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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第94話 少年達が切り抜けた先は三人が待ち構えるようです


Side ネギ

「えー、と言う事で僕達"白き翼(アラアルバ)"は本日を以って謎の組織『完全なる世界』残党と戦う事に

なってしまいました!」

「「「イエェーーイ!!」」」「ヒューヒューッ!」
パチパチパチパチパチ!
「拍手するところじゃありませーーん!!」


旧王都の調査に行っていた皆さんも帰って来、全員が揃った所で現状報告・・・奴らと完全に敵対した事を

宣言したらお祭り騒ぎで喜ばれた。

全く関係ないっぽい松永や刹那さん、ゼルクはともかく、他の皆さんは怒ってもいい所じゃ・・・。


「……僕、皆さんに謝らなければいけません。無事に旧世界へ帰すと言っておきながら、

皆さんを危険な状況に追い込んでしまって………。その、ご、ごめ……ご!メスッ!?」

「まーったくもう!その事はいいって皆良いって言ってんでしょ!」

「そーそー。二か月前の事件以来、奴らと戦う覚悟はキッチリしてるわよ。

それに話来てると、交渉蹴ったの主にそこの天然バカだし。」

「いやぁ、それほどでも!」

『『『『褒めてないから!!』』』』


全員に突っ込みを入れられた明日菜さんは地面にめり込んで涙を流しつつ反省している。

でも、明日菜さんのお陰でフェイトの言いなりにならずに済んだんだからここはお礼を・・・それも今は

怒られそうだなぁ・・・。


「おぉ、そうだネギとやら。これのう、フェイトとか言う少年が落としていった物なのだが。」

「これは……?なんだかすごい魔力を感じますけど。」

「名を"鵬法璽"と言う魔法具じゃ。契約した者の言葉を絶対遵守させる封印指定魔法具だのう。」


ゼルクさんが渡して来たのは、天秤を翼に下げた鷹を模った魔法具だった。

ふ、封印指定魔法具って・・・!それじゃあもしあのまま『はい』と言ってたら、フェイトの言う通り

あいつらに対して何も出来ない身体になっていたって事か・・・。


「まぁ、過ぎたこたぁどうでも良い。それよりのどかお嬢ちゃん、もっと大切な話がある筈だ。」

「は、はいー。」

「軽いのう刃の。結構な品じゃぞこれは。」

「封印指定っつってもここにいる何人か持ってるんだなぁこれが。」

「え、えーと……。」


ラカンさんに促されて本を持ったのどかさんが歩み出て来たんだけれど、ゼルクさんが茶々を入れて

困ってわたわたしてしまった。可愛い。・・・いや違うくて!

あの本の名前は"いどのえにっき"。僕を主人としたのどかさんとの仮契約品で、ある指輪とセット。

その能力は、本が『真名を知った相手の思考を読む』事。指輪が『指した相手の真名を書く』事だ。

つまり、今あの本に書かれているのは・・・!!


