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第二章
「思いつきまして」
「何の脈絡もなくか」
「そうなんです」
「いつも通りか」
「そうなりますね」
「それはわかった、とにかくな」
「はい、ヒトラーもスターリンも色鉛筆を使っていました」
それを用途や相手ごとに遣い分けていたというのだ。
「そうしていました」
「そういうことか」
「そうなんです」
「わかった、じゃあこのことは覚えておくな」
「何ていうことはない話ですけれどね」
「まあヒトラーとかスターリンとかな」
そうした独裁者達はとだ、悠来は首を捻りながら述べた。
「いたら迷惑だからな」
「とんでもなくですね」
「誰が粛清されたいんだ」
「絶対に嫌ですね」
「収容所とか懲罰大隊とかな」
どちらにもあった、この二つは。
「願い下げだしな」
「とんでもない国でしたよね、ナチスもソ連も」
「ヒトラーもスターリンもな」
「出て欲しくないですね」
「特に日本にはな」
「本当に」
「まあ愛生ちゃんが独裁者にならないならいいよ」
悠来は自分の机の上の紅茶を飲みつつ言った。
「それなら」
「私そういうのに興味ないですから」
独裁者になることは、というのだ。
「あるのはデザインのことです」
「それは何よりだよ」
「はい、デザイナーですから」
「そっちの仕事頑張れよ」
「そうしますね」
「じゃあ俺もな」
悠来は自分の仕事に戻った、ここで。
「仕事再開だよ」
「頑張って下さいね」
「ああ、じゃあな」
「私も戻りますね」
自分の机にだ、そうした話をしたのだった。
悠来は愛生との話の後で自分の机の上を見た、丁渡サインペンも何本かあった。
赤に青、緑に黄色とだ。他の色も数色あった。全部デザインの時のカラーリングの際に使うものであるが。
彼は愛生との話を思い出して使ってみた、すると。
一週間後愛生にだ、彼は自分の机のところに来た彼女にこう言った。
「ちょっとな」
「ちょっとっていいますと」
「先週俺に言ったこと覚えてるか?」
「ええと、新しく出来た吉野家のお店ですか?」
「違うよ、そういえばそんな話もしてたな」
ここでだ、悠来はこのことも思い出した。
「牛丼の話も」
「私牛丼好きですから」
「吉野家の」
「特盛に卵を入れまして」
そして、というのだ。愛生はにこにことして話す。
「紅生姜も入れてかき混ぜて」
「食べるんだな」
「はい、お味噌汁と一緒に」
「俺もそうして食うよ」
「あの食べ方が美味しいんですよね」
愛生はにこにことしたままこの食べ方について話すのだった。
「お昼とかもうそれで充分ですよ」
「ビタミンとかもしっかりとな」
「朝には野菜ジュースと野菜スティックです」
これが愛生の定番だというのだ。
「それかサラダか」
「随分ヘルシーだな」
「やっぱり身体にいいもの食べないと」
「駄目か」
「ですから朝はこれです」
野菜ジュースと野菜スティックかサラダだというのだ。
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