遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード25 〜兄VS弟 決着〜
「この時を待っていたっす!!リバースカードオープン【決闘融合 ファイナルフュージョン】!!」
「なにっ⁉︎」
互いのエースモンスターの攻撃がぶつかり合い、拮抗し、爆発を起こす。そして、あたりを濃い土煙が覆い、二人の様子を覆い隠す。
「嘘…………引き分け⁉︎」
明日香が信じられないと声を漏らす。そして、次第に煙が晴れていく。
煙が晴れると依然として二人は立っており、さらに二人を半透明なバリアが護っていた。
「「「なっ⁉︎」」」
驚きの余り声を漏らす一同。引き分けと思われたデュエルは今だに続いていたのだ。
「あれ、どうして……」
「勝負がついてない⁉︎」
「何があったんだな⁉︎」
三人は驚きを露わにし、勝負の行方を見守る。
「俺は【ダメージ・ポラリライザー】を発動させた。このカードはダメージを与える効果を持つカードの発動と効果を無効にし、互いにドローする。そして、決闘融合を無効にしたことによって、サイバー・エンドとステルスユニオンのバトルは続行される。」
「そ、そんな……」
翔は亮の宣告に絶望する。
「終わりだ、翔。エターナル・エヴォリューション・バースト!」
「うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
サイバー・エンドの放った熱線はステルスユニオンを貫き、強烈な爆風が翔を吹き飛ばす。
◆
「うぅ……負けちゃったっす……」
地面に倒れたまま、悔しそうに呟く。だけど、その表情はどこか晴れ晴れとしている。そして、十代たちが駆け寄る前に彼に亮が手を差し伸べる。
「翔、強くなったな……。いいデュエルだった
「ガッチャッ!いいデュエルだったぜ、翔!」
「そうなんだな。よく頑張ったんだな」
「うう、ありがとう兄貴、隼君。……けど、負けちゃったっす……」
十代たちの言葉に励まされ笑顔が戻るも、勝てなかったという事実にしゅんと丸くなってしまう翔。
「けど、いい勝負だったわよ。それに学園最強の男に勝てる方がおかしいのよ。」
ちらりと明日香が紫苑を一瞥し、元に戻る。
(なぜ、俺の方を向いた……?)
紫苑はチラ見された理由がわからず、コテンと首を傾げる
「デュエルの勝敗を差し引いてもいい勝負をしてたわよ」
「ホントっすか?」
翔の問いに対し、亮が答える。
「ああ、俺もあそこでダメージ・ポラリライザーを伏せていなければ今回のデュエルには勝てていなかった。それに俺も久しぶりにいいデュエルができて満足だ。そして、翔、お前も十分に実力がついたことがわかった。だから、お前にかけた封印を解き、そしてこのカードを存分に使うがいい」
兄の言葉と共に差し出されたカードを見て、驚愕する翔。
「ぱ、パワー・ボンド…………いいんすか、まだ僕が使えるようなデュエリストになって……」
翔は昔怒られた時の記憶がフラッシュバックしたのか急に臆病になる。
「僕があそこまで戦えたのは紫苑さんがデッキを改善してくれて、アニキや隼君たちが僕を応援してくれていたからだっす。……だから」
「僕の実力じゃない、なんて言わないよな?」
翔の言葉を遮ったのはあろうことか紫苑だった。翔は紫苑が怒ったと早とちりし、びくびくとするがその逆で楽しそうな表情をしていた。
「いくらデッキを改善しようが、応援してもらおうがデュエルするのは結局のところおまえ一人でやるだろ?だから、あそこまで兄に渡り合えたのは他人のおかげじゃなくて自分の実力なんだよ。」
「け、けどいつも負けばっかりの僕がこんなにもお兄さんと渡り合えるわけ……」
翔の弁明を聞き、すこしムッとする紫苑。ここに来て翔はまたネガティブ精神が戻ってきたらしい。
「けどもくそもない。あれが本来のお前の実力なんだよ。いつもは悪い方に思考が偏ってるから、プレイングにもミスが出る。けど、今回はそれがなかったから実力が十分に発揮できた。それだけ、だろ?」
ニッと紫苑が笑みを浮かべてそう言うと翔は頬を少し赤らめ俯いてしまう。
(うぅ……あんな笑顔で言われたらそう思うしかないじゃないすか……あの笑顔は反則っす)
そんな彼の目の前に一枚のカードが差し出される。それを差し出しているのはやはり紫苑だった。
「【極戦機王 ヴァルバロイド】。これって……。」
渡されたカードを見て、目を見開く。
赤をメインカラーとしたそのモンスターは翔のエースモンスターであるステルスユニオンと負けず劣らずの存在感を放ち、数多の戦を駆け巡った王の風格を放っている。
「いいんすか、このカードを貰って……」
「ああ、元々は翔が丸藤先輩とのデュエルでマトモに渡り合えたら渡すつもりだったからな。駄目出しの点は幾つかあるけど、いい勝負だったぞ。」
(お兄さんが、紫苑さんが認めてくれた……。そして、このカードを託してくれた。なんだろこの気持ち……)
