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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十五章 幕間劇
  月見しながらの宴

ここも異常なしと。俺は見回りをしていた。が、そこに灯火があった。

「・・・誰だろう?」

鬼や敵兵ではなさそうだな。鬼は火使わないし、隠密に動く兵なら火は使わんだろう。

「一真じゃねーか。どうした、こんな時間に」

「小夜叉か。見回りだよ」

「一人でか?」

「まあな。一応船でも監視はしているが、人の目で見た方がいいと思ってな」

本当は寝た方がいいんだけど。落ち着きかないのか。

「眠れねえなら、オレと試合でもするか?相手してやるぜ」

「いいね、と言いたいところだが力を温存したいし。明日の楽しみにとっときたいしな」

「ああそれわかる。明日は殺り放題だしな。今度でいいからやろうな」

そう言って俺とは逆に歩いて行った。今は一人の方がいいし、小夜叉は俺の実力知ってるしな。小夜叉と別れてから歩いていたら、森の向こうから一瞬光ったような。一瞬鬼かと思ったが、下級の鬼は武器とか使わないし。いたとしたら通信機から連絡してくるしな。で、そこに行ってみたら鬼ではなかった。そこにいたのは。

「おや、一真様ではありませぬか」

「どうした?そのような顔で」

「一瞬光ったから来てみただけだ。それにしても、戦いの前から酒盛りとは。呑気だな」

「戦いの前だからこそです。我らとて人の子。こういった物の力を借りて戦意を高揚させる必要があるのですよ。それがなければ、誰が好き好んで刃など打ち合わせましょうか」

「酒なんて飲まなくても、刀で打ち合った方がいいんじゃねえの」

「・・・まあ、中にはそういう方もいらっしゃいましょうが」

「余もそうだぞ。これで二人じゃな」

「まさか一真様もとは・・・・」

悪いかよ、半分戦闘狂みたいなのが入っているからな。

「それより一真も飲んでいくか?」

「まあ、暇だったしな」

「・・・して、このような時間にどうした?ここに来るまで気配を消していたようだが」

まあ、なんか光ったからここに来たんだけどね。そしたら鬼や隠密の兵ではなく一葉と幽がいたからな。で、俺の様子がいつもと違うと言っていたが適当に誤魔化した。で、空を見よと見たら、夜空で満月になりそうな月であった。エーリカが心を重くし、久遠は焦っている。

「見事な月であろう」

「ああ・・・」

森から見る月はきれいであったが、さっきまでは雲がかかっていたような。ふむ。神界から交信をしたら、天候の神が夜空に変えたのだと。天候の神か。その天候の神も俺に力を貸してくれるそうだ。

「このような月を見れば、誰でも杯の一つも傾けたくなるというものよ」

「そうだな」

エーリカから話を聞かなかったとしても、この時代には魔が存在する。そして満月と共に活性化する生物がいるともね。

「一葉」

「うむ」

「一杯貰っていい?」

「幽」

「・・・・では一真様、まずは一献」

差し出された杯を受け取ると、幽はそこに透明な液体を注ぐが。飲もうとしたら、水の精霊が話しかけてきた。ふむふむ、なるほどな。

「これは、水か」

「おや、よくお分かりで。そこの沢で汲んできたものです。けれども、なぜ飲む前でお分かりに?」

「水の精霊が話しかけてきた。これは水だとな」

「精霊ですか。確か一真様は話しかけたり精霊に力を貸してもらっていますですかな」

「それに今は悪い気でいっぱいだ。悠長に酔う訳にはいかない。だから、せめて杯を傾けると?」

「当たりだ。それに清き水だ。そこらの酒より美味しい」

と言われ飲んでみたが、これが清き水ね。俺は水の精霊に頼んで力を溜めた物を杯に注いだ。

「それはいったい?」

「水の精霊に頼んで、本当の清き水、聖水を分けてもらった」

「余も分けては構わんだろうか?」

俺はいいよと言うと、水の精霊であるウンディーネを召喚して、一葉と幽の杯に聖水を入れた。注ぎ終えるとなぜか俺の隣にいたけど。召喚だから、一葉や幽にも見える。

「水の精霊なのか、姿は女性なのだな」

「性別はないが、ほとんどの場合美しい女性の姿なんだ。ウンディーネという」

そして飲むとたしかにさっきよりかはうまいと言っていた。俺が飲み終わると、ウンディーネはまた注いでくれる。

「ですが、清き水を探し当てるのだけですかな」

「そこだけか」

「ああ。後は、悪党を叩きのめす時には誰に叩けば一番多くおぜぜを落とすかもよく見ていらっしゃいますな」

「幕府の大事な油代だからの、そこを見逃したりはせぬ」

いやいや。もうちょっと正攻法で油代調達しろよな。

「・・・今更だが水杯なんだな」

「どうかしたか?」

「今飲んでるのは、神聖な水だからいいとして、俺がいた国いや世界か。あまり縁起がないことだからな」

盃で調べると出てくるんだが、命をかけた関係を形成する場合や、後に死に別れて会うことが出来ないことが予測される場面などでは、酒ではなく水を酌み交わす水杯が行われることもあるそうだ。でも今飲んでるのは神聖な水だから関係ないかもしれんが。

