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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十七章 幕間劇
  小さい子三人で買い出し

春日山城奪還に向け、兵士全員の士気が高まっていた。皆、それぞれの立場において、出立の準備に湧いている。俺もだけど黒鮫隊はいつでも出れるとのこと。気合を入れて集中しないといけないとな。と気合を入れ直してたら緊迫した空気を打ち破るような能天気の歌が聞こえてきた。

「おっかいものー♪おっかいものー♪今日は楽しいおっかいものー♪」

「雀?」

引き寄せられるように、賑やかな声がするところに行ってみた。

「お買い物楽しみー!ねー、お姉ちゃん!」

「・・・・・」

無表情のまま、烏が雀と顔を見合わせて頷く。顔には出てないけど、腰の辺りで小さくパタパタ動く手があるから浮かれている烏。

「お二人とも、お買い物じゃなくて買い出しです。分かってますか?」

「わかってるよー!」

「・・・・・・」

「本当に分かっているのかしら」

「うん!頼まれたものと、お菓子と折り紙以外は買わないから、任せておいて!」

「(キリッ)」

「・・・・余計な物がくっついてますけど」

「あっ!えっと、頼まれた物と、お菓子以外は買いません!」

「(こくこく)」

「まだ余計な物がくっついてますわよ!」

「あれっ!?えっと、じゃあ、お菓子以外は買いません!」

「今度は肝心な物がなくなりましたわよっ!」

「・・・・色々な意味で心配ですね」

どうやら、雫と梅に頼まれて烏と雀が買いに行くらしいが、ハリセン1発してるところだな。

「・・・・あれ?あれあれー!」

俺の姿を見つけたのか、雀が手を振る。

「お兄ちゃーん!わーい!ここ、ここ!雀たちはここだよー!」

だから、見えてるって。

「あらハニー!ご機嫌麗しゅうございますわ」

「これから、買い出しか?」

「ええ、まあ」

「本当はこの二人だけで行かせるのは心配なんですけど、生憎、私も梅さんも、所用でお付き合いできなくて」

「何を買いにいくんだ?あとどこまで?」

「鉄砲隊に必要な物をもろもろと、魚津の町まで」

魚津ねぇー。あそこは治安が少し悪いしな。この二人だけで行かせるのは不安だよな。

「大丈夫!お姉ちゃんと雀にどーんと任せておいて!」

「(こくこく)」

「阿呆。その怠慢があるから任せられないだと思うが、あと調子に乗りすぎだ」

と言いながら、ハリセンで叩く。

「なので、俺が行く。保護者として」

「まあ、ハニーが?」

「ここでの一番暇なのは俺だからな。それにこんな小さい子に買い出しさせると、余計な物を買ってくるに違いないしな。主にお菓子とか」

「うわあ、お兄ちゃん、一緒に来てくれるの!?やったー、やったー!お兄ちゃんとお買い物!」

「・・・・・」

赤くなった烏。そこがかわいいんだけどな。

「それなら安心ですね。一真様は、お強いですし。二人の護衛をしてくれるなら助かります」

「えーっ!お兄ちゃんはお姉ちゃんと雀が守ろうと思ったのに!」

「第一、烏が持っているのは中遠距離の鉄砲だろうに。俺が持っているこれは零距離から撃てるからな」

と言ったら、渋々納得したようだった。で、ポジション的には二人の真ん中に俺という事になったが。

「だったら、鞠も行くの!」

「いつの間にいたんだ、鞠」

いついたのか分からないが、鞠がひょこっと梅の後ろから顔を出した。

「鞠は一真より弱いかもしれないけれど、一真が戦うときは安心して戦えるようにしたいの!」

「そうですわね!ハニーが戦っているときは鞠さんがいたほうが安心ですものね、雫さん」

「そうですね、鞠ちゃんがついていくのなら安心です」

「ふふっ、決まりなのー!」

二人の護衛を俺と鞠で任せることになったのか、安心した梅と雫。まあ、賑やかなのはいいことだし、その提案を受けた。一応確認として拳銃の点検はさっきやったし、ナイフも持っている。

「ということなので、烏も雀も、鞠のことをよろしくなの」

「うん!」

「・・・・」

烏が首を振ったのを見て、雀がはっとして口を押えた。

「えっと、はい!鞠様!」

ああ、そうかなるほどな。二人から見ると、鞠はかなり身分が高い存在なんだっけな。俺は鞠や一葉よりも上な存在だけど、あんまり気にしてないんだよな。神の姿である大天使化と大閻魔化になると言葉が変わる。

