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魔法少女リリカルなのは~"死の外科医"ユーノ・スクライア~

作者:DragonWill
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番外編
  File.3~違法人体実験施設壊滅事件~

ここはどことも知れない、とある無人世界の密林に存在する研究施設。

外壁は古代遺跡に偽装され、と言うよりも正確に言うならば、元からこの密林に存在した古代遺跡の内部を改造して、研究施設を造ったと言うべき場所である。そのため、素人目にはここが最新の研究施設だとは分からず、また、衛星から見たとしても、ただの古代遺跡にしか見ない。

だがなぜ、このように偽装を施し、人目に付かないようにしているのか?

その理由はただ一つ・・・・・ここが違法な研究施設だからである。

しかも、ただの違法研究施設ならともかく、ここが行っている研究は管理局の上層部も一枚噛んでおり、実質、黙認されているのである。

そして、一般人はおろか管理局員ですら、その存在を知らないはずの研究施設を丘の上から見ている影がある。

「ジョーカー、聞こえる?こちら、トラファルガー。目標の研究所を肉眼で確認したよ、どうぞ」

そう、次元海賊団船長のトラファルガー・ローである。

「こちら、ジョーカー。感度は良好だ。警備システムへのハッキング準備もできた。いつでもいいよ」
「了解。これから、研究所内部へ潜入する」





事の始まりは、『アリサ、すずか誘拐事件』が解決し、トラファルガーの戦闘機人改造手術とリハビリを終えた直後に遡る。

「この図面は一体なんだい?」
「これは、ある無人世界に存在する研究施設の見取り図だよ」
「研究施設?」
「もちろん、まともなものじゃない。その上、管理局も一枚噛んでいる」
「そんな施設の見取り図なんてよく持ってたね」
「辞職する直前、司書長権限を使って見取り図のデータをコピーしておいたのさ」
「それで、この施設を狙う目的は?」
「以前言ったよね?治療法の取っ掛かりは掴んでいるって」

ジョーカーの質問にトラファルガーは答え出す。

「ああ、確かに」
「その取っ掛かりこそが、ここで行われている研究内容そのものだよ」
「なに?」

ジョーカーが疑問の声に対し、トラファルガーの答えが続く。

「ヴィヴィオの症状の根本的な原因は、彼女のリンカーコアと融合したレリックを強引に破壊したことで、彼女のリンカーコアも一緒に強いダメージを受けたことだ」
「確かにそうだな」
「仮に、彼女の肉体年齢がもう少し高いか、強引な肉体強化の反動がなければ、その状態からでも完全回復できただろうね。でも、完全に回復されなかったリンカーコアは不完全なまま固定されてしまった」
「問題はそこだな。その不完全なリンカーコアはまるでがん細胞のように徐々にあの聖王の器の体を蝕んでいく」
「そこで、この施設で行われている研究、『人工リンカーコアの製造』こそが、彼女を救う鍵なんだよ」
「『人工リンカーコア』!?まさかそんな!?」
「この研究施設は、最初は管理局の人員不足解消のために『レアスキル保有者の増産』を目的としていたらしいけど、対費用効果が割に合わないということで『人工リンカーコアによる非魔導師の魔導師化』に研究方針を変えたみたいだよ。要するに、質より量ってやつだね」
「なるほど、確かにそれなら試してみる価値はありそうだな、問題は・・・」
「彼らの研究がどこまで進んでいるか、だね。情報によると、まだ非魔導師を魔導師化する段階までは来てないみたいだけど、ヴィヴィオのリンカーコアを治療する分なら問題ないはずだよ」
「それで、どうやって彼らの研究データを盗む気だい?見取り図を見たところ、複数のカメラに魔力探知まであるようだが?」
「おまけに、管理局の暗部部隊による24時間の警備態勢、厄介だね」
「諦めるのかい?」
「まさか」

その後、二人は研究施設への潜入任務(スニーキング・ミッション)に向けての計画を練り続けた。





そして、現在。

研究施設の入口を警備していた警備兵は、ひどく場違いな物を見つけたために、非常に困惑していた。

それは・・・・。

「だ、段ボール?」

そう、段ボールである。

ジャングルに囲まれた遺跡の目の前に、ポツンとたたずむ段ボールは、なかなかシュールな光景である。

(ど、どうする・・・?)

