| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

最後に闇は光となる

「う~ん……あったけぇのかさみぃのかよくわからんな……」
ダークーーーー黒鉄翔夜は今、詩乃の通う高校前に来ていた。
理由は単純、あのくそ役人の言い訳と言う説明を詩乃と共に聞くためだ。まぁ、まだ後一つあったりもするが。
翔夜は、近くの自動販売機で買ったブラックコーヒーを飲んでいると、
「……黒鉄さん」
そんな声がして、その声がした方を向くと、詩乃が立っていた。
「やぁ、詩乃。こんにちは」
「……こんにちは。……お待たせ」
「いや、そこまで待ってないさ。ーーーーーそれにしても……何か……」
翔夜はようやく校門の周囲から見守る生徒たちに気付いた。
「……注目、されてるな」
「あ、あのねえ」
詩乃が呆れ気味に言う。
「校門の真ん中に他校の生徒がバイクで乗り付けてたら、目立つのは当たり前だと思う」
「……そう言うものか」
翔夜はそう言うと、ライトグリーンのヘルメットを取ると、詩乃に被せる。
詩乃は顎のハーネスをしっかりと留めると、リアシートに乗っかった。
「んじゃ、しっかり掴まってろよ!」
甲高い音と共に、シャドウチェイサーが動きだし、一行は中央区銀座四丁目に移動した。



















僅か五分足らずで目的の高級喫茶店へと着いた翔夜達は、翔夜を先頭に中に入り、奥へと進んだ。
「よう、眼鏡。人を呼び出しといてプリンをパクついてるのはどういう了見だ?」
「ちょ、ダーク君怖いよ!?」
眼鏡ーーーーー菊岡を軽く脅し、詩乃を先に座らせると、翔夜も座り、非常ーに冷たい目で菊岡を睨んだ。
「で、何のようだ菊岡。今回の件は俺はもう降りた筈だ。後はライトやキリトにでも報告すりゃ良いだろ」
「いやぁ、当事者である君達にも報告しないと上が煩くてねぇ……」
何が煩くてねぇ、だ、と思いながら俺は頼んだブラックコーヒーを飲んだ。
菊岡の説明を簡略すると、死銃は全部で三人。
内、シュピーゲルこと新川恭二、ザザこと新川昌一、ジョニーブラックこと金本敦だ。
そして、第三回バレット・オブ・バレッツ本大会において標的になっていたのが、ライトと同行していた<ペイルライダー>、<ギャレット>、そして、<シノン>。
ペイルライダーとシノンこそ無事だが、ギャレットは死銃の攻撃ーーーーーサクシニルコリンを注射され、死に絶えたと言うことだ。簡略化をし過ぎたかな?
「ーーーーー申し訳無いが、そろそろ行かなくては。閑職とは言え、雑務に追われていてね」
「手間ぁ取らせた」
「あの……ありがとうございました」
翔夜は手をあげ、詩乃はペコリと頭を下げる。
「いえいえ。君達を危険な目に遭わせてしまったのは此方の落ち度です。これくらいの事はしないと。また、新しい情報があったらお伝えしますよ」
菊岡はそう言うと、荷物を纏め、伝票に手を伸ばそうとしてーーーーーそこで動きを止めた。
「ああ、忘れていた。ダーク君、これを」
スーツの内ポケットに手をやり、小さな紙片を取り出すと、テーブル越しに翔夜に渡される。
「……ザザからの伝言か」
「そうだ。聞くかい?」
翔夜は頷くと、菊岡は言う。
「………『これが終わりじゃない。終わらせる力は、お前たちにはない。すぐにお前たちも、それに気づかされる。イッツ・ショウ・タイム』ーーーーー以上だ」
