「コホン。えと、今回、この"鬼神の童謡"の力でフェイト・アーウェルンクスさんの真の名を暴く事に

成功しました!」

「ほ、本当ですかのどかさん!」

「すげぇ!やりやがったのか宮崎!」

「えへへ……ラカンさんの力添えあっての事ですけれど。それで、彼の本当の名前は……『Tertium』。」


のどかさんが嵌めた指輪が宙に書き記した名はラテン語で3番目を示す『テルティウム』だった。

3番目って、まるで創られたような―――そうだ。

あいつ京都で自分の事、『『運命を冠する者(ディアーション・フェイツ)』がⅢ』って言ってた。

ゲートポートでは『可能を関する者(デューエ・ルナミス)』、『不可能を冠する者(ヴァール・レミリエス)』とも。

つまりあいつらは"主人"とやらに創られた、何かしらの役割を担った幹部って事か。しかも―――


「『テルティウム』……ラテン語で"3番目"を指す単語です。」

「"3番目"って……って事はあんなのとおんなじ1番目と2番目がいるって事!?」

「可能性はありますが、日本にも(はじめ)さんとか二郎さんとかいますし……。」


もしも二人も三人もいたとしたら・・・いや、一人相手に遊ばれてるんだ。無理とか言う次元じゃない。

って、ラカンさんなら何か知ってるんじゃ?大戦期の相手らしいし・・・。

と思ってラカンさんを見たら。


「5000万♪」

「無理ですよぉ!!」

「過去話はやめよーぜー。なげーしめんどいし女……はそこそこ出るけど。

それより、嬢ちゃんの話はまだ途中だぜ。」

「は、はいー……。この"いどのえにっき"で、フェイトさん達の目的も僅かですが聞き出せました。」


言いつつのどかさんは残ったアーティファクト"いどのえにっき"を取り出すと、皆が本に集まる。

そ、そうだ。名前が分かったって事はあいつの思考を読めたって事だ。

これで少しはあいつらに近づく事が出来る・・・!


「お前活躍し過ぎじゃねぇか宮崎!?」

「囚われのお姫様、大活躍……死亡フラグアルか!?」

「ふ、不吉な事言わないでー……。で、これなんですが……。」


テーブルの上で開かれた日記の中身は・・・何と言うか正に絵日記風で、妙にラブリーだった。

でも書いている中身、あいつらの目的?ゲートポートの破壊、オスティア周辺の調査、僕の無力化-失敗、

各国勢力の牽制を誘発・・・?と、旧ゲートポートの確保、旧王都最奥部への侵入!?

まずい、このまま調査を続けたらあいつらと戦いになるって事か。でも無視する訳にもいかないし・・・。


「スゴイなコレ、あいつらの今後の目的まで丸分かりや。」

「挿絵を見るに態と読ませた感もあるがな。これって設定しときゃ相手の思考をいつまでも読み続けんだろ?

つ―事は続きのページがあるんじゃねぇか?」

「そ、そうですー。それじゃ続きを……。」


千雨さんに促されて、次のページをそっとめくる。そこに書かれていた物は―――


『のどか!のどか!のどか!のどかぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!のどかのどかのどかぁあうぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!宮崎のどかたんの紫がかった黒髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!
あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…
きゅんきゅんきゅい!!漫画10巻ののどかたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああ
ああ!!ふぁぁあああんんっ!!ネギのヒロインに決まって良かったねのどかたん!あぁあああああ!
かわいい!のどかたん!かわいい!あっああぁああ!コミック全巻発売されて嬉し…いやぁああああああ!!
にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!ぐあああああああああああ!!!コミックなんて
現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… の ど か ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?
にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!
いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!麻帆良ああぁああああ!! この!
ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵ののどかちゃんが僕を見てる?
表紙絵ののどかちゃんが僕を見てるぞ!のどかちゃんが僕を見てるぞ!全てのコマののどかちゃんが僕を
見てるぞ!アニメののどかちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃな
いんだねっ!いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはのどかちゃんがいる!やったよバニィ!!ひとりでで
きるもん!!! あ、コミックののどかちゃああああああああああああん!!いやぁああああああああああ
あああああ!!!! あっあんああっああんあ千雨様ぁあ!!せ、刹那ー!!明日菜ぁああああああ!!!
ラカンぁあああ!!ううっうぅうう!!ネギの想いよのどかへ届け!!魔法世界ののどかへ届け!』

「"去れ(アベアット)"ぉぉおおおおおお!!」
ズッパァン!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!?

お、おかしいな?酷い何かを見た気がする。あれ?僕達はフェイトの思考を読んでいた筈だ。

あれ?ならあののどかさんへのスーパー変態思考がつまりフェイトの―――


「いやいやいやいやいやいやいや!!ちょっと待て!思考停止するのは分かるがちょっと待て!

今の挿絵愁磨先生じゃなかったか!?」

「えー……と、見る余裕がありませんでしたー……。」

「………………え、また開くの?アレ?」


さっきまでその重要さに釘付けになっていたんだけど・・・今ので皆が拒絶反応を起こしてしまった。

僕だって見たくはないけれど・・・くっ!そこに可能性があるのなら、僕は・・・!!


