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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十五章 幕間劇
  鞠の見舞い×明日の戦のこと

確かこの辺りだったような気がするな。そんなことを考えながら進むと、向こうから明かりが近づいてきた。

「こんな時間にどうした?二人とも」

ひよと梅って珍しい組み合わせだなと思ったけどね。ちなみに黒鮫隊の野営は、現代で使っているキャンプになっている。

「夜の見回りをですよ。今回は鬼が相手ですから、警戒も厳重にしているんです」

「ふむ。一応お疲れと言っておこう。けど、俺たちのはるか上空からの監視もしているから大丈夫だと思うが」

俺が動くとトレミーも動くことになっているし、通信機をはめているから何かあったときに役に立つ。
それにドウターゲートの反応は今はないと言ってたが、二条館でのあれ以降はゼットンは全て小型なんだよな。だからなのか、その度に俺が変身して駆除をしているわけだが。あと横文字の意味を聞かれるときがある。

「ところでハニーはどうなさった・・・・はっ、まさか!」

「梅の考えていることとは違うが、この前は可愛かったぞ」

「もうハニーったら。ですが、愛の語らいならもっと雰囲気があるところで・・・」

「梅ちゃん本音がダダ漏れになっているよ」

「まあ、私としたことが」

「ところで一真様はどうされたのですか?」

「鞠が一葉と手合せで怪我したと聞いてな。見舞いに行こうとしてたところだ」

「鞠さんでしたら、今は結菜様と二つ向こうの陣屋においでのはずですわ」

俺はそうかと言ったが、違和感を感じた。梅は結菜のことを様付で呼んだ事を。

「何か私の顔についていますの?ハニーったら、そんなに熱い視線を向けて・・・・恥ずかしいですわ」

「なんでもないが、梅、結菜の事様付なんだなって」

「久遠様の奥様ですから、それに同じ愛妾でも本来なら側室なのですから」

ああ、そういうことか。基準もここ仕様なのね。俺は気にしてないけど仕様ならしょうがないかな。見回りのひよたちと別れて結菜と鞠がいるところに来た。

「おーい、結菜いるか?」

「いるわよ。どうぞ」

声をかけて中に入ると、そこにいるのは結菜と鞠。

「わーい。一真なの!」

「どうしたの?こんな所に」

「鞠が怪我をしたと聞いてな。見舞いに来た」

大丈夫とは聞いてあるけど、明日は大事な決戦だからな。一真隊は後方での控えになっているけど、万全にはしときたいし。

「こんなの怪我のうちに入らないの。鞠、平気だよ」

とニコニコして膝小僧を見せてくれる鞠。手当はうまいようだな、結菜は。

「痛かったら言うんだぞ?」

「結菜にもちゃんと手当してもらったから、大丈夫なの。痛いのは向こうのお山に飛んでいったのー!」

「ええ。念のために薬を塗って、包帯も巻いてあるけど・・・・本当に大した傷じゃないから。って何をしてるの?」

結菜の話を聞いたあとに、目の色だけをかえて鞠を観察していた。ふむ、少しだけだけどエネルギーがないような。身体から出ているオーラが弱まっているな。

「鞠、動くなよ」

「ふぇ?」

と言って、鞠の頭の上に手をかざして光の粒子を鞠全体に包み込んだ。そして数分後には、終わらしたけど。

