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ソードアート・オンライン~十一番目のユニークスキル~

作者:りんまろ
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唯一無二の不確定因子
  第二十話 罪滅ぼし

 
前書き
二話連続投稿です。 

 
「キリト君ってば!!」

 悲鳴にも似たアスナの叫びに、キリトは顔をしかめながら上体を起こす。
 キリトは数秒ほど意識を失っていた。空中にはまだ青い残滓が舞っている。

「いててて・・・・・・」

 目の前には、ぺたりとしゃがみこみ、顔を泣き出す寸前のように眉根を寄せて、唇を噛み締めるアスナがいた。

「バカッ・・・・・・! 無茶して・・・・・・!」

 叫ぶと同時にすごい勢いで首にしがみついた。キリトは眼を白黒させる。

「・・・・・・ごめん。アスナを、みんなを救うにはあれしかなかった」

 申し訳なさそうに言うキリトに、アスナはくしゃっと顔を歪め、その表情を隠すように肩に額を当てて呟く。

「・・・・・・怖かった・・・・・・キリト君まで死んじゃうかと・・・・・・思って・・・・・・」

「アスナ・・・・・・」

 キリトは栗色の長い髪を優しく何度も撫でた。そこにクラインが彼に声を掛ける。

「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ・・・・・・」

「・・・・・・そうか。ボス攻略で犠牲者が出たのは、六十七層以来だな・・・・・・」

 一瞬の沈黙。それをクラインがこれ以上ない冷たい声で破る。

「・・・・・・なあキリト。さっきのスキルはなんだよ?」

 キリトはすっと顔を上げる。気づけば、アスナを除く、部屋にいる全員が沈黙して、次の言葉に耳を澄ましていた。大方、先刻使った未知のスキルに興味があるだろう。だが、その中でクラインだけが険しい顔をしていた。

「・・・・・・エクスラスキル。<二刀流>」

 おお・・・・・・というどよめきが、軍の生き残りやクラインの仲間のあいだに流れた。
 しかし、クラインだけはより一層顔を険しくさせた。

「そのスキル、PoHの時に使ったのか?」

 その質問にキリトは眼を逸らし、顔をしかめた。

「・・・・・・いいや。使っていればリオンは死ななかった・・・・・・」

 しばしの沈黙。その中でクラインは、赤いラインが数ドットの幅で残っているキリトのHPバーを見つめ、叫んだ。

「だからそうゆう無茶をしたってのかよ・・・・・・バカヤローーーーー!!!!!!」

 無精ひげが生えた頬にふた筋の涙が流れていた。

「キリト・・・・・・お前ェは・・・・・・お前ェはいっつもそうだ。全部自分一人で抱え込んで無茶ばっかしやがる・・・・・・確かにあそこで無茶してくれなきゃ全滅してたかもしんねえ・・・・・・それでもよぉ・・・・・・少しでいい・・・・・・少しだけでも自分のことを考えてくれよぉ・・・・・・」

「・・・・・・すまない」

 キリトはクラインの心からの叫びにそう呟くことしかできなかった。

 ――――分かった、なんて言えない。もしまたこうゆう場面に遭遇したら俺は・・・・・・

 キリトは申し訳なさそうに視線を逸らした。クラインはそんな親友の様子から全てを悟ったのか顔を曇らせると、踵を返して仲間に合図をした。そのまま部屋の奥にある大扉の方に歩いて行く。そして扉の前で立ち止まると、振り向いてチラッとキリトを見る。

「・・・・・・せめて、クリスマスの時のようなことは繰り返さないでくれよ」

 クラインはそう言い残すと、扉を開けて仲間と一緒にその向こうへ消えていった。
 キリトはどこか寂しげな雰囲気を漂わせるその後ろ姿に心を痛めていた。そんな中、軍のプレイヤーたちが座り込んだままのキリトとアスナに深々と頭を下げ、部屋を出て転移結晶で次々とテレポートしていく。だだっ広いボス部屋にキリトとアスナだけが残された。
 キリトはクラインが別れ際に残した言葉を深く噛み締めていた。

 ――――クリスマスのように、か・・・・・・。アリスは、大丈夫だろうか。彼女が俺と同じ轍を踏むとは考えにくいけど、あんなに取り乱した姿を見るのは初めてだ。もしかしたらがあるかもしれないな・・・・・・

 彼は自身の肩に頭を乗せたままのアスナに囁いた。

「アスナ・・・・・・アリスの元へ行こう。そして、二人でアリスのことを支えよう」 

 その囁きにアスナは無言で頷く。了承したのを見て、彼は心の中で誓いを立てた。

 ――――俺一人じゃ無理でも、アスナとなら支えられる気がする。いや、支えて見せる。それが俺にできる唯一の罪滅ぼしだ・・・・・・


 ◆


 その頃、アリスはふと何かを思いだしたかのように、おもむろに転移結晶を取り出すと、微かな声でこう呟いた。

「転移・・・・・・コラル」

 アリスの体が青白い光に包まれ、指定された街に移動する。そのまま彼女は街の入り口へと、ゆっくりと歩いていった。まるで鎖にでも繋がれている足を引きずっているのかと思わせるほど重い足取りで。






大切なものは

失っても心の中からは決してなくならない――――

ただ壊れて

破片となって心に残り続ける・・・・・・



心に残った破片は

心臓を貫き

その人間を壊す・・・・・・




 
 

 
後書き
二十一話目です! 

実はこの話が記念すべき二十話目です!!(プロローグを除く)
そして、お気づきの方もいると思いますが、クリスマスであり、二十話目記念と言うことで、扉絵用のリオンとアリスのイラスト書きました!!

めっちゃ頑張りました(笑)ちなみにアリスの鎧は血盟騎士団verです♪

さて、ストーリーの方についてですが、次の話からオリジナル展開の始まりです。^^
これからお楽しみください!!

誤字脱字の報告、感想お待ちしております!! 
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