戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十六章 後編
足止め×幽のお家流×退いてからの攻撃
「主様。どうした?」
「足止めは部下たちで何とかなりそうだからな。一葉たちの様子を見に来た」
「そうか。余のお家流は牽制くらいにしかなりそうにないからの。まだ力が戻ってきておらん。本来なら幽率いる足利衆が主様を守るはずなんだが、今の主様には必要なさそうだな」
「今の音を聞いて分かるだろうに。それに一葉は死なれては困るからな、幽」
「死なれては困りますな。だから、家人である我らが気張るしかないのですが」
と一葉と幽のちょっとしたコントが始まると、物見として小波が戻ってきた。
「ご主人様。ただいま戻りました」
「ご苦労。で、どんな感じ?」
「鬼の数はおよそ五千。五百の塊が十個といったところでしょうか。統率はそれなりに取れているようですが、組織立った動きは見受けられません」
「五千ですか。それはまた剛毅な数字ですなぁ。対するそれがしらは、抵抗するのも虚しいほどの寡勢と来ている。ですが、この音を聞いていれば大丈夫でしょうなぁ」
確かにな、本当なら三千なんだけど、五千か。こりゃ巨大なキャノン砲とかで一発で撃つ方法でも考えるかな。撃ちながらも、五千の鬼達を包み込むほどの威力が必要だな。一応考えているが、この天気ではな。撃つ前に天候を変えるしかないかな。
「で、黒鮫隊はどんな感じ?」
「今の所、順調のようです。足止めにしては威力を抑えている感じがします。本隊の撤退もまもなく終わるかと」
「では、そろそろ殿をやるから行くとしよう。一応足利衆と一葉と幽も来てもらうけどいい?」
「お邪魔になりませぬか?」
「撃ち終えたら近接で、斬りまくるから平気だ。鞠、そろそろ行くぞ!」
「ほぇ?んむ~・・・・分かったぁ~。・・・・ふぁぁあふ」
「おはよう鞠。良く寝れた?」
「うん!たくさん寝て、すっきりんこなの!」
「ふむ。さすが今川のお屋形様は肝が据わっておられますなぁ」
「寝る子は育つというのだから、別に構わん」
「へへー。鞠、たくさん育つかなー」
ぺたぺたと胸を触りながら鞠が呟く。まあ鈴々も黒の駒を入れても変わんなかったからな。朱里や雛里は、身長も伸びて胸も普通ぐらいになったけど。でも声は変わらずだったし、口癖も変わらなかったな。
「主様、ひよからの合図が来たようだぞ」
「こちらも確認した。・・・・小波!」
「はっ!」
「詩乃に連絡して本隊を退かせろ。俺達で時間を稼ぐとな」
「了解しました」
俺の指示を受けて、小波が目を閉じて念を飛ばす。
「さてと、俺たちの出番が来たというより、黒鮫隊の本領発揮ということだな。一葉たち足利衆は本隊の後ろにいてくれ、俺たちはその後ろに配置をす俺達が撃ち漏らした鬼達がいたら排除してくれ。いたらの話になるが、気合を入れろ!」
『応っ!』
「それじゃ俺達の爆撃銃殺で削るか」
「あいやまたれぃ!」
「なんか懐かしい感じがしたが、一応聞こう。なんだ?」
「それがしが思うに、鬼が相手とはいえ、銃殺ばかりで黄泉路に渡らせるのは、些か不憫かと」
「ほう、何か考えがあると言うてみろ」
「はっ。元は朝倉の武者であれば、それ相応の死に様にて送るのが礼儀。まずはそれがしのお家流にて、葬式の儀式を執り行いましょう」
と言ってる間に、黒鮫隊全員はいつでも本領発揮できると。俺はそのまま足止めしていろとな。
「まぁとにかく。弓や鉄砲で五千の数をひっくり返すのは容易ではない。ですが、一真様は出来ることですがね。なので、お家流で手っ取り早く相手を崩しましょうぞ」
「幽もお家流使えるんだ」
「うむ。幽は一応、由緒正しき細川家の、その支流の次女であるからな。養子ではあるが」
由緒正しき細川家の次女だけど養子ねぇ。それは由緒正しき次女とは言えないんじゃないの。
「一応とは何ですか一応とは。それに支流であるとか養子であるとか、有り難みがござらんでは無いですか」
「気にしたら負けだよ幽ちゃん!」
「うむ。鞠の言う通りであるぞ!」
「自分で色々と言っておいて、良くも仰る・・・・」
「何を言うか。余は貴様の力に絶対の信頼を置いておるのだぞ?だから励め」
「そりゃまぁ励みますけれど」
「幽は強いの?」
一葉の相方を務めるのは、俺か鞠ぐらいの強さじゃないと発揮しないだろうしな。