通常、このように普段と違う状況が発生した場合、すぐさま本部に連絡し、指示を仰ぐのであるが・・・。

(い、言えねえ。『目の前に段ボールがあるのですがどうしましょうか?』なんて・・・)

間違いなく、正気を疑われる。

そう判断し、警備兵は本部に連絡せずに、段ボールを調べようと近付いていく。

しかし、警備兵は気づかない。

そこが、監視カメラの死角になっていた(、、、、、、、、、、、、、、)ことに。

警備兵が段ボールを持ちあげた、そのとき。

「なっ!?」

ガバッ!!と段ボールの下から何かが出てきて警備兵を捕え、段ボールの下に引きずり込んだ。

ゴトッ!?ゴトッ!?と段ボールが揺れるがすぐに収まり、しばらくすると、段ボールの下から警備兵が出てきた。

だが・・・・。

(ふう。作戦の第一段階はこれで成功だね)

そう、警備兵の中身はトラファルガーにすり替わっていたのである。

「ジョーカー。第一段階クリア」
「了解。IDカードは?」
「ちょっと待って」

トラファルガーは奪ったIDを確認する。

「あった。クリス・マグヌスだよ」
「クリス・マグヌス・・・・・あった。トラファルガー、そのIDを警備システムの上位リスト組み込ませておいた。それさえあれば、その施設内はフリーパスだよ」
「了解。これからサーバー室に向かうよ」





30分後。

人に見られないように細心の注意を張り、トラファルガーはようやくサーバー室に到着した。

サーバー室にいた人間を隠し持っていたスタンガン(質量兵器)で気絶させ、この施設のメインコンピューターに持ってきた記憶媒体を繋ぐ。

「準備OK。研究データをコピーするよ」
「こちらも、警備システムに割り込みを掛ける。監視映像もすり替えたし、警報も止めた。いいぞ、やれ」

研究データのコピー完了まで、残り15分。





一方、こちらは研究施設の警備室。

「主任、これを見てください」
「何だ?」

研究施設の警備主任が画面を覗きこむ。

「IDカードの登録リストです。ここを見てください。上位のリストに見たこともない男が登録されているのですが・・・」
「・・・その男のデータは出せるか?」

スパイや潜入捜査官の偽造IDの可能性を疑い、職員データを探らせる。

「はい。・・・・・・出ました、これです」
「なに?」

警備主任は怪訝な顔をする。

データがあったということは、偽造されたIDではないということになる。

ならば、この男はいったい何者なのか・・・。

(最近になって新しく上位リストに登録されたのか?)
「でも変ですね。こんな上位に登録されるはずのない人物なんですが・・・」
「ちょっと待て。どういうことだ?」
「これを見てください」

警備主任は職員データに目を通す。

確かに、彼はただの一警備兵であり、取り立てて重要人物ではない。普通なら上位リストに登録などされない経歴である。

「このIDの使用履歴を出せるか?」
「はい。・・・・・20分前にサーバー室の入室に使用されています」
「その時間帯の監視カメラの映像を出せ」
「はい。・・・・・あれ?」

監視カメラの映像に映っていたのは、職員データに登録されていた写真とは全くの別人で、蜂蜜色の長髪で翡翠色の目を持った優男だった。

「警報を鳴らせ!!」
「はっ!!」

警備員が警報ベルを押し、研究施設は非常事態を迎える。





サーバー室では、コピー完了まで、残り三分を切っていた。

何事もなければ、このままコピーを済ませ、自爆システムを起動し、人体実験の被験者たちを救出した後、長距離転送魔法で脱出する計画なのだが・・・。

ヴィー!!ヴィー!!ヴィー!!

