東方紅魔語り
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紅霧異変
Part9 霧雨魔理沙と・・・
前書き
遅れて申し訳ありません。←このセリフ、毎回言ってる気がしてならない。
今回は霧雨魔理沙が登場です。と言っても、あまり活躍は期待しないで下さいね。紅霧異変は始まったばかりなので。
では今回も・・・。
ゆっくりしていってね!
凄まじい風切り音が耳に入ってくる。
俺の移動するその速度は、恐らく車などよりは断然速いだろう。景色は一瞬ですれ違う。
なんとかコントロールしようと体のバランスを整えている所へ、一人の少女の声が聞こえてきた。
「お前何者だ?私に着いてこれるなんて、ただの人間じゃないよな?」
横目で、隣を飛んでいる少女へ視線を送る。
俺と同じ速度で飛び回るその少女・魔理沙は、何処か物珍しそうに此方を見ていた。
「ただの人間だっつうの。というか、いい加減に止まってくんねぇか?そろそろ疲れてきたんだが」
もともと、俺はスタミナがあるわけじゃない。20秒ちょっと全力で走れば息が上がるレベルだ。
移動速度が上がっているとはいえ、走っている事には変わらない。そう、スタミナ切れが近付いてきているのだ。
「そういう訳にはいかないな。ここは敵の本拠地、止まるなんて自殺行為でしかないぜ」
「ですよねー」
その言葉通り、止まる気配は無さそうだ。
仕方ない、とアプリが起動している携帯に向かって言葉を放った。
「移動距離を0に」
俺が放った言葉はそれだけだった。
だがその言葉一つで、魔理沙の動きは止まり、俺の動きも止まる。
「な、なんだ?」
進もうと動かしているにも関わらず、空中で静止した魔理沙は不思議そうな表情で呟いた。
「移動距離を無くしたんだよ」
俺の言葉を聞いた瞬間、魔理沙は改めて俺という存在に気付いたようだった。
「移動できる距離を無くせば物は動けなくなる。ただ、俺が奪ったのは移動距離だけで移動速度は奪ってない。いまお前は、その場で高速で足踏みしてるようなモンだな」
副作用なのか俺の体も動かないが・・・その辺りは軽く流す。
一方の魔理沙は呆然と聞いていたが、少し経つと、その口が歪んだ。
「能力か?そしてこんな事が出来るって事は、下っ端とかじゃないって事だ」
いや思い切り下っ端です。という心の声は当然聞こえていない。
「最近こちらに来たばかりの新人だよ。前までは人間の世界で頑張ってた」
「へー、外来人って奴か。霊夢とかから話は聞いたりするけど、本物は初めてだぜ」
お宝でも見ているかのような視線を送られてくる。
「最近って、お前はいつ頃に幻想郷に来たんだ?」
なぜそんな事を聞いてくるのか?
何か作戦を練るにしても、そんな質問じゃ得られるものなんて無いだろうに。
答えても此方にリスクは無いとみて、その質問に答える。
「まだ一週間程度かな。それがどうした?」
そう尋ねると、魔理沙は少し肩をすくませて答えた。
「いや、そんな短期間で能力を使いこなすなんて、お前中々やるなあ。霊夢レベルに才能あったりして?」
俺では無く携帯の才能だがな、と小さく呟く。
だが、と言葉に付けたし、魔理沙は言葉を紡いだ。
「だけど、残念だったな」
魔理沙は動きを封じられた状態で、なお勝ち誇った表情でそう言う。
いま俺は移動距離を無くしている。そのせいで魔理沙は動けないはずだ。どう考えても、俺に危害を加えることは不可能の筈・・・。
だというのに、魔理沙の表情は変わらない。
ハッタリか何かか?
「なあ、私達が息を出来たり、そもそも会話出来てる時点で『全ての移動距離を無くしている』って事は無いよな?そんなことされたら、酸素が肺まで回らなかったり、空気が振動しなかったりするもんな」
・・・確かに、俺の0にしたものは『魔理沙の移動距離のみ』。他は動く。
だが、それがなんだと言うんだ?
「つまり、だ。私は固定されていても、私から放たれた魔力はどうなるんだ?」
ゾッと、背筋が凍った。
そして気付いた時にはもう遅い。
爆発音は下から聞こえてきた。
青い爆発が真下から廊下を破壊して俺を飲み込んでいく。動けないから逃げることすら出来ない。
対して、魔理沙は空中で止まっているから廊下の下に落ちる事は無い。
咄嗟に能力を使い、『耐久力を100』にした所で、俺の肉体は瓦礫に押しつぶされた。
「お前と私じゃ、経験が違いすぎるぜ。注意力+判断能力、この二つを鍛え上げることをオススメするぜ」
そう言うと、魔理沙は全速力で飛んでいった。
追いかけるために瓦礫の中から這い出ようとするが、いかんせん力が足りなくて動けない。
「耐久力の方に能力を割いたせいで逃げられたか・・・まあ痛い目みるよりは、こっちの方が楽だったのかな?」
とりあえず出るために、『破壊力を100』にして体を小さく振動させた。
俺を押し潰していた瓦礫の全てがバラバラに砕け散る。
立ち上がって辺りを見渡し、誰もいないことを確認する。
「さーて、誰もいねェみたいだし、部屋に戻るか」
そもそも俺は戦闘などしたくないのだ。むしろ、絶対に負ける戦なんて誰がしたい?
