IS<インフィニット・ストラトス> 可能性を繋ぐ者
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黒いウサギと輝く不死鳥
それは、ある日の訓練の時のこと。俺がこの部隊に来てから半年がたった日
「よし、一旦休憩!」
織斑教官がそう言うと、隊員の殆どが座り込む。なんせ、織斑教官のメニューは結構しんどいものだからだ
勿論、それが自分の実になるとわかっているので文句は誰一人として言わない。弱音もはかない
その中でも、数人立っているものがいた
俺と副隊長、それから...
「リンクス!模擬戦をするぞ!」
「はいはい。ルールはいつも通りでいいか?ボーデヴィッヒ」
この半年でメキメキ実力を伸ばし、NT-Dを使わなければ互角かそれ以上のレベルだろう
というか千冬さんに訓練中のNT-D使用を禁止された、というのも稼働データと俺のデータを比較して使うのは身を削る行為で、それは実戦でのみするべきだという結論に至ったからだ
それに連動してフェネクスは性能にかなりの制限がかけられることになった。言い訳ではないですよ?
実際、ボーデヴィッヒに負けるのは俺の実力不足だ。結局、千冬さんとの戦いではサイコフレームの性能でごり押ししただけとも言える
ちょうどいい機会だからユニコーンモードでもそれなりに戦えるようにしようと思ったのが二ヶ月前
その頃から部隊訓練でも正式に模擬戦が追加されたのでいい機会だったのだ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
彼女について俺が知っていることは少ない
俺がこの部隊に来てすぐの頃、彼女の部隊内での成績はあまりいいものではなかった
というのも、後天的に埋め込まれたナノマシンによる拒否反応があったかららしい
今は千冬さんの訓練成果もあり、部隊内では模擬戦最強と言われている。次の部隊長は彼女になるのでは?という噂もあるくらいだ
あとは専用機を持っているというのもある。といっても仮なのだが
そしてそれがなかなかの曲者であって....
「そこだ!」
「やばっ!」
ボーデヴィッヒの金色の瞳が俺を睨み、その先に居た俺の動きが止まる
それをなしているのがボーデヴィッヒの専用機、第三世代ISシュバルツェア・レーゲン
軍用機として想定されており基礎スペックは相当高い
さらに特筆するべきは第三世代ISを第三世代たらしめている特殊兵装
操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した兵装だ
シュバルツェア・レーゲンに搭載されているのはAICーーアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。性質からボーデヴィッヒは停止結界と呼んでいる
AICは全てのISに搭載されているPICーーパッシブ・イナーシャル・キャンセラーの発展させたものだ
効果は単純、故に強力。好きな物体の動きを止める、もちろん射程はあるが
もちろん、それを行うには多大な集中力がいるのだが、この手の特殊兵装は使えば使う程に慣れてくる
そして、模擬戦を繰り返しーー中には千冬さんの全力瞬時加速を止めろという無茶もあったーーを繰り返し、戦闘経験値を積みまくった成果として、タイマンであれば殆ど全てのISを止めることができるようになって居た。さらには、それを行いながら自分よりも実力が劣っている敵なら互角に戦えるレベルの集中力も身につけていた
そして俺はいま、それに引っかかってしまったわけで
「ぐぬぬぬぬぬぬ」
「私の勝ちだ!!」
ボーデヴィッヒがレールカノンの砲塔をこちらに向けて
「くらえ!」
撃つ、撃つ、撃つ。絶え間無くこちらに撃ってくる。いやー、手加減ねぇ
でも
「甘い!俺がいつまでもそれの対策練ってないと思ったか!」
AICは全ての物体を止めることができる。しかし、一定以上のスピードには耐えられないという弱点もある。これは稼働データから推測されたものだったが、うまく行ったらしい
やったことは簡単、一瞬だけ全てのエネルギーをブーストに回しかつ瞬時加速を行うということ
本来そんなことをすればいくらISとはいえオーバーヒートは免れないだろう
だがこの機体はデストロイモードでも耐えられるのだ、それ位はへでもない
「く!」
俺は左腕からビームサーベルを抜いてラウラに向かう。勿論さっきの二の舞は踏まないように適度に牽制もする
