる毒々しい紫系統のツインテールをもつ少女だった。


 レッドやブルーの露出が多く近未来的な装備とは違い、何処か古臭さと生物らしさをのぞかせる格好をしており、背はブルーよりは低くレッドよりは高いといった印象。
 今まで見た事が無く、しかも何の兆候も無く現れた少女の存在、それも充分すぎる程驚愕に値するが、ゴリラギルディはそれ以上に驚愕すべき点がある事に気が付いた。


(な、何故だ……何故なのだ……? あの少女から驚異的且つ異質な属性力の圧力を感じるというのに……肝心の“ツインテール属性”は殆ど―――いや全くと言ってもいい程感じないだと!?)


 今まで立ちはだかってきたテイルレッド然り、途中から参戦してきたテイルブルー然り、そして今まで別の世界でも相対してきた戦士達は、皆光り輝く程に強いツインテール属性を持っていたのだ。

 が、ゴリラギルディの前に佇んでいる異形の少女には、彼の言うとおり異質な力の圧力こそ感じるものの、肝心のツインテール属性は殆ど感じないのだ。
 それこそ、今まで彼らがツインテール属性を奪ってきた一般人よりも圧倒的に低い。


 戦う為に必要な力は無いのに大きな力は感じるというその奇妙な矛盾に、重度の腕フェチ変態であるゴリラギルディも後ずさってしまう。


(しかし……此方が集めるべき属性力は殆ど持っていないのならば態々相手する必要もあるまい……敵に背を向ける事は恥ずべき事ではあるが、何れ来るであろうツインテイルズと闘う為にも、余り無駄な力は使えん。それに―――――)


 ゴリラギルディは心底憤りを感じていると言う事を隠しもしない表情で、拳を握りしめ地を力強くしかと踏みしめた。


(人間に近しい部分の肌は滑らかで麗しい……最早人の形を成してない左手は兎も角、右手の殆どをおぞましい鎧などで覆いおって……露出させてこそ真価が発揮される部位を隠すなど、神を侮辱するに等しいっ……!!)


 ……例え正体不明の人物を目の前にし、何が起きるかも分からない状況に立ったとしても、決してその趣向を曲げる事も消す事もしないその様は、ある意味で称賛すべき事……なのだろうか。

 ゴリラギルディは、それは非常に大事―――再三言うが世界侵略という重苦しい雰囲気の中で、大事にすべき事では無い―――だが今はそれ以上に優先すべき(ツインテール)があると、無理矢理怒りを押しこめて少女へ向け指を差し言い放つ。


「謎の少女よ! この距離でも圧力を感じる程にお前の存在は脅威だが……今は此方が収集できない属性力しかもっていない者に構っている暇など無い。少々不安だが貴殿の相手は戦闘員(アルティロイド)がする!」


「「「「「モケケケェーーー!!!」」」」」


 念の為なのかかなり大量に連れて来ていた戦闘員……アルティロイドと呼ばれた彼等を、紫色の少女へと差し向け、ゴリラギルディは腕で地面を思いっきり叩くと、筋肉質な巨体に似合わぬ速度で飛び上がり、初速を失わぬままに飛翔していく。


 眼下にちらと見えた戦闘員達の黒に包まれていく少女を見届け、ゴリラギルディが目をそらした……正にその瞬間―――



「ん……へぼがっ!?」


 彼が顔面に強烈な痛みと衝撃を感じたかと思うと、そのまま空気を切り裂き地面へ轟音を立てて衝突した。

 そうして出来た巨大な岩石の崩落後の如きクレーターにも似通る凹みの中から、数秒の沈黙の後にゴリラギルディが這いずりながら鈍い動作で出てきた。


「ぐぅ……なに、がっぼっ!?」


 しかし這い出てきた瞬間また吹き飛ばされ、木々を幾つもへし折り着地しても地面を削り、もんどりうって頭を地面に埋めた状態で停止した。


「く、はっ! 貴様! 貴様には戦士としてごっ!!」


 声を上げようとしたゴリラギルディの視界に一瞬紫が映ったかと思うと、頭に何かが乗り同時に強い衝撃を受け地面に叩き伏せられてしまう。

 何とか目線を動かし上を見てみると、上に乗っている物の正体が少女の脚だと分かり、同時に踏みつけられている事も理解した。


「おまもごっ!? ―――ゴっ!?」


 不意に圧迫感が抜けた時を狙い起き上がったゴリラギルディは、少女の体には不釣り合いな大きさの手で口に蓋をされ、またも喋る前に地面に叩きつけられてしまう。

 二度、三度、四度、五度……繰り返す度力と速度が増していき、清算七回目で空中へと放り投げられて、右足によるオーバーヘッドキックでもう一度地面と熱い抱擁を交わさせられた。


