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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章 幕間劇
  逃走中・一葉を追え

川中島での戦いが終わり、黒神眷属が合流したある日のことであった。

「主様!」

「ん?一葉、何か用か?」

用かと言ったら、俺の肩を掴みそのまま身体ごと傍の角へと押し付ける。

「静かに!」

「あ、ああ」

と言いながら、俺らがいるところに存在を隠す結界を張りながら、状況を考えていた。また乳でも張ったのか?いやあれは俺から触れない限り張らないはずだし、また何かやらかしたのかな?そしたら詩乃に雫に幽の声が聞こえてきた。

「一葉様は?」

「こちらにはいませんでした」

「まったく、あのお方は・・・・・!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

やはり予感的中なのかな。

「次は向こうを探してみましょう」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・うむ。何とかまけたか」

「何とかじゃなくて、俺が結界張ったからだよ。で、何したんだよ?」

この状況で分かるのは、一葉がまた何かやらかしたのだろうな。

「何じゃ、結界を張ってあったのか。子細は後で話す、とりあえず一緒に来てたも」

分かったとも言わないで、一葉は俺の手を取って足音を殺して走り出す。そして躑躅ヶ崎館を出ると歌夜と遭遇する。

「あ。一真様、一葉様。お出かけですか?」

「うむ。少々主様と街歩きをしてくる」

「そうですか・・・・」

「ふふん。今日は歌夜には分けてやらんぞ?お主は甲斐でもずっと一緒だったのだからな」

「ええ、それはまあ・・・・たくさん可愛がっていただきましたし。一葉様もゆっくりしてらしてください」

「ほほう。余裕じゃな?」

「え、あ・・・・そういうわけじゃっ!」

「冗談だ。主様の妾ならば、そのくらいでなくては務まらん。では行くぞ、主様」

「分かったから引っ張るなって、という訳で行ってくるよ。歌夜」

「はい。お気をつけて」

堂々と出て行ったが、これでよかったのだろうか。一応脳量子波で、桜花、沙紀、結衣で非番はいるかと聞いたら沙紀がちょうど手が空いているとのこと。なので、命令するまでは、光学迷彩で隠れていろと言っておいた。あとは詩乃たちがいるところで待機と。そんで躑躅ヶ崎館を出てからしばらく歩いていると。

「ふむ・・・・この辺りまで来れば良かろ」

街の一角まで来た所で、一葉は繋いだままの手の力を緩んだのだった。

「予想はできるが、何したんだ?」

「そうじゃな。話せば長くなるのじゃが・・・・。この間、川中島で余が美空と共に長尾の軍勢と一真隊を仕切っておったろう?」

「ああ・・・・・」

「詩乃と雫の奴、もっと良い方法があったろうにと説教など始めおってな」

「・・・・なるほど」

やはりそうかと思ったくらいだ、だが少し引っかかる点がある。

「詩乃と雫までは分かるがなぜ幽まで?」

「叱られるのも面倒だった故、幽に叱られ役を任せて場を離れたのじゃ。あれも余を止める立場にいながら、余を止めはせなんだのじゃ。余が責められるなら同罪であろ?」

相変わらず幽も切ない立場で、こんな主を持ったからなのか。まあいつもの事だけど。

「すると、何故か幽まで連中に寝返りおってな」

そりゃ当たり前だろうな。詩乃や雫も、幽に文句を言うのは筋違いだという事だ。幽が二人と意気投合する様子が絵のように浮かんでくるな。

「では、俺は三人に謝る手伝いをすればいいわけ?」

「いや、日暮れまで粘ればあれらの熱も下がるであろ。それまで余一人では暇じゃからな。で、考えながら逃げておったら、ちょうど主様がおったからの。しばらく二人っき
りになるのは、あのお仕置き以来じゃからちょうど良いと思って・・・・」

「俺はまたお仕置きでもしたいのかと思ったが、一葉よ」

「ふむ」

「それは正直に謝った方がいいと俺は思うが」

「な・・・・主様まで梅や鞠と同じ事を言うのか!」

なるほどな、梅と鞠に逃亡の手伝いを拒否られたのか。梅はともかくとして、鞠にまで論されたのか、足利将軍。

「それは明らかに、夜になったら割増されて怒られる流れというオチになるぞ」

「目一杯に沸かした茶釜でも、夜まで沸かせば中の湯も尽きるであろ。あれらもそこまで暇ではなかろうし」

「そんなに簡単に言うかもしれんが、怒りが溜まって吐き出す威力は凄まじいと思うのだが」

暇じゃなかったら、一葉を追いかけるほどじゃないけどまさか巻き添えをくらうとは思わなかった。あとは怒りが一葉と俺にも向けられそうだ、沙紀に言っておくとしよう。妾に頼まれたから仕方なく、逃亡をしたと。妻にお願いされては、さすがの俺もノーとは言えないからな。

「まあ良いではないか。主様は余と街を歩くのは嫌か?」

「こういう事情でなければ、よかったんだけど」

しばらく一緒に街を歩くのは、久しぶりなわけだし。

「細かい事は良いではないか。ゆくぞ!」

俺の言葉を聞いていないのか、一葉は俺の手を引いて、鼻歌交りに歩き出す。少々追いかけながらであるが、どうなっても知らねえぞ。一方躑躅ヶ崎館では、部屋にて歌夜と沙紀の言葉を聞いていたところだった。

「なるほど。一葉様は一真様を巻き込んで、街に・・・・・」

「ええ・・・・凄く楽しそうでしたけど、もしかしてお止めした方が良かったですか?」

「歌夜さんの言葉で考えや行動を改める人ではありませんよ。私は妻の一人ではありますが、お願いを聞かされた隊長は可能な限り聞いて下さいますが。今回は無理矢理のお願いだそうで」