右腕に装備しているアームド・アーマーDEについているメガ・キャノンを照射モードではなく単発モードにして撃ちながらもビームマグナムによる追撃も忘れない
そしたらやはりボーデヴィッヒは回避に集中力をもっていかれているようで、俺を止めることすらできない
しかし、回避に専念されるとこちらの攻撃はなかなか当たらない。向こうはこちらの攻撃する方向をハイパーセンサーを用いて予測し、的確によけていく
このままでは埒があかない。さっき瞬時加速は使ったからリチャージがまだ終わってないため、急速接近は出来ない
賭けに出るか....勝つにはそれしかないだろうな
俺はアームド・アーマーDEを右腕から背中に戻した
「行くぞ!!」
「な!」
俺は気合と共に、左右二つのアームド・アーマーDEのブースターを吹かした
アームド・アーマーDEは特徴が三つある
一つ目はシールド兼近接武装
二つ目はメガキャノン
そして三つ目はバックパックに付けることで追加ブースターとしての役割を果たすというものだ
今回は三つ目を使って相手に急速接近を試みた
ただ直線距離しか動けないので、相手に捕捉されればAICで止められる
だから、勝負は向こうの反応速度を超えられるかだ...!
「はあああああ!」
「停止結界が間に合わない!?」
ボーデヴィッヒは俺に視線を向けるがその時には俺はそこにはいない
一閃、俺はビームサーベルをその突進速度のまま相手を切り払った
そのままボーデヴィッヒは地上に落ちて行き
『シールドエネルギーゼロ。勝者クラルテ・リンクス』
どうやら賭けには勝てたようだ、危ない危ない。そろそろデストロイモードじゃないとボーデヴィッヒに勝てなくなるぞ...
もしくは例のプランを使うかだが...まだ試作段階だしなあ
まあ、なにはともあれ今回勝てたことを喜ぼう
「ボーデヴィッヒ大丈夫か?」
俺は地上で膝をついていたボーデヴィッヒの元にISを解除して向かった
「ああ。まさかそれがブースターだとは思いもよらなかった」
「使い所が難しくって今まで使ってこなかったからな」
ボーデヴィッヒは立ち上がってISスーツについた砂を払って
「次は負けない、それの対策もきっちり練ってこよう」
ニヤリと笑いながらそういった
「楽しみにしてるよ」
それに対し俺も笑みで返した
でも、こういったはいいけどガチで対策してくるから本当に困る。まじ辛いです
それが終わるとちょうど休憩時間が終わって訓練が再開される
あれ、休憩とってな.....
嘘だと言ってよ教官!!
俺は、訓練が終わる夕方には親父の姿が見えた気がした...
そっちにいかなくて本当に良かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よし!プランBのマッチング及びインストール完了っと」
夜、月が真上に来る頃に俺は整備室で一人ISの整備をしていた
実はフェネクスの拡張領域にはまだかなりの余裕があり、ある強化プランの武装を丸々インストールができる位の容量はあったため、ならば実装しようぜってことで今はその作業中
後はここ最近のフェネクスの戦闘ログを整理してなかったのでそれをしに来た
俺はキーボードを操作して戦闘ログを開く
整理してないのはここ一ヶ月か...とりあえずバックアップとって人物別に分けてフェネクスにフィードバックさせるか
その作業を俺はたんたんとこなして行く。うむ、見事に面倒くさい
だが、ある文を見つけた時俺の指が止まった
「え?嘘だろ???」
そこに書いてあったのは
「シュヴァルツア・ハーゲンとの戦闘中に外部からサイコウェーブ感知...」
俺は暫く口が開いたままになってしまった。なぜなら、このデータが正しければボーデヴィッヒはサイコウェーブを発することができるということになる
千冬さんとの模擬戦以来、緊急時以外のNT-D発動が禁じられているため常にフェネクスに対し"ガンダムになるな"という思惟を送っているのが仇になったか、そうでなければすぐに気がつけたのだが
まあ、それだけならいいんだ。それだけなら
前に千冬さんとの模擬戦の時、どう考えても千冬さんから感応波が出ていたとしかおもえないデータがあった。その時は過去の感応波と照らし合わせても同じ物は無かった。普通はそれでいいんだ。サイコウェーブというのはその個人の物で唯一の物なのだから
だが、ここに記されているデータは....
