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素直は恥ずかしい

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第二章


第二章

「生徒会って。うちは不祥事は起こしてないぞ」
「そうじゃなくてね。まあ風紀委員長としてかしら」
「どっちにしてもやばそうにしか聞こえないぞ、おい」
「まあまあ片桐君」
 その生徒の名前を呼んで笑った。
「部長の貴方を困らせる話じゃないから安心して」
「だといいけれどな」
 その背の高い生徒片桐はそれを聞いてもまだ不安そうであった。
「で、何の用なんだ?ブラスバンド部への勧誘ならお断りだぞ」
「それはないわよ」
「じゃあ生徒会か風紀部か」
「巨人じゃあるまいし。そんな引き抜きはしないわよ」
「じゃあ何なんだよ」
「ここの一年の子だけれどね」
「ああ」
 若菜は健次郎には見せたことのなり軽いやり取りと表情の後で本題に入ってきた。
「佐々木君っているわよね」
「あいつがどうした?」
「彼に用があるのよ」
「あいつはやらんぞ」
「だからそれじゃないわよ」
 また少しふざけたやり取りになってしまった。
「ブラスバンド部は人材が揃ってるし」
「それはいいことで」
「そんなことはしないわ。巨人みたいな馬鹿はしないの」
「普通狙ってあそこまで馬鹿はやれないだろ」
「まあ巨人だからね」
 この二人はアンチ巨人なのである。片桐はホークスファンで若菜は横浜ファンだ。
「とことんまでいって自滅するんじゃないかしら」
「もう自滅してるだろ」
「そうかも知れないわね、あの負けっぷりは」
「それでだ」
 片桐はまた脱線してきたので話を戻してきた。
「佐々木に何か用かよ」
「ええ、ちょっとね」
 くすりと笑ってそれに応えた。
「その彼いるかしら」
「ああ、今そこで素振りやってるぜ」
 見ればその通りであった。胴着姿で素振りをしていた。
「今日は防具着けていないの?」
「そっちはもう終わったよ。後で型の稽古するしな」
「ふうん」
「まあ用があるなら早く済ませてくれよ。こっちも練習だからな」
「わかったわ。それじゃ」
 若菜は片桐に挨拶をして健次郎の方に向かった。健次郎はそんな若菜に気付くことなく一心に素振りに励んでいた。
 そこに若菜が声をかけてきた。
「佐々木君」
「!?」
 その声に気付き動きを止める。そして声がした方に顔を向けた。
「会長」
「何でここに来たかわかるかしら」
「防具袋のことですか?」
「そっ、もうちゃんとしたのか気になってね」
 片桐に見せた砕けた顔はもう何処にもなかった。あの生徒会長兼風紀委員長のきつい顔になっていた。
「どうかしら。もう買ったの?」
「はい」
 健次郎は若菜に対して頷いた。
「もう買ってますけど」
「あら、早いのね」
 てっきりまだだと思っていた。それで急かす為にここに来たのだ。
「あれからすぐに」
「ふうん」
「親がお金出してくれまして」
「そう、いい親御さんね」
「有り難うございます」
 剣道というのは金がかかる。竹刀に防具、それに胴着。胴着一つですることができる柔道や空手とはそこが大きく違っているのである。だから学生では親に金を出してもらわないととてもできはしないのである。
「じゃあそれ見せてくれるかしら」
「ええ、でしたら」
 若菜を部室に案内する。だが彼女はそこで立ち止まった。
「ちょっと待って」
 急にきつい顔になった。真面目な顔からきつい顔になったのだ。
「どうしたんですか?」
「そこ、更衣室よね」
「まあロッカーもありますから」
 部室は男子と女子に別れているのだ。これに生真面目な若菜は反応を示したのである。
「じゃあ入れないわ」
 若菜は言った。
 
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