「沙紀さんの言う通りでございますな。さすが、一真様の妻ですな。ですが、公方様の行動には飽き飽きしましがゆえ」

「とりあえず、歌夜さんは他の一真隊の皆さんを呼んで来て下さい。甲府の街を逃げ回っているとなれば、光璃様にも話を通しておいた方が良いでしょうね。それにしても、一真様も恐らく困っている様子なのでしょうから早めに捕まえたいですね」

「そうですね。場所についてまではお教えできませんが・・・・」

私、沙紀が皆さんと話をしていました。隊長の命で、詩乃さんのところに行き事情を話しました。そしたら隊長は巻き込まれただけと理解してくれましたし、妾や妻の願いを叶えるのが、夫の役目だと話しましたし。そしたら夕霧さんと薫さんが来ていました。

「あ、詩乃ちゃん。雫ちゃん」

「何かあったでやがりますか?」

「ああ、お二人とも、ちょうど良い所に・・・・」

と詩乃達の会話を、俺が聞いていたのだった。俺が巻き込まれたから、困っているとまで言った沙紀であったが沙紀にもお願いをしていた。それが、詩乃たちの会話を聞かせてくれだったけどな。

「うむ。美味かった!」

会話を聞きながら甲府の街を歩く、一葉は俺の隣でご満悦。

「それはそれでよかったな・・・・」

「やはり、あのような街の食事処は良いの」

通信機を片耳に付けながら腹が減ったとのことで、ちょうどあった食堂にて食事をした。さすがというか、京で歩き回りしていたのか随分慣れた様子で注文をしていく。

「やはり、というと、今までにもああいう所は入ったところはあるのか?」

「京にはあのような店はごまんとあったからの」

そういえばそうだった。一葉は将軍でも、街でゴロツキを片っ端から成敗してはその金で何かを食べる暴れん坊将軍だったか。暴れん坊将軍なら、吉音辺りかなと思いつつも食堂に入るのは一般人と変わらずという感じではあったが。

「ほうとうと言ったか?あれもなかなか良かったの」

「一葉は鍋、好きだったもんな」

越後にいたときも、一真隊では俺が作った鍋とかあったけど。誰よりも美味しそうに食べていた記憶がある。

「二条館では皆で食事をすることなど、双葉か貴族どもと顔を合わせた時くらいしかなかったからな。双葉は良いが、白塗りども相手の堅苦しい食事などまっぴらじゃ。それに、主様とも卓を囲めるしの。特に主様の料理は日の本一だと余は思うぞ」

「まあそう言ってくれると、あの時作り甲斐があったということだ。それに美味しく食べてくれることも嬉しいからな」

「余も一緒に食べるのが、嬉しいぞ」

こうやってストレートな物事を言うのなら、正直言って嬉しいんだけど。こういう状況でなければ、そう調子に乗ってはデートしているけど。今日はそうならないからな。一葉の巻き込みで。

「そうじゃ、主様。どうせ夕方までは暇なことじゃし、このままどこかへ・・・・・」

「あ、一真様ー。一葉様ー」

「・・・・・ころ?」

「・・・・そろそろとは思うておったが、さすが詩乃じゃな。手が早い」

「あれは・・・・追っ手かな」

まあこちらは会話を聞いていたから、もうそろそろ来ると思ったんだけど。意外に早いなーと思った。歌夜が甲府の街に行くと言ったから、ここにいるのも不自然ではない。そんな状況の中を分かっていて、呑気に食事をしているのだからか、一葉は肝が据わっているというか太いというか。

「あ、いらっしゃいましたわ!」

「さて。腹ごしらえの次は、腹ごなじじゃ。主様、付いてまいれ!」

「って、おい・・・・っ!」

一葉は慌てるどころか、この上もなく楽しそうに、俺の手を取って走り出した。

「あ、一葉様っ!お待ちください!」

『仕事を増やして悪いな、ころと梅よ』

「ハニー。巻き込まれたとはいえ、追いかけっこをする羽目になるとは思いませんですが、ハニーは何も悪くありませんわ!」

「そうですよ。原因は一葉様なんですから、沙紀さんに聞きましたが、叶えられる願いは叶えるのも神の仕事だと聞いていますから」

『本当にウチのバカ将軍がすまない。と言う訳でころは詩乃に連絡を、梅は追いかけてこい』

「分かりましたっ!」

「離れず離さずで追いかけますわ!」

と言ってから、ころは連絡を取って梅は俺達を追いかけていたのだった。

「詩乃。ころさんから報告です」

「見つかりましたか」

「はい。地図で言うと・・・・この辺りでお見かけしたと。逃走の向きは、北だったそうですが・・・・それと一真様からの念話で謝っていました、いくら願いを叶える神でも、こんなしょうもないので申し訳ないと」

「その辺りについては、承知済みですと沙紀さんからお伝えしてくれませんか?」

「はい。分かりました」

「兄上もとんだとばっちりを受けたでやがりますな。それにしても北側でやがりますか・・・・」

「夕霧様、このような貴重な地図をお貸しくださって、ありがとうございます」

「それに、薫ちゃんにも光璃様に連絡を取りに動いていただいて・・・・」

「なに。気にすることはないでやがりますよ。でも街の北側だと入り組んだ所が多いでやがりますから、追い詰めるのは難しいでやがりますな」

「そうですな・・・・。公方様も恐らく本能で、この辺りを選んでおいでなのでしょう」

「ですが、京の碁盤の目ほど整ってはいないのでは?」

「大通りよりも、そこからの脇道の逃走で真価を発揮するお方でしたからなぁ・・・・」

「・・・・なるほど」

「やはり、お二人を温存しておいた意味があったようですな」

「出番なの?」

「・・・・お頼み申します」

「なら、ちょっと行ってくるですよ!」

この二人は鞠と綾那だろうな、脇道ならこの二人にお任せって感じだったし。

「一葉様ー!ハニー!・・・・どこに行ってしまいましたの・・・・?この角を確かに曲がったはずですのに・・・・一葉様ー!ハニー!どこですのー!」

そんな梅の声が、通りの向こうに消えていく。

「・・・・ふむ。まだまだ感覚は鈍ってはおらんようじゃな。久々に血がたぎってきたわ」

通りの角に身を潜めて、一葉は本当に楽しそうだけどこっちの身にもなってほしいな。一応念話で謝っておいたけど、詩乃からはそれは承知済みだと言っていたから分かっているとは思うが。まあ沙紀の索敵システムならすぐに察知できるけど、それを使わないとなると沙紀も楽しんでいるような気がする。