砕け散った瓦礫を見ながら、バレずにサボる方法を考える。
(もしサボっている事がバレたら即終了。そうだな、部屋に篭って包帯を全身に巻いとけば、なんとか誤魔化せるか?)
とすれば包帯を入手しなければならない訳だが・・・。
「よし、『包帯との距離を0に』!」
瞬間、場所が切り替わった。
先程まで廊下にいた筈の俺の体は、いつの間にか倉庫のような場所に移動していた。
そして目の前には、俺の目標である包帯がある。
「よし、これでーー」
「これで、何かしら?」
包帯に伸びていた腕が止まった。何か、殺気にも似た視線を感じる。
恐る恐る顔を上げてみた。
そこには、
「oh・・・咲夜さん・・・」
「こんな所で、何をしているの?」
最悪の展開だ。こんな所でこの人に会うとは・・・。
「お嬢様から『貴方は侵入者を追ってる』って聞いてたんだけど、なんでこんな場所にいるのかしら」
なぜか情報がもう伝わっていたようだ。俺が魔理沙を追ってから、まだ十分も経っていないというのに。
「それに初見の奴は貴方にダメージを与えられないでしょうし、怪我なんてないでしょ」
目の前のメイド長に初見で殺されかけたのだが・・・。という言葉は伏せておく。
「そういえば、貴方の能力って一体なんなの?」
「今更!?」
つい大声を出してしまった。
いやだって、そりゃツッコムだろう?ここまで使われてきて、まだ俺の能力について把握してないなんて・・・。
「俺の能力・・・でいいのかな、『100と0を操る程度の能力』です」
一応は味方だし、とりあえず話す。
すると咲夜の顔は、何かを思い出したかのような苦い表情に変わった。
「えっと、何か?」
何か変なことでも言ってしまったのだろうか?と危惧して、被害が出る前に自分から聞きに行く。そして元凶が発覚次第、謝罪して許してもらう。
だが、咲夜は何かを頭から払い落とすかのように首を横に振るい、否定する。
「いや、なんでもないわ。それより早く侵入者を撃退しなさい」
そう言うと、咲夜は踵を返して倉庫のような部屋から出て行った。
いつもより少し優しい気が・・・。と少し不審に思いながらも、空いた手で包帯を探していく。
倉庫の中にある木箱の中。壺の中。棚の中。ありとあらゆる場所を漁っていく。
だが
「見つからない・・・か」
と、そこで少し違和感を覚えた。
包帯との距離を縮めて、この倉庫に来た時には確かに包帯は目の前にあった。
だが、今は無い。
あの包帯に手を伸ばした時、視線を感じて顔を上げると、そこには咲夜がいた。
つまり、位置的には俺・包帯・咲夜という立ち位置だったということ。
そして、この倉庫には咲夜以外の生き物は一切入っていない。
だが俺は包帯に触ってないし、包帯が独りでに動くわけない。
つまり・・・。
「咲夜が持っていきやがったのか・・・!」
まさか、俺がサボろうとしていることを察知して・・・!?、と深読みしてみるが、何も変わらない。
これではサボれない。
さて、どうするか?と、顎をさすりながら考える。
魔理沙に勝てない事はさっきの戦闘で把握した。追いかけても無意味であろう。
かと言って何もせずにサボってたら、最悪、紅魔館から追い出される。そもそも、俺は戦力としてここにいるのだ。使えない人間をワザワザ置いとく義理は無いだろう。
「玉砕覚悟で突っ込んで負けても、『使えない』って評価になるのは変わらないよな。さて、どうするか?」
と、直後、遠くの方から何か聞こえた。
『博麗の巫女がキター』『目的を履き違えるな罪袋A!我らが目的はフラn』『待てィ!このBの言葉を聞くんだ。まずは咲夜様の部屋へ・・・』
という男達の野太い声が聞こえてくる。
その瞬間、まるで天から光が差し込んだかのように、道が示された。自分のやるべきことが分かる。
博麗の巫女。その言葉が頭に残った。
魔理沙には勝てなかった。だが、他なら・・・!
「待て!フラン様に近付くんじゃねェ!」
だがやはり、この混乱に乗じてフランの居場所へ行こうとしている者を見逃す訳にはいかない。
即座に能力を解放する。
『罪』と書かれた袋を被る男と、フランを信仰しているとも言える男の戦いが始まった。
・・・紅霧異変中なんですけど。
後書き
私は思ったわけですよ。なぜ、二次創作でこそ真価を発揮する筈の罪袋が活躍する小説が少ないのか・・・と。
というわけで、紅霧異変・罪袋参戦!
有波君は魔理沙にも霊夢にも勝てる見込みが無いのだから、いっそのことモブを相手にしちゃえばいーんじゃないかな?と思いましてね。
でもまあ、魔理沙も霊夢も活躍はキッチリ映りますからご安心を!
では今回はこの辺りで。
次回も、ゆっくりしていってね!
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