菊岡の話を聞いて、それから翔夜達は、銀座中央通りから、昭和通りを通り、御徒町界隈に入ると、入り組んだ路地を通り、やがて一軒の小さな店の前に到着した。
「……ここ?」
「ああ」
翔夜はそう言うと、詩乃を連れて、ドアを押し開けて中に入る。
「いらっしゃい」
エギルがそう言うと、奥にいるメンバーに目を向ける。
「おそーい!」
リズの一喝が入る。
「済まん。眼鏡の話が長くてな。エギル、コーヒー、砂糖なし」
俺はそう注文すると、アスナが言う。
「それより、早く紹介してよ、ダーク君」
「おう」
翔夜は詩乃を前に出すと、言う。
「GGO第三回チャンピオン、シノンこと朝田詩乃」
「や、止めてよ」
詩乃が抗議するも、翔夜は言葉を続ける。
「此方はぼったくり鍛冶屋のリズベットこと篠崎里香」
「このっ……」
リズの攻撃を受け止めて、後ろに受け流すと、アスナに手を向ける。
「此方は、キリトの彼女のバーサク治療師のアスナこと結城明日奈」
「ひ、酷いよー」
明日奈が抗議しながらも微笑みを絶やさず、詩乃に会釈する。
「んで、そこにいる緑色の馬鹿は狩人のライトこと天城来人」
「ば、馬鹿!?俺はプログラマーだ!!」
「そんで、妖精の戦巫女、ミザールこと北斗新羅だ」
「よろしくね、詩乃ちゃん!」
そして、最後にエギルが持ってきたコーヒーを受け取ると、言う。
「最後に、現実でも仮想でも店を構える大物、壁のエギルこと、アンドリュー・ギルバード・ミルズだーーーーって合ってるよな?」
「随分前に言ったきりだからな。初めまして、アンドリュー・ギルバード・ミルズです。今後ともよろしく」
「まぁ、兎に角座ろう?」
翔夜は詩乃を椅子に座らせると、自分も座る。
「エギル、コーヒー飲み終わったからジンジャー頼む。詩乃は?」
「あ……じゃあ、同じので」
「ここのは辛いぞ」
そう言うと、「二つ」と言い添え、全員を向く。
「さて、今回の事について、何があったか一から説明するよ。俺が何故、ここにいるのかも含めてな」
翔夜はBoB本大会での出来事プラス、菊岡に聞いた事件の概要を説明し、そして自分の事に入る。
「で、ここからは俺の話だ。俺は来人の身体から消滅した後、白い部屋に居た」
「白い……部屋」
「そう。そこで、俺はロリ神にーーーー俺の担当の神様な?ーーーー言われたんだ。重大な事が起きたってな」
翔夜は来人を見て言う。
「来人、お前の願いが受理されちまったんだよ、向こうでな」
「「「「「はぁあああ!?」」」」」
ダークを除く全員が叫ぶ。
「ちょっ、それ、大丈夫なのか!?」
キリトが言う。
「ああ、問題無い。ロリ神が言うには、平行世界の俺が俺に此方で生きる力を与えたから存在出来る様になったらしい。その時の記憶やらを俺に与えてな。だから、俺はこの世界の黒鉄翔夜であり、また、平行世界の黒鉄翔夜でもある」
「……な、何か話に付いていけない」
「誰だってそうさ、来人」
翔夜は来人に言うと、明日奈が詩乃に言う。
「まぁ、それは後で詳しく聞くとして……あの……朝田さん」
「は、はい」
「私がこんなこと言うのも変かもしれないけど……ごめんなさい、怖い目に遭わせてしまって」
「いえ……そんな……」
詩乃は急いで首を振ると、言う。
「今度の事件は、多分、私が呼び寄せてしまったものでもあるんです。私の性格とか、プレイスタイルとか……過去とか。そのせいで大会中パニックを起こしたけど……ここにいる翔夜がそれを全て受け止めてくれた」
詩乃は翔夜の肩に頭を乗せる。
「まぁ、そういうこった」
翔夜はそう言うと、キリトを見た。
「で、まだ終わらねぇんだろ。言えよ、今日、なんのつもりで俺らを呼んだか」
「……キリト君、多分、ばれてるよ?」
「……みたいだな」
すると、明日奈が口を開く。
「翔夜君、詩乃さん。実は、私とリズとキリト君、ライト君は昨日の月曜に学校を休んで、……市に行ってきたんです」
「「ーーーーーーーーー!!」」
驚きーーーー等では到底表現を表せない。
一瞬、アスナが何を言ったか、分からなくなった。
「……キリト、何故……」
「それは、ダーク、シノン、君達は会うべき人に会ってない……聞くべき言葉を聞いてないと思ったからだ。傷付けるかもしれない、きっとそうだろうと思ったけど……けど、ライトから話を聞いて、ライトに手伝ってもらって、直接事件のあった郵便局まで行って、お願いしたんだ。ある人の連絡先を教えて欲しい、と」