「……のどかさん、"いどのえにっき"を。」

「は、はいー……。お、お願いしますねぎせんせー。」

「フゥ………!」


のどかさんに日記を渡して貰って、溜息一つ。・・・・こ、これが生理的拒否感と言うとでも言うのかな?

原初の恐怖とでも言えそうな物を押さえつけて、僕はゆっくりとページをめくって行き・・・・

さっきのフェイトの思考のページまでを開き切った。


「…………い、行きます!」

『『『は、はい!!』』』


一応、最初は皆から見えない様に隠して、ページを思い切って開く・・・!!


「……………………っそぉぉおおおおおおおいい!!」
バッ!

・・・・・・・あ、れ?さっきと中身が違う。挿絵と、日にちの横に書かれている名前が・・・ない。

代わりに文章だけが書かれていた。


『良くここまで辿り着いた、ネギ。俺の思考を読めたって事は…多分愁磨が計画を次の段階に移したん

だろう。俺等は"造物主"とある取引をした。詳細は言えねぇが、その成果がお前の傍にいる"アスナ"だ。

勝手だとは思うが、多分、お前意外にこれを成す事は出来ねぇ。だから任せる。』


・・・これ、は?愁磨さんとか、造物主とか、アスナさんとか、良く分からないけど・・・。

計画とか、多分『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の中心に近い人の思考?

次のページも、同じように文章だけが―――


『俺達は少しずつ奴らの計画を暴いて行って、結論を出した。』


一行読む毎に心臓が高鳴って、頭の中に警鐘が響く。まさか、この人は。まさか・・・・!!


『俺達に計画を止める資格はねぇ。人間である俺等には。だが、これは俺等の答えだ。お前はお前の答えを

出せ。待ってるぞ息子よ――"最後の地"で。』

「とう、さ……!!」

「えーっ、なになに!?次のページ行かないのネギ君!?」

「え、いや!別に続きは無いみたいですよ!?」
ビリビリビリッくしゃっ!
「っちょーー!?何破ってくれてんのネギ君!!」


読むのに必死になって後ろに回られた事に気付かず、ビックリしてページをやぶっちゃった・・・。

でも、これでハッキリした。父さんは"造物主"って言う敵のリーダーに捕まってて、あいつらの計画の

手助け・・・とまでは行かないかもだけど、多分、僕らを助けてはくれない。

そして、"最後の地"で待ってる。父さんと、あいつらと・・・・・愁磨さん達が。


「うーーっしお前ら!ここまで来ちまったら仕方ねぇ。俺様も少しネタバレしてやらねぇとな。」

「え……。」

「ハーイ、その辺テキトーに座ってくれや。」


僕らの話が一段落した所で、ラカンさんが急に昔話を話すと言いだした。

あまり気が進まないだとか文句を言いつつ僕達を座らせ、講義でも始めるみたいな態勢だ。

な、なんで急に話す気になったんだろう?この間と言い・・・そこまで切羽詰ってる状況だって事なのかな。

・・・・・切羽詰ってるどころじゃない。危機一髪って言うか背水の陣と言うか、そう言う状況か。


「奴等とマジで事を構えるってぇんなら正体くらい知っておかねーといけねぇ。

しかし今を生きる男ジャック・ラカン様は昔話が苦手だ。そこで……。」


と、どこからともなく映写機とスクリーンロールを出してセットし、懐から出したのは・・・

直径20cmくらいの黒い変な輪っか・・・いや、アレは映画のフィルム?


「特製自主製作映画を用意しておいた!製作費はネギの給料から引かれるから安心しろ!」

『『『ワーワー!ヒュヒュー!』』』

「ちょっとぉぉーーー!?」


まさかの僕負担映画だったッ!高金利だとか闇金だとかそんな物じゃなく、もっと理不尽な物だった!

でもここで拒否したらフェイト達の情報も入らないし、皆と無事に帰れるヒントがあるかも知れな。

ふふふ、いくらなのかなぁ。お話するだけで5千万なんだから、1億とかそんくらいかなぁ・・・・。

よし諦めよう!人間万事塞翁が馬って言うし!成せばなるんだから目の前の事だけ考えよう!