 体中に鋭い痛みが走り、眩暈のする視界の中でゴリラギルディは、またも予想をはるかに超える出来事を目にする。


「……」
「モケ! モケ」
「な、何をする気、だ……?」

「ふん!」
「ェ―――――」
「!?」


「あ~ん……がぶっ……もぐ、んぐ」

「「「モゲェェェ!!??」」」

「く、喰っただとぉぉっ!?」


 何と少女はアルティロイドの頭をある程度小さく握りつぶし、あろう事かその頭部に “かぶりついて” 咀嚼し始めたのだ。正に身の毛も弥立つ光景、恐怖が形を成したと表現するなら、それを尤も分かり易く的確に表せる内の、一例としてあげられるであろう光景だ。

 当然の事ながら少女は彼等に構わず喰い続けていき、あっという間も無く一体目が平らげられ、呆然としている間にも二体目、三体目と次々犠牲になっていく。


 恐怖のあまりか残りの戦闘員達は矢も盾もたまらず逃げだしていくが、いっそ悲しくなる程の力の差を見せつけるかの如くすぐ追いつかれ、左腕の一撃によって殴殺され、再び振り上げられた腕で圧殺され、一部は普通に喰われていき残りの大多数は、何故か彼等は普通は倒されたら爆発する筈なのに、爆発せず代わりに残っている体からオーラの様な物が抜けていく。


「すぅ~~~……むぐ、んぐっ……けぷっ」


 それすらも少女は小さな体からは考えられない、驚異的な肺活量によって大きく吸い込み、塵すら残さず全て食していった。それを吸われた戦闘員達は皆三分の一ほど萎み、石化するように固まり紫白い炎に包まれ、破片は砂粒の様に風に乗り味方に感傷に浸る時間も与えず消えていく。

 そして少女は満足そうにげっぷをし、何も知らなければ見惚れてしまいそうな可愛げな笑みを浮かべ、不意に予兆無く硬直した後―――――グリン! といった感じで顔を後ろへ向けて、見られている方からすれば先程の可愛さの欠片も無い、ニタァ……とした邪悪な表情をゴリラギルディへ向けてきた。


「……じゅるっ」

「!?」


 しかも涎のオマケつき。

 彼女が何を考えているかなど、そして圧倒的な程実力に差があるゴリラギルディがこれからどうなるかなど、もう考えずとも明白であろう。


「くぅ、何という奇天烈な少女、何という恐ろしげな少女……しかぁし! ここで退く訳にはいかない! ツインテールを集める為! 散っていった三人の同胞に報いるため! そしてまだまだ美しきすべすべの腕を愛でる為にも! ここで死ぬわけにはいかないごぼっ!?」


 まだそこに拘っているのかと雰囲気を台無しにする台詞を言いきる前に、ゴリラギルディは自分の方を喰い千切られた痛みを感じ、咄嗟に跳び退くも次は指を喰い千切られた。

 喰われた跡は少女の口よりは大きいがそれでもまだまだ小さく、そこまで大きなダメージを負うモノではない……だが、この行為によりこの少女は自分を喰いにきているのだと、ゴリラギルディは改めて認識させられる。


(何なんだこの感情は……今まで感じた事のないこの恐怖はなんだ?)


 悲しいかな、彼等は今まで倒されはしても喰われる側には殆ど回って来なかったからこそ、ゴリラギルディが自分の中に浮かんできた感情を理解する事は出来なかった。

 怒りも憎しみも悦びも無い……食料を得るための混じりっけの無い純粋な殺意、それを捕食者から向けられた際に浮かび上がる、『逃走しろ』という本能的感情を。


 なまじ人間と同等以上に知能を会得し、そして趣味趣向の情熱塊と言う存在故に人間以上の煩悩と欲望を手に入れたが所為で……彼等の中には趣味に掛ける比喩的表現などでは無く、文字通り野生に生きる獣達の溢れんばかりの野性、生き残るための執念を体現する本物の“本能”という人間ですら持ち合わせている概念を、思考の中より消してしまっていたのだ。


「この震えの根源が何なのかは分からぬが……しかし! 私は一度お前に背を向けた身! もう背は向けぬ! この震えは武者震いと決定し、お主に―――むっ!?」


 話を聞く気など端から無いのか、紫色の少女はゆっくりと数歩前に進み、空気が凍ったとも感じられる奇妙な圧力が放たれた刹那地面が爆発し、少女は次々と地面を爆破させてジグザグに高速で詰め寄ってくる。

 戦士としての吟じも容赦の欠片も無い、アルティメギル(かれら)から見れば恥じるべき行動だ。


(テイルブルーでさえ名乗りを上げるという、戦士としての一応の礼儀は持っていた。しかしこの少女はっ……飢え狂った猛獣と同じ、獲物を喰らうという行動を取るのみ! 単純な暴力に走る蛮族よか此方の方が何と恐ろしき事か!!)