「一真、鞠ちゃんに何してたの?」

「少しだけ鞠に回復のオーラを当ててみた。鞠は元気そうだけど、身体の中は元気そうじゃなかったからな」

「そんなことも分かっちゃうんだ」

そうしたら、鞠はあくびをしていた。さっき回復のオーラの中には、睡眠を促す物もあったからな。

「なんだか、眠くなっちゃった・・・・」

「寝ちゃって良いわよ。・・・・いいわよね?一真」

「何かあったら起こすから、寝てもいいよ」

「うみゅぅ・・・・わかったの」

鞠はふわ・・・・とあくびをすると、そのままふわりと身を崩し、結菜の膝にしがみ付いてしまった。

「あらあら。そこでいいの?」

「うん・・・・。結菜、なんだか良い匂いがするの」

結菜の膝に小さな頭を乗せて丸くなった猫か兎のようだった。

「そっか・・・」

と鞠の背中を穏やかなリズムで軽く撫でる結菜のことをまるで・・・。

「・・・あ、一真。今私のこと、お母さんだって思わなかった?」

「いや。俺の息子である優斗が鞠くらいの大きさだった頃を思い出していた。あの頃の奏と重なって見えたからさ」

「そうなんだ。私と奏さんがねー」

鞠はよっぽどなのか、それとも俺が与えたものの副作用なのかよく寝ている。俺達が小声で話しているのに、もう寝息を立てている。

「もう寝たのか。寝すぎじゃねえのか、鞠は」

「私に言わせれば、こんな小さな子を行軍に同行させる方がどうかと思うわよ」

「・・・・あー」

そういえばそうだな。将や兵の中でも小さいと言えば鞠や八咫烏隊だし。でも、朱里や雛里もこのぐらいだったから、不自然ではなかったが。

「鞠もそうだけど、俺の妻の中には前までは鞠と同じ身長をしていた子がいたから、不自然とは思わないんだよな」

「へえー、そうなんだ。そういえば、二条館のときに一真の妻に会ったって言ってたわね」

朱里や雛里は軍師としてだったけど、鞠は一葉たちに匹敵する剣術の持ち主。そう言えばと思ってしまうけど、鞠も小さな女の子なんだよな。

「・・・そういえばさ」

「何?」

「今日、俺のところに久遠が来てな。陣の中で普通に甘えてきたぞ」

「へえ・・・珍しい。この戦い、何か感じている所があるのかしらね。一真もそうなんでしょう?」

「まあな、そのためにこれを付けてるからな」

俺は耳のを指さしながら言ったけど。空からの監視なら安心だしな。それに、黒鮫隊の者も野営しているし、何かあればISのレーダーとかで分かるしな。

「けど・・・そっか。久遠、一真のところにね。少し妬けちゃうわね」

「まあ、俺が来るまでは結菜が久遠を助けていたんだろう」

「ええ。でも軍議や評定には出れなかったから、久遠もどこまで私を頼ってたのか分からないけど」

「前線に来るのも初めてなんだろう?」

「そうね。それに久遠と同じものを見れて、久遠のことを助けてくれる人が出来たことだから。私も嬉しいけどね」

それで久遠のことについて話してると、俺が現れるまでは違ったようだ。久遠も最近可愛くなってきたとか。あと家中にも味方はほとんどいなかったそうだ。壬月や麦穂も、最初から家老ではなかったそうだし。ひよも俺の下に付くまではただの雑司だったそうだ。そういえば和奏たちも若手組だもんな、壬月によく怒られてるし。久遠の組織改革の中で上がってきたんだと思うけど。

