IS<インフィニット・ストラトス> 可能性を繋ぐ者
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リンクス家の呪い
『クラルテ、暫くはサイコフレームの最大共振は抑えるように。少なくとも15になるまではな』
「...やっぱりそうなりますよね」
あの模擬戦から2日が過ぎた。訓練が終わりいま俺は自分の部屋でアナハイム本社と秘匿回線で通信中だ。軍事基地内だから長い間電話していればばれる危険性があるが、今回は大丈夫らしい
『わかってるならよし。今のおまえだとあっという間に向こう側にいってしまいそうでな...。まあただ単にNT-Dを発動させるくらいなら問題は無いだろうが、問題は疑似的であってもサイコ・フィールドをおまえさん一人で発生させたことだ。それだけは注意してくれよ』
「わかっていますよ、アモンさん。データは後でフェネクスに直接送ってください、そろそろ切ります」
俺はそのまま通信を切り、それと同時にノック音が聞こえてきた
「はい、どちらさまでしょうか?」
「私だ。少しばかり聞きたいことがあってな」
千冬さんの声だ。俺は椅子から立ち上がり、ドアの鍵を開けて
「はい。中に入りますか?お茶くらいは出せますが」
「む、ならば好意に甘えるとしよう」
千冬さんを中に招き入れた。俺は座っててくださいと言って、家から持ってきた客用のティーカップと俺自身が愛用しているティーカップの二つを取り出し、某リプ○ンのティーパックを使って紅茶を淹れながら
「あ、千冬さんって甘いもの食べますか?」
「織斑きょう...まあここではいいか。食べるぞ」
「では、チーズタルト出しますね」
冷蔵庫からホールのチーズタルトを取って、それを二切れ分切ってからしまう
あとはお皿に盛って....よし
あ、忘れてた
「千冬さん。ベッドの横に立て掛けてあるテーブルたてていただけませんか?」
「これか?わかった」
「ありがとうございます。紅茶はインスタントですが、どうぞ」
「すまないな。いただきます」
千冬さんと俺は互いにチーズタルトと紅茶を一口ずつ口にいれ、暫く沈黙が続いた
それを破ったのは千冬さんだった
「単刀直入に聞く、模擬戦のときのあれはなんだ?」
あー、その話ですか...
「あれ、とは?」
一応とぼけて見るが千冬さんにきつく睨まれ
「全てだ。武器の威力は、まあわかる。納得はしよう。だが姿が変わったあと...急激に速度が上がったな?あれはちょっと現行ISではありえないだろう。それに最後のBT兵器だ。あれほど完成されているのは見たことが無い。現状最も開発が進んでいると言われているイギリスでもな」
やっぱしその話か...。この人になら話してもいいような気はするけど...、でも出来るだけ情報の流出は避けたいしなあ。むむむ...
俺は目を閉じながら紅茶を口に運ぶ。だが、千冬さんの話は終わってなかった
「それから、最後の二重瞬時加速のときいつも以上の速度が出たんだ。しかも、理論限界値を超えた速度がな。それについて知ってることはないか?」
俺は危うくティーカップを落としそうになった
「は...?少し待ってください」
ちょ、ちょっと待て
「二次移行したとかではなくて?」
「私の暮桜は少々事情があってな。二次移行しないように設定されている。だからその線はない」
なぜかと問い詰めたいがそこは今回関係ない。推測だけならあるけれど...わからない
「ちなみに、その暮桜の製作者のお名前をおうかがいしても?」
千冬さんは一瞬迷った後、他言無用で頼むと置いて
「篠ノ之束だ」
俺はその言葉に二秒フリーズした。ということはIS製作者が直々に作ったというわけか。なるほど、ならば秘密にもするだろう
そういえば千冬さんと篠ノ之博士には交友関係があると聞いたことがあったな
「では、そろそろこちらの質問にも答えてもらおうか」
いよいよ千冬さんから殺気めいたものを感じるようになってきた。こりゃ生半可な言い逃れは出来そうにないな
「企業秘密もあるので教えられることは微々たるものですが、それでもいいのなら」
千冬さんもそれでいいと頷いてくれたので
「まず武器のことに関してですが、千冬さんはアナハイムの第一世代ISをご存知ですか?」
「ああ、ジェガンだったか?確かビーム兵器のテスト機と聞いた覚えがある。なるほど、それはビーム兵器の発展系というわけか?」
