劇場版・少年少女の戦極時代
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サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!
黒い鎧武
月花と龍玄、それにラピスは、サガラに教えられた工場へと急行した。
月花がラピスを抱えてヒマワリフェザーで飛び、龍玄はユグドラシル・タワーから持ち出したダンデライナーに乗って。
工場に飛び込む。中には紘汰と舞がいた。
「よかった、無事だったんだねっ」
舞が紘汰に駆け寄る前に、光実が変身を解いて舞を止めた。
「舞さん、離れて!」
「ミッチ!?」
咲も変身を解いて舞より前に出た。
「紘汰、くん」
いつもの紘汰ではない。紘汰はあんな凶悪な顔をしない。
紘汰が取り出したのは、黒ずんだオレンジの錠前とレモンエナジーロックシード。
「変身」
《 オレンジアームズ ミックス ジンバーレモン ハハーッ 》
オレンジとレモンの鎧が空中で融合し、ジンバーアームズとなって紘汰を装甲した。
黒いライドウェア。黒い陣羽織。黒い鎧。黒い兜。その鎧武はどこまでも「黒」だった。
黒い鎧武は気だるげに無双セイバーを肩に担いだかと思うと、こちらへ向けて走り出した。
光実がブドウの錠前を開錠しながら飛び出した。
「変身!」
《 ハイーッ ブドウアームズ 龍・砲・ハッハッハッ 》
ブドウの中華鎧が光実に落ち、彼を龍玄へと変身させた。
鎧武と龍玄の武器がぶつかり合い、火花を散らした。鎧武の太刀筋は常より荒く、しかし隙がほとんどなかった。
途中で龍玄も、銃では不利と悟ってか、キウイアームズに換装し、近接戦に入った。
だが、競り合えたのは最初だけで、鎧武の無双セイバーによる剣戟を幾度となくまともに食らっていた。
「シャムビシェ! あれ、どうなってるの? 紘汰くん、どうしちゃったのっ?」
「消えたアーマードライダーたちと同じだ。今のコウタは、闘争心がおもむくままに暴れるだけの存在だ」
「あなた……誰?」
舞がラピスをまじまじと見つめている。
「ボクはラピス。本当の名はシャムビシェ。キミたちがオーバーロードと呼ぶ存在だ」
「――シャムビシェか。だがもう遅い」
現れたのは、黒地の衣裳のあちこちに金細工をあしらった、恰幅のある男だった。
(サガラは黄金の果実そのものって言った。まさか、こいつが)
「裕也に化けてた奴……!」
咲はいつでも舞とラピスを守れるよう、ドラゴンフルーツの錠前を構えた。
「――ボクたちの中で、人工的に知恵の実を造り出そうとした奴がいた。でもそれが災いして、コウガネを生み出したんだ。こいつはボクたちフェムシンムの民を煽り、争い合わせた。自らが成長するために!」
「それも邪魔された。お前がその“夢”を操る力で、私を虚夢の底に封印したからだ」
コウガネと呼ばれた男は、恨めしげにラピスを睨んだ。
「だがアーマードライダーたちのおかげで、私は完成に近づいた。後はお前を消し去り、この忌々しい夢の世界を破壊するだけ。今度こそ私は、新たな世界の神となる」
鎧武が近づいてくる。最悪の敵として。咲は迷う。舞とラピスを守れるのは咲だけ、だから咲は変身しなければならない。
(紘汰くん、なのに? どんなに変わっても、紘汰くんなのよ?)
「やめて、紘汰……っ」
舞の怯えた呼びかけ。
咲は腹を括り、ドラゴンフルーツの錠前を開錠しようとした。
だが、咲が変身することはなかった。
白いレディーススーツの女が、ロープのフックに乗って飛び出してきて、鎧武を突き飛ばしたからだ。
フックから足を離して着地したのは、湊耀子だった。
「耀子おねーさん!」
「私だけじゃないわよ」
靴音を響かせて、湊とは反対側の資材の裏から出てきたのは、何と駆紋戒斗だった。
「馬鹿な! お前は相討ちになったはずでは」
「癪な話だがこの女に助けられてな」
「あなたが黒幕ね。プロフェッサー凌馬を消したのも――!」
咲は理解した。この世界では、ヘルヘイムにまつわる諸事情が起きていない。湊耀子もまた、ユグドラシルの一員のまま。つまりは凌馬に傾倒した秘書のままなのだ。コウガネに強い怒りを向けてもおかしくない。
「雑魚の分際でうっとうしいぞ」
コウガネが取り出したのは、裕也に化けていた時から持ち歩いていたロックシード。そして、どこから持って来たのか、イニシャライズ済みの戦極ドライバーも持っていた。
「変身」
《 ゴールデンアームズ 黄金の果実 》
金の光の羽毛を散らして、リンゴの鎧がコウガネを装甲し、アーマードライダーへと変身させた。
湊と戒斗は同時にゲネシスドライバーを取り出し、腹に装着した。開錠するは、レモンとピーチのエナジーロックシード。
「「変身」」
《 レモンエナジーアームズ ファイト・パワー ファイト・パワー ファイ・ファイ・ファイ・ファイ ファ・ファ・ファ・ファ・ファイト 》
《 ピーチエナジーアームズ 》
ゲネシスバロンとマリカに変身した二人は、それぞれコウガネと黒い鎧武へと向かってソニックアローを揮った。
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