突如警報が鳴り響き、施設全体にAMFが展開される。

「一体なにが起こったんだジョーカー!?警報は切ったんじゃないのか!?」
「自動システムには割り込みを掛けていたんだが、恐らく、この警報は手動で作動されたものだろう。そっちまではハッキングでは割り込めない」
「勘のいい人間でもいたんですかね?」
「恐らくそう言うことだ。こうなったらやむを得ない、プランBだ。すぐに次元船を施設の近くまで向かわせる。どうにか合流ポイントにまで向かってくれ」
「了解」

通信を終えると、トラファルガーは戦闘機人モードを起動する。

左目が翡翠色から金色に変わり、左腕の指と肘から熱振動ブレードが飛び出す。

戦闘機人モードの聴覚センサーが遠くから聞こえる複数の足音を捉えた。

「さて。やるか」

呟いたと同時に、画面上に『ファイルのコピーが完了しました』の文字が表示されていた。





研究データを記録した記憶媒体を懐にしまったトラファルガーは、施設の自爆システムを起動させ、実験体の隔離部屋に向かっていた。

重度のAMFの影響下にあるせいか、向かってくるのは、質量兵器を装備した警備兵か、ガジェットドローンを改造したような無人戦闘機ばかりである。

トラファルガーは戦闘機人の駆動モーターにより強化された脚力を使い、オリンピック選手も顔負けのスピードで走りながら、それらを次々と撃破していく。

銃身を指のブレードで切り裂き、ガジェットを肘のブレードで貫き、時には壁を疾走しながら、ついに、トラファルガーは実験体の隔離部屋に辿り着いた。

そこには、10歳前後から10代後半までの20人くらいの子供たちが、金網のゲージに閉じ込められていた

「ひっ!?」
「・・・・・・だ、だれ?」
「来ないで!?もうひどいことしないで!?」

子供たちは、突然現れた、全身を返り血とオイルで汚したトラファルガーに対し、恐怖心を抱いていた。

「・・・・・・これは、酷い!!」

トラファルガーは子供たちの惨状を目の当たりにし、今までに感じたことのない程の怒りを感じていた。

素人目に見ても、人間としての最低限の扱いすらもされず、文字通りに『道具』として扱われてきたのがはっきりと分かるくらいに、子供たちはボロボロの身なりだった。

中には、絶望すら通り過ぎ、濁りきった瞳を向ける者や、医学に精通する彼だからこそ分かったのだが、激しい凌辱を受けた者までいた。

そして、彼の中で『何か』がキレた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

怒声を上げ、次々と指のブレードを振るい、ゲージの鍵を破壊していく。

全ての鍵を破壊し終えた後、トラファルガーは一言だけ告げた。

「ここから出してやる。自由になりたきゃ一緒に来い」

それは、絶望の淵に居た子供たちにとって、奇跡のような出来事だった。





トラファルガーは子供たちを引き連れ、合流ポイントを目指していた。

しかし、ここで、緊急事態に陥る。

「トラファルガー、聞こえるか?」
「どうしたの、ジョーカー!?」
「合流ポイントへ向かうためのルートを敵の警備兵に抑えられた。今、別のルートを検索中・・・・・・・・・・・・・ヒットした!!すぐに転送する」
「来た!!・・・・・・って、ちょっと待って!?このルートって・・・」
「研究施設の初期稼働時に、物資を運ぶために作られた利用されていた地下通路だ。新しい通路が新設されてからは誰も使用していない・・・・」
「今でも使える保証は?」
「その点は問題ない。封鎖されているだけで、通路事態はまだ通じているはずだ」
「分かった。迂回して旧地下道に向かう」
「急げよ。爆破まであまり時間がないぞ」

施設の自爆まで10分を切っていた。





警備兵を避けるために、大回りして、ようやく旧地下道の入り口前にまでたどり着いた。

ブレードで入り口を破壊して通れるようにすると、警備兵の足音を聴覚センサーが捕えた。

(このままじゃ、体力の落ちている子供たちは、警備兵から逃げられない・・・・・なら)

