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美しき異形達

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第二十六話 姉妹の日々その四

「楽しんで行こうぜ」
「夏休みね。丁渡ね」
「丁渡?」
「私達も旅行を考えていたけれど」
「じゃあ好都合だよな、一緒にな」
「いえ、旅行に行くのならね」
 それならとだ、黒蘭はここでこう言うのだった。
「二人でと思ってるわ」
「あんた達姉妹でかよ」
「ええ、そうね」
「そうか、じゃあ二人で楽しんでな」
「ただね」 
 二人旅をすると言いつつだ、こうっも言う黒蘭だった。
「行く場所が重なるということはあるわね」
「それはかよ」
「その場合は宜しくね」
「っていうと黒蘭ちゃん達もか」
「関西全域よね」
「八条鉄道を使って回ろうって思ってるんだよ」
「それなら便利ね」
 八条鉄道を使うのならとだ、黒蘭も頷いた。
「あの鉄道は日本全国をつなげているから」
「そうだろ、八条鉄道だと何処でも行けるからな」
「あれを使って」
「ああ、行くよ」
 こう黒蘭に話すのだった。
「厚休みはな」
「楽しみにしてるのね」
「関西に憧れてたからさ、あたし」
 こうも言う薊だった。
「ずっと関東だったからな」
「奈良や京都ね」
「他の場所もだよ、琵琶湖とか伊勢とか高野山とかな」
 そうした場所も、というのだ。
「勿論大阪もさ」
「行くのね」
「大阪やっぱりいいよな」
「観に行く場所も多いしね」
「大阪城に住吉大社にってな」
「食べものも美味しいし」
「あそこだけでもかなりいいけれどな」
 それに加えて、というのだ。
「夏休みだからさ」
「関西全域を回るのね」
「そうするつもりだよ、まあそこで黒蘭ちゃんも一緒ならな」
「その時は楽しみましょう」
「ああ、是非な」
「先輩は来られるの?」
 黒蘭は薊達の旅行の話を聞いてからだ、あらためてだった。 
 智和のことをだ、薊に尋ねたのだった。
「あの人は」
「いや、先輩はな」
「来られないのかしら」
「まだお誘いもしてないよ」
 まだその段階でもないというのだ。
「ただ、先輩男の人だしな」
「それに考えてみればあの人受験生よね」
 高校三年だ、まさに最も難しい時期だ。
「だから」
「まああの人とっくに進路は決まってるけれどな」
「八条大学の医学部よね」
「あそこから直々にスカウトが来たらしいからな」
 試験を受けて入るのではなくだ、大学の方から来て欲しいと言われたのだ。このことが相当なことであることは言うまでもない。
「だからそっちにな」
「進学されるのね」
「凄いよな、伊達に天才じゃないよ」
「灰色の脳細胞とも呼ばれている人だから」
「あの人はもう進路決まってるよ」
「それじゃあ旅行に行かれても」
「どうかな、そこは」
 まだわからないという返事だった。 
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