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デート・ア・ラタトスク

作者:エミル
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実行

訓練が開始されて一週間がたった。物理準備室でパソコンの画面を凝視している士道が慎重に選択肢を選ぶ。そして画面には『Happy end』と文字が浮かび、士道はコントローラーを高く振り上げる

「やったぁ───!!どんなもんじゃ────い!!!!」
「……まぁ、少し時間はかかったが第一段階はクリアとしておこうか」
「士道……大丈夫?」
「何か生気のない目をしてるけど……」

この一週間、士道とエミルとマルタの中で一番頑張っていたのは士道だった。寝る間も惜しんでギャルゲーをやり続け、一時期クラスメイトからは痛い目で見られていた(殿町を除く)

「じゃ、次の訓練だけど……もう生身の女性に行きましょ。時間も押しちゃったし」
「生身!!!?二次元じゃなく、三次元の方!?」
「平気よ。もし、失敗しても失われるのは士道の社会的信用だけだから」
「代償でけぇよ!!」
「……そうだね。まずは無難に彼女などどうだろうか?」

令音が手元のコンソールをを操作して並べられたディスプレイに学校内の映像が映される。そこで目をつけたのは士道の担任の岡峰珠恵、通称タマちゃんだった

「いいじゃない。それでいきましょう」
「シン、次の訓練が決まった。岡峰珠恵を口説きたまえ」
「はぁ!?なんでだよ!」
「何か問題でもある?(ニッコリ)」
「大ありだろ!!エミルも何か言ってやれ!」

眉を寄せてエミルに叫ぶ士道に対して琴里は士道の反応を楽しむようにニヤニヤしている

「うーん…でも、士道は本番だと先生より難しい精霊に挑まなきゃならないし……」
「うぐ……そりゃそうだけど………」
「最初にしてはいいんじゃないかな?告白したとしても言いふらしたりもしなさそうだし」
「……まぁ、君がどうしても嫌なら女子生徒にも変えていいが……」
「………先生でお願いします」

士道はまだ安全な方である先生を選んだ。タマちゃんは幼く見えるが、大人の女性だ。生徒の戯言と聞き流すだろう

「……よし。では、これを耳につけたまえ」

令音は机の引き出しから、士道とエミルとマルタに小さな機械を渡すと、3人は言われるままに耳にはめ込む。すると次に令音はマイクを手に取り、囁くように言葉を発する

『……どうかね、聞こえるかな?」

耳元に突然、令音の声が響く。3人はほぼ同時にびくっと驚いた

「……ちゃんと通じているね。その耳につけているインカムで指示を出す」
「じゃ、士道は早く行きなさい。ターゲットは今、東校舎の三階廊下よ」
「…………あいよ。行ってくる」
「ほら、エミルとマルタもボーッとしてないで行きなさいよ。あなた達の役割は行く途中で説明するから」
「あ………う、うん。分かったよ」

3人は物理準備室を出ていき、目的の場所へと向かう









『いい?エミルとマルタの役割は士道のサポートよ。士道が危なくなったら私達が指示を出すからそれに従うように』

インカムから聞こえる琴里の自分達の役割を理解し、二人は「了解」と言う。そして、士道はというと

「俺、本気なんです。本気で先生と結婚したいと思ってるんです!」

タマちゃんにプロポーズしていた。ちなみにこれは士道の本心ではなく、令音が指示した台詞を言っただけである

「生徒と先生の禁断の恋……なんてロマンチック〜!」
「………マルタ、士道の言ったプロポーズは嘘だよ」
「え!?そうなの!?」

どうやら士道が本気でプロポーズしたとマルタは思ってたらしい

「………本当ですか?五河君が結婚できる年齢になったら私はもう30超えちゃうんですよ?それでもいいんですか?もし、本気ならとりあえず血判状作っておいて……」
「あ………あの…先生……?」

人が変わったかのように珠恵が鼻息を荒くしながらタマちゃんが士道に詰め寄ってくる

『あー……必要以上に絡まれても面倒だから適当に謝って逃げちゃいなさい。後は2人が足止めするから』
「わ………分かった」

士道は生唾をごくりと飲み込むと意を決して口を開く

「すんません!!やっぱりそこまでの覚悟はありませんでしたぁ!!どうかなかったことに!」
「あっ!?い、五河君!?」

叫びながら、士道は駆け出すと背にタマちゃんの声を聞きながら全力でその場を去る

「あ、先生。士道と何かあったんですか?」
「何かすごく走りながら逃げて行きましたけど……?」

そこに近くの物陰に隠れていたエミルとマルタが素っ気なくタマちゃんの前に出てきて、士道の逃走をサポートする

「あ………いや、これは……その……何でもないです!!」

そしてタマちゃんは士道が逃げた場所とは逆方向に恥ずかしそうに逃げた















『いやー、なかなか個性的な先生だったわね』
「よくそんな呑気なこと言ってられるね……」
「先生が恥ずかしそうにしてたの可愛かったな♪」

タマちゃんが立ち去った後、エミルとマルタは士道を追いかけていた。すると途中にインカムから士道と鳶一折紙の声が聞こえる

『俺……実は鳶一のこと前から知ってたんだ』
『私も知ってた』
『2年で同じクラスになれて嬉しくってさ。ここ一週間ずっとお前のこと見てたんだ』
『私も見ていた』
『でも、実は俺それだけじゃないんだ。放課後の教室で鳶一の体操服の匂いを嗅いだり、鳶一の席に座って頬ずりもしたり、黒板に【鳶一折紙LOVE】って書いてるんだ』
『私もしている』
『………そっか。何か俺たち気が合うなー』
『合う。抜群に』

聴いているうちに普通の女子ならばキモイと言われる程のセリフを鳶一折紙は全く動じずに話していた

「そういえば昨日、忘れ物取りに行った時……鳶一さんが士道の体操服嗅いでた…」
「私も一昨日に忘れ物取りに行ったら……鳶一さんが【士道LOVE】って書いてた……」

2人はこのことを士道にバラさないようにしようと誓った





ウゥゥゥゥゥゥゥゥ─────────────





「これは……空間震警報!」
『2人共、空間震よ。一旦フラクシナスに移動するわ。戻りなさい』
「あの精霊がまた来るんだね」
『ええ。そしてその精霊の出現予測地点は──来膳高校よ』



 
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