トラファルガーがそう考えていると、ふと、誰かが自分の裾を引っ張った。

「うん?」

振り返ると、黒髪で浅黒い肌を持つ、10歳ちょっとの少女が不安そうな目でこちらを見つめてきた。

「一緒に来てくれるッスよね?オイラたちを置いて行かないッスよね?」

どうやら、この子は本能的に、彼がこれから何をしようとしているのかが分かったようである。

「ごめんね。このままじゃみんな捕まっちゃう。だから、僕が彼らを食い止める。その隙に、君たちは逃げて」
「っ!?で、でも!?」
「大丈夫。この先に、僕たちの仲間がいるから。何も心配いらないよ」

トラファルガーは少女を安心させようと、ほほ笑む。

「あううう///」

少女は真っ赤になってうつむいた。

「・・・絶対、絶対!!帰ってきて欲しいッス!!」
「君の名前は?」
「ユウって言うッス!!」
「そう。じゃあユウ、約束だ。僕は絶対に、君の元に帰ってくるよ」
「はいッス!!」





子供たちを通路に送り出すと、すぐに警備兵たちが駆けつけてきた。

「動くな!!」
「大人しくしろ!!」

警備兵たちは、トラファルガーに対し、銃口を向け、威嚇する。

それに対し、彼は今まで消耗を抑えていた魔力を全開にし、臨戦態勢を整える。

「行くよ。獣化(ビーストアウト)!?」

トラファルガーの全身が蜂蜜色の体毛に覆われ、爪が伸び、フェレットの耳と尻尾が生える。

スクライア流変身魔法奥義『獣化(ビーストアウト)』。

スクライア部族の小動物への変身魔法は、本来は魔力と体力を温存し、回復力を高めるためのものだが、それを攻撃目的に特化させたのがこの奥義である。使用すれば、魔力と身体能力を爆発的に増幅させることができるが、肉体への負担が非常に高いため、滅多に使用されない魔法である。

「ここら先は、誰も通さないよ!!」

獣人に変身したトラファルガーは壁や天井を蹴って加速し、ただの人間の目には認識不可能な速度で移動しながら、警備兵を次々と戦闘不能にしていく。

その光景は、もはや戦闘ではなく、一方的な蹂躙(ワンサイドゲーム)だった。





一方その頃、地下通路を通っていたユウたちは・・・・。

「急ぐッス!?もうすぐ出口ッス!?」

地下通路の出口まであと一歩のところまで来ていた。

長い実験生活で、体力が衰えていたが、それでも、自由への希望から、懸命に足を動かす子供たち。

そして・・・・・。

「出口ッス!?」
「「「「や、やったああああああああああああああああああああああ!?」」」」

ついに出口に辿り着く。

「大丈夫ですか、みなさん!?」
「安心したまえ、もう大丈夫だよ!?」

出口を出ると、プリームスとジョーカーが子供たちを出迎えていた。

「あなたたちは?」
「私たちはトラファルガーの友だよ」

その言葉を聞いて、助かった事実に涙を流して狂喜する者、安心したのか気を失う者、これが現実だと信じられず茫然と突っ立っている者など、さまざまでだった。

そして、彼らハート海賊団が子供たちを保護したのと、

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!?

