どっちにするの
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第一章
どっちにするの
雅美菜はえくぼが目立つ女の子だ、二重の目は黒目がちで眉は優しい感じだ。少し赤をかけた黒髪を首の根のところまで伸ばし耳を出している。薄い唇はピンクで横に大きく白い綺麗な歯が見えている。
その美菜がだ、喫茶店の中で恋人の水無朔ににこにことして言っていた。
「この店ってケーキが美味しいのよ」
「美菜本当に好きだよね」
朔は自分の向かい側に座っている美菜にこう返した。
朔は白い細面で目は狐を思わせる一重のものだ、眉は少し薄く目と添った形である。鼻が高く薄いピンクの唇はにこにことしている、黒髪をワイルドな感じでカットしている。背は一六六程である。
「ケーキが」
「大好きよ、本当に」
「そうだね、甘いものが好きだけれど」
「その中でもね」
特に、というのだ。
「私ケーキが好きなのよ」
「まさに大好物だね」
「そう、特にね」
「特に?」
「ここのお店はケーキが凄く美味しいから」
それで、というのだ。
「朔君にも紹介したくてね」
「今日一緒に、なんだね」
「そうなの、駄目かな」
「駄目じゃないよ」
朔はにこりと笑って美菜に答えた。
「だって俺もケーキ好きだし」
「甘党だしね、朔君も」
「うん、だから今日は嬉しいよ」
にこにことして答える朔だった。
「実際にね」
「それは何よりね、私も喜んでくれるのならね」
「紹介した介があるっていうんだね」
「ええ、だからね」
「今日は嬉しいんだね」
「ケーキは嬉しい気持ちで食べないとね」
食べるのならば、というのだ。
「それならね」
「そうね、それじゃあ今からね」
「ケーキ頼みましょう」
美菜はにこにことしたまま朔に言った。
「そうしようね」
「それじゃあね、今のからね」
朔もにこにことして応える、そうしてだった。
二人でお店の人、注文を受けに来たウェイトレスさんにケーキセットを頼んだ。するとウェイトレスさんは二人にこう言って来た。
「本日のお勧めケーキですが」
「はい、何ですか?」
「どのケーキがお勧めですか?」
「二つありまして」
ウェイトレスさんは二人にこう言って来た。
「チョコレートと苺の生クリームです」
「チョコレートと、ですか」
話を聞いてだ、美菜は言った。
「苺の」
「はい、そうです」
「そのどちらかも選んでいいんですね」
「はい、そうです」
まさにその通りだというのだ。
「そうなります」
「そうですね、じゃあ」
「どっちを頼もうかな」
朔もウェイトレスさんの話を聞いて言う。
「チョコレートか苺か」
「どっちかよね」
「一個だし、頼めるのは」
このことは言うまでもなかった、実際メニューにもケーキ一個と紅茶かコーヒーとはっきり書かれている。
「どっちにするかだね」
「飲み物はもう決まってるから」
「うん、俺紅茶にするよ。ミルクティー」
「私も」
二人共ミルクティーだ、だからこのことは問題がなかった。
「だからね」
「問題はケーキだね」
「どうしようかしら」
考える顔でだ、美菜は言った。
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