「もしもし、アルフレドさんですか?うちの情報網つかってラウラ・ボーデヴィッヒの情報を調べてください。俺の予想が正しければ...」
俺はその後二言三言話し、通信を切った。この予感が外れることを祈るんだが....
俺は悪い予感を振り払うように首を振り、フェネクスの調整作業に戻った
だがキーボードを打つ間も、胸に広がったなんとも言えない感覚は消えなかった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日は生憎の大雨だが基礎訓練と模擬戦は普段通り行なわれた
途中で晴れることも期待したがてんでダメだった
そして何時ものメニューが終わった後、フェネクスにメールが届いていた。しかもガッチガチの暗号化処理もされて
それを10分くらい掛けて解いて、開いた
.............
俺はそれを消去し、すぐに外套を羽織り正門に向かった
しかし、その途中で会いたくない人にあってしまった
「どこにいくつもりだ?クラルテ・リンクス」
「千冬さん....」
織斑千冬が腕を組んで廊下の壁にもたれかかっていた
「いまのお前は軍属だ、勝手に出るのは許されないぞ」
「承諾は後でとります。いまは時間がない」
「出来ると、思っているのか?」
もたれかかるのをやめてこちらに近づいてくる
「出来る出来ないじゃない。やるしかないんだ」
「そうか...ふっ!」
千冬さんがこちらが認識出来ない速度で俺を投げ飛ばす、そうとした
「これを避けたのはお前が二人目だな」
「貴方、本当に人間ですか?」
これを避けられたのは奇跡に近い。直感的に察知しすぐさまバックステップ、それでも手がかすった
本当に見えなかった。この人を押し通るには
「使いたくはなかったけど」
俺は懐から黒いサバイバルナイフを取り出した
そこには要所要所に切れ目が入っており、その文様はまるでユニコーンの継ぎ目のようだった
「貴方がそこを退かないのなら、押し通ります」
俺はありったけの思惟をナイフに叩き込んだ
ーーいいですか、これは新型のサイコフレームで作られたサバイバルナイフです。貴方のサイコウェーブにだけ反応して共振、スライド拡張します。それからこれには小型ですがサイコフィールド発生の補助装置が入っています。広げられる範囲は人を一人覆えるか否かというところですが人体の基礎スペックを上げるのには十分だと思います。もし、ISを広げられないけど戦わなければならないという時はこれを使ってください。しかし無闇矢鱈に乱用するのはやめてください。なにか譲れない時だけ、使ってください
いまが、その譲れない時だと思う
サバイバルナイフがスライドし、小刀くらいの大きさになる。それと同時認識範囲も広がり、今なら千冬さんの動きでも目で追えそうだ
「いきます!」
俺はナイフを構え前に突撃した。ナイフにサイコフィールドを纏わせ刺さらないようにしてから右手を突き出す
千冬さんはそれを左手で払い軌道をずらしながらもそのままの手で裏拳を打ち込もうとする。だけどそれを既に知覚していた俺はスライディングで避ける
別に千冬さんを倒せなくてもいい、その隙をついてここから抜け出せれば!!