自分が尊敬してやまない人物に認めてもらい今までに感じた事がないような満足感に胸がいっぱいになり、どんな反応をすればいいのかわからなくなる。けど、これだけは言える。
(もっともっと頑張って、色んな人に認められるくらい強くなってやろう)
このデュエルを通して、翔の意識が大きく変化した瞬間だった。結果的には負けてしまったとは言え、恐らく翔の兄への依存は消え、そしてもっと強くなろうというハングリー精神が芽生えた。これは翔の大きな進歩であり、そして紫苑の思惑通りにとなったのだった。
◆
兄対弟のデュエルから一日後…………
「なぁなぁ、なんでまたお前らが居んのかね?」
額に青筋を浮かべながら、なぜか自分の部屋に居る十代と翔を睨みつける。
「いいじゃんかよ〜。それによ、紫苑にタッグデュエル用のデッキ構築手伝ってもらいたくてさ」
「よくねーよ。俺もやることあるっつーの!」
「ちょうど私達もタッグデュエル用のデッキ組んでたところだし、一緒にやってあげればいいじゃん。」
「サンキュー、翠さん」
「ありがとうっす、おじゃまするっす。」
翠は快く十代達を部屋へあげ、紫苑はやれやれとため息をはく。ついでに明日香やコアラみたいな人もちゃっかり着いてきている。
「おわー、いっぱいカードがあるっすね。今、デッキ組んでたんすか?」
リビングへ上がるや否や翔はテーブルの上に積まれているカードの山を見て驚きの声をあげる。
「そーそー。じゃあみんなでデッキ調整でもする?この辺のは基本余りカードだから好きに使っていいよ。」
「おー、すげー、色んなカードあるな。ところでさ……」
「ん?」
「タッグデュエルって、どんな風にすればいいんだ?」
十代の一言に対し、一同がずっこける。
「おまえ……そこからか」
よろよろと立ち上がりつつ、紫苑がつっこむ。さすがに予想外だったらしい。
「いや、タッグデュエルって初めてでさ。デッキの型はある程度決まったんだけど、俺と翔のデッキだとあんまり……っていうか全く共通点がないからな。」
十代は【HERO】でモンスターは主に戦士族がメイン。翔は【ビークロイド】と呼ばれる機械族がメイン。確かに共通点がない。あるとすれば、二人とも融合軸という所か。
「姉ちゃん、説明よろ……」
「丸投げ⁉︎まぁ、やろうと思ってたけどさ……」
ゴホンと一つ咳払いをすると説明を開始する。
「まずはタッグデュエルのさいに使われるデッキの型は二パターンあって、一つはプレイヤー一人をメインに置いてその人に好き勝手やらせて、相方はその人をサポートしたり、相手の動きを妨害することに特化したタイプ。
これだとメインに置かれたプレイヤーのデッキは変える必要はないんだけど、サポートする相方は専用のデッキを組まなきゃならないし、上手くサポートしてあげないと逆に味方の動きを阻害しちゃう可能性があるから難しいんだよね。」
「なるほど。けど、僕たちそんなデッキ扱った事ないっす」
「まぁまぁ、もう一つあるから。
二つ目は二人のデッキテーマを合わせて、お互いがサポートしあうデッキかな。」
「けどよ、俺らのデッキだと共通点がないんだよなー」
ダメじゃんと肩を落とす十代
「あるだろーが。HEROにしたって、ビークロイドにしたって融合主体だろ?そこをうまく使えばいいだろ。」
あっ、そっかと二人とも相槌を打つ。本当に気付いていなかったらしい。
「あと、注意する点は専用サポートカードを入れ過ぎない事かな。」
「どうしてすか?」
「自分で少しは考えろよ」
「って、言われても……さっぱりわからん」
もともと直感で動くタイプの十代は少し頭を使っただけで頭から湯気が吹き出しそうである。
「例えば……【ヒーローバリア】とかあるだろ?場にE・HERO居ないと死札になって逆に場を圧迫することになるんだよ。だから、発動するのにあまり制約がない凡庸魔法・罠を入れる事をおすすめするかな。」
「な、なるほど。確かに攻撃止めるだけならヒーローバリアより、攻撃の無力化のがいいっすもんね」
翔は納得したが、逆に十代はフェイバリットをバカにされたとふくれる。
「じゃあさ、こんなのはどうだ?【スパークガン】で相手を守備表示にして、【シールドクラッシュ】で破壊とかさ。よくね?」
「って、アニキ〜。そのカード、僕のっすよ!」
「スパークガンより、エネミーコントローラーのがよくね?」
などなど十代達がカードの利用方法の案を出し、紫苑がそれを評価し、代案を出すという作業が行われた。
◆◇◆
「ふぅ〜、紫苑のおかげで最初よりだいぶよくなったぜ。サンキュー。」
「礼はいらんから、二度と来んな」
十代達のデッキも調整し終わり、ちょうど帰ろうとしているとき、翠が悪戯を思いついたような子供の顔をして彼らを呼び止める。
「ねぇ、決闘ってデュエルが始まる前から始まっているって知ってる?」
ニヤニヤとしながら、十代たちに悪知恵を吹き込む小悪魔がそこにいた。
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