「お姉ちゃんと雀のことも、よろしくお願いします!」

「(ぺこり)」

二人がやや緊張した面持ちで、鞠に向かって頭を下げる。

「二人とも、鞠のことは鞠って呼んで欲しいの。鞠も今は一真隊の仲間だから、気を遣われるのは嫌なの」

雀が、顔色を伺うように烏を見る。少しの間の後、烏が頷くと、雀は飛び上がった。

「わーい!じゃあ、鞠ちゃんって呼んでいい?」

「うん、鞠は鞠ちゃんなの!よろしくなの!」

「うん、よろしくね!」

「(こくこく)」

雀と鞠はすっかり意気投合した様子だった。これは予想通り賑やかになりそうだ。と陣地を離れて、山道を歩いていた時だった。

「あ、鞠ちゃん、見て見て、あそこにどんぐりが落ちているよ!」

「鞠ね、どんぐりで独楽を作れるの!あとね、やじろべえも!」

「いいなあ、雀にも作り方教えてくれる?」

「もちろんなの。どんぐり、たくさん拾って帰るの!」

「おいおい。それは買い出しが終わってから、帰りにしろよな」

「うわあ、今、うさぎがいたの見えた?」

「え、どこどこ?見たいの!」

「おーい、走って転ぶなよ!」

おいおい。これでは本当に俺が保護者という感じだな。

「・・・・・・」

さすがにこのノリに混ざる気はないようで、烏は二人の背中をあたたかい目で見ている。

「そういえば、今日は何を買い出しに行くんだ?」

「・・・・・」

さっと、烏は早合を取り出して、筒の中身を見せる。早合を作るための火薬と弾丸を調達するためか。前に黒鮫隊から調達したけど、あれは一真隊の鉄砲隊に回されたのかな。

「売っている店は知っているのか?」

「・・・・・」

頷き、烏が胸元をぽんぽんと叩く。中に地図でも入っているのか。まあ俺にはスマホがあるから、どこに売っている店はスキャンしたし。そういえば、烏と話すのはこれが初めてかもしれないな。いつもは雀が言ってるし、案外通じるんだな。

「今からだと、ちょうど昼には着くな」

時計を見ながらそう言う。ちなみに俺の時計は電波時計で、世界によって時は変わる。なので、時計の管理もトレミーで行っているわけだ。あとは太陽光での充電できるから永久的かな。あと魚津の名物はなんだろうな。あとで、スマホで見てみるか。

「ん?なんか鳴ったな」

お腹は空いているけど、今のは俺ではない。ということで、烏を見ると。

「・・・・・・!」

俺と目が合った瞬間、烏は耳まで真っ赤になっていた。慌てた様子なのか、お腹を押さえている。なるほどなと思いながらスマホを取り出して、魚津の美味しい物を探していた。

「お腹空いたか?」

「・・・・・」

問いかけたら、なぜか烏は、勢いよく否定をした。お腹がなったのが相当恥ずかしかったのか、普段はクールな烏だけど、こういうところは女の子なんだなと。

「買い出しが終わったら、美味しい物食べような」

ぽんっと頭に手を乗せると、一瞬びくっとした烏であったが、ゆっくり撫でていると小さき息を漏らした。

「おーい、お兄ちゃん、お姉ちゃん、置いてっちゃうぞー!」

「二人とも、早くするのー!」

「はいはい。行きますよー!」

「・・・・・・」

俺より烏が先に走り出して行った。振り返ると不満な顔をしていた烏。もしかして、俺と会話してたのを邪魔されたからなのかな。そう思いながら二人のところに駆け寄る。

「うわー!人がいっぱいだよ」

「見たことのない建物や看板もいっぱいあるの」

「・・・・・・」

「ん?・・・・あ、本当だ!お姉ちゃんの言う通り、あっちからすごーくいい匂いがしてる!」

「ふあ・・・・美味しそうな匂いなの!なんだろう、お魚かなあ」

「三人とも、前を向いて歩かないとぶつかるぞ」

魚津の湊はたくさんの人が行き交い、活気で満ち溢れている。新鮮な魚を買い求めて来ている客がほとんどだったけど、日焼けサロンにでも行ったかのような屈強な体を持つ漁師みたいなのがいる。漁師は喧嘩っ早いというからぶつからないように注意をしないといけない。三人のことは、俺が見てないとな。一応保護者だし、護衛だし。