俺の作戦は見事に成功し、千冬さんを抜きそのまま正門に走った
「すみません!必ず後で謝りにきますから!!」
俺は後ろにそう声を放ち、そのまま走り抜けて行った
運がいいことに正門に誰もいなかったので、そのままの勢いで3mくらいの閉じてある門を飛び越えた
無事に抜け出せたので、俺はメールに書いてあった座標を思い出し、そこに向かって走った
走りながら俺はメールの内容を思い出していた
『ラウラ・ボーデヴィッヒは簡潔に言うと強化人間である、しかも遺伝子操作の試験管ベイビー。その技術にはどうやら宇宙世紀時代と似通ったものを使っているらしく、そのため生まれながらにしてサイコウェーブを放てたと推測できる。なお現在成功例は彼女だけだが、そのせいで生まれてから軍に入るまではずっと非人道的な実験の道具にされていたらしい。そして今回、彼女のデータを用いて新たに強化人間が作られていたという情報を入手できた。しかしそこでも生き残りは一人らしく日常的に非人道的な実験の道具にされている。宇宙世紀の技術を使われている以上、これ以上の悪意ある実験は認められない、よって我々はその子、クロエ・クロニクルの脱出支援及びその研究所の破壊を行おうと思う。軍にはこちらから掛け合うので君はいますぐにそこを出て目標座標にむかってくれ』
強化人間は、人工的にニュータイプをつくるという計画によって生み出された
薬物投与、マインドコントロール等を行い人間の潜在的な能力を引き出そうとし、果てには遺伝子にまで手を伸ばした
そのデータが、現代でも行なわれているらしい。それは、俺個人としても認められない
例え、作られて生まれてきた命でも人間は人間だ。人が生命の神秘にまで手を伸ばすとしても別に構わない
でも生まれたばかりの、スポンジのように全てを容易く吸収してしまう赤ん坊の頃から人の方向性を強制するなんてのは間違ってる
それだけは、絶対に許せない
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「行かせてよかったので?司令」
「ああ。どちらにせよもう隠すのも限界だったのだ。それにあれひとつ潰れた程度でドイツ軍は揺るがんよ」
「でも、データを取られてしまうリスクもあると思いますが」
「構わん。やつらもどうせ処分されるのなら最後にフェネクスの本来の稼働データをとってから死んだ方が本望だろうさ」
「....わかりました。失礼します」
「うむ、ご苦労だった」
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ついた、ここがその研究所か...かなり広いな
大きさとしては軍事基地並みだぞ
資料によるとここら辺の衛星の通常周回軌道では写らない場所らしい
だから、どれだけ暴れようともばれない....らしい
まあそんなことはどうでもいい。ばれたってこの場所を放置していたってことを世間に公開すると脅せばなんとかなるかもしれないしな
「いくか、フェネクス!」
俺はISを起動し、研究所に突入する
入り口をビームサーベルで切り裂き、通路を最大速度で突っ切る
ビービーなって緊急事態を知らせるサイレンがなっているが、クロエ・クロニクルを救出してしまえばあとはどうとでもなる
強化人間ならば....
「フェネクス、俺に力を貸せ!」
NT-Dを起動させ、ユニコーンモードからデストロイモードに変形する。そうすることにより、サイコミュの感知範囲を広げ、なおかつ俺自身の知覚範囲を広げる算段だ
フェネクスの装甲が開き、サイコフレームが露出する。最大共振まではいってないので普段通りの青色に発光している
どこにいる...俺の声が聞こえるなら答えてくれ...!
俺は基地を壊しながらも感応波を拾おうと意識を集中させる
すると、わりとすぐに反応があった
「あっちか!」
壁を壊して進んでゆく。声が聞こえた方向に
5.6枚抜くと、広い場所にでた。どうやら格納庫のようだ
強化人間用ISの開発も行なっていたのか!
そして、俺はクロエ・クロニクルを見つけた。てかあれボーデヴィッヒじゃないのか?雰囲気そっくりという瓜二つだぞ
まあそれは置いておいて
いままさに彼女に向かって拳銃が向けられている。そんなものは使わせやしない!
