戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十六章 後編
九頭竜川
一方景虎はというと。
「・・・・雨が降って来たわね」
「なんだか天が泣いてるみたいっすねぇ」
「そうね。・・・・行くわよ、柘榴」
「了解っすー」
一方撤退中の一葉たちは。
「・・・・追撃が止んだのか?」
「一真様が全て鬼どもを反撃中かと思われます。今のうちに距離を稼ぎましょう」
「しかし、この先は・・・・」
「最大の難所、九頭竜川ですね」
「・・・・有志以来、氾濫を繰り返し、崩れ川との異名まである暴れ川・・・・」
「しかも雨が降り、向後、名の通りの姿を現していくでしょう。素早く渡河しないとなりませんが・・・・」
「鬼どもが追いつくのが先か、渡河するが先か。時間との戦いですなぁ・・・・」
「だが、ここを抜ければ加賀は目の前だ。主様が時間を稼いでおられるのだから、早く渡らねば。小波、主様はどうなっているかわかるか?」
「少々お待ちを。・・・・未だに戦っておりますが、一人で戦っております。ご主人様とあとわかりませぬが、人とは違う何かと一緒に戦っているようです」
「一人でか。では、一真隊の指揮は余が引き継ごうと思うが構わんか?」
「はい。お頼み致します」
「うむ。・・・・聞け、共々よ!今、我らの背を守るため、余の主様である織斑一真が殿で奮戦しておる。貴重な時間を稼いでくれておるのだ!渡れ!ただひたすらに川を渡り、加賀を抜け越中を通り、美濃に帰るのだ!」
「渡河を開始せよ!」
鬨の声を上げて渡る兵たち。
「公方様・・・・お先に失礼致します」
「葵か。・・・・うむ。行けぃ」
「ご無礼」
「え・・・・殿さん、先に行っちゃうです?」
「ここは公方様にお任せするつもりです。・・・・綾那はどうしますか?」
「綾那は・・・・綾那はですね。一真様と約束したですが、最後まで信じてお守り致すと約束したです。だから、最後までここで待っているです!」
「・・・・分かりました。綾那たちはそれで構いませんよ。その身で、一真様の帰還を信じるのですよ」
「はいです!」
「歌夜、後を頼みます」
「はっ・・・・」
と言って、松平衆は渡河を開始した。一真は大天使化になっているところだろうな。
「おい公方。一真はまだ一人で殿をやっているのかっ!?」
「うむ」
「なんで一人でやってんだよ!?一真は俺達と言ったからなのに、一人でなのかっ!?それで退いて来たのかよ!?」
「そうだ」
「ガキ、落ち着け。まだ一真が死んだわけではないぞ」
「で、でもよーっ!一真を切り捨てて、オレたちを生きて長くさせるのが一真の使命なのかよっ!?」
「落ち着けって言ってんだよぉっ!ワシだって心配はする、だがな一真の目は死ぬ目ではなかった。少しでもワシらに時間を与えようと今でも戦っているんだ、それを無駄にしたら一真が怒るだろうよ」
そして桐琴は小夜叉を落ち着かせてから、綾那と歌夜もだが、一真との約束を果たすために。一真は、たとえ味方である松平を裏切ってまで俺を守るのかと聞かれたときは、一瞬考えたが一真様をお守りするために味方になると言った。
「よく聞け、森のクズども!織田の最強はこのワシとクソガキだったが、いまや最強は誰だ!?ワシたちの目標であった織斑一真だ!」
「そしてその一真はオレたちを逃がそうと時間稼ぎをしている。その時間を無駄にすんじゃねぇぞ!」
「クズどもの頭はワシやガキだが、ワシたちの主は一真だ!一真を信じてここを進むが、ガキ!」
「ああそしてオレたちで未来を切り開くのは、オレたちでもあり一真でもある。ここを渡る前に一真の斬り漏らした鬼どもを叩くぞ!」
森一家の者どもは川を渡る。一真が時間を稼いでいてくれてるからか、たまに後ろを見るがな。まだ一真隊がいるが、それはまだだけどな。今頃は神を召喚しているのではないのかな。
「一葉様、森一家の後ろで退路を確保します。お家流で牽制してもらえませんか?」
「構わんが、あまり力が出せぬが」
「それでも構いません、時間を稼げれば良いのですから。梅さん!」
「お側におりますわ」
「松平衆が渡河を終えたら、次は梅さんと雫、それに八咫烏隊の皆さんで川を渡ってください。続いて私たちが渡河する間、川向こうから援護射撃を頼みます」
「了解ですわ!」
「渡河を終えましたら、川を挟んで陣を布きます。全員が無事に川を渡りきった後は一目散に加賀に向かいます。皆さん、準備をお願いします」
「「「はい!」」」
「詩乃、鬼が来たぞ」
「はい。では、皆さん、指示通りに動いて下さい!」
「応よっ!クソガキにクズども!気張っていくぞ!」
『うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
ちなみにこの鬼たちは、一真が転送した鬼だ。今頃死神とか呼んでるんじゃねえのか。そして帝釈天と四天王がこの場に現れたら、一気に詩乃達が居る側に行く。鬼の集団をな。
「全殺しだぁーーーーーーーーっ!」
一真隊と八咫烏隊が渡河を開始し始めた。絶対に火縄と玉薬を濡らすなと。梅と雫の号令で渡河を開始した。鉄砲を捧げ持った兵たちが、一斉に川の中へと飛び込んでいく。九頭竜川の流れは、雨で増水しているのか、かなり早い流れになっていて、兵たちの進軍を妨げる。
「・・・遅々として進まんのぉ」
「この雨ですからなぁ。・・・全く。松平衆はさっさと渡ってしまいおってぇ・・・」
「正直、あまり期待はしておりません」
「明日を見る必要はある。・・・・が、百年後何ぞ考えても詮無きのにのぉ」
「人それぞれです。・・・・お好きになればよろしいかと」
「森のお二人がおりますが、多勢に無勢ですから。時機を見て森一家を後退させます。一葉様、準備をお願いします」
「うむ」
一方森一家は、鬼を殺していた。一真はまだ死んではいないけど、一人で戦っていると聞いては、力が出る。
「いいかぁ、クズどもにガキぃ!ある程度ぶっ殺したら退がるぞ!ここはワシらの死に場所ではないからだ!」
「ああ。一真を信じて貴重な時間を作ってくれた感謝を忘れるんじゃねえぞ!」
「けど姐さん!そんなんじゃ俺らの気が済まねえ!」
「分かっている。殺れるだけ殺れ。目ん玉取ってやれ!耳をそぎ落とせ!腕を斬りおとせ!傷口を抉れ!森一家に逆らう鬼には遠慮はいらん!殺しまくれ!」
『うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!』
死んでないけどね、一真も戦っているからな。船は九頭竜川にいる、隊長の指示でもある。
「ふむ・・・・森一家が鬼を虐殺しておりますなぁ」
「さすがだな。・・・・余も参加したいぞ」
「また物騒なことを。・・・・しかし、良い感じに鬼が押されておりますな。詩乃殿、そろそろでは?」
「そうですね。・・・・一葉様、頼みます」
「うむ。では余の怒りを刀に籠めよう。・・・・戦っている主様を一人にしてしまったことでな。三千世界っ!」
森一家が虐殺している頃に、合図が出たので退いた。兵士はまだやる気はあったようだが、指示に従う。一葉様の三千世界が、後方のより追いすがる鬼の大半を惨殺しつくした。やがて、地響きと共に部隊が戻ってきた。
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