「ほら、お前ら迷子になると困るから手を繋げ。鞠も雀もだ」

「はーいなの」

「雀も繋ぐ」

右手は鞠で、左手は雀だ。

「わーい、お兄ちゃんとおっかいものー♪」

「お買い物なのー!」

「引っ張らなくていいから、前向いて歩こうな」

はしゃぐ二人を牽制しながら、烏の方に視線を向けると。

「・・・・」

烏は目が合うとすぐに視線をそらす。まあ、烏の気や風の精霊で位置特定してるから迷わないだろうし。

「ねえお兄ちゃん!あそこで大きなお魚を売っているよ!あれ、なんてお魚かなあ」

「一真、あれは何なの?ほら、串に刺さった平べったいもの」

「ねーねー、雀、あのお店を見てみたい!ほら、千代紙で作ったおもちゃがたくさんあるよ!」

「おい!引っ張るなっつうの!」

と言いながら、走り出そうとした鞠と雀を止める。今は買い出しの物が最優先だし。

「あっ!あっちにも可愛いお店が・・・・」

駆け出そうとした雀の肩を烏が、掴む。

「・・・・・」

「あっ!ご、ごめんなさい・・・・」

「なんて言ったの?」

「お兄ちゃんに迷惑かけるなって、怒られちゃった」

「にゃ?一真、迷惑なの?鞠たちの事、迷惑なの?」

「そういうことじゃなくてだな、勝手に行かれては俺が困るわけだ。おとなしくしてろよ、ということだよ。鞠」

「なら、いいの」

烏が言いたいことを鞠に伝えたあとに、しばらく歩いていると、二人は同じ方向に行く。

「甘い匂い!」

「甘い匂いがするの!」

「本当だな。何の店かな」

匂いの元をたどると、お団子屋だった。店頭には、大きなみたらし団子がある。みたらし以外にも、あんこ、みそ、しょうゆ、きなこなど色んな種類のお団子が並んでいた。

「お団子!お団子、お団子、お団子!」

雀が店の前で、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「美味しそうなの!おなか空いたの!」

「ふむ。これは美味そうだから、一本ずつもらうか?」

「さんせーい!お姉ちゃんも食べるよね?」

「・・・あれ?烏はどこなの?」

烏は隣を見たらいなかったが、俺と雀が発見した。

「あっ!お姉ちゃん、ずるい!」

「いつの間に買ったのかよ」

しかも抱えてた皿の上には、一人では食べれなさそうな量であった。

「烏、それ全部食べるつもりか?」

「(こくん)」

「お姉ちゃん、甘い物には目がないの。これぐらい、ぺろっだよね!」

「でもそんなに食べるとお昼ご飯が食えなくなるぞ」

「・・・・・」

「甘い物は別腹だから、大丈夫だって」

別腹にしては、凄い量だな。ケーキでいうと1台を全部食うと言う感じだな。

「・・・・・」

烏が無言で、皿を俺達に差出す。

「え、食べていいの?」

「(こくん)」

「やったー!鞠ちゃんも、お兄ちゃんも、どうぞ、だって!」

「にゃ!いいの?」

さすがの烏も、この量は無理なのかな。

「うん、足りなかったら追加するからいいって」

ふむ、そう来たか。

「鞠ちゃん、一緒に座って食べよう!」

「うん!鞠は、あんこをもらっていい?」

「じゃあ、雀はきなこにする!お姉ちゃん、いただきます」

それぞれが好きな団子を持って椅子に腰掛けた。俺は、空いていた烏の隣に座った。

「俺も一本もらうな」

「・・・・・」

皿を差し出されたので、俺はきなこにする。原作主人公はみたらしを選んだらしいが、俺はきなこが好きなのだ。

「うーん、おいしい!お団子、ふわふわで柔らかーい」

「あむっ・・・・あむあむ・・・・おいしいの!こんなにおいしいお団子初めて食べたの!」

「・・・・・」

「お姉ちゃんも、ここのお団子は今まで食べた中でも三本の指に入るって!」

「雀の食べているきなこも、一口もらっていい?」

「うん、もちろん。はい、あーん」

「あーん。あむあむ・・・・おいしー!お礼に、鞠のあんこもあげるの。はい、あーんするの」