「うおおおおお!」
瞬時加速を使って拳銃を持っていたやつを吹きとばす
そいつは壁に叩きつけられ意識を失ったようだ
「君がクロエ・クロニクルかい?」
「あ...はい。あなたは?」
俺はクロエ・クロニクルの前に、彼女を護るように立つ
「君を助けに来た。いますぐにここから出るんだ。後で迎えに行く」
「え....」
「いいから早く!護衛はつけるから!」
俺は後ろについているDEを分離させファンネルのように扱う。クロエ・クロニクルの周りを周回させ守らせる
「行くんだ!!!」
「....!」
彼女は出口に向かって走り出した。その途中で銃声が聞こえるがそれは全てDEに防がれる
俺は彼女の姿が見えなくなると、DEを殺気を感じたらそれを防御するようにして、いまさら出てきたこの研究所配属のISと戦う
「ちっ!よくもやってくれたな!!」
「貴方たちがこんな非人道的なことをしてるからでしょう!」
見たところISは三機か。ISはラファールとリゼルが二機...リゼルがでて来る時点でドイツ軍が関係してるのは明らかだな
うちはこういうところには機体を出さないようにしてる。だから、ここでリゼルが出てくるってことはちゃんとした所から支援を受けていると同じことだ
リゼルは既にメガ・ビーム・ランチャーを構えており援護に徹する気でいる
この場合の定石は後ろのやつから倒すんだが、ラファールよりもリゼルの方が性能は上だ、迂闊な接近は俺の首を締めるだろう
仕方ない...あまりやりたくはないが
「すまない、力を貸してくれ!」
俺はこの場にいる残留思念に呼びかけ、右手をラファールに翳した
ーーうん、いいよ
ーー貴方の思い、受け取りました
ーーいこうか、みんな
「ありがとう...」
そして、その右手からは赤色のサイコフィールドが発生し、ラファールを絡め取った
「な、なんだこれは!!ひっ!」
普通の状態でもこの機能、サイコミュ・ジャックは使えるが、今回は残留思念にまで干渉することでISまで止めることをできるようにした
これで暫くラファールは動けない。今のうちに後ろのリゼル二つを落とす!
「ビームマグナムならば!」
俺はビームマグナムを二丁拡張領域から取り出し、両手で構える
そして、二機のリゼル両方をロックし撃つ
片方は完全に避けられたが、もう片方には掠り
「な!一発でエネルギー切れだと!」
当たり前だ、なにせ普段かけて居る競技用リミッターを外して居るからな
確かにMSに積んでいるビームマグナムの威力ほどはないが、現行ISに撃てば掠るだけで落とせるだけの威力はある
片方は落とした。俺はもう一方の避けたリゼルに向かう
「はやい!!」
相手は後ろに飛びながらビームライフルを撃つ、それを俺は全て避けトンファーで突撃する
右のトンファーでリゼルを突き飛ばし、それを左拳で追撃する。リゼルは後ろにぶっ飛んで壁に叩きつけられた
どうやら操縦者は気絶したっぽいな
俺はそれを見てやっと解き放たれたラファールを見た
「ひっ!!も、もう何もしないから!!降参するから命だけは!!」
俺はそれを見ても、特になんの感慨もなくマグナムを撃つ
「お前たちが言えたことか、人をなんだと思ってんだ!少なくとも、お前たちは人として死ねるんだから...」
「く...」
ビームマグナムはISに当たり、限界を迎えたのかラファールの展開状態が解除された
「後はクロエ・クロニクルを回収するだけだな」
俺は彼女が向かった方向にフェネクスを向け、飛んだ
とりあえず、彼女はアナハイムの本社で預かってもらおう。その方が安全だろう
そう考えていたが、研究所を抜けた先には
「な!DEしかない!?」
そこには、護るものを見失いただ浮遊していた
確かに、俺はインテンション・オートマチック・システムとDEを直結して、DEが作り出したサイコフィールドに殺意か敵意を感じたらそのまま反射で反撃が防御反応を起こすように命じた
だから、敵意も殺意も無ければ彼女を連れ出せる。でも、本当に可能なのか?そもそもが、彼女を包んでいるサイコフィールドに入ることすら困難なのに
少し考えて、俺は一つの可能性にぶつかった
確かにいる。敵意も殺意も持たず、サイコフィールドの中に入れる可能性を持つ人物
ISの...ISコアの生みの親、篠ノ之束博士
俺の仮説が正しければ、彼女はサイコフレームを扱え、サイコフィールドを知っている
博士の為人は知らないが、もし本当にこれがあっていれば大丈夫、かもしれない
まあ、少なくとも悪い人に攫われたわけではなさそうだから一先ずは良しとするか...
