魔法少女リリカルなのは~"死の外科医"ユーノ・スクライア~
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本編
第四話
あれから、詳しい事情を聴くために、一同は特務6課の隊舎に戻ってきた。
今は、はやて、フェイト、なのはの3人が、ユウからここに来るまでの経緯について、聞いているところである。
「ねえ、ユウ君。正直に答えて。今、ユーノ君は何処にいるの?」
単刀直入のなのはの質問に、一同は固唾を飲んで見守る。
「・・・すみませんッスが、オイラにも分からないッス」
「・・・?どういうこと?」
「オイラがここに来る3か月前には、すでに、師匠は別の次元世界に旅立って行ったッス。何処に行ったかは、オイラも知らなくて・・・」
「そう。ありがとうね、ユウ君」
「ユーノ、元気にしてたんだ」
「そやな。それが分かっただけでも僥倖やな」
親友が、少なくとも無事であることが分かり、安堵する3人娘。
「オイラが師匠に出会ったのは、だいたい1年ちょっとくらい前ッス。そのときから、師匠に魔法や戦い方について教わってたッス」
「そうなんだ・・・」
「それよりも、教えて欲しいことがあるッス」
「なんや?」
「師匠っていったい何者なんスか?オイラが管理局で働くのが夢だって言ったら、『これを特務6課の人に見せるといいよ。多分、それでどうにかなるから』ってあの推薦状を渡されたッス。うすうす感じてたッスけど、師匠って実は元管理局の凄腕魔導師だったりするんスか?」
「ユーノ君から何も聞かされてないの?」
「『ただの流浪の考古学者さ』って言ってたッス。けど、本当にただの考古学者なら、そんな人の推薦状見せたところで、どうにかできるはずないし、何よりも師匠の強さは、ただの考古学者に収まらないッス」
「・・・ユーノ君はな。私たちの幼馴染で、恩人で、ここにいる高町一等空尉に魔法を教えた人物で、ミッド式魔導師総合Aランクの魔導師で、無限書庫の元司書長、つまり、管理局内じゃ、提督クラスの権限を持っていた人物なんよ」
「師匠が高町一等空尉に魔法を教えた?・・・つまり、あなたが『なのは』ッスか!?まさか、管理局にいたとは・・・一度お会いしたかったッス!!」
ユウはなのはの名前を聞くと、とたんに目の色を輝かせて、なのはに歩み寄った。
「た、確かにわたしの名前はなのはだけど。どうしたの、ユウ君?」
「師匠から話を聞いてから、ずっと会いたいと思ってたッスよ、姐さん!!」
「へぇー。ユーノ君がわたしの話を・・・って、姐さん!?」
「だってほら、姐さんはオイラの姉弟子にあたるわけッスから」
「まあ、確かにな」
「うん、そうだね」
「ううー。わたし末っ子だから、呼ぶことはあっても、呼ばれたことがなくて、ちょっと複雑な思いだよ」
「20歳にもなってない時期にママって呼ばれてた人がなに言っとるんや」
「言われてみれば、確かに」
「ううー。・・・・・・それで、ユウ君」
「何ですか?姐さん」
「ユーノ君はあたしたちについては、何か言ってた?」
「師匠は自分の過去については、ほとんど教えてはくれなかったッス。ただ、昔、師匠が、子供の頃、偶然にも姐さんと出会い、そして魔法を教えたことを話してくれただけッス。師匠は、そのときに、『僕が師匠だなんておこがましいけどね』って言ってたッスけど、でも、やっぱり、オイラにとって、姐さんは姉弟子ッスから、オイラと同じように、あの人から魔法を教えてもらった人が、どんな人間か興味があったッス」
「そう・・なんだ」
「「なのは(ちゃん)」」
目に見えて落ち込むなのは。
せっかく手掛かりを掴んだと思ったら、肝心な所は一つも分からずじまいだったのだから、それも仕方がないのかもしれない。
