美しき異形達
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第二十七話 光の力その六
「空手部のな」
「薊さんはモトクロス部にも入っていたわね」
「ああ、掛け持ちだよ」
薊は鈴蘭に笑顔で答えた。
「そのことは聞いてたんだな」
「ええ、一応は」
知っていると答える鈴蘭だった。
「そのことは」
「それで今はなのね」
「空手部の部活の方のな」
「トレーニングなのね」
「まあどっちでもあるけれどな」
モトクロス部の部活でもあるというのだ。
「こうしたトレーニングは」
「そうよね、走ることとかは」
「基礎トレーニングはな」
それ自体が、だというのだ。
「そうなるんだよ、本当に」
「だから走ることに重点を置いているのね」
黒蘭も薊に言った。
「今も」
「どっちの部活もよくランニングするけれどさ」
実際に、と答えた薊だった。
「この通りな」
「そうなのね、それでこの後は」
「ストレッチしてさ」
整理体操をして、というのだ。
「シャワー浴びて寮に帰るよ」
「寮のお風呂には入らないのかしら」
「今日はな」
そちらには入らないとだ、薊は黒蘭にも笑って答えた。
「そうするよ」
「そうなのね」
「あっちにもよく入るんだけれどな」
今日は、というのだ。
「止めておくよ」
「そうなのね」
「ああ、それじゃあな」
薊はランニングで足踏みをして話していた、そうして話が一段落したところでまた前に進もうと思った。だが。
ここでだった、三人共だった。
気配を察した、それで瞬時に顔色を変えてだった。
三人同時に身構えた、薊はそのうえで鈴蘭と黒蘭に言った。
「出たな」
「ええ、そうね」
「来たわね」
二人もこう薊に返した。
「まさかここで出て来るとは思わなかったけれど」
「出て来たわね」
「本当に何時でも何処でも出て来るよな」
「場所を選ぶつもりは最初からないからな」
こう言ってだ、その怪人が出て来た。見れば怪人は全身が白い長い毛に覆われている。ゴリラを思わせる外見だが何かが違う。
その怪人を見てだ、薊は身構えながら怪人自身に言った。
「あんた、ゴリラじゃねえな」
「残念だけれどな」
違うとだ、怪人は薊に砕けた口調で返した。
「俺は違うんだよ」
「雪男かい?」
それならと返した薊だった。
「それじゃあ」
「そうだ、それ位はわかるか」
「まあな、マジでいたんだな」
「雪男はいる」
怪人はこう薊に返した。
「まだ見つかっていないだけだ」
「確かな証拠が出たら大騒ぎ確実だな」
薊も砕けた彼女のいつもの口調で言う。
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