「案ずるな。ここはお主の知っておる国ではない。それに、縁起如きで先の事が決まるというのなら・・・足利も鎌倉もこれほど落ちぶれてなどおらぬわ」

「まあ、そりゃそうか。俺もだけど一葉も器が大きいな」

「そうだろう?」

「それは大きいというか、ただ単に底抜けではありますまいか」

「はははこやつめ。そのような事、どの口が申したか」

「ああ、酔った上での失言ですので、どうかお目こぼしを」

「なるほど。その口は聖なる水で酔うか」

「これほどの佳き月を映し出した水、それも水の精霊様から注がれた水であれば、そこらの安酒よりもよほど心地よく酔えるかと存じますが」

「ならば、それを汲んできた谷川に突き落とそうかと思うたが、何やらその精霊様が見てるのでやめようぞ」

ウンディーネが一葉の事を見ていたのか、言うのをやめた一葉。さすがに剣聖将軍と言われた一葉でも、水の精霊から注がれた水を飲んでいるんだ。ありがたく思えって感じだな。

「それにしても佳き月でございますな。・・・一句挙げても宜しいか」

「許す」

「ふむ。では・・・。・・・今来むと いひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」

今来むと~・・・素性法師が詠んだ歌。すぐ来るって言ったのに全然来ないじゃん、夜明けまで一人で待ってたのに、バカ!という意味。

「・・・・よりにもよってそれか」

「どういう意味?」

「ははは。これはですな・・・。今行きますよと言う殿方を待っていた姫君が、夜まで待ちぼうけを・・・」

「それ以上言うでない」

「おや。恋する殿方を待ちわびる公方様には・・・」

「黙れというに」

「ではお返し願いたい。歌には歌で返すのが礼儀」

「ふん。・・・・ちはやぶる 神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは。・・・これで良いか」

ちはやぶる~・・・・在原業平朝臣の詠んだ歌。こんなの知らない!川が真っ赤になっちゃってる!すっごいの!と言う意味。

「おやおや。なんとまあ物騒な・・・」

スマホで調べると、サスペンスものだな。明らかに本来とは違う意味で使っているな、一葉の奴は。

「では一真様」

「うむ。一真も一句出せ」

「では一句。・・・心にも あらでうき世にながらへば恋しかるべき 夜半の月かな。これでどうだ」

「ふむ悲しい歌であるな。だが、今の世の中では合うものだな」

スマホで検索したらあったので、これにした。ちなみに百人一首 月で検索すると出てきたけど。この歌は三条院という者が詠ったそうだ。

「ところで、幽はなんで一葉に仕えているんだ?」

「直球で聞かれましたか。まあ決まっておりまする。お、ぜ、ぜ♪」

「おいおい。今の将軍家から一番縁遠いもんだな」

「今さりげなく酷い事言わなんだか、一真」

「気にするな。それより、それはマジか?」

世の中は金だーって言う人もいるからな。でも、幽くらいの者が、一葉にここまで仕えたりしないだろうけど。

「ははは。まあ、それは直接に過ぎまするが・・・・本当のところは、こうして将軍家に仕えておれば、それだけで箔が付きますし。自然と見聞や顔も広うなり申す。条件の良い新たな仕え先の選定にも事欠かぬという、まさにそれがしにとっては至れり尽くせりな・・・・」

「それはそれで直接に過ぎるな」

そこまで上司の前でざっくりと本音をバラす部下なんて、そうそういないぞ。俺の部下でもいないがな。皆忠義に尽くしているし。

「全くだ。今の将軍家にそこまでの箔などあるものか」

「一葉も一葉だな」

「まあ、そういうわけにござる。それがしにも、思う所は色々あるのですよ」

「本音は?」

「こんな糸の切れた凧のような暴れん坊より、もっとお淑やかな真の姫君にお仕えしとうございますな」

「奇遇だな。余も将軍などという役目には飽き飽きしておる。まさに鷹の如く、自由に空を飛び回りたいものよ」

「公方様のお振る舞いでは、鷹は鷹でもよた・・・」

「はい。やめい!それ以上言うな」

まったくこっちが聞いていてヒヤヒヤする。どこまでか冗談でどこまでが本気かは、さすがの俺でも分からんさ。

「ふむ。ならば、双葉に譲るか」

「それは名案」

「あれか。一葉は面倒な将軍職を双葉に任せられるし、幽は一葉より双葉に仕えるということか」

「それは願ったり叶ったりですな」

「だけど、今はやる事をやるためには、一葉の力が必要だ。例え瀕死の状態だろうが死んだだろうが、俺の目の前で起こったら了承なしで蘇らせてやるから安心しろ」

「それは神の力か?」

「それもあるが、ある薬でもあるけどな」

毒とか瀕死の重傷だったら、エリクサーだけど、軽めだったらフェニックスの涙改だな。エリクサーは知ってると思うが、フェニックスの涙改は外傷や体力を回復する物だ。元々はD×D世界のを改良しただけ。あと元々大量生産が出来ないものだったが、俺の創造の能力で大量生産した。主に黒神眷属が使っているけど、エリクサーもだが。