「まあ、とにかく。ユーノ君の推薦なら、信用してもええでしょう。・・・ユウ君、ようこそ、特務6課へ」
「歓迎するよ。ユウ」
「よろしくね。ユウ君」
「はいッス」
場所は移り、ここは訓練場。
ユウはライトニングに配属されることが決定したが、彼の実力の確認と言うことで、急遽、模擬戦を行うこととなった。
同じ部隊であり、歳も近いことから、エリオが模擬戦の相手になった。
(この人は正体の分からない高速機動魔法を使う。同じスピードタイプのクロスレンジ型の魔導師・・・。油断は禁物だ)
「それじゃあ、始めるで」
「はい!!ストラーダ、セットアップ」
<Yes,my master!!>
エリオは光に包まれて、バリアジャケット姿に変身する
「オイラはいつでもいいッスよ!!」
対して、ユウは中国拳法のような独特な構えとるだけで、服装に変化はなく、デバイスを起動する様子もない。
「ちょ、ちょっと、待ちい!!あんた、デバイスは!?」
「へっ?オイラはデバイスなんて使わないッスけど?」
「「「「「「はっ??」」」」」」
驚きのユウの宣言に、特務6課全員が驚きの声を上げる。
当然だ。魔導師にとって、デバイスは己の魔法を十分に発揮するために、なくてはならない物であるのは、子供でも知っていることなのだから。
それを、あろうことか、ユウは使わないという。
日常生活ならともかく、戦闘中でそれは、自殺行為である。
特務6課の隊長陣ですら、デバイスなしでは、その実力はあるときの半分以下にまで下がってしまうだろう。
だがしかし・・・・・・。
「オイラは師匠に憧れて、師匠と同じようになりたくて、修行してきたッス。師匠も『デバイス使ったら?』って言ってたッスけど、これだけは譲れないッス。『魔法戦闘ではデバイスを使わない』。それがオイラのポリシーッス!!」
「いや、でも・・・」
「八神部隊長。このままやらせてください」
「エリオ君?」
「僕はユウの強さを、一度目にしています。実力的に考えて、問題ないでしょう」
「分かった。そこまで言うんなら、始めようか」
ユウとエリオ。
両者がにらみ合う。
「では、始め!!」
模擬戦開始の合図が出される。
「(あの高速機動魔法を使われたら厄介だ。いっきに仕留める)・・・ストラーダ!!」
<Sonic move>
先に動いたのはエリオだった。
開始早々のソニックムーブで一気にユウとの距離を詰め、ストラーダを振るう。
誰もが決まると思った見事な一撃。
だが・・・・・・。
「ほいッス」
「なっ!?」
ストラーダと腕を掴まれた後、攻撃をそらされ、逆にソニックムーブのスピードを利用して、投げ飛ばされてしまう。
冗談ではなく、人が5メートル近くも投げ飛ばされ、エリオだけでなく、観戦していた、特務6課全員が唖然となった。
「まだまだッスよ!!レールロード!!」
ユウが魔法を発動する。
白い道がまっすぐに伸び、空中にいる、エリオに向かって伸びていく。
「(来る!!あの高速移動が!!)・・・ストラーダ!!」
<Yes,master>
とっさに、エリオはストラーダのジェット噴射を利用してレールロードの上から退避する。
次の瞬間、先ほどまでエリオがいた場所を、ユウの掌打が、凄まじい勢いで通り過ぎる。
(あ、危なかった)
「へえ、良い勘してるッスね。そして、武器に救われたッス。空中で動く手段がなければ、今ので終わってたッスよ」
一方、観戦してた隊長陣は
「な、なんや!?今の、スバルのウィングロードとフェイトちゃんのソニックムーブかいな?」
「確かに、ユーノの弟子なら、それくらい知ってるかもしれないけど・・・」
「主はやて、私の勘では恐らく違うかと・・・。あれはユウ独自の魔法ではないでしょうか?」