「あーん。もぐもぐ。・・・・あんこもおいしい!」

「ねー!」

「鞠は、あんこが一粒膝の上に落ちてるぞ。雀は、口の周りがきなこでまっ黄色になっているぞ。余所見すると、また零すから気を付けて食べろよ」

「「はーい」」

二人は子供だなと思いながら烏の方を向くと、烏の唇に端から胸元の辺りまでみたらしのたれが零れていた。どうやったらこんなに垂れるんだろうと思いながら、ショルダーバックからウェットティッシュを取り出した。それにしても俺は一本食べて終わっていないのに、烏は既に何本も食べていたようで、あんこやきなこも口の周りにいっぱいついていた。

「・・・・・?」

烏本人は、そのことに気付いていないようだ。

「烏、口の周りが凄い事になっているぞ」

「・・・・!?」

「ダメダメ。自分で拭くと余計に汚くなりそうだから、ちょっとだけ我慢してくれ」

ウエットティッシュを出して、烏の口周りから胸元の辺りを丁寧に拭いてやった。

「うーんと、軽く口も開けてほしい。唇の端もついてるから」

ウエットティッシュ2枚目を取り出して、拭いていた。

「しっかりしてそうな烏でも、こういうのは意外と抜けているんだな」

「・・・・・」

「それが悪いとは言ってないぞ。そういうところも可愛いなと思っただけだ」

「・・・・(ぽっ)」

照れているのか、真っ赤になった烏だけどますますかわいいな。

「ほい。きれいになった。今度からは気を付けて食べるんだぞ?」

「(こくこく)」

何度も頷いたあと、烏は再び食べ始める。使ったティッシュは、トレミーのゴミ箱に入れる。と見てるとまた垂れているな、食べ終わったらまた拭かないとまずいな。団子を食い終わったので、買い出しの続きかと思ったけど。

「うわ、このおもちゃ可愛い!竹で出来たうさぎさんだよ」

「手のところがピコピコ動いているの!可愛いの!」

「・・・・・」

「鞠ちゃん、あっちに焼きはんぺんのお店があるってお姉ちゃんが言っているよ!」

「にゃ!食べるの!」

「こら!勝手に動かない」

ちょこまかと動き回る三人だが、ちゃっかりとコントロールしている。風で探査しているから、どこに行こうともすぐわかる。一箇所にここまで色んな店が軒を連ねているのを見るのは、烏も初めてなのかいつの間にか雀をたしなめる事を忘れて一緒になってはしゃいでいる。

「はい、鞠ちゃん。熱いから気を付けて持ってね」

「ところで、椅子はどこにあるの?」

「椅子なんて置いてあるお店の方が珍しいよ。こういうのは、町中を歩きながら食べるんが美味しいの」

「ふわあ・・・・そうなんだね」

どうやら鞠は買い食いが新鮮のようだ。見るもの全てに目を輝かせながら、烏たちの後をついて行く。
楽しそうだけど、警戒だけは注意しないとな。巻き添えくらったら面倒だしな。それに鞠や烏と雀を見ると俺は父親かと思ってしまうほどだ。子供は優斗で十分だけど、あの頃が懐かしいなぁ。優斗が小さい頃は、よく風呂とか一緒に入っていたな。今もだが。あとは母親の奏に似たのか炎を操れるようになった。これもアスラクライン世界の嵩月家の力を継いでるのかなと思ってしまうほどだ。あとは、主に格闘術とかで戦うけどね。でも今は2番艦の艦長をしてるしな。かまぼこ、つくね、干しイカ、タコせんべいと、ひとしきり名物を食べ終わった頃には腹もいっぱいになっていた。三人も満足したのか、ようやく目的地である火薬屋に向かった。

「買い忘れはないか?」

すっかり夕暮れになったので、そろそろ帰ろうとしたのでそう聞いた。烏は道の端に荷物を下ろすと、一つ一つ丁寧に取り出して中身を確認し始めた。

「・・・・・」

買う時も不良品はないか、傷はついてないか真剣な眼で選んでいたけど、最終チェックも怠らないようだ。

「・・・・・」

口を固く結び、瞬きもせず弾丸を見つめる姿は、野郎どもと同じような緊迫感であった。俺と同様に銃のスペシャリストだし、まあ弾とかは無限大でイメージすると自動的に込められているからな。