「さて。では、そろそろ動くとしようか、主様」

「動くのはいいけど、逃げるアテはあるのか?」

「向こうもそろそろ本気を出してくる頃であろうしな。本気で逃げるには、この装いではいかにも心許ない」

「本気、ねえ?」

一葉は今は鎧や刀を装備していない服装にはなっているけど、俺はまさかな?と思ったけど。

「街の破落戸程度なら、素手でもどうにもなるが、我が妹弟子相手では、これでは心許ないという事だ」

確かに破落戸程度なら、素手で対抗できるが妹弟子=鞠との相手では装備は足りぬということか。一方詩乃たちは。

「・・・・見つからない?」

「うん。一門衆の人達にも手伝ってもらっているけど、一真様や一葉様らしい人はどこにもいないって」

「やはり既にこの辺りにはいないでやがりますか?それともホントに神隠しで消えてしまったでやがりますか」

「そうですな・・・・。一真様なら、神隠しは出来ますが使いたくはないのでしょう。公方様の事ですから、こちらの裏をかいて大きく動いている事は間違いありますまい」

「それもふまえて、捜索地域は発見場所より外側を重点的に行っていたのですが・・・・。沙紀さんは一真様が神隠しをすると思いますか?」

「隊長はそんなことはしていないと、仰っております」

「神隠ししていないのであれば、そのさらに裏をかいて、動いていないという事でしょうか?」

「いや、その選択肢だけはありますまい。何せ、守るという事が何よりも嫌いなお方ですからな。しかも此度は一真様と二人だけ。守るものが無い以上、攻めに出ない理由がない」

「でやがりましょうなあ」

「では詩乃、もう一段階外の捜索に切り替えますか?」

「そうですね。いくら公方様とはいえ、天に昇る事や地に潜ることまでは出来ないはずですから・・・・それを出来るのは一真様ですが、いくら一真様でもその選択はしないはずです」

「そうですね。じゃ、私もみんなに合流するね」

「頼みます」

一方俺らは甲府の街にいるかと思いきや、俺らは躑躅ヶ崎館にいたのだった。これが裏の裏なことなんだけど。

「主様。結べたかの?」

「ああ。結べたけど」

とりあえず言われた通りに、後ろの紐を結びあげる。

「ふむ・・・・悪くない」

「・・・・・・」

「どうした、主様?」

「これは大胆すぎるんじゃないのかなーって」

「余の着替えを手伝わせた事か?まあ、主様は脱がせるのがもっぱらであるからの・・・・」

「阿呆。こんなの逆に妻にやらせているよ、それにこんなの序の口だ。存在を隠す結界を張って、外で堂々と母乳を飲ます行為にでもなればいくら一葉でも恥ずかしいだろうに」

俺の場合は、スーツとかでネクタイが曲がっていないかでよく手伝ってもらっている。特に紫苑とかな、さすが未亡人というか慣れているというか。で、一葉に母乳の事を話したら一気に赤くなったけど、これはこれで面白い。

「まあそれは冗談として、まさか躑躅ヶ崎館に戻ってくるとは思わなかった」

相手側の本陣に逃げ込むのも、手はあるけど。ホントにするとは思わなかった。まあいくら詩乃でも、まさか逃げ回っているはずの一葉が着替えのために戻ってくるなんて思わないだろうよ。沙紀はもう知っているようだけど、それについては言わないからな。守秘事項だしな。

「相手の裏をかくのは兵法の基本であろう?」

「かきすぎ」

「まあ良いではないか。おかげで、逃げる支度は整った訳であるし。ついでに主様にも、余の新しい魅力にも気付かせることが出来たようじゃしな」

「あとで後悔させてやるくらい、シてやるからな」

今の所、愛妾の中で母乳が出るのは一葉辺りだし。それに出させたのは特殊な液体を胸に注射したら出るようになった。最もいつも張っていたんじゃ、戦に生じるから俺が許可を出したら活性化して出る仕組みにしてある。

「そ、それは出来る限り、優しくで頼む」

「却下(笑)」

一葉のやりたい放題だけど、後でこちらから攻撃をするからな。俺はそれが楽しくてしょうがない、またイク寸前で止めさせる触手とかあるからな。まあこういう自由なところも一葉の魅力ではあるがやりすぎないようにしなければな。

「・・・・とはいえ、いつまでも長居しているわけにもいかんな。ぼちぼち出るとしよう」

そう呟いて、部屋を後にすれば・・・・。

「あら、一葉様。一真とお出かけ?」

悪いタイミングで出てしまったようだな。この後の展開は何となく知っているが、どうやって止めようかなと考えていた。ここに戻るまでに一真隊や一門衆の姿は見たが、長尾衆まで逃走中の一葉を追っているのかな?でもその態度だと知らなさそうだったけど。