「シグナムさん?それじゃ、あれって?」
「私にもあれの正体は分からんが。身体強化魔法と純粋な体術のみでエリオを圧倒するとは、騎士としての血が騒ぐ。一度手合わせしてみたいな」
「シグナム、あまり悪い癖出すんじゃねーよ」
はやて、フェイト、シグナム、なのは、ヴィータがユウの魔法について話し合っていたが、結局結論は出なかった。
そして、エリオとユウの勝負はまさにクライマックスであった。
張り巡らされた、レールロードに囲まれ、身動きを封じられたエリオ。
謎の高速機動により、エリオを翻弄するユウ。
すると、ユウは突然、ポケットからなにかを取り出し、エリオに向かって弾き飛ばした。
「レールガン・10g弾!!」
「っ!?」
ユウの手元から、まるでレーザー光線のような光の帯がこちらに向かってきた。
エリオは間一髪で回避したが、遠距離技の存在を失念していたため、上手く回避できず、バランスを崩してしまう。
バランスを整える一瞬の隙を突き、ユウはエリオに接敵する。
「オイラが接近戦しかしないと思ったら大間違いッスよ!!」
「なっ!?」
エリオには回避する時間がないし、ユウには回避させるつもりもない。
「くそっ!!」
とっさに、エリオはラウンドシールドを展開する。
しかし・・・。
「それを待ってたッスよ!!」
ユウは腕を大きく振りかぶり。
「喰らうッス!!」
腰を捻り、レールロードを強く踏み込んだ渾身の一撃は、ラウンドシールドをすり抜けて、エリオの体にクリティカルヒットした。
「ごふっ」
エリオはもろに全力の掌打を急所に喰らい、その場に崩れ落ちてしまった。
「ユウ君の勝利や・・・」
こうして、模擬戦はユウの勝利で幕を閉じた。
隊舎に戻ってきたユウは自分の能力について、説明を求められていた。
「これからは、命を預け合う仲間なんやから。さっきの模擬戦についてや、他にどんな魔法が使えるか説明してもらうで、ユウ君」
「もちろんッスよ」
ユウは笑顔で了承した。
ちなみに、気絶していたエリオは5分で復活し、今はユウの説明を聞いている。
「オイラの戦闘スタイルは基本的に、オイラが持つ、あるレアスキルを基礎にしてるッス」
「レアスキル?」
「特務6課にもいるんじゃないッスか?『魔力変換資質』ッスよ」
「私とエリオが電気の変換資質、シグナムが炎の変換資質だね」
「オイラのはその中でもレア中のレア、『磁力』ッス」
「「「「磁力?」」」」
「そうッス。そして、レールロードは空中に磁力に反応する足場を造り出す魔法ッス。それを利用して、リニアモーターと同じ原理で高速移動してるッス」
「そうか!!通常は瞬間的にしか効果を発揮しない高速機動魔法を、あんなに長時間加速し続けられるのは変だと思ってたけど、そういう原理だったんだ!!」
エリオが得心言った顔をする。
「でも、最後の技は何ですか?ラウンドシールドをすり抜けた技です」
そんな、エリオの疑問に。
「『壁抜け』だね、ユウ君」
意外にも、なのはが答える。
「なのはさん、知ってたんですか?」
「うん。だって、ユーノ君が得意だった技だから」
その、なのはの答えに全員が沈黙する。
「結界魔導師Aランク相当の高等技術『壁抜き』。相手のシールドを解析し、自分の魔力をそれに同調させることで、シールドをまるでないかの如く貫通する、シールド貫通技。高い解析能力と精密な魔力操作がないとできない代物だよ」
「オイラは魔力と磁力の精密なコントロールには自信があるッスからね。基本的にはこれらを利用したクロスレンジがメインッスよ」
「じゃあ、最後の方に出した、あの遠距離技。あれは何なの?あれも磁力の応用技?」
今度はティアナが質問する。
「もちろんッス。あれの正体はこれッス」
