Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃
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3 閃く刃
「シュン!スイッチ!!」
声を背中で聞いた瞬間、大上段で振り下ろされたロングソードを左手の短剣で横に流し、
「OK!せーのっ!!」
叫びながら右の長剣で片手剣スキル【バーチカル・アーク】を起動。
システムアシストを受けて加速した長剣がライトエフェクトの軌跡を描きつつ目の前の魚人のようなエネミー「サハギン・ロード」を捉えた。
振り下ろしからの鋭い切り上げを叩き込み相手をノックバックさせる。
そしてノックバックによって出来た隙にすかさずキリトが反応。
「せぇやあぁぁぁ!!」
叫び声とともに片手剣スキル【レイジスパイク】で突っ込む。強烈な突進切りの追撃を叩き込むとサハギン・ロードはポリゴン片となって消えた。
戦利品を示すウィンドウが小さく現れる。
ここは第24層迷宮区。
湖の層だからかさっきのような半魚人が大量にPOPしており、1対1なら驚異ではないが群れに遭遇するとスイッチや挟撃といった戦術的行動をしてくるため厄介なことこの上ない。
さらにPOPするペースがかなりハイペースで戦闘時間が伸びやすい大、中規模パーティだとジリ貧になりやすい。
そのため、この迷宮区のマッピングは俺たちのような少数パーティやソロプレイヤーが担当していた。
「前回はこの辺で終わったんだっけか?」
狩りのついでにマッピングをしていたというキリトに尋ねる。
「ああ、まぁもうそろそろボス部屋だろうからすぐ終わるだろう」
キリトはそう言うとマップデータを送ってきた。さっそく開いてみると確かに次の小部屋まではマッピングが終わっている。
「それじゃあ行くか」
ライフポーションを飲み終えると俺らは立ち上がった。次の小部屋でもPOPしたサハギン達を蹴散らして次に進む。
「流石キリト、勘がドンピシャだったな」
扉を押し開いて小部屋の先に進むとそこには急に開けた大きな通路になっていた。道の両脇には等間隔で装飾のついた篝火が設置され、奥には異様にプレッシャーを放っている重厚な扉。道に入ったにも関わらずサハギン達が湧く気配もない。
間違いなくあの扉の先がボス部屋だ。
「どうする?偵察だけしてみるか?俺らのレベルなら少しならちょっかいも出せると思うし。」
キリトに尋ねると、
「ああ、そうだな。そろそろ現物の情報も必要になってくるだろう」
「ん、じゃあ現時点のデータを送ってもらおうか。」
とフレンド欄のAsunaに向けてメッセージを飛ばす。
偵察のための情報を欲しい事を書いてメッセージを送りボス部屋前の扉の横に座り込んだ。
「これでよしっと。キリトさ、最近はどうなの?」
唐突に尋ねた。それを聞くとキリトはこちらを向いて、
「いや、相変わらずさ。最近はマシだけど今でも時々ビーターっていわれるよ。」
少し声を暗くして返してきた。
「ビーターなぁ・・・どっちかというとチーティッシュってのがお似合いだよな、お前」
「チーティッシュって・・・流石にそれは身に余るよ」
と苦笑していた。
ちなみにチーティッシュとはチート並みという意味。簡単に言うとPSがチート並みに高いプレイヤーへの賞賛の意味で、ゲーマーに対する最高レベルの褒め言葉という事だ。
普通だとFPS等PS重視のゲームで使われる言葉だがステータスと同じくらいに個々の実力が問われるSAOにおいてはニュアンス的にも通じるため、俺はよく使っている。
そんな事を話していると新着メッセージ欄に通知がきた。メッセージによるともう情報はほぼ出揃っていたらしい。
・ボスは恐らくサハギン系の親玉で長槍を装備している。
・取り巻きに多数のサハギンが湧くかもしれない。
・HPが半分以下になると長槍を捨てて攻撃パターンが変わり特殊技も使ってくる。
この三つくらいだそうだ。
それとは別にもう攻略部隊を編成、出発しているためマップデータが欲しいらしい。多分俺らが行っている間に攻略会議でも開いていたのだろう。
了解の意思とともにマップデータを添付して返信した。
この情報をキリトにも伝え、危なくなったら転移結晶で離脱する事、アスナ達攻略部隊が出発しており早ければ15分くらいで到着する事を打ち合せした。
「どうする?待ってるか?」
俺が聞くと、
「俺はどっちでもいいけど、お前はどうしたい?」
キリトも質問で返してきた。俺は少し考え込むと、
「・・・行くか。」
流石に15分も待ちきれない。
「ああ、わかった。気をつけろよ、シュン。」
苦笑まじりにキリトが答えると扉を押し開き、二人は中へと入っていった...。
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