「うむ。悪いが、今日は貸せぬぞ?主様を連れ出したいなら、別の日に連れ出すと良い」

「それはまあいいけど・・・・」

「ということで、行ってくるよ」

「ええ。見送りしてあげるんだから、代わりにお土産よろしくね?」

「はいはい。そのくらいは叶えてやるよ。あの様子だと知らないのかな?」

「ならば、そのまま知らぬふりを貫けばいい」

勘のいい美空のことだから、知らないフリをして実は追いかけるという手もある。それに雰囲気で分かる美空ならば尚更だ。一葉の中では想定内なのかもしれない。さっきのやり取りで切り抜けることはできたし。

「・・・・大した将軍だな」

やりたい放題でも、そのツケはどこかで払ってくるかもしれんが。

「・・・・・・・・」

「まさか、躑躅ヶ崎館に戻っておられたとは・・・・」

「ああ。やっぱり何かあると思ったけど、そういう事情だったの」

「美空様。一葉様達は、どこに向かうか仰っていませんでしたか?」

「別に何も言ってなかったわね。一葉様は随分と楽しそうだったけど」

「まあ、あのお方ならそうでしょうなぁ」

「で、どうするの?何だったら長尾も手を貸すわよ?」

「む、それは・・・・」

「・・・・お願いしても構いませんか?」

「ええ」

「詩乃・・・・?」

「美空様はどうなさいます?ここで我らと指揮を取るか、指揮をこちらに任せて前に出るか・・・・」

「そんなの決まっているでしょ。何か情報があったらこっちにも回して頂戴」

「承知致しました。と、一真様にも伝えてくれませんか?沙紀さん」

「そう伝えておきます」

「あ、そうそう。多分うるさいから、秋子にだけは内緒にしといてね。じゃ、手勢を集めてくるわ」

「・・・・・行ってしまわれましたなぁ」

「むぅ・・・・。良いのでやがりますか?詩乃」

「私も正直、長尾勢の手を借りるまでもないかと・・・・」

「私は長尾勢の手を借りた方が良いかと思います」

「沙紀さんの言う通り、美空様も面白がって兵を出すでしょうし。勝手に動かれるくらいなら、手綱とは言わないけど共同で動かれるようにしておいた方がマシです」

「なるほど・・・・そちらの方策で・・・・」

「詩乃さん!鞠さんたちが、今度こそ一葉様を見つけたそうですわよ!」

と言われるように、俺らは見つかっていた。しかもひよに鞠と綾那だった。

「待つのー!」

「待ちやがれなのですよー!」

「ま、待ってくださーい!」

「ふむ・・・・。早々に見つかってしもうたの、主様」

「随分と楽しそうだな・・・・」

「思った通りの顔ぶれじゃ。雑魚から逃げ回るよりは面白かろう?」

まあ雑魚=兵よりかはマシだけど、妹弟子を困らせてもいいのだろうか?全力疾走とはいかないが、風術の力で一葉と俺の走るスピードを早くはなっているけど。で、勢いよく角を曲がって、細い路地へと飛び込む。

「しょうがない、一葉。暴れるなよ!」

俺は細い路地に飛び込んだはいいが、その先には大きな壁がある。いくら一葉が身のこなしが軽いからといっても、この高さはジャンプは難しい。ともなれば、俺は翼を展開して一葉の腰回りを持って飛んだのだった。

「ちょ!飛ぶのは反則なのー!」

「いくら綾那達でも、天には昇れないです!」

「暴れないでくれると助かるぞ、一葉。あいつらがいる反対の方に着地するとしようか」

「う、うむ。じゃが、こう密着すると恥ずかしい」

俺は我慢しろと言ったあとに、地上すれすれで着地してからの鞠たちの追いかけっこが再会する。後ろを見れば鞠と綾那は、目がいいのか着地ポイントを見分けていたけど。

「ほう、ひよたちは俺が着地するところを予想でもしたのか」

二人に遅れてやってくるひよだったけど。

「なんなら、こうじゃ!」

今度は角を曲がってすぐの所にあった柱の後ろに隠れる。そして俺に存在を隠す結界を張れと言われたので、しょうがないから張った。しかもこの格好は一葉に抱えられていたけど。

「・・・・あれ。いなくなっちゃったのです!」

「こっちに逃げてきたはずなの・・・・」

「どこに行っちゃったんでしょうか?・・・・・・・」

「どうしたの?ひよ」

「うん・・・・。私が逃げるならどうするかなって考えてたんだけど・・・・」

「綾那は逃げるくらいなら相手を全部ぶっ倒すのです!」

「それじゃダメなのー。ひよだったらどうするの?」

「追っ手を撒こうと思ったら、力いっぱい逃げるか、例えば家やその辺りの荷物に隠れるかするなって・・・・一真様がいるから、それか私たちが見えないくらいの早さで飛んで行ったかと思うな」

「裏をかくですか」

「隠れられそうな所、あるの?それに一真だったらまた飛んで行っちゃったなのかも」

ほう、さすが猿と呼ばれたひよだけにあって鋭いと思うが。俺と一葉は人払いと存在を無くす結界というより、風と同化しているから俺も一葉も喋ったとしてもバレない。まあ相手が心眼持っていたらバレるけど。あとはひよは恐がりな所を上手く機能するのはさすがと言いたい。