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

研究施設が爆発したのは、ほぼ同時であった。





36時間後。

トラファルガーは自分の次元船で目を覚ました。

爆奪の直前に全魔力を使い、転送魔法で次元船まで戻ってきたのである。

重度のAMFの影響下で長距離転送魔法を使用するのは、本来、神業と言ってもいいのだが、難なくやってのけたトラファルガーの技量の高さがうかがえる。

「気が付いたのですね?」
「ああ・・・っつ!?」
「まだ安静にしてください。全身ボロボロなんですから」

プリームスが心配そうに覗き込む。

「ああ、分かったよ」
「あなたの『分かった』は全く信用できませんから、これから私がいないときは、常にセプティムスを見張りに着けます」

日ごろの行いのせいか全く信用されていない船長である。(この扱いは司書長時代と大差ない)

「それで、良い知らせと悪い知らせがありますが、どっちから聞きたいですか?」
「じゃあ、セオリー通りで」
「良い知らせは、作戦は無事に成功。研究データも無事に手に入りましたし、研究施設も壊滅状態。そして捕えられていた子供たちも、教会の施設に送ったり、元の両親の元に送り返しました」
「そう・・・・・で?悪い知らせは?」
「一人だけ、両親の元へも教会へも行きたくないと言う子がいるんです」
「・・・・・・・・・そうか」
「いかがいたしますか?」
「僕が直接話す。後でここに連れてきて」
「了解しました」





しばらくして、ユウがトラファルガーの部屋にやってきた。

「改めて、初めまして、ユウ。僕はトラファルガー・ロー。この次元海賊船の船長だよ」
「トラファルガーさん。あんた、海賊だったんスか?」
「まあね」
「そんな悪い人には見えないッスけど」
「いやあ、悪党だよ。かつて傲慢な考えと我が身かわいさに一人の少女の人生を狂わせた男だからね、僕は」

しばらくの間、他愛もない世間話が続き、いよいよ本題に入る。

「ところで、ユウ」
「はいッス」
「君は両親の所に帰りたくないそうだね」
「そうッス!?いくら貧困だからって、欲に目がくらんでオイラを売ったあのバカ夫婦の所になんか、絶対に帰りたくないッス!!」
「それなら、僕たちは君を教会の施設に送らなければならなくなる。さっきも言った通り、僕たちは悪党、追われる身だ。子供を抱える余裕なんてないんだよ・・・・」
「嫌ッス!!お願いッス!!下働きでも、何なら夜伽でも、何でもしますから!!ここに、トラファルガーさんの元に置いて欲しいっす!!」
「だけどね・・・・・」
「オイラはこれでもレアスキル持ちッス!!ここに置いといて損は絶対ないッス!!」
「何だって?」

初めて聞く事実に、思わず聞き返してしまう。なぜなら、彼が調べた資料には、実験体にレアスキル持ちは存在しなかったはずであるからだ。

「詳しく聞かせてくれ」

そして、トラファルガーはユウから色々話を聞かされた。

自分のレアスキルである『磁力』の魔力変換資質についてや、自分のレアスキルに目を付けた研究者が法外な値段で自分を買い取ったこと、研究施設で実験動物のように扱われていたこと。

数々の酷い話に憤慨しそうになるが、自分の中の冷静な部分が告げていた。

(レアスキル持ちのこの子を、このまま教会の施設に預けたとしたら、すぐに管理局に知られてしまう。そうなると、事実上、両親がいないことをいいことに、管理局はレアスキル持ちのこの子を危険な戦場の最前線に放り込む可能性も否定できない。かつてのキャロみたいに。ならば、今は施設に送るよりも、ここでこの子に最低限自分の身を守る術を教えるべきか。それに・・・・・)

今にも泣きそうなユウの瞳を見つめ、トラファルガーは思い出す。

(それに、この子の瞳。昔の自分にそっくりなんだよなあ)

そう、かつての両親を失い、スクライア部族の長老に引き取られたばかりの自分を。

しばらく考え、そして・・・・・・。

「分かったよ」
「へっ??」
「ここに置いてあげるよ、ユウ」
「ほ、本当ッスか!?」
「ああ、船長決定だ!?ようこそ、ユウ!?」
「嬉しいッス!!オイラ、一生懸命頑張るッス、トラファルガーさん、いえ、船長!!」

一つの事件を乗り越え、思わぬ収穫を得るハート海賊団。

彼女、ユウの存在が、これからどのように影響を与えるかは、まだ誰にも分からなかった。
 
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