「こやつは器用でな。剣技は我が師でもある塚原卜伝孃より学び、吉田雪荷孃から弓術の印可を、弓馬故実を武田信豊孃から相伝されておるのだ」
「そうなの!実は鞠と幽ちゃんは姉妹弟子なの♪あ、でも鞠の方がお姉さん弟子なんだよ、えっへん!」
「へぇー、いろいろと相伝されてるのか。すげーな」
「なぁに、好事家の手遊びでござるよ」
誇ってもなく淡々と事実を認めているが、謙遜している幽はやはりただ者ではなかったか。
「しかし、そんな手遊びも、ときたま役に立つときもあるのだから、人生、どうなるか分かりませんなぁ」
言いながら、幽は腰に下げていた矢立から筆を取り出した。
「矢立から筆を抜いてどうする?」
「刀や槍だけがお家流ではござらんのですよ」
「そうか。まあ、幽に任せて俺たちは退却の準備をしようか。俺と黒鮫隊はいつでも出来ているが」
黒鮫隊は歩兵部隊をIS部隊に任せて飛んでる最中だ。こちらに来る鬼たちは、じわじわと来るけどな。俺達の後ろにて待機中の黒鮫隊。一葉は幽を信頼してるのか、鬼が迫っていても柄を握ろうとはしない。そしてそれは鞠も同じだったけど。俺は銃はしまっているけどね。
「さて。遥か昔、天の海には月の船、星の林に漕ぎ隠れ見ゆ、と詠んだ歌人がおったそうな。今宵の天の海はまさに歌の通り、穏やかな海。んん~、素晴らしい。まさに雅趣溢れる夜!」
雲けっこうあるけどな。幽は何をするのかな?
「しかし、折角の雅趣溢れる夜も、その海を騒がせる無粋な客人が居るのは頂けませんなぁ。ここは一つ、無粋な客人にはご退場願いましょう」
いつもの調子で言いながら、幽は矢立から引き抜いた筆を懐から取り出した短冊の上に走らせた。
「か楢ず栃桐樒柿柾根葉椎て松よの杉袖桑うし(必ずと契りし君がきまさねば強いて待つ夜のすぎ行くは憂し)」
ゆったりとした口調で、幽は何やら歌を詠む。歌を紡ぐたびに、幽の身体から徐々に立ち上る氣だ。
歌の終わりと共に、その氣が周囲の樹木に飛び、染みこんでいく。
「歌道とは、言霊を乗せて万物の力を借りる呪い。十とは全ての意。・・・・十木とは即ち全ての樹木。天の海を荒立たす、野暮で無粋な客人は、木々の防人に追い払って頂きましょう」
普段と変わらぬ語り口。だけど、俺には分かる。これは木の精霊を操っているのか。木々は枝を伸ばし、根を波立たせ、迫りくる鬼たちの足や身体に絡みつく。
「これは何だ?」
「十木の御詠と言ってな。言霊を乗せた歌の中に、樹木の名を詠む事で、その木の精霊を操る呪い(まじない)だ」
「精霊を操るねぇ。俺がやっているようなものか」
「ふむ。ですがまだまだ不完全。・・・・やはり古今伝授の授けられなければ、完全とはならないようですなぁ」
「あれで不完全なのか。古今伝授って?」
「まぁ免許皆伝のようなものですな」
「これで不完全なのね」
周囲の木々から伸びてきた枝に、ある鬼は貫かれ、ある鬼は足を取られ、鬼の進撃が一気に止まった。
「不完全ってことは何か制限があるのか?」
「はい。不完全なために、精霊を操るのにも制限時間がありましてな。もうそろそろ切れるところかと」
「では、こちらが見本を出すとしようか。鬼どもよ、これでも喰らいな!ハードプラント!」
といってから、地面から出てきた根に貫かれて数十体を貫いた。続いてリーフストームで、葉が竜巻のようにして鬼どもに襲い掛かった。これはただの葉っぱじゃないんだよね、そのあとは草タイプのオンパレードで出した。エナジーボールやはっぱカッターとか。
「おお主様も、精霊の力を使っているのか?」
「いえ、隊長が使っているのはある生物の技をそのまま使っているだけです。さ、隊長がやっている間は進軍してこないでしょうから行きましょうか」
「あはは、一真は凄いの!後退なのー♪」
俺が技を放っている間に、場違いなまでに明るい鞠の声で、先に後退した仲間を追って後退した。黒鮫隊も行ったが、2~3人だけはまだいたけどな。そして、あらゆる属性の技を放ってから俺は一葉たちを追った。先に足利衆たちは走っていたが、俺はいつの間にか登場し、黒鮫隊を率いて走ったり飛んだりしていた。
走ったり飛んだりしていると、ひよが設営した柵らしきものが見えてきた。
「見えたぞ!お前ら全力で走れ!」
柵の入り口では、ひよところ、そして先行組の黒鮫隊がいた。ひよところは手を振っていたけどね。