「主様、一体何の結界を張ったのじゃ?」

「人間には認識されないような結界」

と話していたけど。

「一葉様は分からないけど、私だったら・・・・その辺りの荷物に紛れて・・・・」

へえー、ピンポイントであるがおしいな。俺らはすぐ近くの柱にいるからな。

「あの辺りなの・・・・?」

「・・・・・」

「どうしたの?綾那ちゃん」

「くんくん・・・・一真様の匂いがするのです!」

「あ、ホントだ。一真の匂いがするの!」

あ、匂いを消すのを忘れていたな。この野生児たちは、勘が鋭すぎて怖いわ。

「匂い消しをすんの忘れていたな」

「余は役得だが、もう少し黙っておれ」

まあ時間の問題だと思うけど、匂いについては風に頼んで拡散してもらった。さすがに認識されなくとも匂いまでは認識されるだろう。

「あれ?一真の匂いがどっか行っちゃったの・・・・・」

「あ!ここなのです!このむしろの中から一真様の匂いが・・・・」

「(主様、あのむしろを動かすことは可能か?)」

「(分かっているから黙ってろ)」

といってはむしろを三人の前に投げつけた。そこにいるというのは大間違いで、実は三人の後ろにいたというだけだけど。

「わぷっ!」

「ひゃぁあっ!」

「な、何なのですーっ!?」

「今じゃ主様!」

「はいはい。皆、悪いな。この将軍に命令されていたからな、ごめんなー」

小さく手を合せて、悪いと言っておきながらであるが俺神だったよな?と再認識をする。全力疾走をしていくつもの角を曲がった居たら、後ろからの声は聞こえなかった。まあ匂いまでは俺の誤算だったがうまく拡散したからな。

「やり手を相手に逃げ回る方が、雑魚相手よりよほど楽しいであろ?」

「俺が神である事を忘れるぐらいだよ。今後はもう御免だね」

そして俺らが逃げ回っていたときだった。躑躅ヶ崎館では。

「・・・・鞠さんたちでも駄目でしたか」

「ごめんなのー」

「まあ、相手は公方様と神様ですからかなー。一筋縄でいかぬのも道理、いかに一真様であっても公方様に手を貸しておれば追っ手を追い払おうともできたのでしょうな」

「綾那たち、結構良い所まで追い詰めたのですよ!途中から一真様たちは空に逃げたり、むしろにいたと思ったら綾那たちの真後ろにいたのです」

「とりあえず、もう一回出てくるよ」

「隊長も自分は神だと、再認識したくらいだと言ってました。神から逃れることはないのですが、その逆はどうなんでしょうか」

「お願いします。ですが、鞠ちゃん達でも厳しいとなると、後は・・・・・」

「そうですね」

「こちらに向かれても困るのですが、それに場所を特定はできても隊長からの守秘義務がありますので」

と躑躅ヶ崎館ではそうなっていたのだった。

「御大将ー。詩乃からの連絡で、綾那たちが一真さん達を逃がしたらしいっすー」

「そう。なら、こちらは予定通りに展開を」

「分かったっす。・・・・でも御大将、楽しそうっすねー」

「当たり前でしょ?一真もだけど、公方様を公然と追い回せる機会なんて、滅多にないもの。一真は神だから、神相手にどうしようか楽しくなるのも当たり前でしょ」

「趣味悪いっすー。でもまあ一真さん相手をどうするのかは確かにそう思うっす」

「楽しいんだからいいの、それにそう思うのは確かなんだから。長尾衆、出るわよ!」

こちらからの情報だと、一真隊に一門衆にさらに長尾衆も追っ手側に付くとは。まあさっき会った美空も、楽しそうに追っているんだと思うけど。

「そっちにはいたか」・・・・・長尾衆

「いや、それらしい影は見つからないな」・・・・一門衆

「一葉、こっちに人はたくさんいるぞ」

「向こうにもおったしな。ならば、この壁を越えるか」

「何なら、俺が見てこよう」

そう言って壁の向こうに顔を出してみた。

「いた」

「あらら、向こうには松葉がいるな」

「ならば、こっちじゃ!」

一葉の誘導で、俺らは路地のさらに裏側へ。

「長尾の連中まで動き出したか・・・・・」

「美空なら、楽しそうに追ってくるだろうよ。こちらは公方と神相手と追い回す機会なんて、なかなかないぞ」

「うむ。公方・神狩りが出来ると喜々としておろうて」

「はあ、ホントはこんなしょうもないことになるとは思っていたけど、バチが当たるのは一葉だろうけど」

逃げる方は足利将軍と創造神だし、追いかける方も一真隊・一門衆・長尾衆だし。

「美空はお主の妾であろうが」

「一葉もな、でもバチが当たるのは恐らく・・・・」

俺の妾はこんなんばっかだと思うと悲しくなるよ。愛紗や吉音に箒たち、アグニたちも性格はここにいる一葉たちよりかはマシな方だ。

「まあ逃げ切るのも、そろそろ厳しくなると思うな」

「ふむ・・・・。それは間違いないが、主様を置いて逃げろなどと、殊勝なことでも言うつもりか?」

「それだったらさっきの松葉のとこで言ってるわ。それに巻き込まれた側だからな。それにどうせ一人で逃げるなんてこと、考えてないんだろ?」

「当たり前じゃ。主様と逃げられるからこそ価値のある遊びじゃからな」

遊び、ねえ。確実に怒られるの、俺じゃんと思ったが繋いだ手から力が籠っていたのを感じた。

「最後まで、一緒じゃ」

「・・・・遊びじゃないんからな。一葉が逃げたのが、悪い」

「分かっておるが、一度逃げだしたら止まらないのも主様は分かっておるじゃろ」

「はいはい。美空が出てきたから、こちらの動きを変える必要があるな」

こちらは創造神であちらは越後の人修羅。どっちが勝つかと予想できれば、創造神の方が軍配が上がるけど追い詰められるのは時間の問題だし時間をあまりいじりたくはないけどな。それともし一葉と美空のお家流が発動したら、俺は止めなけらばならない。それが俺の役目であり、受け止める=美空は護法五神の力と三千世界である刀剣を受け止めるということになる。そうなったら瀕死の重体になるからな、あいつらを呼ぶか~。俺の奥方衆である桃香たちを。一方トレミー3番艦では、俺らが追いかけっこをしているのを観戦していた桃香たちに秘匿通信が送られてきた。