「さぁラカンさん、お願いします!」

「…………オッサン、流石に先生が可哀想だ。」

「う、むむむむ。ま、まぁ料金の件は置いといて。そーら座れー流すぞ。」


そして、全員が座った所で"紅き翼(アラルブラ)"の歴史が上映された。

………
……


「と、まぁその後も何やかんや色々あって俺もあいつらの仲間になって、戦争も終わり今に至る、と。

おしまい。チャンチャン!」

『『『ふざけんなぁぁぁあああーーーーーー!!』』』

「だいじなトコ端折りすぎだろ!てか出会い部分だけじゃん!」

「いやぁ始めたはいいけどなげぇしハズいし、やっぱやめね?」


・・・上映開始から10分足らず。ラカンさんが持ち前の気紛れを発揮して勝手にテープを止めてしまった。

皆からの非難もなんのその、のらりくらりとかわそうとしている。そうはいかない。

僕のお給料5000万以上が勝手に使われているんだから!!


「ラカンさん、続きをお願いします。」

「えー、だってハズいs「ラ・カ・ン・さ・ん?」おぉう……分かった分かった。そう睨むなよ。

んじゃぁ巻いていくか。」


そう言うと、その先を早送りしながら補足説明をしていく。

父さんが僕とそう変わらない年齢で戦争に参加。愁磨さんが仲間になって、ラカンさんが仲間になって。

それから戦争が激化して―――


「グレートブリッジを奪還して連合の危機を救い、そして俺らは連合本国に呼び出された。」


そこで現れたのは、連合のマクギル元老議員と・・・戦争を終わらせようとするオスティアの第一王女

エルザ・ファミリア・エル・プレミロディオル王女と第三、王女、の・・・・!?


