ロックマンX~5つの希望~
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第三十五話 アクセルの真実
前書き
月での出来事。
戦場から彼方に離れた月、衛星ムーン。
古来から神秘的な光で賛美と畏怖を抱かせたその衛星で、実に険悪な空気に満ちたシーンを目にすることが出来る。
月面に建造された巨大な宮殿。
上質な白い石柱で建てられたそれは、イレギュラーの間では“シグマパレス”と呼ばれていた。
君臨する覇王に似て暗く、険しく、かつての最初の大戦で崩壊した要塞と同じ名を与えられた荘厳な城…。
その一室で王と少年が眼光鋭く向かい合っている。
「いい格好だなアクセル」
アクセル「シグマ…!!」
アクセルは壁に立たされていた。
手首を掲げられ、拘束されている。
身じろぎすると両手首に巻かれた鎖が音を立てた。
アクセルが瞳が憎悪に燃え、その熱い輝きがシグマに笑みをもたらした。
シグマ「クク…この戒めが憎いか…?お前が乞えば外してやらぬでもないぞ?」
アクセル「ふん…誰が、お前なんかに……」
アクセルは吐き捨てるように、普段の無邪気さからは想像出来ない低い声で脅すように言い返した。
アクセル「殺せよ。僕はお前に命乞いするほど堕ちちゃいないんだ…ぐっ!!」
首を絞められ、呻き声を上げる。
ギリギリと締め上げる音に比例して、アクセルの呻きがか細くなっていく。
シグマ「態度だけは立派だが…利口ではないようだなプロトタイプよ」
アクセル「っ…僕はアクセルだ…!!……プロトタイプなんかじゃない…」
アクセルの脳裏に苦い物が込み上げる。
それは新世代型レプリロイドを知った時に感じた、己のアイデンティティーが揺らぐ感覚。
決して表には出さなかったけれど。
アクセルはまだ、新世代型レプリロイドが反乱を起こしたことは知らない。
だが、不穏な出来事が起きていることは何となく理解出来た。
そしてそれが目の前の男が原因だということも。
シグマ…、レッドアラートを滅亡に追いやった憎き仇である。
先の大戦で倒したはずの男は生きていたのだ。
暗がりに映る赤いマントは血の色を連想させ、不気味であった。
アクセルが憧れるゼロの紅とは違い、汚らわしく、忌まわしく、悍ましい紅である。
悪しき紅を纏うシグマは、邪悪な笑みを浮かべると、アクセルね首を絞める手を開く。
シグマ「そうだな……お前はただのプロトタイプではないな……」
いきなり解かれた戒めに激しく咳き込む。
苦痛は徐々に和らいでいき、意識が遠退いて砂嵐がかかった視界は段々と明瞭さを取り戻していく。
まだ息は荒いままだ。
拘束し、生殺与奪の権利を得たシグマは、肩で喘ぐアクセルを冷たい笑みで見つめていた。
シグマ「そろそろ教えてやってもよいな……」
アクセル「……?」
シグマ「お前の出生の秘密と、課せられた使命を」
アクセル「……っ!!」
身を固めるアクセルの頭を鷲掴むシグマ。
足をばたつかせてもがくアクセルにシグマは笑いながら、手に込めた力を強める。
月の光を思わせる光の奔流が、宮殿の闇を照らした…。
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