『トレミー内にいる黒神眷属で回復を得意とする方は、ただちにカタパルトデッキにて待機せよ。繰り返す~』

「回復が得意なのは、姉上だ」

「ということは、ご主人様の危機が迫っているのかも!」

「私もお供します」

「うん!愛紗ちゃん!」

で、トレミー3番艦のカタパルトデッキには黒神眷属の回復組とブラック・シャーク隊の医療班が、ISを装着して待機していた。そして一真の心の叫びを聞いた神界から、通信として届いたそうだ。それで回復組である桃香、朱里、雛里、光姫、黒歌とそれを補佐するのが愛紗、紫苑、恋、吉音、ヴァーリだった。

「聞いたか?神界からのSOS信号が届いたそうだ」

「詳細は聞いたよ!ご主人様が瀕死の重体になることも」

「俺達は、一真を治療しようとしたら桃香たちがトレミーに運ぶんだ。その間の時間稼ぎを俺達がやる」

「ヴァーリがいれば、百万力だと思うのう」

「いや俺より恋だろうよ。恋は呂布なのだから」

とか言っていたそうで、おそらく受け止めるところを想定してから発進したのだった。ちなみに黒の駒のリミッターは最初から解放しているから、桃香たちはストフリの翼で飛んで黒歌はヴァーリの背に乗ったのだった。

俺が動きを変える必要があると言ったら、表情を真剣にした一葉だった。

「何か策があるのか?主様」

「うーん、あるにはあるがな」

と俺らは考えていると、躑躅ヶ崎館では。

「・・・・さすが美空様ですね」

「全くですねな。常に公方様の三手、四手先を読んで、兵の置き方にも無駄がない。ただし、一真様ならそれさえも読んでいる頃かと」

「戦略の単位であれば、引けを取るとは思いませんが、こと戦術の単位であれば空恐ろしい物がありますね。まあ一真様はその先でさえ読んでしまうお方であり、今まで全て直感というのが働いていますからね」

「戦略で負けぬとおっしゃる詩乃殿も相当ですがな」

「いずれにしても、ここからの打開は普通の人間だったら難しいでしょう。あの御方はただ者ではないのなら」

「確かに一真様なら、ここからの幕引きを考えての行動をしますと思いますね。騒ぎを大きくなりすぎましたし、時間的にもそう悪くない頃合いでしょう」

「なら、我々も向かいますかな?」

「・・・・ええ」

「・・・・・あ」

「た、ただいま・・・・・・っ」

「・・・・・何の騒ぎ?」

俺と一葉が最後に辿り着いたのは、川の岸だった。で、俺らの前にいるのは・・・・。

「最後に逃げた先が川辺なんて、気が利いているじゃない」

美空率いる、完全武装の長尾衆一行だった。

「別に逃げたわけではない」

「へぇ」

「左様。最後の幕引きとなれば、おぬしは必ず出てくると踏んだからの」

「別に、私を倒してもこの騒ぎを止められるわけじゃないわよ?」

「それくらい理解はしている。美空が前に出てきたら、一暴れしないと振り上げた拳は収めないだろ?」

この逃亡劇というか、本当は一葉のみのだったんだけど俺が巻き込まれての大きな逃走劇となってしまった。というか、規模が大きすぎる。一真隊との追いかけっこならまだしも、一門衆や長尾まで噛んできたから、これはある意味でやりすぎた感がある。敵の最前線の指揮は美空であって、神速とは言えないけど人間以上の者による的確な指揮をして俺達が逃げ切るとは思えない。なら、俺達が出来るのは、街の皆に迷惑をかけないような幕引きをするためである。追い詰められる側としては、場所を選ぶ権利くらいはあると言える。それに神界がトレミーに通信を入れたのか、医療班率いる桃香たちが上空にて待機中だ。たぶん護法五神辺りからだと思うけど。

「よく分かってるじゃない。さすが私の未来の旦那様。で、どうするの?力押しで一真に負けてあげる気は流石にないわよ?」

「無論、余が出るに決まっておろう?」

「へぇ・・・・。てっきり一真が来るのかと思ったんだけど」

「俺は元々巻き込まれた側だ、それに逃げ出したのが一葉だからな」

とまあ、美空対一葉になったのはいいけど、お家流を使うのであれば止めに入るさ。言っても少し身長を大きくさせるだけだけど、護法五神のは、何とかなるけど三千世界は全てを受け止めることはできんからな。だったら身体を大きくさせて受け止めるが身体は貫く覚悟を持って行くさ。上には桃香たち回復組と連れて行くのを拒否られて攻撃をされるのであれば、ヴァーリたちが何とかしてくれる。

「あら。いくら鹿島新当流の皆伝とは言え、この私に手加減して勝てると思っているの?」

「それは試してから言えば良かろう?」

そろそろ始まるが一葉が鞘走らせるのは腰に佩かれた大業物。

大業物・・・・・日本刀の等級で二番目に凄い刀という意味。最上大業物、大業物、良業物、業物、とランクされている。

大業物の説明出たけど、俺の持っている剣でいうなら最上大業物だろうな。聖剣エクスカリバーなんだし、まあ聖剣最強なのはカリバーンの方かもしれんが。

「・・・・ホント、よく分かっている!」

それに応じるように、美空も刀を引き抜いて・・・・。

「柘榴、松葉。手を出すんじゃないわよ」

「分かってるっすよー」

動き出すのは、二人同時だった。で、刀を振る双方の戦いは夕方まで続いたのだった。剣劇とも言おうか、達人クラスでしか見せないようなもんだったけど。上空で待機していた者たちも凄いと思いながら見ていた。桃香たちは空中にて、何かで遊んでいたけど。ヴァーリや愛紗に恋、それに刀を使う吉音にはたまったもんじゃないような勝負だった。