 だがもうゴリラギルディには、逆上の種ともなりかねない罵倒や誇りを汚した者への侮蔑の視線を向ける事はおろか、心の中で相手を蔑む余裕をも無い。


「己を戒めねばならぬ事になるが……もはや矜持に拘ってはいられん!! 全身全霊を持って、かの捕食者を仕留めるのみよっ!!」


 ゴリラギルディはそういうと右手で左肩を強く掴み、プロレスでいうラリアットの構えを取った。ゴリラギルディが息を大きく吸い込んだ瞬間、彼の腕の筋肉が一段盛り上がり、鋼の如き光沢を纏う。


「我が腕属性(アーム)への情熱は何者にも汚せはしない!! 滑らかなシルクを思わせる肌の様に、空気の抵抗をも最小限にとどめ、触る事さえためらわれる造形美を誇る腕を体現し、相手の攻撃を受けども決して傷つく事の無い、至高の力を携えたこの腕をくらい果てるがいいっ!!」


 ゴリラギルディは地面を組み砕く程の怪力を持って踏み込み、恐るべき反応で体を捩じって目の前へ迫っていた少女へと、悔しいかな一種の造形美とも捉えられるそのラリアットを思いっきりぶち込んでいった。

 重く鈍い鋼鉄同士がぶつかったが如き、高らかに上がろうとも綺麗とはいえぬ轟音が、戦闘員も居なくなり二人のみになった採掘場近くの森林に鳴り響く。

 猛烈に迫る衝撃波が木々を叩き、数秒間嵐が来たかのような様相を辺りに展開した。


 視界を遮るもうもうと上がる土煙がはれた時、ゴリラギルディはその眼にしかと映した……



「そんな……左手、では無く右手で受け止めただとぉ!?」
「……」


 ―――武装された主戦力であろう“左手”を使わず、僅かに前傾姿勢を取って甲殻以外はそこらの少女と太さが殆ど変わらないその“右手”で、易々と受け止めてしまっている光景を。

 一体どれだけの握力で掴んでいるのか少女の掴んでいる地点から、ゴリラギルディの鋼を超える硬度を持つ腕に罅入っている。

 しかもゴリラルディが力ずくで振り払おうにも、震えるだけで振りほどく事が出来ない。鎧という表現が似合う筋肉を持つ怪人、その全身の筋力を爆発させたゴリラギルディの怪力ラリアットを、この少女は片手で超えるというのか。


「……ハッ!!」
「ぬぅっ!?」


 少女が気合い一発息を吐くと、左手の生物感のある装甲がバクン! と三方から若干せり上がり、獣の唸り声にも似た音が聞こえ始める。


「な、なにを……!?」


 ゴリラギルディは嫌な予感を覚え咄嗟に右手で振り払おうとしたが、それは異形の左手で押さえつけられてしまう。

 その間にも獣の唸りは止まず、それにより戦慄は増長していく。


「や、やめろぉぉぉっ!?」



 最早叫ぶ事しかできない。

 そんなゴリラギルディへ紫色の少女が見せた表情は、悲哀を含んだものでも嗜虐的思考を感じさせるものでも無く……圧倒的なまでの“無”だった。


「……“風砲暴”(ふうほあかしま)


 淡々と述べられた言葉の直後、紫色と灰色混じる破壊の乱気流が零距離で容赦も無く放たれ、巨躯を持つゴリラギルディの全てを呑み込み、最後の叫び声すら上げさせずバラバラに吹き飛ばした。

 全身を不揃いにブツ切りにされ転がるゴリラギルディから又も戦闘員と同じように、しかし戦闘員よりも格段に濃いオーラが放出され始め、少女も戦闘員の時と変わらず同じように吸い込んで咀嚼し、至福の表情で呑み込んだ。


 ゴリラギルディが音もたてず燃え上がり消えていった後には、彼等の変態ぶりや厳めしさからは想像できないほど綺麗な宝石が転がっていたが、少女はそれをも摘み上げて口の中へ放り込んで噛み砕いた。


「……ごちそうさま」


 少女はそれだけ言うと、荒れ果てた土地と凄惨な戦闘を何も感じさせない、穏やかなそよ風に乗って消えていった。









「な、なんなんだ……何なんだよアイツ!? く、喰って……!?」

「嘘、嘘よ……有り得ていいのこんな事……!?」





 偶然その様を目撃した、赤と青の人影に気が付いていたかは、今となっては知る由も無い。


 
 

 
後書き
 何故主人公が少女風の口調なのかは、次の話で分かります。……意外と単純な理屈だったりします。 
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