「「会うべき……人……?聞くべき言葉……?」」
すると、リズが立ち上がると、ドアまで行き、それを開けた。その奥から、一人の女性が姿を現した。
まさかーーーーーーーーー!
そして、その勘は正しかったと分かった。
「初めまして、朝田……詩乃さんと、黒鉄……翔夜さん、ですね?私は、大澤祥恵と申します。この子は瑞恵、四歳です」
すると、大きく息を吸ってから、はっきりとした声で言う。
「……私が東京に越して来たのは、この子が産まれてからです。それまでは、……市で働いていました。職場は……」
続く一言を聞き、詩乃も翔夜も全て理解した。
「……町三丁目郵便局です」
「「あ……」」
そう。この人は、その事件のあった郵便局で、カウンター奥にいた人だ。
と言うことは、キリト達は、昨日、わざわざあの郵便局まで行き、彼女の現住所を調べ、連絡し、今日、自分達と引き合わせた。
「……ごめんなさい。ごめんなさいね、詩乃さん、翔夜さん」
そんな思考を、祥恵の言葉が遮る。
「本当に、ごめんなさい。私……もっと早くあなたたちにお会いしなきゃ行けないのに……あの事件のこと、忘れたくて……夫が転勤になったのを良いことに、そのまま東京に出てきてしまって……。あなたたちがずっと苦しんでらしてるなんて、少し想像すれば解ったことなのに……謝罪も……お礼すらも言わず……」
すると、瑞恵の頭を撫でて、言う。
「あの事件の時、私、お腹にこの子が居たんです。だから、お二人は私だけではなく……この子の命まで救ってくれたの。本当に……本当に、ありがとう。ありがとう……」
「「………命を………救った?」」
「そうだ」
そこに、ライトが言う。
「ダーク、シノン、お前たちはずっと自らを責め続けて来た。自分を罰しようとしてきた。それが間違いと言うことは言えない。しかしーーーーお前たちには同時に、自らが救った人の事を考える権利がある。そう考え、自らを赦す権利がある。それを、キリトは伝えたいんだと思う。俺もだがな」
ライトが言い終わると、
とん。
と、小さな足音がした。
四歳だと言う女の子、瑞恵が椅子から飛び降り、翔夜達の所へ歩いてきた。
瑞恵は、幼稚園の制服らしいブラウスの上から掛けたポシェットに手をやり、ゴソゴソと何かを引っ張り出した。
それは、四つ折りにした画用紙だ。不器用な手付きで広げ、翔夜と詩乃に差し出す。
クレヨンで書いたとおぼしき絵が、目に入る。中央には祥恵、右側には、詩乃と翔夜、左には、恐らく父親だろう。
そして、一番上に、覚えたてであろう平仮名で、<しのおねえさん、しょうやおにいさんへ>と記されていた。
瑞恵が両の手で差し出すそれを、翔夜が両手で受けとる。
そして、瑞恵はにこりと笑い、大きく息を吸う。
「しのおねえさん、しょうやおにいさん、ママとみずえを、助けてくれて、ありがとう」
途端、二人の視界全てがーーーー虹色の光に満たされ、滲み、ぼやけた。
翔夜は、それを泣いていると解ったのは、詩乃が瑞恵の手を握った時だった。
「……ダーク、お前はあの世界で言ったな。過去に赦されざる罪を犯し、そして償える事すらなく死んだと。だが、これでも、償え無かったと、本当に思っているか?」
「……ライト」
翔夜は呟き、そして、瑞恵の手を、詩乃と一緒に掴んだ。 
 

 
後書き
GGO、堂々完結!!
キャラクター全員「ワァー!!やんややんや!!」
口で言うな。さて、良い雰囲気で終わることが出来て、作者、これ程にまで無い喜びがあります。これも一重に皆さんの応援のお陰です!!ありがとう、そしてありがとう!!
ライト「さて、次回からはお楽しみ、キャリバーコラボの始動だ!!」
ダーク「今日の夜九時まで受け付けてるから遅れずに申請しろな!!」
シャイン「では、今後とも我らが作者、村雲恭夜と!」
我等がチーターズを!
全員「これからも、どうかよろしくお願いします!!」
ミザール「それじゃ、次回もお楽しみに」
ライト「テンションが普通に戻ったな………」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