「・・・・・・すごいっすね・・・・・」

「うーん。まあ、そうだな。でも俺だったらすぐに終わらせるよ」

一葉と美空、双方の剣の腕はまさしく互角に過ぎない。剣技なら一葉の上だろうが、それを補って余りあるほどに、美空の刃は一葉へ自在に襲い掛かる。予想外の一撃を熟練した動きで防いでからの、鋭いカウンターを叩きこむ一葉。

「む・・・・・っ」

その刃を振り下ろしたときには、美空の姿はなかった。ほんの半歩だけ身をずらして、既に反撃の構えを取っていた。

「さすが御大将」

まあそこからのカウンターは、放たれることはなかったんだけど。美空がステップを踏んだのは、前でなく後ろに向けて。

「え、なんであそこで入れなかったっすか!?」

「・・・・・分かんない」

見た限り、先ほどの一撃を入れたら美空の勝ちではあった。けど、それは全力を見せていないからかもしれないと思ったからだ。

「・・・・・流石じゃな」

「・・・・・当然。今打ち込んでたら、危なかったでしょ」

まあ一葉の側には次の一手があったのだろう。美空はそれが途方もなくヤバい事を直感で悟ったんだろう。そして攻撃よりも引くことを選んだ。

「何なんすかそれ・・・・・」

「うーんとな。たぶん直感が働いて攻撃ではなく、引くのを選んだからだと思う」

俺は分かるが、柘榴たちのレベルを超えた戦いとなっていた。これはこの前の川中島での美空対光璃みたいな感じだろうよ。

「京でそちの腕は分かっておったが、なるほど見事なものよの」

「そっちこそ。私の剣をここまで捌くなんて、予想外も良い所」

「なら・・・・・」

「次は、本気って事ね」

二人の周囲の気配が、先ほどよりも変わる。

「これは受け止める理由が付いたな・・・・・」

「はぁぁああ・・・・・・・・っ」

「ふむ・・・・・・・・」

「御大将、それはまずい」

「一真さん。受け止める理由とは何なんすか?公方様にも何かあるんすか?」

「あるよ。お家流だけど、美空並みにヤバい、とっておきがあるんだが・・・・。これはさすがの俺は受け止めなければならないようだ、瀕死の重体になる覚悟をな」

「知られぬ外史にしか現れぬ、曹孟徳の七聖剣よ・・・・。彼方の歴史に現れる、ただ一刀の一期一振りよ・・・・。髭切、鬼切、獅子ノ子、友切・・・・世界を越えて集いに集え・・・・」

あーあ、やっちゃったけど。最初に聞いた剣だけは、?となった。もちろんトレミーにて観戦中である華琳も?となった。曹孟徳の七聖剣?そんなのあったけ?上空にいる桃香たちに聞いてみたけどやはり知らないようだ。

「な、なんなんすかあれ・・・・・!」

「無数の刀が・・・・・」

「あれこそ、一葉のお家流である三千世界というらしい。架空だろうが実際にあった剣とかも、宝物庫から呼んでくるらしい」

「なるほど、だったら、こっちも手加減無しでいいわね」

今回は俺の許可無しでも力を貸してやれと言ってあるから、美空のお家流を封印処置なんかしていない。もう仲間になったのなら、尚更だと思ったんだが。少々甘かったようだな。

「帝釈!みんな!力を貸してちょうだい!」

「って、御大将も本気っすか!?一真さんが受け止める理由とはこの事だったっすか?」

「ほら、言った通りになった」

「・・・・ほほぅ。美空のそれを見るのは二度目じゃが、主様は数えたことがないくらい見たことあるのう」

「私は、それは見せてもらった事ないわよね?」

「前から気になってはおったのじゃ。余の三千世界とぬしの護法五神、正面からぶつかれば果たしてどちらが強いのか・・・・」

「あら。だったら早く言ってくれれば良かったのに。・・・・帝釈、みんな!あのなまくらを片っ端から鉄屑にしちゃいなさい」

「義経の膝丸よ、名だたる五つの刃よ、御手杵、日本号・・・・天下に誇る二本の槍よ・・・・」

おやおや、刀だけかと思ったら槍まで召喚する一葉。で、美空により呼ばれた護法五神である帝釈天と四天王を率いる毘沙門天は俺を見るが本気で行けというメッセージを送る同時に我が全てを受け止める盾となるとな。そしたら帝釈天たちが、ホントにいいの?という顔をするが、無言で頷いたので前を向く。双方の合図の元で俺も動きだして受け止める準備をしていた俺であったけど、上空にいる桃香たちは受け止めた後のことを考えていた。まあ良くて切り傷で悪ければ瀕死状態の重体だ、まあ俺は神だから不老不死で死なないけど、気絶はするさ。

「うわ・・・・凄いことになってるのです・・・・!」

「あ、二人も来たっすかー」

ここは存分に暴れ回れるようだけど、ここまでとも予想内の範囲だ。

「二人とも集中しているからか、俺らの会話聞こえていなさそうだな」

「そうなのー」

と俺らはそう会話をしていたら、そろそろだったので。クロックアップの準備をしていた、クロックアップは一秒で何千倍もの動くからな。

「行くぞ・・・・・」

「行きなさい・・・・」

「あーあ、こりゃまずいな。飛び込むしかなさそうだ」

「一真様、駄目なのです!」

「一真、危ないの!」

「大丈夫大丈夫。俺は神だから、心配ないよ~。(たぶん)」

あれだけの破壊力のある技が正面からぶつかるのであればどちらも怪我だけでは済まない。だから決死の受け止めに入るしかないと思った。桃香たちも、それしかないとはいえ、自分の夫が決死の止めに入るのは些か抵抗もあるが、大技クラスを止められるのは恐らくここにいる俺と禁手化したヴァーリくらいだろう。

