パンデミック
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第六十五話「黒色の怪物」
前書き
専門学校に合格しました!!
なので、投稿を再開します!
―――【レッドゾーン“エリア27” 旧市街】
黒い“コープス”の鎧を纏った怪物。
レオという適合者は、人間の容貌を捨てた。
「グエッ、グギギ、ギャハハハ、殺ス、コロ、殺スゥ!! 」
コープスに覆われ表情は全く分からないが、狂った笑みを浮かべていると容易に想像できる。
「(さて……どう対処したものか………)」
ブランクは拳を構え、レオの様子をじっと観察する。
今なおレオの身体からコープスウイルスが黒色の液体として溢れている。
溢れたコープスが徐々に硬化し、段々と肥大化していく。
176cmだった彼の身長は、250cmまでに変貌する。
「(こんな巨体を、どうすれば倒せる? 当然刃物は効かない。俺の拳も響くかどうか……)」
適合者であるブランクの拳すら防ぐ「硬化」。
それを全身に纏い、さらに身体は肥大化している。
「(……………勝てるのか?)」
「死ネェエエエェエ! ギャハヒヒハハハハハァ!!」
黒色の怪物が、歪んだ笑い声を上げながら突進してきた。
一歩踏み込むごとに地面が抉れ、ビリビリと一瞬振動する。
「クソっ!!」
ブランクも駆け出す。
お互いに適合能力を最大限引き出す。
ブランクの両腕からは血管がいくつも浮き出、僅かな蒸気も上がっている。
「おおおらぁぁ!!!」
踏み込む右足の筋力を極限まで高め、レオの顔を目掛けて飛ぶ。
レオの顔が目前に迫り、ブランクは拳を構える。
構えた拳により多くのウイルスを回し、レオの顔面を潰す一撃のために力を込める。
バギィィィン!!!
鈍い金属音が周囲に鳴り響く。
「グゲェアア!? ギヒヒ、ギャハハハ!!」
レオの進行は止まったが、レオの顔面には傷一つついていない。
それどころか、殴った衝撃が跳ね返って逆に吹き飛ばされてしまった。
「クソ、やはり効かないか……」
苛立つブランクの拳から、生暖かい血が垂れる。
手の甲を見ると、皮がベロリと剥がれ、その下の筋肉が見えた。だが痛みは無い。
剥がれた皮を露出した筋肉に無理矢理くっつけた。
べチャリと嫌な音を立て、数秒後には皮膚が歪ではあるがくっついた。
「(俺が全力で殴っても効かないか………クソ、どうすればいい!?)」
「ギィィッヒッハッハッハァァァ!!」
黒色の怪物が再び突進してきた。
「潰レテ死ネェエ!! ギヒヒハハハハ!!」
笑いながらブランクの頭上から腕を降り下ろす。
ドゴォン!!
降り下ろされた腕を受け止めた瞬間、ブランクの足元が大きく陥没した。
ブランクは自身が持つ腕力を総動員し、レオの腕の直撃を免れた。
しかし、ブランクの両腕からはミシミシと骨が軋む音が聞こえる。
受け止めることはできたが、そこから動けない。
「ぐっ………ッ!!」
ブランクは耐えながら、レオを観察する。
必ずどこかに弱点か何かがあるはずだ。
殺すことができなくても、行動不能にできれば……
「……………! そうか!」
ブランクはレオの腕を全力で払い、素早く後退し距離を取る。
「(殺せるかどうかは分からないが………)」
ブランクが目をつけたのは、“関節”。
いくら硬化能力があると言えど、関節まで硬化させたら動けなくなる。
スムーズに動くために必要な関節はいくつもある。
首・肩周り・肘・脚の付け根・膝・足首………今のレオの状態を見ると、恐らくこれらの関節が
動くために必要になってくるはずだ。
首は相手を見失うのを防ぐため。
肩周り・肘は当然、攻撃のため。
脚の各関節は、移動と、硬化で重くなった身体を支えるため。
「(膝を砕いて、バランスを崩したところで肘を潰して、トドメに首ごと脊髄を蹴り潰すか……)」
黒色の怪物を殺すプランは浮かんだ。
あとはそれが通用するかだ。
「ガアァァァァ!!!」
レオが咆哮しながらブランクを殺すべく突っ込んでくる。
「(動きは相変わらず直線的………後ろに回り込めれば……いけるな)」
怪物の拳が放たれる。
ブランクはそれを直撃寸前で回避し、素早く背後……足元に回り込む。
そして、レオの右の膝裏に、全体重を乗せたエルボーを繰り出す。
バキバキ グシャッ
ブランクの予想通り、膝の関節部分の硬化は甘かった。
膝裏の硬化したコープスウイルスはガラスのように砕け、その奥の骨が潰れた。
「グッ、ゲェア!?」
突然の痛みにレオはバランスを崩し、膝をついた。
その隙をブランクは見逃さない。
膝と同時に地面についた左腕を両手で掴み、渾身の力で肘を蹴り上げる。
バキバキ ゴリッ
膝を砕いた時と同じ音を上げ、レオの肘の関節は逆方向に曲がった。
「ググウゥゥゥッ……!! 」
肘が折れたためか、体勢がさらに低くなった。
「(後は首を蹴り潰せば……終わりだ!!)」
レオの肩を足場に、首の側面を狙う。
左足に全ての力を促し、思い切り蹴り飛ばす。
バギィィィィン!!!
「何……ッ!?」
鈍い金属音。
鋭い眼でブランクを睨む黒色の怪物。
「調子乗ンナクソガアァァ!!!!」
痛みの中で、レオは一瞬のうちに首を硬化させたのだ。
それだけではない。
硬化の過程で、ブランクの足を巻き込んだ。
ブランクの足首から少し上まで、硬化したコープスに巻き込まれ、動けない。
「こいつッ!?」
「ガアァァ!!」
動けないブランクの胴体は、あっさり怪物に掴まれた。
首から引き離そうと、ブランクの胴体を強引に引っ張る。
ブチッ
そんな音が聞こえた。
ブランクの目に見えたのは………
自身の血飛沫。
断裂した自分の脚。
怪物の首に張り付いたままの足首から下。
「ぐっ………ああぁぁあぁぁぁああ!!!」
ブランクの強靭な脚は、いとも容易く千切られた。
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