「あとはやりたいことはあるのか?」

「ふむ。そうよの・・・まずは、ゆるりと旅をしてみたいの」

「旅ねぇ・・・」

「うむ。多くの国々を周り、噂に聞く遠淡海や富士の山、鎌倉の大仏とやらも見てみたい。鎮西にも行ってみたいしな」

「いいね。それは・・・」

「気ままな旅じゃ。朝日と共に起き、夕陽と共に眠り・・・路銀が尽きれば野盗を締め上げて・・・・」

「ははは。一葉らしいな。でも仕事はそれだけじゃないだろう。例えば用心棒とか」

「なるほど、そういう仕事もあるのか」

「喧嘩をして駄賃が貰えるなら、まっこと公方様向きの仕事かと」

「悪人を叩いてそちらからも駄賃を貰っても文句も出まいしな」

あらま、またそう言う考え方をするな。俺がいた世界では、刃物とか持ち歩いてると捕まるしな。一葉はこの戦が終わったら、用心棒になろうとしていたが、まだ将軍職はするようだ。その後、幽が舌打ちをしたけど。

「それで、もう一つしたい事とは?」

「うむ。主様の子を孕みたい」

「はい?」

「公方様。それは酔った上での発言にございますか?」

「水などで酔うかうつけめ。余も正真正銘に素面である」

「余程たちが悪うございます」

「何がたちが悪いか。まだ恋人で愛妾停まりだが、妻になったときに子が欲しいとせがむのは当たり前の事であろうが」

「そういう事はこのような場ではなく、閨でおねだりくださいませ。他人が聞いたら何事かと思いますぞ」

「ここには他人などおらぬから平気であろ」

「それがしがおりまする!」

「幽は家族も同然じゃ。気にする事はあるまい」

「それがしは公方様のような気性の荒い親族に覚えはございませぬが・・・」

「はて。将軍家の親族となれば、上手く立ち回れば権勢も思いのままぞ?」

「おお。そういえばそうでしたなお義姉様」

おいおい。態度変えるのはええな、おい。金と権力は政治の花とか言ってる時点でこういう親族はいらないと思うが。で、聞いていると一葉は、確かにこういう親族はいらぬと言ったし。先程は姉と呼んでたけどもう切り捨てたよ。でも、幽は本音は将軍家には入りたくないと。お家騒動があるからだとな。

「で、子供作るのは決定事項なのそれ?」

「一真は余との子は欲しゅうないと?」

「俺の立場を考えれば分かる事だ」

俺の立場。それは、創造神と言う立場もあるが。俺は元々次元パトロール隊の者だ。子が生まれれば嬉しいが、そうしたら本妻である奏の記憶が俺にはなくなってしまう。

「余と一真の子じゃ。きっと余に似て利発な子に育つぞ」

「荒々しい子の間違いではございますまいか」

「黙れ赤の他人」

「時期摂政としては、双葉様が将軍職を面倒がって退位された後の事も考えておかなければなりませぬゆえ」

摂政・・・勅令を受け、畏き所に代わって政務を執ること、もしくは執る者のこと。

「そうか。余の子を双葉の次の将軍とするか・・・」

「順番ですよ。順番。それにその方が、それがしも実権を握りやすくなる・・・ククク・・・」

さっきは権力争いがどうこう言ってたが、今度は一葉の子を将軍にするって話になっているし。

「というか、俺と一葉の子は出来んぞ。こちらの立場を考えてもらわないと困るが、今は天下を太平にしないといけない」

「なぜ出来んのかは、また今度にして。越前のザビエルとやらを打ち倒し、改めて天下に我が幕府の威光を知らしめる」

「久遠は?」

「あれの考えは少し違うようだが、別に利害がぶつかる訳ではなかろう。仲良くやるさ。・・・主様の事で譲るつもりはないがな」

「そこもまあ・・・・仲良くな」

「では、まずは今宵の閨を・・・・」

「魅力的ではあるが、明日の事もあるから今日はもう寝てくれ」

「むぅ・・・それはつまらんな」

「明日が終われば、出来ることなんだし。それに俺には本妻である奏がいるからな。子を産むなら、俺の息子である優斗で十分だ」

「そうか。そういえばそうだな。余は愛妾で奏とやらは正室であったか」

そうなんだよね。子を産むとなればそうなるし、産んだら奏はしばらく次元パトロール隊の任務ができない。あと、桃香たちも最初は自分の子供が欲しいと言ってきたことがあったが、奏のことを話すと納得してくれたからな。まだ飲むつもりだからと言って、杯に液体を注ぐ。すでにウンディーネは元の場所に帰ったし。で、しばらく飲んでいてから寝たんだけどね。 
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