『行け!』

と言って、双方のお家流が発動した瞬間に俺は間に入って煙幕を出した。そして巨大化をして前を美空側に後ろ側を一葉側に向けた、そしてどうなったかは予想通りとなったのだが、双方の攻撃をした後に光璃が来たらしい。

「・・・・・・何してるの?」

と聞いたら美空と一葉は、技を解除したがもう遅かった。柘榴の隣にいたはずの一真がいなくて、うめき声を聞いたあとに美空と一葉の間を見ると背中から何本の剣が突き刺さり、前からは結界を張ったのだろうが生身の身体なのか塵のように燃えていた人物である一真がいたのだった。一真は受け止めたあとに、よろよろしたあとに川に落ちたのでやっと気付いた双方に観戦していた柘榴たちと鞠たち。

『一真!/主様!/一真様!』

川を見たら、そこには血だらけの一真がいたら、即桃香たちが来た。そして運ばれて行ったけど。その間に、説教が始まっていたけど。

「まったくもう。逃げ回る所まではお説教だけで大目に見ようと思いましたが、足利の家に伝わるお家流を一体何だと思っていらっしゃるのですか・・・・。怪我さえしなかったのは、全て受け止めた一真様ですよ!沙紀さん、一真様の容態は?」

「瀕死状態の重体だそうですが、大丈夫です。我々の医療はここより進んでいますから、隊長曰く気絶したのは久々だったと」

「・・・・・・ふむ」

「一真様もあの流れまでは分かっていたはずなのに、何故なんですか?」

「恐らくここまで本気させたら、どうなるか。知りたかったようですよ、最も護法五神の力は一真様が召喚したときより力が弱かったと言ってましたし」

「美空様も、よりによって公方様狩りだなんて何考えているんですかぁ!もう詩乃ちゃんから話を聞いた時、寿命が縮まりましたよぉ・・・・。あと神様を傷つけたのですから、神罰喰らってもおかしくない状況でもあったのですから!」

「・・・・・・なんで私まで」

「・・・・甲府を遊び場にされては困る」

「まったくです」

「いいじゃない、ちょっとくらい・・・・」

「・・・・・・・」

「な、何よ・・・・・・」

「・・・・・・・」←光璃

「・・・・・・・」←美空

「・・・・・・・」←光璃

「・・・・・・わ、悪かったわよ。っていうか、本気で公方様に三昧耶曼荼羅なんて撃つわけないじゃない」

「・・・・・・・」

「・・・・・だから、悪かったってば」

「・・・・凄く怒ってますね。光璃様は。ですが、三千世界と三昧耶曼荼羅を本気で撃って受け止められたのは隊長なんですから、礼なら隊長に言っておいてくださいね」

無言のプレッシャーが相変わらず半端ないですが、まあ止めた側の隊長もさすがです。

「当たり前ですよ、沙紀さん。お兄ちゃんはいつ戻ってくるんですか?」

「捕り物くらいならともかく、甲府の町であんな事しやがったら誰でも怒るでやがりますよ。兄上も今回はいつも以上にご迷惑をかけたようでやがりますからな」

「そうですよ。美空様は、春日山で光璃様達に同じことされたらどういう気持ちになるんですか・・・・」

「べ、別に・・・・そんなの、私が全員捕まえに出て行くだけだし・・・・」

「・・・・・・」

「幽は聞かないんすか?」

「公方様は、京の街を庭と公言して、率先してご自身の遊び場になさっていらしたお方ですので・・・・」

「・・・・・・」

「まあ楽しかったから良いではないか」

「よくありませぬ!一真様をお怪我されたのですから、反省してください。一真様があそこで止めなかったら双方とも怪我だけでは済まなかったのですから」

「一葉様・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・う、うぅ」

「・・・・・・めっ」

「・・・・・すまぬ」

「ちょっ。何で私はあんなに威圧されたのに、一葉様はその一言なのよ!」

「光璃様。甘やかさないで結構ですぞ。この際ですから思い切りガツンと」

「一度目は、これでいい。けど、一真が怪我をしたのは別の話。それと沙紀、私と同じ顔をした人が一真を囲んで飛んでいたけど。あれが誰?」

「(二度目は無いって事ですか)ああ、それは久遠様がここに来たときに話すことです。その事については、隊長からの秘匿情報ですので」

「うぅぅ。沙紀よ、幽が酷い事を言う」

「当たり前です。私が幽さんだったら、同じことを言ってますよ。一葉様も美空様も反省するようにと、奏様も仰っておりますので」

「一葉様はともかく、一真と私は巻き込まれた側でしょ」

「一真さんは何かしらの策があったんですよ。御大将は率先して巻き込まれに行っているじゃないですかー!」

「当たり前じゃない。こんな面白そうなこと。・・・・それより、あんまり怒ると皺が増えるわよ?」

「うぅぅ、誰の所為だと思ってるんですかぁ・・・・」

「・・・・美空」

「わ、分かってるわよっ」

隊長だったら、笑っていると思いますが。それを受け止めたのは、並みの人間では出来ない事です。幸い隊長の怪我は、桃香さん達の回復魔法ですぐに傷は塞がり回復したけどさすがの隊長ももうあんなのは御免だと言っていた。神仏と無数の刀ですもんね。一葉様は京の街なら問題なかろとは言うものの、幽は大ありだとはっきりと言ってやっていた。意識だけを飛ばして見ているのを気付いた沙紀であったけど、気付かないフリをしてくれた。で、一葉を中心に説教は躑躅ヶ崎館で第二ラウンドが開始されていたけどな。夜になると、全回復した俺であったが、一応今日はトレミーで休養してから躑躅ヶ崎館に戻ったのだった。戻ったときは、主に詩乃たちが泣いて迎えてくれたけど。もうこんな無茶はしないからと言ったのだったけど、このあとも相当無茶するであろうと思った詩乃たち。 
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