「それにしても、雀は凄いの。あまりにも粘って値切るから、お店のおじさんも真っ青になってたの」

「えへへっ、えへん!」

雀の値切り術は、俺も凄いなと思った。たぶん現代でも使えるんじゃないのかな。ほんの僅かな傷すら見逃さず、それを理由に値下げを要求し、これ以上値段が下がらないとなると、今度はおまけをつけさせる。最後の手段としては、小さい子特有の上目使いで店主を見つめて端数を切り捨てることを同意させた。

「雀はしっかりしてるの。見直したの」

「だって、お姉ちゃんに任せると、倍のお金を取られてても気が付かないんだもん。雀がしっかりしないとね!」

はしゃいで子供っぽいところもあるが、雀はこういうときにしっかりしているところがある。逆に、いつも雀をたしなめる役目の烏は、ぼんやりしていて抜けているところがある。この姉妹は役割分担されているからバランスが保たれている。

「さてと、そろそろ帰るか。思ったより時間がかかったしな」

まあ、俺が風術で飛んでいくのが速いんだけどね。一真隊のメンツには俺が空を飛ぶところは見ているはずだし。

「あ、一真、待つの。せっかくだから、梅ちゃんたちにお土産を買って行くの」

「さんせーい!あっ、だったらさっきのお団子!」

「(キラッ)」

「それは素敵なの!さっきのお団子、本当に美味しかったの!」

「そうだな、あれにするか」

「やったー、お団子、お団子!」

「言っておくが、梅たちのお土産だから、雀が食べては駄目だぞ」

「ふえええええええっ!」

「さっきいっぱい食べただろうに」

「うえええええ・・・・」

「・・・・・」

「ふにゃあ・・・」

「揃ってそんな目をしても引っかからないからな」

帰り道にこっそり誰かに食べたらアカンから、団子は俺が持つというより空間にしまった。今度こそ帰ることになったけどな。

「みんな、お団子を喜んでくれるといいの」

「絶対に喜んでくれるよ!だってとっても美味しいお団子だったもん!」

「たくさん買ったけど、梅ちゃんたち食べきれるか心配なの」

「食べきらなくなったら、きっと雀たちにくれるよ。・・・・食べきらなくても、くれるといいのにね」

「・・・こんな作戦があるの。ひそひそひそ・・・・」

「・・・・ほうほうほう」

「こら、そこで悪巧みしない」

「にゃー!」

「きゃー、怒られるー!」

雀と鞠は手を繋ぎ、きゃあきゃあと笑い声を上げながら走って行く。あの二人もすっかりと仲良くなったようだ。

「烏。今日は疲れたんじゃないの?」

「(ふるふる)」

「そうか。ならいいけどさ」

「・・・・・」

「ふむふむ、その様子だと楽しかったみたいだな。まあ俺も楽しかったけどな」

「(こくこく)」

「あの二人において行かれないようにな」

そういって歩みを速めようとした俺とは対照的に、烏がその場に立ち止まる。

「・・・・烏?」

「・・・・・」

烏はどこか切ない表情で、俺の手元を見る。繋ぎたいのかな、あのときは鞠と雀が繋いでたし。

「ほら、手を貸せって」

「・・・・・・」

「さっきは烏だけ繋いでなかったろ?だから帰りは繋いで帰ろうぜ」

「・・・・・・」

顔が赤いがおずおずといったような感じで、烏が手を伸ばしてくる。躊躇いがちに俺の指先に触れて、手のひらとてのひらを重ねると、烏はぎゅっと力を込めて握ってきた。

「・・・・・・」

「・・・いい笑顔だな」

「・・・・・・」

一瞬だけ見せてくれた烏の初めての笑顔に、俺は素直に感想を言った。雀や鞠とは違うような感じで、繋ぐのか急に緊張してきた。

「それじゃ行こうか」

「・・・(コクン)」

赤い顔で小さく頷いた烏がやけに可愛く見えてきたなと思いながら歩いていた。こういう感じは久しぶりだなと思いながら歩いていたら。

「・・・・・」

ふむ。烏はわざとゆっくり歩き、俺との繋いでる時間を少しでも長くしようとしてるな。なので、俺も同じような歩幅になるけど。烏も雀も鞠も、まだまだ知らない部分があるんだなと思った。そりゃ付き合いは短いような気がするが、長く感じるんだな。 
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