「お頭ー!早く早く!」
「後ろから鬼が迫ってきてます!お早く!」
え、もう来たのかよ。後ろを向くと、鬼が追ってきていた。あれだけポケモンの技のオンパレードしたのに、意味がないような気がする。
「おうよ!」
手招きする仲間たちに応えながら、俺たちは柵の入り口を駆け抜けた。
「門を閉めてーっ!」
「さぁすぐに鬼が来ますわよ!蒲生衆、八咫烏隊、射撃準備ですわ!」
「あの、梅さんそれ私の役目なんですけど・・・・」
「あらごめんあそばせ。ならば雫さん、さっさと命令を寄越すがよろしくてよ!」
「あ、はい。じゃあ射撃の準備を」
「了解ですわ!」
やいのやいのと言い合いながらも、梅たちは手慣れた様子で迎撃準備を開始する。
「じゃあころちゃん、詩乃ちゃん!私は次の目的地に向かうね!」
「次は加賀領内に陣を構築してください!出来る限り人目につくように!」
「分かった!加賀の人たちの衆目を集めれば良いんだよね!」
「そうです!それが鍵です!頼みます!」
「了解!そういうの得意だから任せておいて!じゃあ行ってきます!」
「気を付けて!」
と言いながら木下衆の周りに先行組の黒鮫隊を配置させておいた。あと、鉄砲隊が撃つのでこちらの歩兵部隊の出番だなと思い準備をさせておいた。俺の手にはアサルトライフルを持って構えている。
「鉄砲隊、撃ち方始めー!」
「野郎ども、撃てー!」
俺達はフルオートで撃っているが、長柄の邪魔になるので空中から撃っている。歩兵部隊も黒の駒をリミッター解除させてあるから、背中にはスラスターがついている。なので、俺たちは空から撃っているけどね。
「鉄砲隊が装填するときは、私たち長柄の出番だよ!せーの・・・・突けぇー!突いたらすぐに槍を引いて!あとは雫に任せる!」
「鉄砲隊、撃てぇーっ!」
「弓での攻撃も手を緩めてはいけません!矢の続く限り援護を!」
俺達は撃つのをやめて様子見をしていた。こいつらもやらないと、やる気が出ないだろうと思ってのこと。今は地上にて待機している。IS部隊は半分は船に戻り半分はここにいる。
「・・・槍で突かれ、矢が刺さり、鉛玉を食らい・・・・それでも元気一杯の様子でございますなぁ」
「奴ら、恐怖心というものとは無縁なのか?」
「いえ。以前にもお話しましたが、森一家との戦いでは怯えた様子を見せておりました」
「それにハニーの爆撃で怯んだり、激しい反撃を受けて引いたりしていましたわ」
「膂力強く、生命力も強いが、そこらの獣と変わりがない・・・・私はそう推察しております」
「あと主食が人間だもんな」
「しかも滋養強壮とでも騙して魔薬とやらを飲ませれば、簡単に鬼を量産できるときている。・・・・さっさとザビエルとやらを始末しない大変なことになりそうですな」
鬼を量産ね。ISも量産しているけどね。でも人員は量産できない、死者蘇生なら何とかなるけどこの時代の人間にとっては死んだらそれこそ本望だそうだし。将や殿のために死んでいくというらしいが、俺たちはそんなことはさせないし。それにお守りを持たせている。
「さて、あのザビエルが一枚上手だったのは確かだったな」
「越前侵攻は、ザビエルにとって反攻勢力である我らを、一網打尽にする絶好の機会だったわけでしたが、計算が狂ったのは一真様とその部隊がいることですね」
「そういうことだ。それにこの先は反撃の機会を作るにはいいところだ」
「ここまでけちょんけちょんにやられた以上、きっちち借りを返させて頂きます」
お、使番が来たな。
「雫様より、そろそろ退くとの連絡あり!殿をお願い致します!」
「相分かった!」
「御免!」
「さあーてと、次はどんな感じで殺そうかね。ふふふ」
一葉と幽の体力はまだ回復していない。小波のあの一撃もだけど、ここは俺達だろうな。
「鞠のお家流はそんなに強くないし、乱戦には向かないから、一真の役に立てないの。ごめんなの・・・」
「謝ることはない。俺達の本領を発揮というわけだ。とりあえずIS部隊での駆逐だな、あと炎風地水の精霊王の力を借りてやろうかな。久々に神炎でも使ってみようかな」
精霊王の名前だが、あるゲームから取ったもので。炎はサラマンダーで、風はサイフィスで、地はザムージュで、水はガッドである。ちなみに性別はないが、女性である。
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