そう言って、ユウはポケットからある物を取り出す。
「これって、コイン?」
「そうッス。ただのコインッスけど、仮にこれが音速以上で向かってきたら?」
「音速!?どうやって!?」
「『レールガン』って知ってるッスか?」
「「「「「「「レールガン??」」」」」」」
聞きなれない単語に特務6課のほぼ全員が首をかしげる。
「磁力を使って、リニアと同じように、金属片を加速し、打ち出す質量兵器ッスよ。オイラの魔力を磁力に変換して、それを再現したッス。最大重量は200ポンド(約90kg)、最大速度はマッハ3(時速約3700km)くらいで打ち出せるッスよ。もちろん、さっきの模擬戦では当たっても大怪我しないように威力を調整したッスけど」
「でも、ユウ。それって、魔力弾じゃなくて、純粋物理攻撃だから、非殺傷設定出来ないよね?」
「せやな。ユウ君、その技はあまり大っぴらには使わないこと。いいね?」
「・・・了解ッス」
ユウはしぶしぶ了解する。
「他には何もない?」
「あとは、砂鉄を操って、結構な広範囲を殲滅できるッスよ。砂鉄を高速振動させれば、チェーンソーみたいにスパッと切れますし・・・」
「だから、非殺傷設定出来ひんやん、それ!!それも使用制限や!!」
「そうッスよね・・・・・・・・・ちぇっ」
またもや、切り札に制限を掛けられ、ユウは悔しそうに呟いた。
ユウの能力についての説明も終わり、模擬戦を行った、ユウとエリオはシャワー室で汗を流していた。
「それにしても、ユウ。僕は今まで磁力の変換資質って聞いたことなかったよ」
「まあ確かに、オイラも自分以外で、そう言った人とは会ったことがないッス。電気の変換資質を持つ魔導師が磁力を操るって話はたまに聞くッスけど、オイラの変換資質は、珍しいことに、100%磁力だけなんで、そう言った魔導師と比べると変換効率が半端なく高いそうッス」
「へえ・・・。だからこそ、膨大な磁力を必要とする、レールガンが打てるんだね」
「そう言うこと・・・・・あれ?意外とレールガンについて詳しいッスね。そう言えば、さっきだって、レールガンって単語を聞いても、あんたは、みんなと違って、首をかしげてなかったッス」
「以前ユーノさんが読ませてくれた、地球の小説にその兵器の詳しい解説があったんだよ。それに、僕も一度試してみたことがあったけど、電気を磁力に変換する効率が悪くて、上手く出来なかったんだ」
「第97管理外世界の小説ッスか・・・。オイラも師匠に読ませてもらったッスけど、あの世界の質量兵器は他の世界の比じゃないくらい進んでるんッスよね。意外と戦闘の参考になることも書いてるッス」
「まあ、確かにね。でも、フェイトさんに聞かれたら怒られ・・そ・・う・・だけ・・ど・・・・・?」
あれ?
おかしい。
シャワーを浴び終え、ユウの方に振り返ってみると、そこに居たのはユウではなかった。
「どうしたッすか?」
いや、ユウではあるのだが、彼の股間には男の子であるはずの証が存在しなかったのだ。
「えっ!?ちょっ!?ユ、ユ、ユ、ユ、ユ、ユ、ユ、ユ、ユ、ユウ!?」
「どうしたッすか?」
「どうしたって!?き、君って、女の子だったの!?」
「・・・?そうッスけど?」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
特務6課の隊舎中にエリオの叫びがこだました。
なお、エリオの叫びを聞きつけて、慌てて男子シャワー室に飛びこんだフェイト執務官に、エリオが赤面したり、その夜、今回の騒動に嫉妬したキャロとルーテシアがエリオのベッドに突撃したりしたそうだが、恐らく蛇足だろう。
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