『『『あ、アリカせんせぇぇぇええええええええええ!?』』』

「あの人王女様だったの!?え!?そんな人がなんで英語教えてたの!?」

「って言うかあの意味不明教師王女様まで落としてたのかよ……。」

「まーまー落ち着け。とりあえず続けるぞー。」


今度は勝手に上映を再開され、言いたい事が山ほどあったけれど仕方なく黙る。

出会ったその後、エルザ王女と父さんはいい感じになっていって・・・そして戦争は連合側の勝利で

収まると思われたその時。今まで裏側で暗躍していただけのあいつらが、ついに父さん達の前に現れた。


ボォォォォォォン!
『ゴゥア?!』


父さんが元老議員の頭を吹っ飛ばした・・・かに見えたけど、煙の中から現れたのは一見して分かる、

成長した姿のフェイト・アーウェルンクスだった。

謀られた父さんたちは反逆者となって追われ、僅か数人で戦争を止める―――即ち『完全なる世界』を

倒す為に戦場を駆け抜けた。

そして辿り着いた場所こそこの王都オスティアの最奥にある"墓守人の宮殿"だった。

最終決戦は何故か愁磨さんの演説から始まり、有り得ない魔法の矢の嵐によって悪魔の大群の大半を

蹴散らし・・・大混戦の中、宮殿へ入った所でフェイトたちとの戦闘が始まるかと思われた、その瞬間。


『ならば我が直接聞こう。こちらに来い、同胞よ。』


―――それが現れた。全身の身の毛がよだつ、映像で見ただけで分かる異常、超常の塊。

ラカンさんが『俺が勝てねぇと感じたのはアレが初めてだった』と真面目な顔で補足した。

例えるなら・・・抗いようの無い"天災"とか、"神"とでも呼ぶべき存在だと。


「そいつが真の黒幕・敵の親玉。奴等と愁磨は"造物主(ライフメイカー)"、或いは"始まりの魔法使い"と

呼ばれていた。」

「敵の親玉……フェイト達が主と呼んでいたのが、こいつですか……。」

「安心しろ、もうこいつはいねぇ。」


そう言ってスクリーンを指差すと、父さん達がフェイト達を撃退して、愁磨さんと造物主の後を追って

宮殿の奥へ走って行ったところだった。そして戦っていたのは―――


『『『造物主でっかっ!!』』』

「って言うか愁磨さんパッと見悪者過ぎんぞ!!」


竜種並みに巨大化した造物主と、ラスボスのような竜鎧を装備した愁磨さんがありえない威力の技を

雨霰と打ち合っている所に父さん達が加勢し、最後は愁磨さんの魔法(?)の合体技で造物主を

倒し、その場に愁磨さんを残し、父さん達は世界を初期化させる魔法を停止させに行き、外に居た艦隊と

共に魔法を止め・・・世界を救った英雄となり、世界は平和を取り戻した。


「めでたしめでたし、って訳だ。」

「すげぇ………。」

「おっさん達マジ英雄じゃん!世界救ってるし!」

「つーか愁磨先生の影に隠れてっけどネギ君のお父さん強すぎでしょ!てかみんな!」


最後にハッピーエンドの文字が流れて映画が終わり、拍手喝采で幕を閉じた。

す、凄い戦いだった。・・・・・あれが、愁磨さんの本気なのか。ずっと戦いを見て来たけれど、

そのどれもが比較にならない程の魔法戦だった。・・・少なくとも、昔の父さん達くらい強くならなければ

フェイト達には対抗出来ないって事だ。


「「「っで!あの巨乳な方のお姫様とネギ君のお父さんはどうなったの!?」」」

「ひみつ~~♪」

「えぇぇえぇぇえ!そこ重要でしょう!?」


僕が真面目な思考をしている所で全く関係ないみんなは父さんとエルザさんの関係を気にしていた!

そりゃ僕も気になるよ!ぜんぜん知らなかった母さんかも知れないんだから・・・。

と考え込んでいるうちに、いつの間にかお開きになった場からみんなの姿は消え、僕とラカンさん、

千雨さんだけになっていた。その千雨さんは・・・なんだか意地の悪い顔をしていた。


「はっ、オッサンもんな顔でやっぱマジ勢かよ。ここまで来てざくっといろんな所省いたな。」

「流石は嬢ちゃん。……ま、実際色々と問題も残ってな。」

「……その問題の中の最大が、あいつらなんですね。」

「……………そうとも言えるが、そうでないとも言えるな。」

「え。」


僕が珍しく確信した確認に、ラカンさんは曖昧に答えて行ってしまった。

Side out
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subSide ツェラメル

「…………以上、彼の仲間を攫おうとしたけれど、全て失敗したよ。」

「『ご苦労であった。彼女らにもよくやってくれたと伝えよ。』」


栞達、フェイトの仮契約者及び傭兵達で少年の仲間を確保し、計画の失敗源(らしい)を少しでも

減少させようと行った計画であったが、予想以上に少年が成長していた事と"千の刃"が真面目に

動いた事もあり失敗に終わってしまった。それに加え・・・・・。


「『して、何故あそこで戦闘を止めた?あの少年さえ倒してしまえば……。』」

「倒せなどしないさ。俺がさせないし、お前らにもそれが出来ない理由があるんだろう?」

「『………難儀な事よ。』」


それだけで会話は終わり、我は宮殿の最奥に隠された以前の最終決戦の部屋の更に奥に向かう。

"彼ら"の事を愁磨殿が知っているとは思えんが、そう思わせる言動が多すぎる。

しかし・・・構わぬ。最終的に計画が成功し、同胞の魂が救われればそれでよい。

最早それも最終段階となった。"彼ら"との取引の終わりも近い。故に――――


「『最後の仕事だ。ナギ・スプリングフィールド。エルザ・ファミリア・エル・プレミロディオル。』」

「ハッ、待ちくたびれたぜ……。」

「ええ、全くよ。」


我は―――勝ってみせる。

Side out
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Side ラカン

ドンッ!!
「バカな!」

「これほどの実力とは聞いていな――むおお!?」
ドドドドドド!