俺は一瞬でそこまでいく千冬さんに驚いた
「さすがです。その通りですが、ビームマグナムを制作するのにコストがかなりかかります。さらに、並大抵のISでは反動で腕の部分が故障してしまう可能性がかなり高い上に拡張領域も結構くいますから一般機への配備はないでしょう」
俺は指を立てながら説明をして行ったが少々宣伝くさくなってしまったな
「次に、おそらくこっちがメインですね。フェネクスの変形、いや変身はNT-Dシステムによるものです」
千冬さんは目を細めながら
「NT-D?」
「はい。正式名称はニュータイプ・ドライブです。イメージ・インターフェイスを応用して、搭乗者の強い意思によって機体のリミッターが解除されます。変身後がフェネクスの本当の姿になりますね」
これは嘘をついている。NT-Dは、ニュータイプ・デストロイヤー。特定の感応波、サイコウェーブを外部から感知することで発動する
まあフェネクスにはLa+プログラムが追加されており、それにより内部、すなわち搭乗者のサイコウェーブでもNT-Dが発動するんだが
それ以外は本当の事だ。NT-Dはリミッター解除の合図みたいなものだからな
「それは答えになってないな。なんであんな速度を出せるんだ?」
「企業秘密、と言いたいところなんですが...。まあ一つ言えるとしたら搭乗者を考えてないからですね。スラスターの出力が馬鹿げてるだけですよ。加速力は比喩でもなんでもなく殺人的ですから」
「む...」
千冬さんは納得してないようだな。って言ってもいきなりサイコフレームとサイコフィールドの話をしても頭狂ったのか疑われるだけだ
「あと、最後のBT兵器に関しても企業秘密です。すみません」
「いや、聞いた限りではそのISは第三世代、今まさに各国でも試作機の実験が始まったばかりだ。本来は一つももらせないようなことを教えてくれてありがとう」
「いいえ。千冬さんの疑問はもっともです」
「では、私は部屋に帰る。明日も厳しくしごくからゆっくり体を休めておけ。それからお茶美味かった。ごちそうさまでした」
「はい、ではお疲れ様でした」
千冬さんはうむと頷いて、部屋を出て行った
はぁ....。やっと緊張から解き放たれる
模擬戦でやり過ぎたな、サイコウェーブがだだ漏れだ。あの人の感情が結構伝わってきてた
俺の家系、リンクス家の子供。正確にはバナージ・リンクスの子孫にはある特徴がある
これは、リンクス家の呪いとも言うべきものだ
それは生まれながらにして、多かれ少なかれニュータイプ能力を持つこと
バナージ・リンクス...バナージ様は"ラプラス事変"の最後、"メガラニカ"をコロニーレーザーから守るためにサイコフレームを限界以上に共鳴させ、サイコフィールドを発生させた
それはかつて、カミーユ・ビダンがZガンダムに搭載されているバイオセンサーで行ったことと同じように、死者の...残留思念と共鳴し、一度は"個"を捨て和の一員となった
リディ・マーセナスーーバンシィの担い手やオードリー・バーンーーミネバ・サビ、バナージ様の奥さんがいたから戻ってこれたが、それは副作用を及ぼした
人が、まだ肉体を持って"虹の彼方"に行けないのにその扉をくぐって帰ってきた代償とでも言えばいいのか
常にサイコミュ機器に反応してしまうほどのサイコウェーブを発するようになった。そして、それが遺伝子レベルの話だったというわけだ
強化人間の子孫にもそういう体質の人間がいたらしいがいまはわからない
まあ、そういうわけで俺は生まれながらにして、しかも割と高いレベルのサイコウェーブを使えるのだ。だが、まだ完全に使いこなしているとは言い難い
だからこそ、アモンさんは俺のことを心配してくれていたのだ。向こう側、すなわち虹の彼方に引っ張られると
普通ならばないだろうが、フェネクスはフル・サイコフレーム。下手に共振を繰り返せばありえない話ではない
「はぁ...」
俺は二度目の溜息をつく。そりゃあね、普通なら相手の感情なんてこっちが集中しなきゃわかりませんよ
でも千冬さんの場合はもうプレッシャー並みでしたよええ。心臓と言うか精神的に疲れた
今日は寝よう。そうしよう
まだ寝る時間には早かったが、俺はベッドに潜り込み、そのまま寝た
実はまだ夕飯を食べてなく、そのせいで織斑教官からゲンコツを頂いたのはまたべつの話
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