「そういえば、森家は?」

「桐琴は早いうちから久遠に力を貸してくれたけど、戦のときしか来なかったし。・・・・その分、戦のときは助かったみたいだけど」

やっぱり、森家は変わんないな。

「でも、一真が来てからは・・・・色んなことが変わってきている」

「そうだな。俺が来てからは兵も少しは強くなったんじゃないか。あと久遠がこんなことを言ってたな。自分が弱くなったと」

「・・・まったく。あの子はそういう事ばっかり気にするんだから」

まあ、観音寺のときにいたら久遠の本心は聞けなかったかもな。それにご飯の相手だって、そうしたら結菜に怒られずに済んだのかもな。

「でも、久遠は繊細すぎるのよ。自分では雑で豪快くらいに思っているんでしょうけど」

力を抜くところはそれなりに抜くが、気にするところは多いから。トータルで考えたら絶対マイナスだろうな。

「何?」

「いやなに、結菜にはかなわないなとな」

「当たり前でしょ。久遠の事で負ける気はないわよ?」

得意げにそう言われるということは、心底久遠のことが好きだと思う。まるで、俺の妻たち。奏だけどな。

「俺はまだ分からない。けど、一緒に久遠を支えていこうとは思う」

「一真もずっと久遠の味方でいてあげてね」

「まあな。守ってあげたい子だしな」

「・・・まだ言いたい事があるのよね」

ふむ。鋭いな。
だけど、これは結菜には言ったほうがいいかもしれない。

「あのさ、結菜・・・・」

「久遠には言わない方がいいわよね?」

「まだ何も言ってないが、分かったのか?」

「勘よ。あなたが現れてからずっと見ていたからね。当たっていたかしら?」

「大当たりだ」

「そうね。・・・なら、聞いておきましょう。久遠には今は少しでも余計な負担はかけたくないし」

鬼の事や、今からの決戦のことや武田や越後のこともある。俺や結菜でフォローしたほうがいい。そう思った。

「結菜。この先の事だが・・・・・・」

言おうとしたが、考えてしまう。それは本当に言ってもいいことなのか。恋姫世界でもだったが、ある外史だと歴史が変わって一刀が役目を果たして消えたことがあった。でも、俺が行った外史は歴史通りにはならなくてもそうならなかった。この時代の歴史だって知っていること。本来の浅井長政は裏切るが、この世界の浅井長政である眞琴は裏切らないだろう。だから、この先の事件もたとえでも視線を眞琴に向けたくはない。

「一真・・・・?」

それに結菜の膝で座っている鞠や、近くの陣で休んでいる一葉だって、本来ならここにはいない。この子たちの力がなければ、この先にある本来の歴史にはない方向に進むと予測される。ザビエルたちの動きを考えるともう俺の知らない歴史に進んでるかもな。もしここで結菜に俺の知る歴史を話して、見当外れの所に意識を向けたら流れが悪くなるな。それに三国志のあのときも、すでに歴史通りではなくなっていたしな。

「・・・詳しくは言えないが、明日はきっと大変な事があるだろうと予測している。俺も防げるようにしとくが、結菜は久遠の側で久遠を支えてほしい」

「言えない、か」

さすが、結菜といったところか。言いたくても言えない所まで理解してる。

「これ以上言ったら、違う展開になったときに混乱させると思う」

「そうね。ならこれ以上聞かないでおくわ。その予測、外れれば良いわね」

「そうなったら、笑ってくれ。俺も笑うから」

「そうするわ」

久遠も困難続きだが、原因の一つは俺かもな。

「久遠が一番気にしているのは、俺との同盟なのかもな」

「そうね。でももう一度話してみてあげてね」

「ああ。この越前が終わったらもう一度話してみるさ」

「ええ。だから、あなたも生き残るのよ」

「ああ。そうしないと奏が悲しむからな。神殺しじゃない限りは死なんさ」

「奏さんもだけど久遠や私も忘れないでね」

俺はああと言って改めて結菜に好きと言った。本当は結菜に言って欲しかったが、たまには俺からがいいだろうと思ってな。

「もういい頃合いね。私は鞠ちゃんを連れて行くから」

「いいよ。俺が鞠を連れて行くから、結菜は久遠のところに行ってくれ」

そう言いながら鞠の身体をヒョイと持ち上げる。鞠は一向に目覚めないが、熟睡してるな。

「ああ。こうすると確かに親子みたいわね」

「だろ?だけど、こういうのも悪くはない」

そう言ったあと、久遠のところにはもう行かないと答えた。
今俺が行っても明日万全にはいけないと思うし。

「終わったら、また三人で寝ような」

「お風呂とご飯もね?」

「あと膝枕もお願いする」

結菜が居てくれて本当に助かっている。一緒に久遠を支える戦友みたいな感じで心強い。

「ふふっ。楽しみにしてるわ。だから一真も・・・・」

「むにゃ・・・・一真は、鞠が守るの・・・・」

俺の腕の中で呟く鞠に、俺と結菜は、同時に笑みがこぼれた。

「承知している。明日は・・・・頼むよ、結菜」

「一真もね」

結菜が一歩踏み出したら、キスされたけど。それも、風のように触れ合った。

「それじゃ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

明日の戦いが終わったら、心配し過ぎな俺に笑い話が来ることだろうな。だけど、俺には分かる事だと思うけど、今は言わない。そして鞠を連れて行ったあとに、黒鮫隊の陣営に行ったのであった。 
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