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第三章

「お野菜は朝です」
「そうか」
「けれどそのお話じゃないんですね」
「ヒトラー、覚えてるか?」
「ああ、色鉛筆の」
 言われてだ、愛生もはっとした顔になって答えた。
「あのことですね」
「そうだ、覚えているな」
「そういえばそんなことも言いましたね私」
 覚えていることは覚えているが、という言葉だった。
「ヒトラーやスターリンが用途に応じて色鉛筆の色を遣い分けていたって」
「その話だよ」
「何か面白いですよね」
「それでな。その話を聞いてな」
 ここからが本題だった、悠来は愛生に自分のメモを見せた。それはというと。
 黒のボールペンで書かれているがそれ以外にだった。
 赤や青で単語が書かれている部分もあった、黄色や緑もある。愛生にそのメモを見せてそのうえで彼女に話した。
「俺もやってみた」
「あっ、そうなんですか」
「仕事は赤だ」
 デザインの仕事のそれはというのだ。
「そして人はな」
「はい、そっちは」
「この色だ」
 人名についてはだ、青だった。
「そしてプライベート関連は黄色だ」
「そっちはその色ですか」
「緑は金のことだ」
「お金は緑ですか」
「緑が一番好きな色だからな」
「お金も好きだからですいね」
「この色にした」
 それで、というのだ。
「あと橙は彼女だ」
「先輩彼女のことも」
「プライベートだがな」
 それでもというのだ。
「書いている」
「それぞれ使い分けてるんですね」
「そうしてみるとな」
 用途に応じてだ、サインペンの色を変えているとというのだ。
「これまでよりずっと覚えられる様になった」
「メモしたことを」
「まずはメモをしないとな」
 このことは大前提だった、それも絶対の。
「書いていないと忘れるからな」
「どうしてもそうですよね」 
 愛生もこのことは素直に頷いた、伊達に社会人ではない。愛生は確かに能天気であるが仕事は出来る方である、それでメモもなのだ。
「ちゃんと書いておかないと」
「忘れるからな」
「だからですね」
「メモは絶対だ」
 悠来はこう言い切った。
「これだけはな」
「その通りですね」
「しかしそのメモも」
 このこともだった。
「やっぱりこうして色を付けるとな」
「ただ書くよりもですね」
「ずっと覚えやすい」
 そうなったというのだ。
「色が違うと目に入るな」
「そうですね、無意識のうちに」
 彼等の仕事の話でもあった、デザインの。
「それで印象に残って」
「覚えられる」
「デザインでも色が大事ですからね」
 その外観だけでなくだ。
「ですから」
「無味な色とはっきりとした色では与えるイメージが違う」
「それも全く」
「それでメモでも」
「そうして書いておくと」
 色を遣い分けてだ。 
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