俺は最後に研究所をマグナム照射で完全に壊してから基地へと帰って行った
本当にお咎めは無かったが、千冬さんに頭を下げたら拳骨が飛んで来て一瞬意識が飛んだ
でも、凄い悲しそうな顔をしてたから、流石に心配をかけ過ぎたと思い素直を受け止めた
そして、俺がこの舞台に入ってから一年が経った
「では、これまで我々を鍛え上げて下さった織斑教官と、共に切磋琢磨しあった仲間であるリンクスに、敬礼!!」
新たな部隊長となったボーデヴィッヒが読み上げ、後ろに控えていた隊員が敬礼をする
向かい合うように立つ俺と千冬さんもそれに合わせて敬礼をする
そう、今日俺と千冬さんはドイツ軍から出された条件である一年間の従軍期間を終えた
そのため、今俺たちは基地の正門前で部隊一人一人の言葉を聞いている
最初はわりと仲が悪かったみんなとも最後には仲が良くなれた。みんな別れを惜しんでくれてる
千冬さんの方はなんか、もうファンクラブっぽくなってたからなぁ...
そして、俺の前には最後にボーデヴィッヒが来た
「千冬さんの方に行かなくていいのか?」
「教官とは昨日話したからな、それにしても行ってしまうのか」
俺は肩を竦めて
「まあ学校にも行きたいし、アナハイムの仕事もしなきゃいけないしな」
そういうとボーデヴィッヒは残念がり
「そうか...」
「なあ、ボーデヴィッヒ」
俺は言葉を紡ごうとすると
「ラウラだ、そう呼んでくれ」
と、俺の目を見ながら言った
「ラウラ、結局俺はお前に勝ち越せなかったなぁ...」
「ふ、何を言う。お前は一度も変身しなかっただろう?」
ラウラは少し怒ったように言う
「まあな。実際あれは俺にとっても命懸けだし」
俺は目を逸らしながら答える
「もう、会うことは無いかもしれんな」
ラウラが目線を下に下げながらそう言う
「俺は一般になり、お前は特殊部隊の軍人だからな」
ラウラは顔をあげ
「....元気でな」
と一言
「おう。お前も、死ぬなよ?」
俺も一言だけ言って、ラウラは下がって行った
それと同時に正門前に迎えの車が来た
俺と千冬さんは最後にもう一度礼をして、車に乗った
「織斑様は空港でよろしいですか?」
「はい。わざわざありがとうございます」
そのまま車は空港へと向かい、千冬さんとの別れも来た
「さて、ここでお別れだな。日本に来る時は言ってくれ、弟と共に案内くらいはしよう」
「はい。今日までありがとうございました」
千冬さんは笑いながら
「いや、お前に教えられたこともある。こちらこそ礼を言わせてくれ、ありがとう」
俺はまだ喋ろうとしたがちょうど搭乗案内のアナウンスが流れた
「では、元気でな」
「はい。千冬さんこそ」
話したいことはまだまだあるが、きっとまた会うこともあるだろう。そんな気がする
俺は、千冬さんが見えなくなるまであの人の背中を見ていた
それから、俺はアナハイムでISについての様々なことを学び、学校にも通った
自作した第三世代ISも正式に商品化し、第四世代機も開発のめどが経った
そして三年の歳月が経ち、俺は
「本当に日本に来ることになるとは...」
日本の四季というのは素晴らしいなー、とか思いつつ俺はある学校に向かう
IS学園。IS搭乗者を鍛えるための専門学校
そこに俺はアナハイムの企業代表として入学する。しかも、史上二人目の男子搭乗者というものまでついてきた
今日はその入学式。多分、入ったらまるで希少な動物を見る時のような目でみられるんだろうな...
せめて知り合いでもいれば...って弱気になったらいけないな
俺は、目をつぶり深呼吸をする。よし、いくか
覚悟を決め、俺はIS学園の門をくぐった
ーーフェネクス。もしも俺が挫けそうになったら力を貸してくれ
その胸に、輝く不死鳥を携えながら
後書き
後半思うようにいかなかったけど思いつかないから投下します...
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