「ほほー、あのレベル二人相手を一人で圧倒するか。思ったより成長してんじゃねぇかぼーず。」


俺は久しぶりに闘技場へ足を運んで、ネギとコタの試合を観戦していた。

見ている間に相手の中級魔法を『闇の魔法』で取り込んで、後は押せ押せで倒しやがった。

ハッ、勝ったんだったら笑顔のひとつでも見せやがれってんだ。


「これはこれは……拳闘大会影の出資者が顔を見せるとは珍しい。」

「ん?おおっ、久しぶりだな!じゃじゃ馬第三皇女じゃねーか!」

「なっ、貴様!」

「殿下に無礼であるぞ!」


と、これまた俺よりも更に珍しい奴が観覧席に現れた。

ヘラス帝国の第三皇女テオドラ・・・エルザさんを助けてから以来の付き合いだが、

相手は皇女様。取り巻きに怒られちまった。


「良いのです、下がりなさい。」

「し、しかし「命令です。」は、ハッ!」
バタンッ

テオが命令をすると一も二も無く取り巻きは部屋から出ていき、同時。

皇女様の仮面を外したテオはじゃじゃ馬らしい笑顔を浮かべて、俺をバシバシたたいてきやがる。


「ジャックゥ~~!久しぶりじゃな、この肉ダルマ!」

「うっぜ、うっぜぇ!三十路の女が餓鬼見てーな真似すんじゃねーよ!」

「失礼な。ヘラス族は長命だから三十歳でも人間換算で十歳くらいじゃ!」

「ハッハッハ、相変わらずだな英雄様とお転婆姫は。」


テオとじゃれてると、今度はむさ苦しいオッサン(俺が言うこっちゃねぇか)と立派な後ろ角を生やした

オバハ・・・もとい女が部屋に入ってきた。元老議員のリカードと、アリアドネー総長のセラス。

二人とも、あの大戦を生き残り一緒に戦った戦友だ。


「あーんだよ、テメーらが裏で仲良いのがばれりゃまずいんじゃねぇのか?」

「ワハハハハ!まあ飲もうぜ、試合を肴によ!」

「そうじゃそうじゃ、難しい事は追いとくのじゃ!」

「あーはいはい、十代のお子様はジュースな。」

「あー!何をするのじゃ筋肉ダルマ!!」


一気にやかましくなった観覧席で闘技場を見ると、さっきの試合がダイジェクトで流れていた。

リカードはどうやら話題のネギに興味があるようで、全員で盛り上がっている所に衝撃の事実を

伝えてやる。


「あー、そいつな。ナギの実の息子だぜ?」

「「「なにぃッ!?」」」

「だ、だってナギの息子は十歳で……って、変身魔法か。あの年で見事なもんだ。」

「そりゃぁなぁ……。愁磨直伝だからな。」

「"アーカード"、の………?」


と言ったところで、急に部屋の温度が下がった事に気づく。

その出所は・・・セラス。あー、そうだったすっかり忘れてた。そういやこいつあの一件から

愁磨の事めちゃめちゃ嫌いだったな・・・。


「あ、は、ははははは!なんじゃつまらん、それでは優勝はあやつで決まりではないか。

ナギの息子でシュウマに魔法を教わったのでは強いのは当たり前じゃ。」

「あら……その言い方は彼に対して公平を欠くわね。」

「……ふふ、そうだな。」


あいつの頑張りを知ってる俺は、余計それが分かる。そして、今の限界も。

あのままダラっと戦ってたんじゃフェイト達にゃ対抗できねぇ。


「それに、優勝があいつで決まりってのもどうかな、わかんねぇぞ?」

「ん?なんでじゃ?」

「なんつーか、俺もちょっと本気で興味が出てきてな。さっきこの大会にエントリーして来た所だ。」


次の瞬間起こった叫び声は、闘技場の空を貫いたとか貫かなかったとか。

Side out


「ふぅぅん、ジャックのコネならエントリー出来るのねぇ。」

「・・・・・不遜。」

「「「「………え?」」」」


四人に気づかれず部屋で話を聞いていた黒い影と銀の影が・・・遂に、動いた。

Side out 
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